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七章
3、思考がぐるぐると
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アフタルの隣の部屋に、シャールーズの部屋は用意されていた。
ゆっくりと休めるようにと、ゾヤ女官長が気を利かせてくれたのだ。
「なのに、どうしてわたくしの部屋にいるのですか?」
「女官長は意地悪だな。俺はアフタルと同室がいいのに」
シャールーズはアフタルのベッドであおむけになっている。長い足を組み、ふてくされた様子だ。
アフタルはミーリャが用意してくれた飲み物を持って、窓辺に座った。
ミーリャがカシアの王女であると判明したが、彼女自身は侍女のままでいたいと願い出た。
「カイはミーリャの友人だそうですよ」
「恋人の間違いじゃねぇのか?」
「まぁ、詮索はよしておきましょう」
アフタルには分かる。ミーリャがどれほどカイを大切に思っているのか。もし身分違いの恋であれば、迂闊に「好き」とは言いにくいことも。
(ミーリャが、ロヴナの結婚の邪魔をしたのも、わたくしを利用するためだけではなかったのかもしれませんね)
湖を渡る風が肌に涼しい。カイも今、カシアから吹くこの風を感じているだろうか。
アフタルはミントの葉とレモンが入った飲み物を、口に含んだ。喉が渇いていたせいで、半分くらい飲み進めてようやく気付いた。
「これ、お酒が入っています」
「酒? ああ、神殿で見たことがあるぞ。確か椰子から作った酒を、よく神官が供えていたな。それがどうかしたのか」
「いえ、なんでもありません」
アフタルはベランダに出て、シャールーズに背中を向けた。
飲食物を口にしない彼は、酒を飲むこともない。ということは、酔うこともないわけで。
(最近はワインも飲んでいませんでしたから、お酒に慣れていませんし。このお酒は……蜂蜜酒ですね。蜂蜜酒はワインよりも歴史が古くて簡単にできるのですが。流通させるには蜂蜜の生産量が追いつかないのですよね。ああ、ワインが出回らないと思ったら、カシアに流れていたのですね)
考えが止まらない。すでに自分が酔っていることに、アフタルは気付いていない。
(それよりもラウルとティルのことです。、ああ、ティルだなんて、幼児の時の愛称を今さら……いけません、ティルダード殿下なのですから。でも……もうすぐ陛下になってしまうのですね)
アルコールのせいで、思考がぐるぐると回っている。
(契約解除をしたら、どうなるのでしょう。そうです、シャールーズに訊けばいいのです)
名案とばかりに、アフタルはシャールーズの元へと急いだ。
酔っている自分を見られたくなくて、彼の視線を避けていたことを、忘れてしまっている。
ゆっくりと休めるようにと、ゾヤ女官長が気を利かせてくれたのだ。
「なのに、どうしてわたくしの部屋にいるのですか?」
「女官長は意地悪だな。俺はアフタルと同室がいいのに」
シャールーズはアフタルのベッドであおむけになっている。長い足を組み、ふてくされた様子だ。
アフタルはミーリャが用意してくれた飲み物を持って、窓辺に座った。
ミーリャがカシアの王女であると判明したが、彼女自身は侍女のままでいたいと願い出た。
「カイはミーリャの友人だそうですよ」
「恋人の間違いじゃねぇのか?」
「まぁ、詮索はよしておきましょう」
アフタルには分かる。ミーリャがどれほどカイを大切に思っているのか。もし身分違いの恋であれば、迂闊に「好き」とは言いにくいことも。
(ミーリャが、ロヴナの結婚の邪魔をしたのも、わたくしを利用するためだけではなかったのかもしれませんね)
湖を渡る風が肌に涼しい。カイも今、カシアから吹くこの風を感じているだろうか。
アフタルはミントの葉とレモンが入った飲み物を、口に含んだ。喉が渇いていたせいで、半分くらい飲み進めてようやく気付いた。
「これ、お酒が入っています」
「酒? ああ、神殿で見たことがあるぞ。確か椰子から作った酒を、よく神官が供えていたな。それがどうかしたのか」
「いえ、なんでもありません」
アフタルはベランダに出て、シャールーズに背中を向けた。
飲食物を口にしない彼は、酒を飲むこともない。ということは、酔うこともないわけで。
(最近はワインも飲んでいませんでしたから、お酒に慣れていませんし。このお酒は……蜂蜜酒ですね。蜂蜜酒はワインよりも歴史が古くて簡単にできるのですが。流通させるには蜂蜜の生産量が追いつかないのですよね。ああ、ワインが出回らないと思ったら、カシアに流れていたのですね)
考えが止まらない。すでに自分が酔っていることに、アフタルは気付いていない。
(それよりもラウルとティルのことです。、ああ、ティルだなんて、幼児の時の愛称を今さら……いけません、ティルダード殿下なのですから。でも……もうすぐ陛下になってしまうのですね)
アルコールのせいで、思考がぐるぐると回っている。
(契約解除をしたら、どうなるのでしょう。そうです、シャールーズに訊けばいいのです)
名案とばかりに、アフタルはシャールーズの元へと急いだ。
酔っている自分を見られたくなくて、彼の視線を避けていたことを、忘れてしまっている。
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