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三章
6、氷でも微笑むのか
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パタパタパタ、と軽い足音が廊下に響く。
「ラウル! 見つけた」
金色のふわふわした髪を揺らしながら、アイスブルーに飛びついたのは、ティルダード王子だった。
母親は違うというが、やはりアフタルに似ている。
ラウルは冷静にティルダードを受け止めたが、やはり感情は隠せないようだ。
目許が微笑んでいる。
「殿下。どうなさったのですか。お勉強の時間では?」
「もう終わったよ」
ティルダードは、小首をかしげた。
「珍しいね、ラウルが誰かと話し込んでるなんて。仲良しさん?」
「違います!」
「ぜってー、違う!」
二人の声が重なった。
ティルダードは一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、すぐに楽しそうに笑いだした。
「いいね。ラウルがそんな大声出すの、初めて聞いたよ。闘技場でお目にかかったことがありますよね。アフタル姉さまの守護精霊でしょ? ぼく、ティルダードです」
「シャールーズだ。よろしくな。で、普段のアイスブルーはどんなだよ。まぁ、大体の想像はつくけどな」
にやにやしながら、シャールーズは王子に尋ねた。
どうせ嫌味ばかり言って、つんつんしていて、自分では「厳しさこそが、殿下を成長させるための優しさです」とか、ほざいてんだろ。
「たぶん、それ正解」
アイスブルーにしがみついたまま、ティルダードがシャールーズを見上げてきた。
「えっ。俺、口に出してたか?」
「ううん。でも皮肉っぽく笑ってたから。ラウルの悪口を考えてたんでしょ。なんとなく分かる」
「じゃあ、訊くが。どんな悪口だ?」
「えーとね。『甘やかしていては人は成長しません』って言って、すーっごく厳しいとか。ねちねちとしつこく嫌味を言うとか」
「ほぅ、興味深いな。お前、勘がいいぞ。大体合っている。他にどんな感じなんだ?」
シャールーズの口車に乗せられて、ティルダードはぺらぺらと喋りだした。
「あとね、おやつを制限するの。ひどいんだよ、ぼくは蜂蜜がたっぷりとかかった揚げ菓子が好きなのに。ちょっとしか、かけさせてくれないの」
「なるほど。俺は甘いものがうまいとか、分からんが。好きなものを止められるのは、つらいよな」
「うんうん。それにね、寝る時もご本を読んでくれないの。『ご自分で読めるでしょう』っていって、絵本を渡すんだよ。ふつう、読んでくれるよね」
「確かに、寝物語は大事だよな」
突然、シャールーズはアイスブルーに肩を掴まれた。細身のくせに、どれだけ握力があるんだよっていうくらいの力だ。
肩が鈍く痛む。
「ラウル! 見つけた」
金色のふわふわした髪を揺らしながら、アイスブルーに飛びついたのは、ティルダード王子だった。
母親は違うというが、やはりアフタルに似ている。
ラウルは冷静にティルダードを受け止めたが、やはり感情は隠せないようだ。
目許が微笑んでいる。
「殿下。どうなさったのですか。お勉強の時間では?」
「もう終わったよ」
ティルダードは、小首をかしげた。
「珍しいね、ラウルが誰かと話し込んでるなんて。仲良しさん?」
「違います!」
「ぜってー、違う!」
二人の声が重なった。
ティルダードは一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、すぐに楽しそうに笑いだした。
「いいね。ラウルがそんな大声出すの、初めて聞いたよ。闘技場でお目にかかったことがありますよね。アフタル姉さまの守護精霊でしょ? ぼく、ティルダードです」
「シャールーズだ。よろしくな。で、普段のアイスブルーはどんなだよ。まぁ、大体の想像はつくけどな」
にやにやしながら、シャールーズは王子に尋ねた。
どうせ嫌味ばかり言って、つんつんしていて、自分では「厳しさこそが、殿下を成長させるための優しさです」とか、ほざいてんだろ。
「たぶん、それ正解」
アイスブルーにしがみついたまま、ティルダードがシャールーズを見上げてきた。
「えっ。俺、口に出してたか?」
「ううん。でも皮肉っぽく笑ってたから。ラウルの悪口を考えてたんでしょ。なんとなく分かる」
「じゃあ、訊くが。どんな悪口だ?」
「えーとね。『甘やかしていては人は成長しません』って言って、すーっごく厳しいとか。ねちねちとしつこく嫌味を言うとか」
「ほぅ、興味深いな。お前、勘がいいぞ。大体合っている。他にどんな感じなんだ?」
シャールーズの口車に乗せられて、ティルダードはぺらぺらと喋りだした。
「あとね、おやつを制限するの。ひどいんだよ、ぼくは蜂蜜がたっぷりとかかった揚げ菓子が好きなのに。ちょっとしか、かけさせてくれないの」
「なるほど。俺は甘いものがうまいとか、分からんが。好きなものを止められるのは、つらいよな」
「うんうん。それにね、寝る時もご本を読んでくれないの。『ご自分で読めるでしょう』っていって、絵本を渡すんだよ。ふつう、読んでくれるよね」
「確かに、寝物語は大事だよな」
突然、シャールーズはアイスブルーに肩を掴まれた。細身のくせに、どれだけ握力があるんだよっていうくらいの力だ。
肩が鈍く痛む。
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