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第四章 驚天動地のアレ事件
番外編 別の名で呼ばれたかった彼
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「白紙君。今回もテストがあるのだが来てくれるかい」
「…はい、分かりました」
僕は軍の人に連れられ、広い運動場のような部屋に入った。
その部屋の手前にはマジックミラーが貼られ向こう側からは僕達の方は見られなくなっていたが、部屋の中には多数の銃器やナイフを持った男の人達がいた。
「…見ての通り、この中には敵国の捕虜たちが多数いる。さほど重要な情報は持っていなかったので処分しても構わないのだが、君を倒したら即時解放を告げてある。よって死に物狂いで襲い掛かってくるだろうね」
「…はい」
「確保までにかなりの犠牲者が出た腕利き達だが、まあ君なら難なく倒せるだろう。最新鋭の武器も使って良いしね。殲滅までの目標タイムは4分だ。出来るかね」
「…ええ、大丈夫です」
「ああ、心強いね。では武装もしたし、シャッターを開けるからね。頑張ってくれたまえ」
「…分かりました」
重厚なシャッターが開けられ、僕は中に入った。
「…あ、子供?」
「…ガキ一人とか、舐めてんのか」
「こいつ倒すとか楽勝だろ。何か裏でもあるのか」
「…何もありませんよ。すみませんが、手加減はしません」
僕はナイフを抜き、すぐに捕虜の人二人の首を切り裂いた。
「…え、え?」
「…は、え?」
「ひ、ひっ。何だこいつ、この野郎」
僕は銃弾を避けながら、着実に一人ずつ捕虜の人を殺して行った。
「…終わりました」
「2分40秒。素晴らしいね。しかもほとんどナイフ1本で仕留めるとはね」
「…流石に最後の数人は逃げ出したので、銃を使いましたが」
「いや、予想以上だね。まあ潰したり落としたりは気の毒すぎるので流石にしないが、相当にアレな薬物投与や強化処置をしているのもあるけれどね」
「…はい」
「…スラム街で果物を盗んで凄い速さで逃げて行く君を見かけた時、その身のこなしに驚嘆して捕獲させてもらったがここまでの逸材は初めてだよ。担当官の私も鼻が高いね」
「…ありがとうございます」
「君みたいな境遇の子を何人も連れて来ては面倒を見たが、大半はアレ過ぎる処置に耐えられなかったり、戦火の中で命を落としてしまったからね。君と長い付き合いになれて嬉しいよ」
「…それは良かったです」
「で、我々の国に生まれた以上仕方ないが君は自分の髪や肌色が嫌いだからね。なるべくそれとかけ離れた名で呼んであげようと思い白紙と呼ぶようにしたのだが、気に入ってくれたかね」
「…はい、ありがとうございます」
「うん、それは良かったよ。で、まあこういう国で身分だしあまり自由は与えてやれず済まないが。素晴らしい成績を出してくれたし、ご褒美にせめてなるべく欲しい物を与えてあげよう。何が欲しいかね」
「…では、何か新しい本を下さい。なるべく、明るくて希望のある内容の物を」
「ああ、分かったよ。まあこういう機関だし希望に叶う蔵書があまり無くて済まないが、出来る限り君の気に入りそうな物を用意しよう。楽しみにしていなさい」
「…ありがとうございます、嬉しいです」
「君、ひどい生まれだったけれどここに来て教育を与えたらすぐに読み書きも習得したからね。身体能力だけでなく頭脳明晰とは素晴らしいね。スラム街で君の才能を潰えさせなくて良かったよ」
「…光栄です」
「うん、では今日はもう自由だから部屋に戻ってゆっくりしていなさい、白紙君。…ああ、そうそう」
「…何でしょうか」
「うん、この世界の中でも特にアレで厄介な能力者が多数いる例の島国だが。本格的に主力部隊に打撃を与えたいという事で近々君も出撃してもらうだろうからよろしくね」
「…分かりました、お任せください」
「ああ、頼もしいね。人心を狂わせる恐ろしい部隊がいるとの事だが君ならきっと壊滅させられるよ、白紙君」
「…はい、では失礼します」
僕は死体だけとなった部屋を出て、静かに自室へ戻った。
「…どうして、希望通りのはずなのにこんなに嬉しくないんだろう」
「…もっと違う、素敵な名前で呼んで欲しいな」
それから少し後、僕は白紙の彼では無くなった。
「……」
「んー?どしたのクロ、ぼーっとして。折角のごちそうなんだし食べなよ」
「…うん、そうだね。…どうして今日、こんなご馳走なんだっけ」
「えー?いやだからG級クラスの超強敵倒したからだってさっきも言ったじゃん」
「…そっか、僕その戦闘参加したっけ」
「うん、してたよ。あーそいつに頭ぶん殴られたから記憶障害でも起こしたのかな」
「…そうかもね。確かに僕結構怪我してるし」
「うん、クロここまで追い込むとかやっぱあいつも相当クソ強かったね。筋肉モリモリのマッチョマンだったし」
「…そっか。あのさ、シロ」
「ん、何?」
「…ごめん、僕の名前もう一度呼んで欲しいな」
「ん?別に良いけど。クロ」
「…うん、ありがとう」
「お、初めて笑った。やっぱお前笑うと可愛いね」
「…初めてって?」
