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自殺更生島の普通じゃない外見の子達との交流

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「あ、そういえば前更生が終わった子で、希望で獣人とかみたいな外見にしてもらった子達もいるって言ってたよね。僕そういう人達会ってみたいな」
「うん、いーよ。じゃあ早速次のお休みの時案内するから行こうね」


そうして次の休みの日、僕は恋人に案内されそういった子達の住む集落に向かった。

「ほい、着いたよー。あー俺は前何度かここ来た事あるから、お前がこの島に来た経緯とかは大体話してあるから。もちろんあまりに知られたく無い事は言ってないから安心してね」
「あーそうなんだ、分かった。まあもうあんな姿にされて何から何まで世話されてたし、今更知られたくない事もあんまりないけどさ」
「つっても幻肢痛ひどくて漏らした事とかは流石に嫌でしょ。まあここ来た大概の奴大体似たような事あったろうし別に知ってもどうとも思わないだろうけど、一応配慮してそういうのは黙っといたから」

「…あー、確かにアレは相当黒歴史だね。配慮してくれてありがと」
「うん、まあ流石にアレは気の毒だしね。あー、あそこにいる羽生えた子俺結構交流あって、あの子もあの子で昔しんどかったからお前と話合うんじゃないかな」

そう言って恋人が指さした先には、透き通るような黄緑色の髪に妖精のような綺麗な羽が生えた外見は僕達と同じくらいの少年がいた。

「ふーん、そうなんだ。じゃあ話しかけてみようかな。…えっと、こんにちは。僕こっちの奴が話してた、最近更生終わって今は一緒に働いてる恋人」

「ああ、そうなんだ。初めまして、僕は〇〇。まあ今は本名よりも妖精の子とか呼ばれる方が多いけど」
「うん、君の髪の色と羽、本当に妖精みたいで綺麗だね。更生終わった時、希望でそういう風にしてもらったんだ?」

「うん、僕昔から妖精とかそういうファンタジーな物にすごく憧れててさ。…まあ、それがきっかけで未遂する事にもなったんだけどね」
「…そうなんだ。言いたくなかったらいいけど、詳しく教えてもらってもいい?」


「うん、構わないよ。もう終わった事だし。…僕は昔すごい父方のおばあちゃんっ子でね。おばあちゃんもだいぶ遠い所に別居してたけどすごく優しくて、会うたびずっと僕とお菓子作りしたり、絵本を読み聞かせてくれたんだ」
「そうなんだ。優しいおばあちゃんで良かったね」

「うん、本当に優しい、僕にとっては最高のおばあちゃんだった。…でも、両親は嫌ってたんだ。まあ割とありがちな話だけどね」
「…そうなんだ。そういう事もあるだろうけど、どうして?」

「まあ子供には分からないけど、大人にしか見えない物とか気付かない事とか色々あるけどさ。人間性は優しいし嫁いびりとかは絶対しなかったけど、その人かなり浮世離れしているというか、まあずっと昔から素でお花畑気味なところがあってさ。ボケてるとかそういうのとも違うんだけど、そういう所が父親は大きくなって来てからは嫌いで、母もかなり現実主義者だったから同様でさ」
「…あー、なるほどね」

「だから正直両親は会いたくないし僕に悪影響があったら嫌だからってなるべく帰郷もしたくなかったんだけど、僕がおばあちゃんに会いたいってしょっちゅう泣きじゃくるから数か月おきくらいに渋々帰郷してた。そんなだから毎回泊っていけばって言われても適当に理由付けて、毎回日帰りだったりホテル泊まったりしてたんだけどさ」
「まあ、ご両親の気持ちも分からなくはないけど。でも子供のうちならそのくらい別に良いと思うんだけどなあ」

「…そうだね。でもこれはある程度大きくなってから知ったけど、自慢になるけどおばあちゃんの家先祖から受け継いだ財産とか、かなり田舎だけど結構土地とか持っててまあ割とお金持ちで。でもそういう性格の夢見がちな人だからしょっちゅう悪い大人が寄って来て、要するに高額の変な壺とか買わされたり気軽に連帯保証人になっちゃったり、騙されて二束三文で土地売っちゃったりしてさ。そういうので父親や旦那さん、つまり僕のおじいちゃんとかは相当苦労したんだって」
「あー、そういう事か。確かにそれは親御さんも嫌いになっちゃうかもね」

