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二章

13、俺だけの【1】

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 指を舐めるように言われたの。
 わたくしはすぐには理解できなかったけれど、でも静生の節くれだった指が口の中に入れられて。

 その指をどうすればいいか分からずにいたら、舌を押さえられたわ。
 そして口の中を彼の指が蹂躙していくの。
 
「あ、やぁ……ぁん、ふ……ぁ」

 わたくしは唇を閉じることもできなくて。でも、無防備な部分を、彼が時に乱暴に時に優しく触れるから。静生の右手に両手を添えて、彼の指を受け入れました。

「ええ表情ですよ」
「言わ……ないで、ぇ」
「ほんま、困りますね。ちゃんと寝間着を着とうのに、こんな淫靡な姿を他の男が見るんやと思たら、はらわたが煮えくり返るようです」

 怒りを孕んだ静生の声。
 どうしてそんなことを言うの? わたくしにはもう未来はないのに。あなたにしか、こんな顔は見せないのに。

 ただ口内を触れられているだけなのに。どうしてか下腹部が甘く痺れて、わたくしは足をもぞもぞと動かしました。
 静生の膝の上に座らさせているから、すぐにその動きは彼に伝わってしまいます。

「感じてるんですか?」
「分からな……いの。でも、気持ち、いい」
「素直なお嬢さんですね」

 右手は口の中を弄ったまま、静生は左手をわたくしの胸に触れさせました。もちろん寝間着の上からです。

「や……ぁ」
「硬なってますよ。布の上からでも分かります」

 指先で軽く胸の先端に触れられて、わたくしはそれだけで体が痺れました。
 なに、これ。

「こんな感覚、初めてでしょう?」

 ええ、苦しいの。甘くて気持ちが良くて、なのに熱が体の中でわだかまって。まるで燃え切らない火が燻っているみたい。

「お嬢さん……」
「な、に?」

 わたくしの耳元で、静生が低く囁きます。その声音が、情欲を滲ませているから……。

「冥途の土産に、お嬢さんを可愛がらせてください」
「え? きゃあ」

 少しも寝間着を乱されてはいないの。でも、胸の先端を、ちょうどその部分を静生が指で抓んだから。
 痛いのに……もどかしい快感の波に襲われて。
 わたくしは彼の寝間着の胸元にしがみつきました。

「や、あぁ。抓らないで」
「痛いですか? けど、それだけやなさそうですよ」
「意地悪を……言わ、ないで」
「意地悪しますよ。今夜は俺だけのお嬢さんですから」

◇◇◇

 あまり酷いことをすると、拒絶されるかもしれへんと思たのに。
 お嬢さんは「静生だけの、わたくし?」などと愛らしく尋ねてくるから……。
 俺は、自制をしとったのに。どうしてもお嬢さんが達するところを、俺の手でいかされるところを目に焼きつけたくなった。

「大丈夫。怖いことはありません」
「本当に?」
「ええ。お嬢さんも、俺に愛されたいでしょ? 勿論、無体なことはしません。ただ感じてください」

 薄っぺらい布団の上にお嬢さんを横たえて、俺はすでに尖った彼女の胸の先端を、布地の上から指先で撫で続ける。
 
「変な……感じ。もどかしいの」
「ええ、そうですね。けど、すぐに終わらすんは勿体ないんですよ」
「どう、して?」

 俺は上体を屈ませて、お嬢さんの耳朶に軽く歯を立てた。

「そら、お嬢さんが感じて乱れて、俺の手で愛らしく狂わされるところをじっくり眺めたいやないですか」
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