はーとふるクインテット

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第三章 アレな波乱の幕開け

思い切り違う事をしてみるクロ

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例の戦争が終わって数十年後。

「…君達、本当に待たせたね。アレな技術が発達し正常な肉体を造る事が可能になった。どんな義肢でも出来るし、普通の肉体にも出来るよ。…髪や肌の色は変えられず、申し訳無いがね」


「わーい、じゃあ僕は普通の体一択なのでそれで。クロもお揃いにしようよ」

「……」

「んー、どしたのクロ?お揃い良いじゃん。クロ義肢とかあんまり似合わなさそうだし」

「…うん、そうだね」

「じゃあ、二人とも普通の肉体だね。…想像は付いていたが、他の子達も皆そう希望したよ」

「ふーん、そうなんだ。まああんなクソ元同僚の事なんかどうでもいいけどー。じゃあさっさと体造ってよクソ研究員」
「…シロ。大事なお仕事してくれる人にそういう事言っちゃ駄目だよ」

「んー、でも僕達この国救った英雄の神だしそのくらい上から目線で良いじゃん。例のクソ夫含めこの国の神全体的にアレだしさー」
「…あの人も間違いはしてしまったけど、悪い人では無いと思うよ」

「えー、でもあいつがクソな事やらかしたせいでこの国クソオブクソになっちゃったじゃん。あんな奴極悪人でしょ。奥さんも激おこだろうしさっさと死ねば良いのにね」
「…神様とはいえ人間だし、誰だって間違いはあると思うよ。そんな事言ったら駄目だよ」

「…ああ、そうだね。許されない事はしてしまったが、私もあの方は憎めないよ。いつかは和解して欲しい物だがね」
「あーもうクソ研究員の意見なんかどうでも良いっての。ほらさっさと下がれよ鬱陶しいなー」

「…気分を害して済まないね。ではおそらく数週間で出来るから、楽しみにしていてね」


「わーい、30年近くかかったけど頑張ってクソな体で待った甲斐があったね。まあ僕クロとお揃いだからクソな体でも超ハッピーだったけど!」
「…うん、そうだね」

「んー何クロ。僕もだけどお前生まれつきでもう40年以上もクソな体だったんだし、もっと喜びなよ」
「…うん、…でもどうしてかな。僕あんまり嬉しくないんだ」
「えー、何で。クロ別にMじゃ無いしまともな体手に入るんだし良い事しか無いじゃん」

「…あのさシロ。そんなはず無いと思うんだけど、僕生まれつきこういう体じゃ無かったんじゃないかな」

「…えー?んな訳ないじゃん。もう何百回もお前生まれつきって言ってるし軍や関係者一同皆そう言ってんじゃん」

「…うん、でもさ。何で生まれつきなのに僕こんな傷だらけで、火傷まであるの」
「あーまあこの国クソ過ぎだし、気の毒だけどたまにはそういう事だってあるって。ほら御名レベルでもう終わってる奴だっているんだしさー」
「…そっか、そうかもね。隊長本当に可哀想だよね。普通の体にしてもらえる事になって良かった」

「もー、クロ優しいけどあんな僕振ったクソなんかどうでも良いじゃん。クロの世界には僕一人で十分なのー!」
「…うん」


「あ、ごめん僕お花摘みしてくるね。ほらクソ巫女さっさと連れて行けよー」
「…ええ、ただ今。クロ様、失礼いたします」

「あークソ神官?クロまた疑問抱いちゃってるからがっつりクソ洗脳しておいてー」



「………」

「お、起きたなクロ。いつもよりかなり早いがちゃんと寝れたか?昨日結構遅くまでレッスンしたし疲れてるだろ」

「…あのさ前野。お願いしたい事があるんだけど」


数日後。

「…は?いやクロ何それふざけてんの」
「…ふざけてないよ」

「…い、いやその手足どしたの。いきなりサイボーグ化とかお前頭おかしいにも程があるだろ」
「…おかしいかもしれないけど、急にこうしたくなって」
「いやいやいや衣装やソロ曲だけでも大概だけどさ。体改造して僕とかけ離れた姿にするとかマジでお前イカれてんだろ」
「…そうかもね。…ごめん、最近シロとなるべく違う姿になりたいんだ」

