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七章
7、契約解除なんてしませんよ
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「俺はアフタルに契約を解除されるのが怖い。いや、違うか。契約とかじゃなくても、俺のことを必要としない、もういらないと言われることが一番怖い」
「傍にいてほしいですよ?」
「今はな」
シャールーズは体の向きを変えて、アフタルを抱きしめた。
「約束の地で、俺は主を得る。それだけが俺の心の支えだった。けどな、ラウルみてぇに主から突き放されたくない。もっと怖いのは、ラウルが俺が思っているほど傷ついていないってことだ」
「ティルとの絆が弱かったということですか?」
「ティル? 弟のティルダードのことか。ああ、ラウルは緊急事態だから姿を現し、ティルダードを守るために慌てて契約を結んだのかもしれない」
シャールーズは深い琥珀の瞳で、アフタルをじっと見つめた。
まただ。またその目に深い寂しさが宿っている。
「契約を解除したら、精霊はどうなるのですか?」
「仕える主もおらず、主の命が遺されているわけでもないのなら、宝石に戻るんだろうな、きっと。愛でられない宝石がただの石であるように、主のいない守護精霊は存在する価値がない気がする」
ラウルの姿が消えてしまう?
アフタルは考え込んだ。シャールーズが推測で話しているのだから、詳しいことは彼も知らないのだろう。
あるいはこれまで契約を解除した者が存在しないということか。
「わたくしは、あなたとの契約は間違いではなかったと思います」
「俺のこと好きか?」
少しの間をおいて、シャールーズは再び問いかけた。
「俺のことを好きでいてくれるか?」
当たり前のことを聞かないでほしいと思ったが。たぶん、その当然のことに答えが必要なのだろう。
「好きですよ。あなただけです」
アフタルは囁くと、シャールーズと唇を重ねた。
王女からキスを望むなんて、はしたないと頭の隅では気付いているけれど。
シャールーズがためらいがちに、アフタルと指と指を絡めた。
「味が……する」
「味、ですか?」
ようやく唇を離したシャールーズが、小さく呟いた。
「ジャスミンはアフタルの香り。じゃあ、これはレモンか。アフタルの味なのか」
「わたくしがレモンというわけでは……」
また確認するように、キスされる。
「すーっとするのは、ミントか」
「ええ。グラスに入っていました」
「これもアフタルの味だ」
くちづけは頬や首筋、そして胸元にも落ちてきた。
思わずシャールーズの首にしがみつく。
すると今度は耳にキスされた。
くすぐったくて、思わず声が洩れてしまう。
「だから、そんな陶然とした顔は俺だけに見せろよ」
「だって、他の誰もわたくしにこんなこと、しません」
「されたら、俺が困る」
アフタルをぎゅっと抱きしめて、シャールーズは横になった。
「やっぱり毛布とは抱き心地が違うな。腕に隙間がないから、落ち着く」
「褒めてません、それ」
「アフタルがいいってことさ」
湖から波の音が聞こえてくる、静かな夜。
心臓がどきどきするのは、抱きしめられながらキスが降ってくるからなのか。
それともお酒のせいなのか、アフタルには分からなかった。
「傍にいてほしいですよ?」
「今はな」
シャールーズは体の向きを変えて、アフタルを抱きしめた。
「約束の地で、俺は主を得る。それだけが俺の心の支えだった。けどな、ラウルみてぇに主から突き放されたくない。もっと怖いのは、ラウルが俺が思っているほど傷ついていないってことだ」
「ティルとの絆が弱かったということですか?」
「ティル? 弟のティルダードのことか。ああ、ラウルは緊急事態だから姿を現し、ティルダードを守るために慌てて契約を結んだのかもしれない」
シャールーズは深い琥珀の瞳で、アフタルをじっと見つめた。
まただ。またその目に深い寂しさが宿っている。
「契約を解除したら、精霊はどうなるのですか?」
「仕える主もおらず、主の命が遺されているわけでもないのなら、宝石に戻るんだろうな、きっと。愛でられない宝石がただの石であるように、主のいない守護精霊は存在する価値がない気がする」
ラウルの姿が消えてしまう?
アフタルは考え込んだ。シャールーズが推測で話しているのだから、詳しいことは彼も知らないのだろう。
あるいはこれまで契約を解除した者が存在しないということか。
「わたくしは、あなたとの契約は間違いではなかったと思います」
「俺のこと好きか?」
少しの間をおいて、シャールーズは再び問いかけた。
「俺のことを好きでいてくれるか?」
当たり前のことを聞かないでほしいと思ったが。たぶん、その当然のことに答えが必要なのだろう。
「好きですよ。あなただけです」
アフタルは囁くと、シャールーズと唇を重ねた。
王女からキスを望むなんて、はしたないと頭の隅では気付いているけれど。
シャールーズがためらいがちに、アフタルと指と指を絡めた。
「味が……する」
「味、ですか?」
ようやく唇を離したシャールーズが、小さく呟いた。
「ジャスミンはアフタルの香り。じゃあ、これはレモンか。アフタルの味なのか」
「わたくしがレモンというわけでは……」
また確認するように、キスされる。
「すーっとするのは、ミントか」
「ええ。グラスに入っていました」
「これもアフタルの味だ」
くちづけは頬や首筋、そして胸元にも落ちてきた。
思わずシャールーズの首にしがみつく。
すると今度は耳にキスされた。
くすぐったくて、思わず声が洩れてしまう。
「だから、そんな陶然とした顔は俺だけに見せろよ」
「だって、他の誰もわたくしにこんなこと、しません」
「されたら、俺が困る」
アフタルをぎゅっと抱きしめて、シャールーズは横になった。
「やっぱり毛布とは抱き心地が違うな。腕に隙間がないから、落ち着く」
「褒めてません、それ」
「アフタルがいいってことさ」
湖から波の音が聞こえてくる、静かな夜。
心臓がどきどきするのは、抱きしめられながらキスが降ってくるからなのか。
それともお酒のせいなのか、アフタルには分からなかった。
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