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二章
43、只今、混乱中【2】※文子視点
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琥太郎さんが、なおも唇や頬にくちづけてくる。
本当にかすめるほどに軽く。
でも、キスを続けられていると、昨夜のことが思い出されて。
わたし、本当に琥太郎さんに抱かれて。喉が少し痛いのは、すごく喘がされたから。
そういえば翠子さんも時々、学校で声がかすれている時があったけれど。
あれって、高瀬先生に執拗に抱かれていたんだわ。
そうだったの? そうだったのね。
自分が経験して、初めて知るなんて。
どうしよう。翠子さんに会ったら、昨夜のことなんてすぐにばれるわ。
わたしはあまりの羞恥にうつむいた。
なのに、そうしたら、なんてことなの。琥太郎さんの胸に顔を埋める格好になってしまって。しかも琥太郎さんも何も着てないのよ。
「うぁ……あっ!」
「こらこら。続きは夜やで。さすがに朝からはきついやろ」
違うの。そうじゃなくて。恥ずかしくて顔を隠そうとしただけなんです。なのに、あなたの滑らかな肌が……引き締まった胸が顔に触れたから。
でも、あわあわと焦るばかりのわたしの口からは、まともな言葉も出てこなくて。
しかも、さらっと夜に続きをすると言われて。
わたしの脳内では、何から処理していいか分からなくなってしまったの。
「文子さんは、意外と情熱的なんかな?」
「違うの、違うんです」
「違う?」
こくこくと何度もうなずくと、なぜか琥太郎さんは少し眉毛を下げたの。
え、どうして?
「そうか……やっぱり無理強いしてしもたんやな」
その声は明らかに落胆したように聞こえて。何気ない一言が、琥太郎さんを傷つけてしまったと気づいた。
「えっと、違うのが違います」
日本語おかしいって。何を言ってるの、わたしはーっ!
でも、彼が寂しそうな顔をするのに耐えられないから。
恐る恐る指を伸ばして、琥太郎さんの下げられた眉にそっと触れたの。
「文子さん?」
わたしの指に、琥太郎さんは手を添えた。そっと優しく、まるでいたわるように。
だから、離そうと思った指が離せなくて。
そのまま、彼に捕まったような格好になってしまい、わたしは耐え切れずにうつむいたの。
「何が、違うのが違うんか教えてくれるか?」
「……はい、その。琥太郎さんに対して情熱がないとか、そういうのではなくて。その、やっぱり恥ずかしいんです。は、初めて……でしたから」
「初めてはやっぱり恥ずかしいものなん?」
琥太郎さんが、きょとんとした表情で尋ねてきます。
聡くて、勘のいい彼なのに。そこは、男性と女性で感性がまったく違うのでしょうか。
でも、そうですよ。男性はどうだか分かりませんけど。女性は恥ずかしいものなんです。
わたしは、こくりとうなずいた。
そうすると、琥太郎さんはわたしの頭を撫でてくれたの。
もちろん、手は掴まれたままで。
「大丈夫やで。次からはもう『初めて』とは違うから」
「へ?」
「だから、次は『二回め』やろ。もっと大胆になってもええで。というか大胆にさせよかな」
わたしは、唖然として言葉を失った。
な、なっ、なんで? だって琥太郎さんが落ち込んだから、慰めようとしたのに。どうしてそっちに話が進むの?
やっぱり策士よ、この人。
わたし、もしかして誘導されちゃった……よね。
琥太郎さんはわたしの指先にくちづけては「文子さんは可愛いなぁ」なんて囁いている。
もうっ、怒るのが馬鹿らしくなってしまう。
しかも微笑んでしまう自分が憎らしい。
この人、存分に愛されてのびのびと育った人よ。わたしには分かるんだから。
本当にかすめるほどに軽く。
でも、キスを続けられていると、昨夜のことが思い出されて。
わたし、本当に琥太郎さんに抱かれて。喉が少し痛いのは、すごく喘がされたから。
そういえば翠子さんも時々、学校で声がかすれている時があったけれど。
あれって、高瀬先生に執拗に抱かれていたんだわ。
そうだったの? そうだったのね。
自分が経験して、初めて知るなんて。
どうしよう。翠子さんに会ったら、昨夜のことなんてすぐにばれるわ。
わたしはあまりの羞恥にうつむいた。
なのに、そうしたら、なんてことなの。琥太郎さんの胸に顔を埋める格好になってしまって。しかも琥太郎さんも何も着てないのよ。
「うぁ……あっ!」
「こらこら。続きは夜やで。さすがに朝からはきついやろ」
違うの。そうじゃなくて。恥ずかしくて顔を隠そうとしただけなんです。なのに、あなたの滑らかな肌が……引き締まった胸が顔に触れたから。
でも、あわあわと焦るばかりのわたしの口からは、まともな言葉も出てこなくて。
しかも、さらっと夜に続きをすると言われて。
わたしの脳内では、何から処理していいか分からなくなってしまったの。
「文子さんは、意外と情熱的なんかな?」
「違うの、違うんです」
「違う?」
こくこくと何度もうなずくと、なぜか琥太郎さんは少し眉毛を下げたの。
え、どうして?
「そうか……やっぱり無理強いしてしもたんやな」
その声は明らかに落胆したように聞こえて。何気ない一言が、琥太郎さんを傷つけてしまったと気づいた。
「えっと、違うのが違います」
日本語おかしいって。何を言ってるの、わたしはーっ!
でも、彼が寂しそうな顔をするのに耐えられないから。
恐る恐る指を伸ばして、琥太郎さんの下げられた眉にそっと触れたの。
「文子さん?」
わたしの指に、琥太郎さんは手を添えた。そっと優しく、まるでいたわるように。
だから、離そうと思った指が離せなくて。
そのまま、彼に捕まったような格好になってしまい、わたしは耐え切れずにうつむいたの。
「何が、違うのが違うんか教えてくれるか?」
「……はい、その。琥太郎さんに対して情熱がないとか、そういうのではなくて。その、やっぱり恥ずかしいんです。は、初めて……でしたから」
「初めてはやっぱり恥ずかしいものなん?」
琥太郎さんが、きょとんとした表情で尋ねてきます。
聡くて、勘のいい彼なのに。そこは、男性と女性で感性がまったく違うのでしょうか。
でも、そうですよ。男性はどうだか分かりませんけど。女性は恥ずかしいものなんです。
わたしは、こくりとうなずいた。
そうすると、琥太郎さんはわたしの頭を撫でてくれたの。
もちろん、手は掴まれたままで。
「大丈夫やで。次からはもう『初めて』とは違うから」
「へ?」
「だから、次は『二回め』やろ。もっと大胆になってもええで。というか大胆にさせよかな」
わたしは、唖然として言葉を失った。
な、なっ、なんで? だって琥太郎さんが落ち込んだから、慰めようとしたのに。どうしてそっちに話が進むの?
やっぱり策士よ、この人。
わたし、もしかして誘導されちゃった……よね。
琥太郎さんはわたしの指先にくちづけては「文子さんは可愛いなぁ」なんて囁いている。
もうっ、怒るのが馬鹿らしくなってしまう。
しかも微笑んでしまう自分が憎らしい。
この人、存分に愛されてのびのびと育った人よ。わたしには分かるんだから。
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