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第五章 田中天狼のシリアスな日常・怪奇?編
生徒会のシリアスな呼び出し
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波乱の体育祭から四日後――。
放課後、俺は生徒会室の扉の前に立っていた。
「あ、シリウスくん! 早いね~」
廊下の向こうから、春夏秋冬が小走りでやってきた。
「何だろうね……? 急に」
「うん……」
ついさっき、俺たち奇名部に、『奇名部の部員は、至急生徒会室に集合して下さい』と、校内放送で呼び出しがかかった。
用件は……分からない。
「田中くん、アクアちゃん。もう来てたの」
次いでやってきたのは、撫子先輩と――
「チーっす! 田中サン、春夏秋冬サン、お疲れ様ッス!」
「……矢的先輩、いつまでそのノリ続けるんですか……?」
俺は、直立不動で最敬礼する矢的先輩に、ウンザリして言う。
――矢的先輩は、体育祭の後から、ずっとこの調子だ。……よっぽど撫子先輩の『素晴らしい指導』が身に染みたんだろうなぁ。
「アンディ先輩、もういいよぉ……何か、キモチ悪いから……」
春夏秋冬も、若干ヒキ気味。
「もう、体育祭の事は何とも思ってないですから……元に――」
「いえ! さんざん皆様にご迷惑をお掛けした愚鈍な私めなど、未来永劫・七生生まれ変わっても、クソ袋、ブタ野郎と蔑まれて当然であります! どうぞ、お気になさらず――!」
「いや、気になるから……」
はぁ~、と撫子先輩がため息を吐く。
「……もういいわよ、矢的くん。だんだん、私達の方が恥ずかしくなってきたから……」
「ハッ! 左様でありますか、ナデシコ様……では」
矢的先輩は、ゴホンと咳払いをすると、大きく伸びをして叫んだ。
「あ――――あっ! 窮屈だった――! せいせいする~ぅぐっ!」
「……だから、そういう、すぐ調子に乗るところを改めなさいって言ったでしょ」
「…………い、イエス……ユア・ハイネス……」
無防備なボディに、撫子先輩からの鋭い正拳を食らい、のたうち回りながら返事する矢的先輩。
……本当に学習しない人だな……。
「というか……今度は何をやらかしたんですか、矢的先輩」
「は――? い、いや、オレじゃないぞ! 多分。いやいや! 心当たり無いもん、マジで! ……多分」
「何で、イチイチ語尾に『多分』が付くんですか……」
「実際、他に呼び出される理由が思いつかないもんねぇ」
春夏秋冬が苦笑い半分憂慮半分の顔で、小首を傾げる。
はあ……創部早々、廃部になりそうだな……。
「まあ、ここで色々考えても仕方ないわ。サッサとお話を聞いちゃいましょう」
「そうですね……」
俺たちは、覚悟を決めて、生徒会室のドアをノックする。
「は――――い」
と、部屋の中から、朗らかな返事が聞こえ、引き戸がガラガラ音を立てて開いた。
「あ! 奇名部の皆さん! お待ちしてました」
俺たちを出迎えたのは、長い髪をおさげに結った、黒縁メガネの女子生徒だった。
彼女は――生徒会書記の、黒木さんだ。そういえば、俺と同じ1年B組だったな……。
「どうぞ、お入り下さい。――会長! 奇名部の皆さんがいらっしゃいました!」
「ありがとう、瑠奈くん」
黒木さんの声を受けて、微笑みを浮かべながら、行方会長が現れた。にしても、相変わらずカリスマオーラの塊だな、この人……。
「ああ、すまないな、わざわざ呼びつけてしまって。――まあ、こちらにかけてくれ」
と、会長はにこやかに微笑みながら、俺たちを応接用のソファに誘う。
俺たちは、少し警戒しながら、おずおずとソファに腰掛ける。
と、
「……とりあえず……スンマッセン!」
矢的先輩がいきなり頭を下げた。
会長は、キョトンとしている。
「何の話だい、矢的?」
「今回、呼び出された事に対してです! ホントーに申し訳ありませんでしたっ!」
頭を、応接用テーブルに打ちつけそうな勢いで、深く深く下げる矢的先輩。
そんな彼を前に、行方彩女は怪訝な表情で首を傾げる。
「いやあ……今回、君たちを呼び出したのは、そういう事では無いんだが……」