「うん、でもおじいちゃんは割としっかりした人だったから壺とか絵とか返品できる物はどうにか返したり弁護士雇って諸々どうにかして、なんとか借金まみれや無一文とかは回避できたんだけどやっぱり土地や財産かなり無くしちゃって。その心労がたたったのかは分からないけどおじいちゃんは結構若いうちに亡くなっちゃったんだって。それで父親は上京後はもうほぼ会いたくなかったみたい」
「…そっか。お父さんやおじいさんも大変だったね」


「…うん。おばあちゃんも夢見がちなだけで決して悪い人じゃなかったし、僕は大好きだったけど。その話を聞いてからだと父親達の感情も否定できなかったんだ。…で、その事を知る前に決定的な事件があって、それから僕の両親とおばあちゃんは完全に絶縁しちゃったんだ」
「…そうなんだ。何があったの?」

「うん、さっきも言ったけどおばあちゃん良く絵本とか読み聞かせしてくれて、特に僕ピーターパンの話が大好きだったんだけど。それである時僕もこの子達みたいに飛べるかなって無邪気に聞いたら、おばあちゃん〇〇ちゃんはとても良い子だからきっと飛べるし、いつか妖精も会ったり不思議な世界も行けるわよって笑って言ってくれてさ」

「…で、当時の僕は本当純粋で無知な子供だったから。その言葉真に受けて、その夜二階のバルコニーから飛び降りちゃったの」
「…あー」

「まあ幸い両足骨折で済んだんだけど、当然両親は激怒して。打ち所が悪かったらどうするつもりだったんだ、父さんだけじゃ飽き足らず孫まで殺す気かってすごい剣幕で怒鳴って。おばあちゃんも悪意は無かったとはいえ僕に大ケガさせたのと、息子にそれ言われて相当ショックだったみたいで。で、それっきり完全に絶縁して、もう僕がどれだけ頼んでも両親はおばあちゃんに会わせてくれなかったんだ」

「…うん、おばあさんも悪気は無かったのはよく分かるけど、そうなっちゃうのも無理ないよね」

「…そうだね。僕は当然痛かったけどおばあちゃんの事それでも嫌いになれなかったし、僕全然怒ってないからもう許してあげて、またおばあちゃんの所に連れて行ってって何度も親に言ったけど一切聞いてくれなくて。おばあちゃんから何度も謝罪の手紙や電話が来たらしいけど、両親全部読まずに捨てたり、電話はすぐ切ってそれっきり着信拒否してたみたい」
「…そうなんだ。おばあさんも結果的に良くない事しちゃったけど可哀想だね」
「まあ子供ってたまに思いも寄らない事したりするし、親御さんはそれまでの積み重ねとかもあったんだろうね」

「…うん、そうだろうね。で、それからという物両親は現実主義に更に拍車がかかって僕が夢見がちな事言ったりファンタジーな作品読んだり見てたりしてたらすぐ怒って否定して来て。お前は母さんみたいなバカな夢想家になるな、現実を見ろってもう小学生半ばくらいの頃から言われ続けてさ」
「…それもそれで、辛いよね」

「まあ、あまりに見る物や行動制限しまくってもそれはそれで周囲から浮くから、流行りのアニメや映画程度ならなんとか見るの許されたけどさ。でもそういうの見てる時も横からしょっちゅうまさか本気にしてたりしないよなとか言って来て、やっぱり相当息苦しかったんだ」
「うん、それもそれである意味虐待だよね。気の毒に」

「…でも前来た時聞かせてもらったけど、君達みたいに直接性的な事されたりお金巻き上げられたりしてなかっただけ僕はよっぽどましだったよ。…ここに来てから君達みたいなもっと辛い目に遭ってる子達と交流して、僕程度の事で自殺するとか本当甘かったなって、すごく反省した」

「うーん、でもしんどさって人それぞれだし。俺も君と同じ境遇だったらきっと相当辛かったろうしそんなに自分を責めない方がいいよ」
「うん、そうだね。僕も大好きだった人と引き離されて、それまでの価値観否定され続けたらきっと辛かったと思うし仕方ないよ」


