【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那

文字の大きさ
上 下
8 / 75
第1章

5・騎士様と神官様と神様と私

しおりを挟む

 私が『神子様』であることになんの疑いももっていないらしい男性二人は、きらきらとした眼差しをこちらに向けてくる。

 ここで私が神子じゃないと否定したところで何になるだろう。
 下手をしたらある種当然の扱いである不審者とされて、身の危険が増すだけじゃないか?
 
 そうなったら、ブロンドの男性が青年に、私を切り殺せと命じるかもしれない。だってあの青年、剣を身につけているし……。
 ブロンドの男性は穏やかそうに見えるが、穏やかそうな見た目だからといって優しい人だとは限らないだろう。
 さすがに私も自分より体格のいい男性二人から逃げ切れる自信はない。
 それでなくとも、よく分からない自称神様だけでもう既に手一杯だ。これ以上の厄介事は極力避けたい。

 となると……。
 笑って誤魔化すしかない……。

「あ、はははは……」

 もはや乾いた笑いしか出ないし、顔がひきつっている自覚はあるがこれが精一杯だ。勘弁して。

「面白い神子様ですね」

 ブロンドの男性は私の様子を見てにこにこと微笑んだ。
 あ、馬鹿にしてる? それとも天然か?
 まぁ、どちらでも構わない。大丈夫だ。私の態度がおかしなことなど、私が一番よく分かっている。

「はい、少しおかしなところがまた可愛らしいです」

 青年は目を細めてうんうんと頷く。
 あ、今おかしいって言った!
 自分で思うのは平気でも、精悍せいかんな顔つきのイケメンにおかしいと言われるのはさすがに傷つくわ!

「あの……、ところでここは……?」

 自分よりも年上の男性から微笑ましそうに見られることがいたたまれなくて、私は話を変えるべく二人に尋ねた。
 というか、本当にここどこ?
 当然ながら、私にはこんな石造りの神殿に心当たりなんてない。
 そして、この二人は一体誰なんだろう。

「ああ! 申し訳ありません!」

 途端にブロンドの男性が申し訳なさそうに眉尻を下げた。
 キリリと真面目な顔をしている青年よりも、こちらの男性の方が幾分とっつきやすそうだ。

「ここは、ルチアナ聖王国。そして今いるこの場所は、この世界の創世神であるルーチェ様を祀っている神殿です」

 どうやら本当にここは神殿だったらしい。
 そして神殿に石像があるということはあの自称神様とやら、本当に神様だったのか……。
 ていうか、あんな神様を祀っているこの国、大丈夫か……?

『失礼な!』

 思わず不安を抱いた私に、即座に反発してくる自称ではなくなった神様。
 あー、無視ね、無視無視。

「私はニコラス・エッカート。この神殿で神官をしております」

 ニコラスさんは人当たりの良さそうな笑みを浮かべながら、私に向けて軽く会釈をしてくれた。そして、隣の青年に少し視線を向ける。

「こちらは神殿騎士の一人、ジェラルド」

 ニコラスさんに紹介された青年が、一歩こちらに進み出てきた。
 それっぽいなとは思っていたが、この青年、本当に騎士だったのか。

「初めまして、神子様。俺は、ジェラルド・フォン・バッケンバッハと申します」

 おおう……すごい名前だな……。
 なんというか、名前がとてもきらびやかだ。
 単なるイメージだが。

「あ、私は、立花葵です……」

 日本人として普通の名前のはずだが、こんな派手(?)な名前の人の後に名乗るとしょぼく思えてきた……。
 目の前のジェラルドさんは、噛み締めるように私の名前を何度も呟く。

「タチバナ、アオイ……。タチバナアオイ様……。さすが異世界から来られた方ですね。響きが独特だ」

 うん、でしょうね。
 私だって、ニコラスさんにしてもジェラルドさんにしても、名前の響きが外人さんにしか思えないから。なぜか、バリバリ日本語で会話が通じているのが不思議ではあるけど。
 
「では、タチバナアオイ様とお呼びいたしますね」

 いや、フルネームで様付け⁉︎
 恥ずかしい!

「あ、葵が下の名前なんで、できればそっちだけでお願いします。ジェラルドさん……」

 なんかもう、非現実すぎてどうでも良くなってきた。
 もうこれ、夢でしょ?
 むしろ夢じゃないと受け入れきれない。

 半ばやけ気味に訂正すると、ジェラルドさんはなるほどと頷いた。

「わかりました。アオイ様ですね」

 やっぱやめて、恥ずかしい。
 こんなイケメンに様付けされる経験なんて、当然ながら生まれて初めてでどうにもこうにもいたたまれない。

「神殿騎士の名にかけて、アオイ様の御身は俺が必ずお守りいたします」

 ジェラルドさんはスッとその場に跪く。そして私の手をすくい上げると……私の手の甲にキスを落とした。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

【完結】緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長

五城楼スケ(デコスケ)
ファンタジー
〜花が良く育つので「緑の手」だと思っていたら「癒しの手」だったようです〜 王都の隅っこで両親から受け継いだ花屋「ブルーメ」を経営するアンネリーエ。 彼女のお店で売っている花は、色鮮やかで花持ちが良いと評判だ。 自分で花を育て、売っているアンネリーエの店に、ある日イケメンの騎士が現れる。 アンネリーエの作る花束を気に入ったイケメン騎士は、一週間に一度花束を買いに来るようになって──? どうやらアンネリーエが育てている花は、普通の花と違うらしい。 イケメン騎士が買っていく花束を切っ掛けに、アンネリーエの隠されていた力が明かされる、異世界お仕事ファンタジーです。 *HOTランキング1位、エールに感想有難うございました!とても励みになっています! ※花の名前にルビで解説入れてみました。読みやすくなっていたら良いのですが。(;´Д`)  話の最後にも花の名前の解説を入れてますが、間違ってる可能性大です。  雰囲気を味わってもらえたら嬉しいです。 ※完結しました。全41話。  お読みいただいた皆様に感謝です!(人´∀`).☆.。.:*・゚

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

【完結】氷の王太子に嫁いだら、毎晩甘やかされすぎて困っています

21時完結
恋愛
王国一の冷血漢と噂される王太子レオナード殿下。 誰に対しても冷たく、感情を見せることがないことから、「氷の王太子」と恐れられている。 そんな彼との政略結婚が決まったのは、公爵家の地味な令嬢リリア。 (殿下は私に興味なんてないはず……) 結婚前はそう思っていたのに―― 「リリア、寒くないか?」 「……え?」 「もっとこっちに寄れ。俺の腕の中なら、温かいだろう?」 冷酷なはずの殿下が、新婚初夜から優しすぎる!? それどころか、毎晩のように甘やかされ、気づけば離してもらえなくなっていた。 「お前の笑顔は俺だけのものだ。他の男に見せるな」 「こんなに可愛いお前を、冷たく扱うわけがないだろう?」 (ちょ、待ってください! 殿下、本当に氷のように冷たい人なんですよね!?) 結婚してみたら、噂とは真逆で、私にだけ甘すぎる旦那様だったようです――!?

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

捕まり癒やされし異世界

波間柏
恋愛
飲んでものまれるな。 飲まれて異世界に飛んでしまい手遅れだが、そう固く決意した大学生 野々村 未来の異世界生活。 異世界から来た者は何か能力をもつはずが、彼女は何もなかった。ただ、とある声を聞き閃いた。 「これ、売れる」と。 自分の中では砂糖多めなお話です。

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

処理中です...