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第四章 驚天動地のアレ事件
番外編 幸野の前世の話
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僕がそういう事をされたのは、このアレ過ぎる国の治安が少しだけ回復し渡航制限が解かれて間もない頃だった。
1970年代半ばの、まだまだかなり制限は多い物の海外への旅行が可能となった頃、外の世界に興味津々だった当時大学生の僕は周囲の反対を押し切りどうにか出国の手はずを整えた。
とはいえ相当にリスクが高くパスポートの発行等もかなり難しく、渡航費用も馬鹿にならなかったが前世の僕は例の英雄たち程では無いものの結構良い家柄だったので、お金を積み危険なのでと親からボディーガードも数名付けられ、必ず決められた場所にしか行かない事を約束した上でようやく海外旅行を許された。
僕はアレな国とは言えかなり良い家柄だったので出来るだけ陰惨な物を見ないように大事に育てられ、要するにかなりの温室育ちで苦労知らずだったため、知らない世界を見てみたいと思い治安が悪めの発展途上国へ向かった。
治安が悪いとは言ってもこのアレ過ぎる国以上に治安がアレな国も無いだろう、と僕は楽観的だった。
そうしてテロに遭う事も無く無事異国の土を踏んだ僕は、大喜びで予定された場所を見て回った。
それから数日経ち、厳重な護衛が付いているお陰で特に危険な目にも遭わなかった僕は調子に乗り、護衛の目を盗んでホテルを抜け出し単独行動に出てしまった。
そして人気の無い路地に停まっていたタクシーに乗り、どこかあまりガイドブックに載っていない面白い場所は無いかと聞いた所、運転手は外国語でどこかに連絡した後面白い店がある、と車を出してくれた。
少し車を走らせ着いたのは、やはり人気の無い路地裏にある一見普通のブティックだった。
ここがどう面白いのか、と外国語の本を片手に聞いてもまあ行けば分かるから、としか返されずとりあえず僕はその店に入った。
入店したその店はやっぱり普通の寂れたブティックで、確かに異国の装束は興味があるが取り立てて面白いわけでも無く、これは騙されたかなあとぼんやり思いつつ適当に服を手に取った。
そしてこちらへどうぞ、と怪しげな店員に通され店の奥の試着室に入った瞬間、僕は試着室の鏡の裏から出て来た何者かに睡眠薬を嗅がされ意識を失った。
そうして、目覚めた時にはそういう事になっていた。
僕は約束を破って迂闊な事をしたのを心から後悔したが、もう遅かった。
それからはまあ例の都市伝説の通り悪趣味な店で見世物にされたり毎日のようにアレな事をされ、反応が鈍くなってきたらアレな薬を飲まされまた悪趣味な事をされたりした。
アレな薬でぼんやりとした頭で、助けがいつか来てくれないかと願ったがそれは叶わなかった。
カレンダーもかかっておらず日付の感覚も無く、もうそうなってからどれだけの月日が流れたかも分からなくなった頃、僕の命は終わりを迎えた。
極限状態のせいかアレな薬のせいかは分からないが、今際の際に僕は不思議な物を見たような気がした。
神話に出て来るような古風な装束と結った髪型の男性が、僕を悲しそうに見ていた。
―ああ、君もまたあいつの呪いのせいで可哀想に。本当に済まない。
そう、その人は言った気がした。
僕はその人をずっと昔から知っているような気がしたが、もうぼんやりとした頭では思い出せなかった。
そうして、僕の前世は幕を閉じた。
「…ああ、本当に気の毒に。…あいつも、例の彼の事件以降少しは気が紛れたと思ったのだが」
「…せめて、来世は幸せになれるよう取り計らおう」
「…どうか来世はこのアレな国でも、幸せを見つけておくれ」
1970年代半ばの、まだまだかなり制限は多い物の海外への旅行が可能となった頃、外の世界に興味津々だった当時大学生の僕は周囲の反対を押し切りどうにか出国の手はずを整えた。
とはいえ相当にリスクが高くパスポートの発行等もかなり難しく、渡航費用も馬鹿にならなかったが前世の僕は例の英雄たち程では無いものの結構良い家柄だったので、お金を積み危険なのでと親からボディーガードも数名付けられ、必ず決められた場所にしか行かない事を約束した上でようやく海外旅行を許された。
僕はアレな国とは言えかなり良い家柄だったので出来るだけ陰惨な物を見ないように大事に育てられ、要するにかなりの温室育ちで苦労知らずだったため、知らない世界を見てみたいと思い治安が悪めの発展途上国へ向かった。
治安が悪いとは言ってもこのアレ過ぎる国以上に治安がアレな国も無いだろう、と僕は楽観的だった。
そうしてテロに遭う事も無く無事異国の土を踏んだ僕は、大喜びで予定された場所を見て回った。
それから数日経ち、厳重な護衛が付いているお陰で特に危険な目にも遭わなかった僕は調子に乗り、護衛の目を盗んでホテルを抜け出し単独行動に出てしまった。
そして人気の無い路地に停まっていたタクシーに乗り、どこかあまりガイドブックに載っていない面白い場所は無いかと聞いた所、運転手は外国語でどこかに連絡した後面白い店がある、と車を出してくれた。
少し車を走らせ着いたのは、やはり人気の無い路地裏にある一見普通のブティックだった。
ここがどう面白いのか、と外国語の本を片手に聞いてもまあ行けば分かるから、としか返されずとりあえず僕はその店に入った。
入店したその店はやっぱり普通の寂れたブティックで、確かに異国の装束は興味があるが取り立てて面白いわけでも無く、これは騙されたかなあとぼんやり思いつつ適当に服を手に取った。
そしてこちらへどうぞ、と怪しげな店員に通され店の奥の試着室に入った瞬間、僕は試着室の鏡の裏から出て来た何者かに睡眠薬を嗅がされ意識を失った。
そうして、目覚めた時にはそういう事になっていた。
僕は約束を破って迂闊な事をしたのを心から後悔したが、もう遅かった。
それからはまあ例の都市伝説の通り悪趣味な店で見世物にされたり毎日のようにアレな事をされ、反応が鈍くなってきたらアレな薬を飲まされまた悪趣味な事をされたりした。
アレな薬でぼんやりとした頭で、助けがいつか来てくれないかと願ったがそれは叶わなかった。
カレンダーもかかっておらず日付の感覚も無く、もうそうなってからどれだけの月日が流れたかも分からなくなった頃、僕の命は終わりを迎えた。
極限状態のせいかアレな薬のせいかは分からないが、今際の際に僕は不思議な物を見たような気がした。
神話に出て来るような古風な装束と結った髪型の男性が、僕を悲しそうに見ていた。
―ああ、君もまたあいつの呪いのせいで可哀想に。本当に済まない。
そう、その人は言った気がした。
僕はその人をずっと昔から知っているような気がしたが、もうぼんやりとした頭では思い出せなかった。
そうして、僕の前世は幕を閉じた。
「…ああ、本当に気の毒に。…あいつも、例の彼の事件以降少しは気が紛れたと思ったのだが」
「…せめて、来世は幸せになれるよう取り計らおう」
「…どうか来世はこのアレな国でも、幸せを見つけておくれ」
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