「…ありがとう、君達も本当大変だったのに優しいね。で、色々抱えたまま中学生になって、親の言われる通りに勉強頑張ってどうにか高校も志望校受かったけど。やっぱりそんな感じだったからあんまり幸せじゃなかったし、正直親から離れたかったけどあんまり遠くの大学行ったり離れて暮らすのも許してくれないだろうなって未来に希望が持てなくて。でも高校上がってまもなく図書室でファンタジー系の児童文学読んでたらクラスメイトの男子から声かけられてさ。自分もそういうの好きだって言われて、それでその子と友達になったんだ」
「そっか、それは良かったね」

「うん、久々に自分の価値観を肯定してくれる人と出会えて嬉しかった。それからは高校っていう居場所が出来てだいぶ楽になったんだけど、それから半年くらいしたある日風邪引いて寝込んじゃって。数日でどうにか良くなって来たから、午後からだけど学校に行く事にしたんだ。…そうしたらね」

「僕の教室に入ろうとした時、ちょうど昼休みだったんだけど。…中からその友達が別のクラスメイトと話してるのが聞こえて、ちょうど僕の話題になってたんだ」

「…〇〇っていい歳して相当夢見がちで痛いよなーってクラスメイトが言ってて、その友達も笑って確かにあれはちょっとねーって肯定してたんだよね。…本気で言ってたのか仕方なく合わせてたのかは、今となってはもう分からないけどさ」

「…そうだったんだ」

「で、それ聞いた瞬間もう全部どうでも良くなっちゃって黙ってそのまま学校から出て、やっぱ体調悪くて無理だったって帰宅して。適当に遺書殴り書いて、帰宅途中に片っ端からドラッグストア入って買い集めた睡眠薬大量に飲んで死のうとしたの」
「…うん、信じてた子にそんな事言われたらそうもなっちゃうよね」

「…今思うと、本当に早まったバカな事したなって思うけどね。ちょうどそれ聞く少し前に知ったんだけど、おばあちゃん僕が高校入って数か月後に体調悪くして亡くなってたらしくて。もう絶縁してたから僕には知らされなくて、父さんだけ渋々一人で葬儀に行ってたみたい。親戚の人から用事で電話が来て、偶然僕が出てその事知ったんだけどね」
「…そうなんだ。おばあさんも君と再開出来ないまま亡くなられて、辛かったろうね」

「…うん。その親戚から聞いた話だと、亡くなる直前まで僕や家族に謝ってて、お願いだからもう一度孫に会わせて欲しいって言ってたみたい。父さん達は最期までずっと無視してたらしいけどね。…で、その後友人の冷たい言葉聞いちゃって、もう僕やおばあちゃんみたいな人間はこの世界に居場所は無いんだな、早く僕もおばあちゃんの所に行こうって感じになっちゃったんだよね」
「…うん、辛かったね」
「うん、俺も君と同じ立場だったらそうなっちゃうと思う」


「まあ市販薬をODしたところでそうそう死ねるわけも無くて、おそらく君達と同じように意識戻った後病院で色々事情聞かれて提案や警告されたけど。もう完全にどうでも良くて聞く耳持たない状態になってたから、ぜんぶ無視して退院後も未遂繰り返してここに連れて来たんだけどね。事態の深刻度によって警告回数も違うらしいけど、僕の場合はしんどいとはいえ直接虐待や性的暴行とかは無かったから、警告2回で次はもうアウトだった」

「ふーん、そうなんだ。僕の場合はかなり深刻だからって事で警告4回あったな。詳しくは言えないけどこのままじゃもっと悲惨な事になるから、今度は絶対連れ戻せないように国家レベルで保護するから考え直しなさいって言われたけど、今までも散々そう言われて結局連れ戻されたからガン無視してた。ここ来た当初は本気で後悔したけど、今はもうこいつと会えて恋人になれたし、それで良かったと思ってる」
「うん、そう思えてるならほんと良かったよ。俺も結構深刻だからって警告3回あったなー。保護も出来るって言われたけどやっぱ聞く耳持たなかったねー。まあ、もう済んだ話だし俺もここで恋人出来たからいいや」

