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元クソ魔王との座談会

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「あー、来た来た。ほらこっちこっち」
「もー、重役出勤とかあんた転生したのにいつまで魔王気分なのさー」

「うっせえなー。この辺初めて来るし、久々に転生したら随分様変わりしてたから迷ったんだよ」

「あはは、まああんた真っ二つにされてから数百年は経ってるしね。そりゃ不死や長命種多いファンタジー世界とはいえそれなりに変わるよね」
「うん、元々サイバーパンクな国とかもあったけど、全体的にだいぶ文明レベル上がったしね。景観や雰囲気を大事にしたいからって、この国はそんなに見た目は変わって無いけどさ」
「うん、オール電化の家庭とかかなり増えたし、スマホ的な機械とかも結構普及したし。私はテレパシー出来るからそんなにスマホ的なの使わないし、料理はガスコンロ派だけどね」
「ふーん、そうなのか」

「お母さん本当料理上手になったよね。僕のために頑張って十年がかりで特訓してくれたんだってね。ありがとねー」
「へへー、どういたしまして。最初の数年は警報鳴ったりキッチンぶっ壊しかけたり散々だったけど、慣れたら楽しくなって来たしね。んじゃとりあえず適当に飲み物頼んで乾杯しよっか。…あー、でもあんたクソ主人によく酒飲みながらアレされてたんだっけ。トラウマ抉られるならノンアルとかにしとくけど」

「…まあ、もう千年近く前の事だし今生はそういうトラウマとかねえし別にいいよ。…ってかそこまで気を遣うならこんなダイニングバーみたいなとこじゃなくて普通のレストランとかにしとけよ」
「んー、この世界文明レベル上がったとはいえファミレス的な店はほとんどないし、かといって和解したとはいえ相当クソ憎んでたあんたのためにそんな高級な店予約なんかしたくないし。そしたらこういう系の店しか残って無くてさー」
「…言われる自覚はあるけど散々な物言いだなお前」
「まあ、700年も世界中地獄にしたんだから妥当でしょ。あんたも最初は気の毒だったけどさ」


「…まーな。俺の母親、先代の糞親父の城でメイドとして働いてたんだけど、綺麗だけど病弱で気も弱いのをいいことにある時クソ先代が無理矢理押し倒しやがって。んで俺が出来ちまったんだけど当然城にそのまま置いとく訳にもいかないから雀の涙レベルの手切れ金だけ渡して暇を与えてよ。逆らえるわけも無いから母親は故郷に戻って俺産んだんだけどよ」
「うん、私もクソ娼館で散々されててド変態だから楽しかったけど、やっぱ普通は無理矢理やっちゃだめだよねー」
「うん、僕も大昔クソ主人にされかけた時はアレ噛みちぎる勢いで抵抗したけど、弱い人はそうはいかないもんね。あんたのお母さん可哀想だったね。先代魔王も結構なクソだなー」

「…まあ、女癖悪いのと福祉関係の治世クソ適当な以外はわりと評判良い奴だったのが相当ムカつくがな。まあ俺の母親にやってた事バレて、結果的に最悪な魔王生みだした元凶になってからはその評価も地に落ちたが」
「あーうん。神様から聞いたけどあいつ今も地獄で毎日毎晩えげつない処刑されてるってさ。発狂して心ぶっ壊れたら無理矢理回復させたりして苦しめ続けてるって。んであんたのお母さんはクソ魔王生んじゃったけど本人に罪は無いしって事で、天国にちゃんと行けたみたいだから良かったよね」

「…まー、そこだけはクソな神にも多少の情けはあったのかと意外だったがな。…仕方ないとはいえあの世の母さんには辛い思いさせちまってそこは悪かったが」
「うん、神様に聞いたら自分が死んだ後、善かれと思って先代のクズ親父頼るように言い残してたのにまさかそんな酷い事になるなんてって、相当ショック受けて責任も感じてたみたい」

「…そっか。まあ、母さん気弱だけど優しいからな。…母さん、俺を産んだ後内職とか出来る範囲の仕事してどうにか暮らしてたけど、雀の涙程度の退職金兼口止め料なんかあっという間に使い果たしちまったし、田舎の寒村で小さい俺抱えて母親一人だから相当無理してたみたいで。んで案の定俺がだいぶ小さい頃に流行り病で死んじまったんだよね」
「…うん、それは普通に気の毒だったね。本当にあんたの母親は純粋に被害者だよね」


「…で、さっき言ったみたいに他に頼れる当てもないし、クソ親父が福祉系に力入れて無かったせいで孤児院とかそういう感じの所も相当劣悪な場所ばっかだし。当然母さん押し倒して死なせる遠因作ったクソ親父なんて大嫌いだけど、渋々母さんの遺書持ってあいつの城に行ったんだよね」

「で、当然城で一緒に育てる訳にもいかないし、かといって殺して無かったことにする程外道でも無かったから最終的に遠縁の部下の養子にして、厄介払いさせられたんだってね」
「そ。んでそいつが案の定最低の悪趣味な腐れ外道で、引き取られてからというもの毎日毎晩クソな事されてたって訳。当時はまだ不死じゃ無かったから、流石に潰したり落としたりとか、マジで命に関わりそうなことまではされなかったけどな」

「うん、それは可哀想にね。…で、さらに数年経ったある時、こっそり下界にお忍びで遊びに来てた例の女神様のアレな両親が偶然そのクソ主人と出会っちゃって、更に最悪な事になっちゃったんだってね」

