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夜闇

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「疲れてしまったか?」

 思いがけないジゼルの言葉により、自らの発言を余儀なくされたユキは、予期しない会談で心身共に酷く憔悴していた。

「‥いいえ‥。ですが少々眠気が‥」

 ようやく集会の会場となっていた場を後にすることができた彼女は、帰路へとつく夜道にて、龍鬼と言葉を交わしている。

 未だ聖王国への懸念についての会談は続けられているものの、遂に疲労が限界を迎えたユキが中途退場を申し出た次第である。

 故に、渋々ながら場を後にすることへの了承の意を示した、居合わせている面々を前に、これ幸いと事なきを得た彼女であった。

 元来の彼女は、殊更に人見知りをする性質であるからして、これ以上の疲弊は許容できる程に、懸命ではなかった。

「そうか‥無理をさせてしまったか」

 その身に余る様な、魔窟とも称して差し支えない場を乗り越えたのにも関わらず、健気にも殊勝な心掛けを見せるユキ。

 そんな彼女の、多分に男の庇護欲を誘う立ち振る舞いを受けた龍鬼は、些か気遣わしげな表情を浮かべた。

「そんな‥わたしが悪いのです。大事なお話を‥わたしが未熟なばかりに‥。申し訳御座いません」

 不意に自らの頭部を、愛おしげに撫でる龍鬼の無骨でいて、大きな暖かい手のひらの感触に、白金に輝く宝石の如き瞳を潤ませるユキである。

「いや‥あれ程の術を行使したのだから当然だろう。寧ろ良くここまで耐えてくれた」

 緩やかにかぶりを左右に振る龍鬼の言葉を受けて、眦を垂れさせたユキは、陶然とした面持ちを浮かべる。

「‥お父様‥」

 龍鬼の心優しい心底からの気遣いを受けた彼女は、自らに気を払う彼の優男ぶりに感嘆の溜め息を零す。

 感極まった様子で、逞しい龍鬼の胸板へと、美しいかんばせを埋めるユキは、自らの鼓動の高鳴りを自覚する。

 己の雌としての本能の赴くままに、身体の奥底から湧き上がる甘い疼きへと身を委ね、激しく脈打つ心臓の音を脳裏で反芻する。

「‥ですが、本当によろしかったのでしょうか‥。このようにしてわたしの身勝手な我儘を押し通してしまって‥」

 彼女が言うところの、今代の巫女としての特権の様な権威を行使した事実は、その懸念の通り杞憂ではない。

 表面上は互いに対等な姿勢を保っていた集会の場に居合わせていた面々であるが、巫女という純白の乙女を目の当たりにして、些か気圧されている節があった。

 だからこそ、彼女の様に歳幼い若造の弱味とも称して差し支えない失言が、あの場に置いて承諾された次第である。

「構わないだろう。明日俺一人だけで、改めて赴こう。故に、何ら気に病む必要はない」

 多分に罪悪感を覚えて胸中を痛めているユキの心情を悟るに至る龍鬼は、的確に沈んだ心を解きほぐす言葉をかけてみせた。

 慰めの言葉を受けた悲痛な面持ちを浮かべていたユキは、沈痛に荒んでいた心中を、幾分か晴らすことができた。

 先程の翳りが見受けられる美貌からは一転、華が咲き誇らんばかりの美しい微笑を称えてみせる彼女である。

 まるで聖母の如き笑顔を浮かべて見せたユキは、先程まで自らに抱いていた、失望から湧き上がる自己嫌悪を納めた。

 沈痛な面持ちは跡形もなくなりを潜めて見受けられ、愛しい自らの父との暖かい言葉を交わした現在に至り、平素からの余裕が見受けられる。

「‥至らぬわたしにその様な御心遣い、本当に嬉しいです。ありがとう御座います」

 幾分か情緒を乱していた今までの彼女とは見違える程に、普段からの穏やかな立ち振る舞いが見て取れた。

 どうやら、心底から求めていた自らを肯定する言葉を、愛する龍鬼から的確なまでの手際でもってして与えられて、調子を取り戻したと言った具合。

 しかしながら、幾ら気を取り直したといっても、行使した術の疲弊から受ける身の負担は免れない。

 毅然とした立ち振る舞いを心掛けていながらも、殊更なまでの睡魔により垂れた眦からは、圧倒的な程に強烈な疲労が窺うことができる。

 最早心身共に余裕がない彼女は、殊更に身を襲いくる眠気に伴う気怠い心地に、既に意識が限界を迎えている。

「何、この程度、父として当然の義務を果たしたまでだ。‥今までは、あまり構ってやれなくてすまなかった」

 特段言及された訳でもないものの、元来無骨ながらも律儀な気性である龍鬼は、己の冒した過ちを想起して、悔いる様な声色で謝罪する。

 その声音からは、心底からの後悔の念が見受けられ、言葉を与えられたユキは、一度瞳を見開いた後に、緩慢な動作で左右にかぶりを振った。

「‥それは‥わたし自身にも非が御座いますので‥それにお父様は何も悪くありません。全ては、愚かで至らないわたしの不徳が致すところ」

 龍鬼からの言葉を受け、身を焦がす様な罪悪感に苛まれたユキは、その儚くも美しいかんばせに伏せ、自らの罪を告白する。

 まるで懺悔するかの様にして、白金に輝く眩いばかりに美しい、宝石の如き瞳を僅かながらに潤ませる。

 初雪の如き純白の肌を僅かながらの色付かせ、可愛らしくも仄かに赤く染まった頬は、何処か蒸気している様に見受けられる。

 白金色の長い睫毛に彩られている、宝石の如く透き通る大きな瞳は、まるで何かを期待するかの様に、自らの父を見上げている。

 雄に媚びるかの様にして上目遣いで己を仰ぎ見るユキに対し、場違いにも肉体の奥底から湧き上がる強烈なまでの獣欲を昂らせた龍鬼は、強靭なる意志でもってして邪な思考を振り払う。

