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二章

23、大好きよ【2】

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 どれくらい時間が経ったのだろう。
 ようやくお嬢さんはすべての釦を外して、肩をはだけて袖から腕を抜いた。
 すとん、と柔らかなワンピースが床に落ちていく。それは小さな布の海となり、波打っているように見えた。

「静生……あの、だ、抱いて、くだ……さい」

 よく言えました、と俺は微笑んだ。

「おいで、冨貴子」

 両腕を広げると、一糸まとわぬ姿の冨貴子お嬢さんが飛び込んでくる。
 彼女の柔らかな胸が俺の硬い胸に触れ、一刻も早く寝間着を脱ぎ捨ててしまいたくなる。

 もどかしい気持ちで腰紐を解き、素肌に彼女を感じる。
 ああ、なんて滑らかで柔くて。まるで天鵞絨びろうどを撫でているかのようだ。

 唇を重ねると、恥じらいながらも冨貴子さんは応じてきた。
 幼い時から、何度も抱き上げて。山では最後と思ってあなたを愛したというのに。
 本当に、大人になったあなたを抱けるやなんて。

 貪るようにくちづけを交わすと、冨貴子さんは必死に応じてくる。舌を絡め、彼女に口を閉じる暇さえも与えない。

「あ、しず……お」

 ぼうっと頬を上気させて、冨貴子さんの唇がてらりと濡れる。

「悪い子ぉですね。こんなに淫らに育ってしまって」
「言わないで。静生以外とは、こんなことしない、もの」
「ええ、させませんよ。お嬢さんのすべては俺のものです」
「……冨貴子よ」

 しっとりと濡れた黒い瞳が、間近で俺を見つめる。
 ほんまに困ります。そんなに誘われたら、加減ができませんから。

◇◇◇

 静生の手が、わたくしの肌を隅々まで撫でます。
 大きくて乾燥していて、指は節くれだっていて。強く力を入れられたら、痛いのに。
 胸を掴まれて、わたくしは呻き声すら上げたのに。

 それでも、もっと触れてほしくて。静生に体を寄せたの。

 好きよ、静生。
 もっと触れて。肌を重ねたいの。

 不謹慎で淫らで、こんなことを考えているなんて、女學校の先生に知られたら、きっと卒倒なさるわね。
 
 でも、わたくしはそうは思わない。
 静生と愛が交わせるんですもの。これがふしだらだなんて、考えたくないの。

 くちづけが口から顎へ、そして首筋へと降りていきます。
 わたくしの腰を支えていた大きな手は、腿を撫で、そして閉じていた脚を開かされます。

「ん、やっ……恥ずかしいの」
「そうですか? 俺はお嬢さんのすべてが欲しいから。恥ずかしい部分も全部見せて、触れさせてもらいますよ」

 意地悪を言われて、ああ、彼はもう使用人ではないのだわと納得しました。
 
「ん……んんっ、んっ」
「声を上げてもええですよ。この家は広いですし、扉はきちんと閉じてありますから」

「でも……」と恥じらうと、静生はわたくしの耳元で囁きました。

「俺にだけ聞かせてくれますよね」
「は、はい」

 小さく頷き、わたくしは彼の背に手を回しました。
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