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二章

24、大好きよ【3】

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 静かな室内に、わたくしの喘ぐ声と静生の荒い息遣いが重なります。

 早く欲しいのに、静生はそれを避けるかのように、ずっとわたくしに愛撫を与えます。

「あ……やっ、また、きちゃう」
「何度でも達してください。俺に美しいあなたを存分に見せてください」
「わたくしばかり、そんなの」

 苦しく訴えると、静生は静謐な笑みを浮かべます。
 大人だから余裕があるの? わたくしばかり翻弄されて、もう子どもではないのに。子どもではないから、抱いてくれているのに。

 けれど、節くれだった彼の指が、わたくしの花弁を開いて。その奥で期待に震えているであろう芽を撫でたり、抓んだりして。
 そして空いた指は、中に挿し入れられて。

「んん……っ、あぁ……ん」
「いい声ですよ。冨貴子さん」
「言わないで」

 そうお願いしても、静生の指はわたくしの敏感な所を探し当ててそこばかりを責めてきます。

「だめ、やめて……苦しいの。あぁ、ふぁ……ぁ」
「やめませんよ。冨貴子さんが気を失ったら、また快楽で呼び戻してあげますから」

 もうどちらが主でしもべなのか、分かりません。
 わたくしは静生に翻弄されて、彼の望むままにしどけなく足を開き、背を弓なりに反らせてまた達しました。

「冨貴子……」

 切ない声で名を呼ばれ、のしかかってくる彼を見上げると、苦しそうに眉根を寄せています。

「静生、あなたが欲しいの」

 まだ快楽の波に呑まれたまま、わたくしは静生の逞しい肩に手を掛けました。
 肌と肌を重ねると、包帯のざらりとした感触が胸に触れました。

 辺りに漂う消毒薬のにおい。それと寝台の横の側卓に置かれた薬湯のにおい。
 どれも好きではないはずなのに。静生が生きている証だと思うと、それらの匂いも愛おしくてなりません。

◇◇◇

 ああ、こんな日が来るとは思わなかった。
 俺は、たおやかなお嬢さんの体を抱きしめながら、その柔らかな胸に頬を寄せた。

 あんなに小さくて軽くて、いつだって抱っこをせがんでいたお嬢さんが。今は俺を欲しいと言ってくれる。抱っこではなく、本当に抱いてほしいと望んでいる。

「無理はしないでね。傷が開いたら大変だもの」

 まったく、あれほど乱れておきながら。こちらの心配をする余裕があるなど。

「困りましたね。冨貴子さんを我慢することなんて、もうできませんよ」

 あまりにも長年、気持ちを抑えすぎて。簡単にあなたの中に入るのが、勿体なくて。
 その所為で決定的な愉悦を焦らしていたのだと知られたら。あなたは怒るだろうか。

 俺はお嬢さんの細くて白い腰を掴み、彼女の中に入っていった。

「う……っ」

 充分に濡れているはずなのに其処は狭く。お嬢さんは痛みに顔をしかめている。

「力を抜いてください。ちゃんと呼吸をして」
「え、ええ。ごめんなさい」
「なんで謝るんですか?」

「だって……」とお嬢さんの声は、消え入りそうに小さい。

「わたくしが慣れていないから。静生も苦しそうだわ」

 まったく、困った人だ。俺は心の中でだけ苦笑した。俺のお嬢さんが、誰かとこんなことをして慣れていたら、俺は心が張り裂けそうですよ。
 あなたの身も心も、俺だけのものです。今までもこれからも、ずっと。
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