「…いや、お前マジで頭終わってんだろ。僕とお揃いの体でお揃いの服で、同じ歌歌ってる事こそクロの幸せだって」

「……」
「…いやお前、何とか言えよ」


「…ねえ、シロ。シロさ、僕の幸せなんて考えて無いでしょ」
「…は??」

「あのさ。僕確かに今までシロとずっと一緒で、シロの言う通りにしているのが幸せだと思ってた。でも最近そう思えなくなって来てるんだ。…シロさ。分かってたけど傷つけたくないから言わなかったけど、相当性格アレだよね」
「…い、いやまあ僕も十二分に自覚はあるけどさ。一番大好きなお前にだけは言われたくないんだけど。…最近相当アレ続きとはいえ、やっぱお前の事嫌いにはなれないし」
「…そっか」

「…ねえ。クロも僕の事好きでしょ?何でこんな僕の事悲しませるような事ばっかりするの」

「……」

「…おい、だから何とか言えっての」


「…ごめん。シロの事、最近好きじゃ無いんだ」

「…え」

「…どうしてだろうね。最近、嫌いまではいかないけど、どんどん好きじゃ無くなってる。…良く覚えて無いけど、ひどい事されてずっと騙されてた気がして」
「い、いやいやいやんな事無いっての。だからもう何千何万回も軍や裏政府関係者一同皆そんな事無いって言ってんじゃん。僕とお前の間に秘密なんて何一つ無いっての」

「…ごめんシロ。僕、嘘つき大嫌いなんだ。…シロの事、大嫌いにはなりたくないけど」
「…っ」

「…じゃあてうてうの人達とレッスンあるから、またね。ばいばい」

そう言って義肢をカチャカチャと鳴らし、クロは静かに去って行った。

「…いや、クソ過ぎでしょ」


その直後。

「…おいこら前野。クロの脳みそデータ見せろ」
「あー?いくら相方の頼みとは言えプライバシーの観点からそれは無理だ」
「いやだから僕現人神の英雄だしプライバシーもクソも無いだろ。さっさと見せろ」
「だーかーら、無理だっての。この学園では可能な限り普通の人間扱いで平等な立場ってもう何べんも言ってんだろ」

「…ほんっっっとお前クソウザ過ぎ。…クロ最近おかし過ぎるし僕が強制アレしたの気付き始めてるっぽいし、洗脳解けかけてるんじゃねえの」
「んー、だからそれは守秘義務あって言えねえって。まあ年貢の納め時って奴なんじゃねえの」

「…いや、だから神に年貢なんかいらないっての。クロに嫌われたら僕全世界から嫌われちゃうじゃん」
「まあ、そんだけクソ過ぎるんだから当然だろ。完全自業自得だって」

「…いや、お前マジで狂わせて無理矢理データ見たいんだけど」
「だからんな事したらお前こそ極刑では無いものの速攻退学で数十年また神社にぶち込まれるだろ。お前もそこまでどうしようも無いアホじゃねえよな?」