「…うん、二人とも本当前向きでえらいね。僕もまさかこんな島に連れて来られて、想像もつかないくらいの罰を受けさせられるなんて思っても無かったよ。それで処置された直後はもう絶望しかなくって、お世話してくれる子に君には悪いけどお願いだから殺して、首を絞めるとかご飯抜きにして早く死なせてって何度も脳波通して頼んでた」

「…その子も当時表情は分からなかったけど辛そうにそういう事は絶対出来ないし、容体が急変とかしたら上の人がすぐ気付いて駆けつけるようになってるから諦めてって言われて、もう本当に軽率な事しちゃったの後悔した」

「うん、分かる。僕もここ連れて来られた直後は同じだった。こいつに励まされたり同じように死んだりは絶対出来ないようになってるって聞かされて、数か月でどうにか更生頑張るようになったけどね」
「うん、俺も同じ。俺なんか1年以上ずっと死にたい死なせてって言ってたし。それでもお世話役の奴がすごく良い奴で、どうにか立ち直って頑張るようになったけどね」


「…大体、ここ来る子皆初めはそうなっちゃうよね。僕も半年くらいは本当辛くて毎日寝る度このまま死ねないかなって思ってたけど、やっぱり君達みたいにお世話してくれた子が、僕よりずっと辛い境遇だったのにすごく前向きで優しくてさ。…それでこの子をこれ以上悲しませたり困らせたくないって思うようになって、それから少しずつ立ち直れたんだ」
「うん、良かったね。…聞いていいのか分からないけど、お世話してくれた子ってどんな事情だったの?」

「ああ、その子にも自由に話していいって言われてるし大丈夫だよ。その子は相当貧乏な家庭で両親もガラの悪い、…言い方悪いけど親に絶対なっちゃいけないタイプの人間の下に生まれちゃった子で。すごく可哀想だった」

「…あー、なるほどね」
「…俺達の親もクソだったけど、歪んでるものの衣食住は事足りてて教育はちゃんと受けてたしそういう苦しさはなかったね。まあ俺は小遣いは全く無かったけどさ」

「…うん、僕の家庭も言ったように相当息苦しいものの経済的には普通だったし。…その子はお金無くて小さい時から食事抜きとかもざらにあって、ひどい時なんか親に無理やり万引きや空き巣の手伝いとかもさせられたり、汚い恰好で同情を引いて物乞いみたいな事もやらされたらしくて。この国でまさかそんな酷い生き方してる子がいるなんて聞いた時本当ショックだった」

「…そんな事もさせられてたんだ。…本当、ひどいね」
「俺も小遣い欲しさに大人と似たような事はしたけどさ。…流石に盗みや闇バイトとかそういうのはしてなかったし、もちろん嫌だったけど一応同意の上だったし。その子の両親本当最低だね」

「…うん、僕その話聞いた時、本当その子の親の事許せなかった。…で、当然そんな家庭だから義務教育しか受けさせてもらえなくて、中学卒業したらとにかく金が欲しいからって父親の知り合いの、まあそういう悪趣味な店に無理矢理就職させられそうになって。そんな事させられるくらいなら死んだ方がマシだって未遂しまくっちゃったの」
「…うん、本当気の毒に。そうもなっちゃうよね」
「本当可哀想だね。でもそんなクソ親で犯罪にも加担させられるくらいなら、いくらでも保護してもらえたんじゃないの?」

「…僕も彼から事情聞いた時そう言ったけど。小中学校は行けたものの家ではまともな教育受けてないし、外で余計な事喋ったり知識付けられたら面倒だからって、恥ずかしいから家の事情は絶対に先生や他の大人に話すな、話したらぶん殴るぞとか物心ついて間もなくから脅されてたらしいんだよね。…それで未遂して救護された時似たようにすぐ施設に入ろうとか色々言われたけど、親に何されるか分からないからって無理矢理病院や施設逃げ出して、何度も警告されたけど結局最後はここに連れて来られたんだって」
「…そうだったんだ」