「…ああ。本来相当高位の神族や真理を得た徳の高い魔導師くらいしか扱えない秘術の不死の呪いを、自分達もクソ悪趣味な遊びに参加させてくれるなら俺にかけてやるってあのクソ養父に言いやがってよ。…それからという物は、もうあんたらみたいな感じで数百年間散々だった訳」

「…うん、それは本当に気の毒にね」
「だねー。っってもその後世界中に八つ当たりしたのはいただけないけどさ」

「まあ、200年以上もめちゃくちゃクソな事されればそのぐらい世界を呪いたくもなるだろうよ」
「えー、私なんて300年アレ奴隷させられてたし、レジスタンス時代も含めれば500年くらいはアレだったんですけど?」
「うん、僕もあんた以上の年月アレ生活だったよー。せめてそこは同じ200年くらいで満足しときなって」

「あーまあ、もう済んだ事だしいいだろ、細かい事ぐちぐちうっせえなー」
「いや、それ加害者側が絶対言っちゃいけない台詞だからね?」
「また地獄送りにされたいのあんた」

「いやあそこのアレ責め苦は二度とごめんだけど。んで200年くらい経った頃突然素質が超上がったから回復魔法で身体治して、近くにちょうどいたクソ義父とクソ夫婦神消し炭にして。心配で様子見に来てた例の女神もギリ命だけは助けてやったけど、二目と見られない状態にして逃げ去って、あとはクソ親父とその一族皆殺しにして城乗っ取って大暴れ、って感じだな」

「うーん、そこまででやめとけば良かったのに。例の女神様は何も悪く無いのに本当にお可哀想だったけど」
「あの方すごく優しいから、あんたの蛮行も許して下さってたけどねー」

「…まあ、あの女に限ってはやりすぎたと反省してるよ。こんな俺を地獄に落ちた後口添えしてくれたらしいしさ」
「うん、一生女神様に感謝して今度は慎ましく生きなよ」

「…ん、そーだな。まああのクソ親父や義父たちにやった事は一切後悔してないけど、それ以降は正直やりすぎたと思ってるよ」
「うむ、分かればよろしい」


「あ、そういやさ。まあ君とあんたになら言っても良いと思うから打ち明けちゃうけどさ。絶対他の人には内緒にしといてね」
「うん、分かった」
「あー?何だよいきなり」

「うん、天界とかちょくちょく用事で行って、例の最高神様ともかなりフランクに話せる間柄になった頃教えて貰ったんだけどね。あーフランクとはいってもすごい方だからもちろん節度はあるけど」
「うん、なになに?」

「この世界に文明のある人間が生まれて間もない頃はあの神様もかなり人間に肩入れしてて、怪我や寒さで死んじゃってた人々を憐れんで下界に降りて回復魔法や火を起こす術とか、あと製鉄とか武器の作り方とか色々知恵を与えてあげてたんだってさ」
「へー、そうなんだ。意外だなー」
「…ふーん」

「それで初めは人々も簡単に死ぬことが無くなって、どんどん豊かになっていって神様も喜んでたんだけど。…その魔法や技術を悪用して国や集落同士で戦争を始めるようになっちゃって、結果的に戦争のせいで更に死者が出ちゃって。それで神様は深く絶望して、それからは一切下界に関わらず傍観するだけになったんだってさ」
「あー、そういう事があったんだ」
「…ふーん、あのジジイにも意外な過去があったもんだな」

「でもあんたぶっ倒した時も仰ってたけど、流石に何があっても傍観放置も良くないと考え直したみたいだし、最近はかなり人間に寄り添って下さるようになったよ。何でもレジスタンスの人々の戦う姿に人間の善性を感じて、それでかなり感化されたみたい」
「へー、それは嬉しいね。僕達も頑張った甲斐があったね」
「…ふん、それは良かったんじゃないの」


「まあそんな訳でさ。神様ですら失敗したり落ち込む事もあるし。あんたもこれから心入れ替えて一生懸命罪滅ぼししなよ」
「だね。例のメイドの子、ずっとあんたの事待っててくれたんでしょ?」
「…うん。最初は俺が死んだ後すぐ後追おうとしてたらしいけど、あんたらに説得されて考え直したって。んで修道院みたいな感じの所で毎日俺や戦争で死んでいった国民の為に祈ってたんだと。…あいつも、物好きだよな」

「もー、素直じゃ無いなー。あんた超絶クソなのにそこまで本気で慕ってくれてた子がいるなんて幸せじゃん」
「うん。恩人にこれ以上罪を重ねて欲しくないって、苦渋の決断で最後はレジスタンス側に付いてくれたけどさ。あんないい子そうそういないし、可愛いんだし大事にしてやりなよ」

「…うっせーな、分かってるよ。余計なお世話だ」


「あー、やっと注文のドリンク来た。まあ今日休み前で混んでるし仕方ないよね」
「うん、ここそれなりに人気の店だし。あんた何頼んだの?」
「…ぶどうジュース」

「えー、意外と可愛い所あるじゃん。もしかして下戸なの?」
「僕もそこまで強い方じゃないけど、ワイン二杯くらいなら行けるのにー。あはは」

「…いや、俺転生して間もないから未成年だっての。お前ら実年齢ババア通り越してミイラには分かんねーだろうけどよ。…泥酔して帰ったりしたら同居してるあいつが心配するし」
「えー、確かに私に至っては千歳近いババアだけどミイラは無いでしょミイラは」
「あはははは。まー忘れてたこっちも悪いね、配慮足りなくてごめんごめん」

「んじゃまあ、かんぱーい!!」
「ほーい、乾杯~」
「…ん、乾杯」
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