「…マジでこの学園クソしかいねえな」

そう再びドアを完全ぶっ壊し出て行ったシロ。


「あー、流石にちっと今回は肝が冷えたな。アレ気味な共同研究者に記憶や人格データバックアップは常に取ってもらってるが、狂わせられたら実質死ぬようなもんだしな」

「まあ、俺もあいつとは常に相討ち覚悟で挑んでるから良いがな。あいつにギャフンと言わせて死ねるなら本望だ。とはいえやっぱ出来るだけ長生きはしたいがな」

「…クロ。頑張んな」


「…あーもしもしクソ裏政府?クロ最近おかし過ぎるし、前野クソウザくて何もデータ見せてくれないんだけど。強権使ってどうにかしろよ。ってか速攻再洗脳しろ」

「…は?学園内で起きた事は全部代行や学園関係者に一任してるから何も出来ない?入学前そう言ったろ?…お前らマジでクソ過ぎだろ、僕誰だと思ってんの」

「…忙しいからもう切る?いやお前等マジで不敬罪で訴えるぞ。いやお前等が塩対応じゃどうしようも無いけど」

「いやマジで切るとかどんだけ。マジでこの国何から何までクソだろ。もう国外行こっかな。まあ僕身分アレ過ぎるから現代でもなかなか渡航許可出ないけどさ」

「…それに、どれだけクソでもやっぱこの学園離れたくないし。おかしくてもクロのそばにいたいし」

「…僕、どうすればいいの。誰か助けてよ」

「…あーでも、今日の夜ライブだった。いやこんなクソな気分で良いステージに出来る訳無いでしょ。でも中止したら人気に響くしなー。いやマジクソ過ぎ」

「…クロ」


一方その頃、廊下にて。

「…あ、手足と両目アレされて数年間監禁されてたサイボーグ転校生さん、こんにちは」

「君もサイボーグにしたんだ、似合ってる?…どうもありがとう。あなた見てたら、僕も義肢付けてみたくなって。…あなたも大変だったよね」

「…まあアレ監禁生活中はクソ過ぎたけどいつか必ずぶっ殺す事を生きがいにして頑張ってたし、保護後速攻改造してもらって出て来たクソの首以外バラバラにして目からビームで全身丸焦げにしてとどめにロケットパンチで胴体ぶち抜いて爆発四散させたからもうどうでもいいや?…それは良かった」

「…うん、この学園大半過去がアレな人しかいないけど、皆明るく前向きに頑張ってるもんね。偉いよね」

「…自分も大変だったけど、君程じゃない?…うん、でも僕今はもう普通の体だし、大丈夫だよ」

「…誰かは言えないけど、あのクソ並みに許せない人がいて許されるならあいつ以上の目に遭わせてぶっ殺したいんだ。…そっか。他の皆もそう言ってるけど、誰なんだろうね」

「…言いたいけど言えなくてごめんね、今夜のライブ頑張ってね?うん、ありがとう」


「…あのさ、僕何となくだけど。皆が殺したいって言ってる人、誰だか想像が付くんだ」

「…悲しい顔させちゃってごめんね。あなたすごく明るいのにね。…今言った事は忘れて。じゃあ、さよなら」


「…シロ」


昼食時。

「わー、クロ君手足サイボーグにしたんだ。似合ってるね」
「うん、前野に言ったの数日前なんだけど、すぐ用意して手術してくれた」
「そっか、クロの頼みだしこの国だしね。速攻で用意できるよね」
「ああ、とても綺麗な義肢だな」
「うん、僕の目みたいにキラキラしてて綺麗だね」

「ありがとう。…本当は白い義肢にしてもらおうかと思ったんだけど、肌の色と合わないしやっぱり黒にしてもらった」
「…あー、そうだね。クロ君自分の肌と髪の色好きじゃないもんね」
「うん、いつかはアレ技術もっと発展して髪や肌色変えられれば良いのにね」
「サイボーグ化や人体改造は超簡単に出来るのに難しい所だよね」

「…やっぱり僕達の体って、特殊過ぎるみたいだから仕方ないよ。…僕、その中でも何故かかなり厄介な体質だったらしいし。引き取られる前、何かあったのかな」

「…あー、うん。戦時中だし何かあったのかもね」
「…でもクロ引き取られる前は相当小さかったし、そこまでアレな事はされて無いと思うよ」
「…ああ、きっとそうだろう」
「…うん、大丈夫だよ。もう済んだ事だしさ」

「…そうだね」


「あ、それで今夜クロ君ライブだよね。私も見に行くね」
「うん、俺もサイボーグのクロのパフォーマンス気になるし行くよ」
「うんうん、僕も」
「ああ、俺も行こう」

「うん、皆ありがとう。この義肢調子良いし良いライブに出来ると思う。…シロはすごく機嫌悪いけどね」
「あーまあ、当然そうなるよね」
「まあ、やっぱクロには悪いけどあいつの機嫌悪いの見てると俺達スカッとするし良いんじゃない?」
「うん、僕も。クロ君一人で十分良いステージに出来ると思うしさ」
「…そっか、ありがとう。じゃあ僕食べ終わったから、また夜にね。頑張るよ」