「え――――そうなんスか?」
「…………それとも」
行方会長は、ギラリと目を光らせる。
「私に謝罪しなければならないような事が、あるという事かい? ……矢的」
「い――――イヤイヤイヤイヤ! そ……そんな事ある訳ないじゃないっすか! アハハハハハハ――!」
会長に一睨みされて、冷や汗を流しながら目を泳がせる矢的先輩。
……こりゃ、何かやらかしてんな、この人。
と、黒木さんと武杉副会長が、お茶とお菓子を盆に載せて現れた。彼女達が、テーブルの上にお茶とお茶菓子を並べる間、会話は中断する。
一段落つき、行方会長が口を開く。
「……まあ――それより、体育祭ではご苦労だったな」
「あ――、はい」
「……というより、謝罪するのは、むしろ私の方だったな……すまなかったな、急な競技変更を強いてしまって」
と、行方会長は、頭を下げた。
「あ――と、とんでもないです!」
「あたし達、もう気にしてないから――!」
慌てて、狼狽える俺と春夏秋冬。
その一方……、
「もー、全くっすよ~! 大変だったんですから~! マジ勘弁してほしぃ――ッグハアッ!」
「……同じ事を何回も言わせないでもらえるかしら、矢的くん」
「……い、いえす・ゆあ・はいねす……」
裏拳を顔面に食らって、鼻を押さえながら涙を浮かべる矢的先輩……自業自得。
一方、行方会長は、手を軽く左右に振って言葉を続ける。
「いやいや、本当に申し訳なかったと思っている。私が、もっと緊迫したスリリングな勝負を見たい、というのも確かにあったのだが、それ以上に、種目変更を求めるご来賓の方からの声が強くてな……校長先生からも拝み倒されて、多少強引に話を進めざるを得なかったのだよ」
「ご来賓の方って……?」
「ま、殆どPTA会長一人が騒いだだけなのだがね……。十亀さんという……ね」
「ああ――――」
完全に繋がった。そういう事だったのか……。
「……お話は、それだけですか、彩女さん?」
お茶を一口飲んでから、撫子先輩が言った。
「それだけでしたら、了解致しましたので、これで失礼させて頂きます」
「いやいや、違う。コレはあくまで、話の枕というモノで」
行方会長は、苦笑して言う。
「本題は、これからだ」
放課後、俺は生徒会室の扉の前に立っていた。
「あ、シリウスくん! 早いね~」
廊下の向こうから、春夏秋冬が小走りでやってきた。
「何だろうね……? 急に」
「うん……」
ついさっき、俺たち奇名部に、『奇名部の部員は、至急生徒会室に集合して下さい』と、校内放送で呼び出しがかかった。
用件は……分からない。
「田中くん、アクアちゃん。もう来てたの」
次いでやってきたのは、撫子先輩と――
「チーっす! 田中サン、春夏秋冬サン、お疲れ様ッス!」
「……矢的先輩、いつまでそのノリ続けるんですか……?」
俺は、直立不動で最敬礼する矢的先輩に、ウンザリして言う。
――矢的先輩は、体育祭の後から、ずっとこの調子だ。……よっぽど撫子先輩の『素晴らしい指導』が身に染みたんだろうなぁ。
「アンディ先輩、もういいよぉ……何か、キモチ悪いから……」
春夏秋冬も、若干ヒキ気味。
「もう、体育祭の事は何とも思ってないですから……元に――」
「いえ! さんざん皆様にご迷惑をお掛けした愚鈍な私めなど、未来永劫・七生生まれ変わっても、クソ袋、ブタ野郎と蔑まれて当然であります! どうぞ、お気になさらず――!」
「いや、気になるから……」
はぁ~、と撫子先輩がため息を吐く。
「……もういいわよ、矢的くん。だんだん、私達の方が恥ずかしくなってきたから……」
「ハッ! 左様でありますか、ナデシコ様……では」
矢的先輩は、ゴホンと咳払いをすると、大きく伸びをして叫んだ。
「あ――――あっ! 窮屈だった――! せいせいする~ぅぐっ!」
「……だから、そういう、すぐ調子に乗るところを改めなさいって言ったでしょ」
「…………い、イエス……ユア・ハイネス……」
無防備なボディに、撫子先輩からの鋭い正拳を食らい、のたうち回りながら返事する矢的先輩。
……本当に学習しない人だな……。
「というか……今度は何をやらかしたんですか、矢的先輩」