「ですから‥今夜はわたしに罰を与えてくださいまし。‥お父様」

 しかながら、雄の欲望に対しては殊更なまでに敏感なユキは、些細な龍鬼の感情の機微までも正確に悟る。

 娼婦といえども思い浮かばない様な、多分に艶を含んだ声色で、容易く雄の欲望を掻き立てる口上を述べてみせる。

 圧倒的なまでに淀みない、流れるかの様な洗練された手腕は、幾度となく教育を施された証左であろう。

 淫魔の如く熟れた立ち振る舞いで、自らの実の父に対し、何の躊躇いもなく媚びた声音で懇願する姿は、大いに扇状的に過ぎる光景だ。

 まるで脳髄に浸透して犯し尽くさんばかりに龍鬼の脳髄で反響するユキの声は、雄の理性など容易く崩壊させてしまうだけの魔性を秘めている。

 無論聞き届けられている彼女の艶かしい嘆願の言葉に、反応を示さずにはいられない龍鬼の剛直は、雄々しく天を衝く様にして屹立する。

「あ‥❤️凄いです❤️お父様のここ、とても御立派であらせられます❤️」

 身に付けている衣服の布地を突き破らんばかりに張り詰めている逞しい陰茎を、まるで幼子を宥めるかの様な慈愛に満ち溢れた手つきで撫でさするユキである。

 それは、一見しただけでは見て取ることができない、極限まで洗練された手練手管でもってして、的確に性感を捉えた動きだった。

 衣服越しに這い回るユキの繊細な五指の微細な感触は、緩慢ながらも龍鬼の抑えつけていた獣欲を昂らせる。

 艶かしく踊るユキの指先は、雄々しく勃起した男根の根本から肉竿の頂点までに伝い、擽る様にして先端を弄ぶ。

「ユキっ‥、此処では一眼につくやもしれん。故に望むのであれば、人目を憚る必要のない寝屋にて、存分にその胎に、俺の子種を注いでやろうではないか」

 手慣れた手淫からもたらされる強烈な快感に背筋を震わせながらも、与えられた快楽に身を委ねることがない龍鬼は、危険な色を帯びた瞳を血走らせ、ユキの耳元で囁いた。

「んっ❤️嬉しいです❤️お父様の寵愛を賜ることができて、ユキはもう‥❤️」

 平素の強面よりも遥かに迫力が伴って見受けられる龍鬼の言葉を受けて、殊更に昂りを覚えた彼女は、自らの身に付けていた下着を溢れでた蜜液で濡らす。

 あまりにはしたない肉体に羞恥を覚えたユキは、純白の肌を真っ赤に染めると同時に、思わず自らの秘所へと手を伸ばす。

「ははっ、ユキは本当にいけない子だな。この様な場所で自身を慰めるなど、誰かに見られてしまったらどうする?」

 身を焦がす様な恥辱に震える彼女の様子を目の当たりとした龍鬼は、追い討ちとでも言わんばかりに、言葉を並べてみせる。

「そんな‥❤️お許しくださいませ❤️わたしはその様なはしたない女ではないのです❤️わたしが愛しているのは、お父様ただ一人で御座います❤️ですから早くこの卑しいわたくしに、貴方様のお情けをくださいませ❤️」