そう静かにクロ君は空になった食器を持って去って行った。


「クロ君、今回はまた思い切ったよねー」
「うん、すごく良いと思う。…前野言いはしないけど、たぶんそういう事だよね」
「ああ、そういう事だろうな」
「…あー、やっぱそういう事なのかな。うん、いくら強力な洗脳とはいえそりゃ半世紀以上もかけ続けてたら弱まっちゃうかもね」
「うん、クロ君元々聡い子だしね」

「あーしかもさ。今夜のステージで代行例の計画実行するんだよね」
「あー、アレ計画ね。代行さんも思い切った事したよね。まあ代行さんだし平気だとは思うけど大丈夫かな」
「まあ、自己保身は欠かさない人間だし平気だろう」
「うん、そういう人だしね。政府もあの子大嫌いだろうし、その程度大目に見てくれるでしょ」

「いやー、あいつ以外の人が傷つくのは絶対見たくないけど、今回ばかりは楽しみだなー!」


少し後、学園長室にて。

「代行様、ついに今夜だねー。いやー楽しみだなー」
「ええ、僕もあの子にようやくお灸を据えられると思うと嬉しいです」
「そうだね。政府からしっかり許可は得たし、もうあの子とクロ君以外の皆には伝えたしね」
「ですねー。やっぱアレ計画聞かされた学園関係者一同皆盛り上がってたし」

「うん、信頼できるアレな一部報道機関にも秘密裏に伝えたから動画や写真も撮ってくれるだろうね」
「まあもちろん、不幸な事故って事になりますけどねー。流石に人為的に仕組んだのが明るみになったら代行様とはいえ相当な罰を受けるでしょうし」
「ええ、どんなにアレでも救国の英雄で神ですからね。わざと傷付けたのが知れたら大問題になってしまいますよね」

「でも、彼もてうてうだからね。元蛇の彼程では無いものの相当丈夫だし、まあ軽い打撲や捻挫程度で済むだろう」

「今回ばかりはあいつの丈夫な体に感謝ですねー。正直あんなクソ野郎、昔の体に逆戻りするぐらいの大怪我負って欲しいんですがね」
「ええ、僕もそのくらいの手傷を負わせてやりたい所ですが。…そこまでしたら、彼も悲しむでしょうしね」

「…そうだね。あの子は本当に、本当に優しい子だからね。では金目、くれぐれも彼に被害が及ばないように頼むよ」
「はい、お任せ下さい」


そしてその夜、野外ステージにて。

「…皆、来てくれてありがとう。手足変えてみたので、良かったら楽しんで行って下さい。…ほら、シロも」
「…あーはいはい、皆来てくれてどーも。クロ最近サプライズでやらかし過ぎで正直僕ついていけないんですけどねー。今日の午前中こいつ最低な事言いやがったし。まあ引かれるだろうし言えないけど」

「…ごめんね。では、1曲目聞いて下さい」


「わー、やっぱ義肢にしたクロ君身体能力すごいねー」
「まあ、あいつ元々アレなおかげで身のこなしもの凄いしね。…洗脳弱まったら、当然その事も思い出しちゃうんだろうな。本当可哀想だな」
「…うん、そうだよね。戦時中とはいえ、どうしてあの子だけあんなに悲惨な目に遭わなきゃいけなかったんだろうね」
「…そうだな」
「…もう、二度とあんな可哀想な子出したく無いよね」

「まあ、でも例の大戦時てうてうの人達が大暴れしてアレ敵国に誤爆させたりとかで相当恐れられてるだろうし、もうあんな戦争に巻き込まれる事も無いんじゃない?」
「あーうん、だろうね。もうこの国敵に回したく無いだろうね」
「とはいえこの世界自体かなりアレ気味だから、クロの祖国みたいな国はたくさんあるだろうけどね」
「…そうだな。人や集団が多数いればどうしても格差は出来てしまうからな」