「は――? い、いや、オレじゃないぞ! 多分。いやいや! 心当たり無いもん、マジで! ……多分」
「何で、イチイチ語尾に『多分』が付くんですか……」
「実際、他に呼び出される理由が思いつかないもんねぇ」
春夏秋冬が苦笑い半分憂慮半分の顔で、小首を傾げる。
はあ……創部早々、廃部になりそうだな……。
「まあ、ここで色々考えても仕方ないわ。サッサとお話を聞いちゃいましょう」
「そうですね……」
俺たちは、覚悟を決めて、生徒会室のドアをノックする。
「は――――い」
と、部屋の中から、朗らかな返事が聞こえ、引き戸がガラガラ音を立てて開いた。
「あ! 奇名部の皆さん! お待ちしてました」
俺たちを出迎えたのは、長い髪をおさげに結った、黒縁メガネの女子生徒だった。
彼女は――生徒会書記の、黒木さんだ。そういえば、俺と同じ1年B組だったな……。
「どうぞ、お入り下さい。――会長! 奇名部の皆さんがいらっしゃいました!」
「ありがとう、瑠奈くん」
黒木さんの声を受けて、微笑みを浮かべながら、行方会長が現れた。にしても、相変わらずカリスマオーラの塊だな、この人……。
「ああ、すまないな、わざわざ呼びつけてしまって。――まあ、こちらにかけてくれ」
と、会長はにこやかに微笑みながら、俺たちを応接用のソファに誘う。
俺たちは、少し警戒しながら、おずおずとソファに腰掛ける。
と、
「……とりあえず……スンマッセン!」
矢的先輩がいきなり頭を下げた。
会長は、キョトンとしている。
「何の話だい、矢的?」
「今回、呼び出された事に対してです! ホントーに申し訳ありませんでしたっ!」
頭を、応接用テーブルに打ちつけそうな勢いで、深く深く下げる矢的先輩。
そんな彼を前に、行方彩女は怪訝な表情で首を傾げる。
「いやあ……今回、君たちを呼び出したのは、そういう事では無いんだが……」
「え――――そうなんスか?」
「…………それとも」
行方会長は、ギラリと目を光らせる。
「私に謝罪しなければならないような事が、あるという事かい? ……矢的」
「い――――イヤイヤイヤイヤ! そ……そんな事ある訳ないじゃないっすか! アハハハハハハ――!」
会長に一睨みされて、冷や汗を流しながら目を泳がせる矢的先輩。
……こりゃ、何かやらかしてんな、この人。
と、黒木さんと武杉副会長が、お茶とお菓子を盆に載せて現れた。彼女達が、テーブルの上にお茶とお茶菓子を並べる間、会話は中断する。
一段落つき、行方会長が口を開く。
「……まあ――それより、体育祭ではご苦労だったな」
「あ――、はい」
「……というより、謝罪するのは、むしろ私の方だったな……すまなかったな、急な競技変更を強いてしまって」
と、行方会長は、頭を下げた。
「あ――と、とんでもないです!」
「あたし達、もう気にしてないから――!」
慌てて、狼狽える俺と春夏秋冬。
その一方……、
「もー、全くっすよ~! 大変だったんですから~! マジ勘弁してほしぃ――ッグハアッ!」
「……同じ事を何回も言わせないでもらえるかしら、矢的くん」
「……い、いえす・ゆあ・はいねす……」
裏拳を顔面に食らって、鼻を押さえながら涙を浮かべる矢的先輩……自業自得。
一方、行方会長は、手を軽く左右に振って言葉を続ける。
「いやいや、本当に申し訳なかったと思っている。私が、もっと緊迫したスリリングな勝負を見たい、というのも確かにあったのだが、それ以上に、種目変更を求めるご来賓の方からの声が強くてな……校長先生からも拝み倒されて、多少強引に話を進めざるを得なかったのだよ」
「ご来賓の方って……?」
「ま、殆どPTA会長一人が騒いだだけなのだがね……。十亀さんという……ね」
「ああ――――」
完全に繋がった。そういう事だったのか……。
「……お話は、それだけですか、彩女さん?」
お茶を一口飲んでから、撫子先輩が言った。
「それだけでしたら、了解致しましたので、これで失礼させて頂きます」
「いやいや、違う。コレはあくまで、話の枕というモノで」
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