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三章

7、厳しすぎる

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「いい加減に、誘導尋問はおよしなさい。それから寝物語の意味を、完全に間違えています。はしたない。これだからあなたは」
「はいはい、俺はエロ精霊だよ。で、お前は鬼畜精霊か」

 ぎろりと蒼氷の瞳ににらまれ、また地吹雪が吹き荒れる。主にシャールーズの周りに。
 こいつが睨むと、気温が下がる気がするし、怖いんだよ。

「絵本くらい、読んでやれよ。冷てぇな」
「哲学書や、歴史書をご自分で読んでおられる殿下に、なぜ絵本が必要なのですか?」
「じゃあ、蜂蜜くらい許してやれよ」
「皿どころか、碗……いえ、鉢くらいの器に入った蜂蜜を食べたがるのを制止するのは、間違っていますか。あれは蜂蜜をかけるではなく、蜂蜜に沈める、です」

 シャールーズは肩をすくめた。
 宝石の精霊だからと一括りにはできないし、現に自分だって他人に対する情けには欠けていると自覚している。
 次代の王となるティルダードを甘やかしてはいけないのも、分からないではないが。
 賢そうに見えても、まだまだ子どもではないか。しかも母親である正妃に頼ろうともしていない。

(頼れない状態……ってわけか)

 シャールーズは腕を組んで考え込んだ。
 サラーマに送られた宝石は四つ。
 普通に考えれば、正妃にも宝石精霊がついているはずだ。
 先代や先々代の正妃と契約したにしても、元の主によほどの執着がなければ、次の主を求めるものだろうし。

(けどなぁ、アイスブルーは王と契約を交わさなかったっていうしな)

 自分が箱の中に閉じ込められている間に、妙なことになっているのかもしれない。
 宝石というのは、本当に不便だ。
 これがせめて鳥や獣なら自由に動くこともできるのに。
 石というのは、自分だけでは移動もできないし、箱の蓋を開けることすら不可能だ。

「あ、でもね。ラウルは遊んでくれるよ」

 思考に耽るシャールーズの様子を、ティルダードは不機嫌と勘違いしたようだ。
 くいくい、とシャールーズの服を引っぱる。
 あどけないのに、子どもなりに気をつかっているのかもしれない。

「遊ぶって、何をしてくれるんだ」

 シャールーズは屈みこんで、ティルダードに視線の高さを合わせた。

「シャトランジっていうゲームなんだ。あのね、王と将に歩兵、象にラクダ、あとね馬と戦車の駒があって、盤の上で競い合うの。古くに交易で入ってきたゲームなんだって」
「ふぅん、戦の模擬みたいなもんか」
「でもね、象っていうのが分からないんだ。見たことないし」

 象ねぇ。確かシンハにはいたが、サラーマには存在しないのか。

「ラウルが絵を描いてくれるんだけど……その、なんていうか独特で」

 ティルダードは視線を泳がせた。

「独特?」
「こ、個性っていうのかな。あれ」

 おいおい、声が上ずってるぞ。
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