 まるで欲情を煽るかの様にして繰り出された言葉を受けたユキは、龍鬼の思惑通り、殊更に瞳を潤ませて、健気にも懇願の意を示す。

 最早理性が決壊したのは彼女の方で、艶やかな薄桃色の唇を突き出し、必死に口づけを嘆願する。

「ああ、言われずともそのつもりだ」

 平素からの自らの立ち振る舞いを顧みることもなく、美しいかんばせを蕩けさせているユキの姿を前にして、龍鬼の口元が緩む。

 眼前には木造建築で誂えられている、本来であれば二人暮らしも到底ままならない様な、小規模な平屋。

 無事に改めて刺客に襲われることもなく、帰宅を果たしたことに対し、不意に違和感を覚えた龍鬼は、片腕に抱えている暗殺者の少女へと視線を向ける。

「‥」

 しかしながら彼の懸念も杞憂に終わった様であり、少女は規則正しい寝息を立てて、心地よさげに深い眠りへと誘われていた。

「お父様‥?」

 神妙な面持ちを浮かべていた龍鬼の強面を、怪訝な表情で仰見ていたユキが、不安げな声音で問いかける。

 訝しげな眼差しで見上げられていることに気が付いた龍鬼は、その視線を霧散させるかの様にして、穏やかな声音で返答した。

「自制が効きそうにない。すまんが覚悟してくれ」

 だが、優しげな声色とは裏腹に、期待するユキへと与えられた言葉の意味するところは、殊更に退廃的で、淫靡な響きが含まれていた。

 耳元にて囁かれた火傷してしまいそうな程に熱い吐息。

 まるで脳髄までも浸透かの様にして聞き届けられた、身を焦がす様な情動を殊更に昂らせる内容の言葉は、ユキの心臓を大いに高鳴らせた。

 早鐘の如く激しく脈打つ自らの鼓動に応じて、自身の吐き出す吐息が、殊更に荒くなっていくのを自覚する彼女である。

 堪らず木造の扉を乱暴に押し開き、家中へと足を踏み入れた龍鬼は、脇に抱えた暗殺者の少女を居間の畳の上へと転がした。

 深い眠りへと意識が誘われていた少女は、心地の良い夢の彼方へと身を委ね、一向に覚醒する兆しを見せることはない。

 そのまま規則正しい寝息を立てて、仰向けの姿勢へと横たわる少女の居室を後にする龍鬼である。

 次いで彼の逞しい胸板に抱えられたユキは、されるがままの従順な態度にて、寝室へと運びこまれた次第である。

 予め敷かれていた布団へと、腕に抱えたユキを、流れる様に洗練された動作にて横たわらせた龍鬼は、続いて仰向けとなった彼女の両腕を押さえつける。

 丸太の様に逞しい万力の如き膂力でもってして動きを封じ、分厚い胸筋に押し潰される様にして、覆い被さった龍鬼は、情欲に塗れたユキの瞳を覗き込む。

 対して、岩男の様に自らよりも遥かに強靭なる体躯を誇る巨体でのし掛かられた彼女は、身動きすらままならない様子で、肉体を硬直させた。

「来てください、お父様」