「それでその子も、やっぱりここに来た直後は本気で死にたがったけどそれでも少しづつ立ち直って、更生ある程度進んで五感とかサポートされるようになってからは事情考慮して特例でちゃんとした倫理観や高等教育与えてもらって。他の同じように辛い境遇の子達と交流していくうちに死ぬ気も薄れていって、相当気の毒だったから4年半くらいで完全に許されて、普通の体にしてもらえたの」

「そっか、それなら本当に良かった」
「うん、こいつもすごく可哀想だったけど、その子くらいの酷い事情だと5年以下で許される事もあるらしいね」


「で、クズな両親と似た顔やかなりキラキラな名前も嫌いだからって全然違う顔や髪色にしてもらって、名前も本人の希望聞いて戸籍はもう無いけど今は別の名前で呼ばれてるの」
「うん、戸籍は死んだことになってるからどうしようもないけど、それ以外は更生終われば可能な限り希望聞いてもらえるからね。俺のヘアバンド型装置とか」

「それから初めてお世話担当したのが僕だったんだけどね。…その事情聞いてからはファンタジー趣味否定された程度で死ぬとか本当バカな事してごめん、君の方がずっと辛かったのにって脳波で謝ったらさ。その子別に気にするなよ、俺もちょっと恥ずかしいけどファンタジー結構好きだしって言ってくれて。…それで、何だかすごく救われた気がしたんだ」

「…うん、本気で分かってもらえる人が出来てよかったね」
「ね、理解してもらえる存在って大事だよね」


「それから僕も更生本気で頑張るようになって、半年ちょっとくらいでメイドやれるようになって。合計で7年ちょっとくらいかかったけど、最終的には僕も許されて自由になれたんだ」

「よかった。それでそういう妖精みたいな姿にしてもらったんだ?」
「うん、好きな姿になれるって聞いた時悩んだけど、色々あったけどそれでも僕ファンタジーが好きだし。人魚とかも良いなと思ったけど、やっぱりピーターパンが一番好きだから、この妖精の姿を希望したんだ。さすがに羽は付いてるだけで、飛べはしないけどね」

「でも、その姿すごく綺麗で似合ってるしいいと思うよ。そのお世話してくれてた子と今一緒に暮らしてるの?」

「ああ、その子も再改造は基本出来ないけど僕と同じくこの集落で過ごそうかって言ってくれたけど。その子は大好きで恩人だけどそういう関係じゃないし、そこまで付き合わせたら悪いしいいよって断って、今はまた別の子のお世話したり、相当教育も受けて賢くなったから事務仕事の手伝いして更生施設で暮らしてるよ。休みの時に会ったり、よく手紙やりとりしたりはしてるけどね」

「そうなんだ。ここは更生中の子はいないと思うけど、君やここに住んでる子は普段何をして暮らしてるの?」
「僕は革細工や手芸が結構得意だから、更生施設のカーテンや、君達が更生作業中に着るメイド服や靴を作ってるよ。他にも力持ちの獣人っぽい子は薪割りや材木作ってこの集落の設備建てたり、同じく施設に送ったりそんな感じだよ」

「うん、それぞれの特技や個性を活かした仕事して自給自足したり、俺達の施設に物資送ったりしてくれてるの。んでお返しにこっちからも食料とか貴重品とかあげて交易してる」
「なるほどね、そうなってるんだ。確かにメイド服ちょっと恥ずかしいけど着心地良かったよ。靴も義足の時は分かりづらかったけど履きやすいし。色々ありがとうね」

「どういたしまして。一般社会ではやっていけなくて死んだ事になっちゃったけど、辛かったけど更生してちゃんと役割与えられて、皆の役に立てて僕も嬉しいよ。形だけとはいえ、望んでいたファンタジーな姿になれたしね」
「うん、本当によかったね」


「…それでさ。本当はこういう姿じゃなくてノームとかドワーフとかそういう系だけど、妖精も靴作ったり細工物が得意って伝承あるじゃない。…僕、この姿になって仕事してる時、本当に嬉しくて幸せなんだ」

「天国のおばあちゃんに、僕飛べなかったけど妖精になれたよ、この世界でもファンタジーを愛して生きてても良かったんだよって、よく話しかけてるんだ」

「うん、おばあさんもきっと喜んでるよ」
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