「あーまあ、せっかくのライブだしあんまりしんみりするのもアレだし楽しもうよ。確かMC後の5曲目で例の計画実行するんだよね」
「うん、そうだってね。こっちに被害が来る事は無いだろうけど一応気を付けておこうね」
「だね。まあこの町と学園自体アレ過ぎるから観客席にも簡易シールド張ってあるし平気だと思うけどね」
「ああ、アレな警備員も十分警戒してくれているだろうしな」


「…シロ、振り付けまた間違えてる。歌詞もさっき飛んでた」
「…あーもうお前クソウザすぎ。頭いかれてるくせに何でそういう所だけ目ざといの」
「…ごめんね」


《あー、MC終わったね。シロの奴マジでブチ切れ寸前でいい気味だなー。じゃあ金目、くれぐれもよろしくね》
《ええ、大丈夫ですよ》

振子からの通信を受け、僕は改めてクロを注視した。


「…では5曲目です。シロ、次は僕のソロだから下がってて」
「…あーはいはい。僕だってそのくらい分かるってのバカにすんな」

《おーし、シロ予想通りの位置に立ったね。じゃあスイッチ入れるよー。クロが庇っちゃって怪我したら大変だし、金目護衛してあげて》
《ええ、加速装置をいつでも起動できるようにしていますのでご安心を》

そうしてクロが歌い始めた時。

吊り下げられた大型スポットライトの付け根部分が突如小さい爆発を起こし、シロの頭上に落下した。

「…え、は?」

「…シロ、危ない」

《あーやっぱクロ庇っちゃいそう。金目急いでー》

《…すみません、ジャミングがかかっているのか加速装置が起動出来ません》
《え、ちょ。それじゃ困るんだけど》

そうしてスポットライトはシロの居た所に落下し、大爆発した。


「…え、爆発したけどこれ大丈夫なの?」
「…うん、代行の話だとただ落下するだけのはずだけど」
「…っていうかクロが庇おうとしたら、金目さんがすぐに保護するはずなのに」

「…通常の周波数とは違うが、妨害電波のような物を感じた気がする」
「え、みな君そういうの分かるの?」
「ああ、動けない時の大半は仮想空間にいたのでそう言った物は敏感に察知できる。…元々俺や佐紀先輩のような奴は電波や脳波など、そういう類に強いしな」
「あー、なる程」
「…あの子はともかく、クロ君大丈夫かな」


「…っててて。いやふざけんな、アレな国とはいえ手抜き工事すぎでしょ。いや僕今どうなってんの」

「…シロ、大丈夫?」

「…え、クロ」

僕に覆い被さるようになっていたクロの手足は、爆風や落下したスポットライトでめちゃめちゃに潰されていた。

「…い、いや僕はまあ平気だけど。クロこそ大丈夫なの」
「…少し痛いけど、この義肢痛覚鈍いし大丈夫。…シロが無事で良かった」
「…うん、クロ。助けてくれてありがと。…でもさ」
「…うん、何?」

「…お前僕の事嫌い始めてるのに、なんでここまでして庇ってくれるの」

「…何でだろうね」
「…お前、良い奴だけどやっぱ頭おかしいよ」
「…そうかもね」


「…え、いやこれ流石にヤバいでしょ。爆発とか仕様書に書いてないのにアレ業者何したの」
「…ええ、すぐに業者に確認します。即刻ライブは中止しクロ君の救護活動に入ります」
「う、うん金目お願い」


「…クロ君、大変だけど義肢が壊れただけみたいで良かった」
「…うん、ちょうどサイボーグ化してて不幸中の幸いだったね」
「…爆発って、アレ工作した業者さん間違えちゃったのかな」
「…業者もあいつが許せなくて、加減を誤ったのかもな」


学園長室のPCからライブ配信を見ていた僕は独り言ちた。

「…おやおや、工事業者もおそらくやり過ぎてしまったと見えるね。これは流石に頂けないなあ」

「あの子はともかく、クロ君に大怪我を負わせたとなっては相当な処罰は免れないだろうね。…気持ちは分かるし気の毒だからどうにか弁護してやりたい所だけどね」

「…クロ君、君は洗脳が解けてもやはり優しいんだね。でもあの子にどんなに無償の愛を注いでも、きっと返っては来ないと思うよ」
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