「あー嘘嘘間違えた。初めては言い過ぎた。でもお前普段あんまり笑わないからさ」
「…そっか、そうかもね」
「…はい、分かりました」
僕は軍の人に連れられ、広い運動場のような部屋に入った。
その部屋の手前にはマジックミラーが貼られ向こう側からは僕達の方は見られなくなっていたが、部屋の中には多数の銃器やナイフを持った男の人達がいた。
「…見ての通り、この中には敵国の捕虜たちが多数いる。さほど重要な情報は持っていなかったので処分しても構わないのだが、君を倒したら即時解放を告げてある。よって死に物狂いで襲い掛かってくるだろうね」
「…はい」
「確保までにかなりの犠牲者が出た腕利き達だが、まあ君なら難なく倒せるだろう。最新鋭の武器も使って良いしね。殲滅までの目標タイムは4分だ。出来るかね」
「…ええ、大丈夫です」
「ああ、心強いね。では武装もしたし、シャッターを開けるからね。頑張ってくれたまえ」
「…分かりました」
重厚なシャッターが開けられ、僕は中に入った。
「…あ、子供?」
「…ガキ一人とか、舐めてんのか」
「こいつ倒すとか楽勝だろ。何か裏でもあるのか」
「…何もありませんよ。すみませんが、手加減はしません」
僕はナイフを抜き、すぐに捕虜の人二人の首を切り裂いた。
「…え、え?」
「…は、え?」
「ひ、ひっ。何だこいつ、この野郎」
僕は銃弾を避けながら、着実に一人ずつ捕虜の人を殺して行った。
「…終わりました」
「2分40秒。素晴らしいね。しかもほとんどナイフ1本で仕留めるとはね」
「…流石に最後の数人は逃げ出したので、銃を使いましたが」
「いや、予想以上だね。まあ潰したり落としたりは気の毒すぎるので流石にしないが、相当にアレな薬物投与や強化処置をしているのもあるけれどね」
「…はい」
「…スラム街で果物を盗んで凄い速さで逃げて行く君を見かけた時、その身のこなしに驚嘆して捕獲させてもらったがここまでの逸材は初めてだよ。担当官の私も鼻が高いね」
「…ありがとうございます」
「君みたいな境遇の子を何人も連れて来ては面倒を見たが、大半はアレ過ぎる処置に耐えられなかったり、戦火の中で命を落としてしまったからね。君と長い付き合いになれて嬉しいよ」
「…それは良かったです」
「で、我々の国に生まれた以上仕方ないが君は自分の髪や肌色が嫌いだからね。なるべくそれとかけ離れた名で呼んであげようと思い白紙と呼ぶようにしたのだが、気に入ってくれたかね」
「…はい、ありがとうございます」
「うん、それは良かったよ。で、まあこういう国で身分だしあまり自由は与えてやれず済まないが。素晴らしい成績を出してくれたし、ご褒美にせめてなるべく欲しい物を与えてあげよう。何が欲しいかね」
「…では、何か新しい本を下さい。なるべく、明るくて希望のある内容の物を」
「ああ、分かったよ。まあこういう機関だし希望に叶う蔵書があまり無くて済まないが、出来る限り君の気に入りそうな物を用意しよう。楽しみにしていなさい」
「…ありがとうございます、嬉しいです」
「君、ひどい生まれだったけれどここに来て教育を与えたらすぐに読み書きも習得したからね。身体能力だけでなく頭脳明晰とは素晴らしいね。スラム街で君の才能を潰えさせなくて良かったよ」
「…光栄です」
「うん、では今日はもう自由だから部屋に戻ってゆっくりしていなさい、白紙君。…ああ、そうそう」
「…何でしょうか」
「うん、この世界の中でも特にアレで厄介な能力者が多数いる例の島国だが。本格的に主力部隊に打撃を与えたいという事で近々君も出撃してもらうだろうからよろしくね」
「…分かりました、お任せください」
「ああ、頼もしいね。人心を狂わせる恐ろしい部隊がいるとの事だが君ならきっと壊滅させられるよ、白紙君」
「…はい、では失礼します」
僕は死体だけとなった部屋を出て、静かに自室へ戻った。
「…どうして、希望通りのはずなのにこんなに嬉しくないんだろう」
「…もっと違う、素敵な名前で呼んで欲しいな」
それから少し後、僕は白紙の彼では無くなった。
「……」
「んー?どしたのクロ、ぼーっとして。折角のごちそうなんだし食べなよ」
「…うん、そうだね。…どうして今日、こんなご馳走なんだっけ」
「えー?いやだからG級クラスの超強敵倒したからだってさっきも言ったじゃん」
「…そっか、僕その戦闘参加したっけ」
「うん、してたよ。あーそいつに頭ぶん殴られたから記憶障害でも起こしたのかな」
「…そうかもね。確かに僕結構怪我してるし」
「うん、クロここまで追い込むとかやっぱあいつも相当クソ強かったね。筋肉モリモリのマッチョマンだったし」
「…そっか。あのさ、シロ」
「ん、何?」
「…ごめん、僕の名前もう一度呼んで欲しいな」
「ん?別に良いけど。クロ」
「…うん、ありがとう」
「お、初めて笑った。やっぱお前笑うと可愛いね」
「…初めてって?」
「あー嘘嘘間違えた。初めては言い過ぎた。でもお前普段あんまり笑わないからさ」
「…そっか、そうかもね」
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