 しかしながら自らが慕い、懸想する父に対して、何ら怯える様子を見せることのないユキは、その美しいかんばせへと聖母の如き微笑を称えて見せる。

 自らの下腹部へと押し付けられている、今にも身に付けている布地を突き破らんばかりに屹立した男根を、宥めるかの様にして、手中にて弄ぶ彼女である。

 これ以上の刺激を与えては、すぐにでも暴発してしまいそうな程に張り詰めた逞しい剛直が、純白の五指に包まれて、大きく脈動する。

 まるで己の娘の懇願に誘われるかの様に、肉体の奥底から湧き上がる、強烈なまでの衝動に身を委ねる龍鬼。

「‥すごい‥❤️こんなになって‥❤️」

 殊更に雄々しく屹立する彼の陰茎に対し、きめ細かく繊細な、純白の五指を伝わせるユキは、その逞しい雄の象徴に感嘆の意を示す。

「ユキ、俺はもう」

 微細ながらに与えられる快感に、より一層のこと理性を解きほぐされた龍鬼は、自制の限界を余儀なくされた。

 まるで堰き止められていた濁流が決壊するかの如く、己の内から迸る、漲る様にして次第に高まっていく獣欲に身を任せる。

「‥んっ❤️」

 艶やかな白金の長髪を横に流し、シミひとつない繊細な首筋を露わとしたユキは、龍鬼の無骨な五指の感触に僅かばかりの嬌声を零す。

「んんっ❤️」

 艶かしい首筋へと口付けた龍鬼は、もう一方の逞しい五指でもってして、ユキの身に付けている着物を取り払う。

 はだけさせた布地から垣間見えるのは、眩いばかりの純白を彩る扇状的な印象を受ける黒色の下着。

 良質な生地の納められている、たわわに実った豊満な乳房が、圧倒的なまでの弾力を伴い、柔らかに揺れた。

 肉感的な乳肉とは対称的に、無駄な贅肉がこそぎ落とされているかの如く、引き締まった腹部は、より一層雌としての魅力を引き立てている。

 そんな上半身を支えているむっちりとした肉付きの良い臀部は、畳に押し潰されて、柔らかな形を歪ませていた。

 くびれている腰回りと同様に、張りのあるこれまた艶かしい純白の太腿は、白磁の如く、思わず息を呑む程に美しい。

 未だ幼き齢に似つかわしくない程に豊満な肢体へと視線を釘付けとされる龍鬼は、己の雄々しく屹立した男根が、いつの間にか外気へと露出していることに思い至る。

 眼下では、流れるような動作で龍鬼の衣服を下ろしたユキが、逞しく勃起した陰茎を手中に納めている。

 根本から先端にかけて、まるで労わるかの様にして、慈愛さえ見受けられる程に、丁寧な手付きで手淫を繰り返している。

「あっ❤️んんっ❤️これっ❤️すごいですっ❤️」

 今にも暴発してしまいそうな程に張り詰めている陰茎の先端を、自らの秘所へとあてがう彼女は、なんの躊躇いもなく、膣口へと挿入させた。

 醜悪な赤黒い亀頭が、なんら容赦なくユキの膣奥を抉り込み、既に濡れそぼっていた粘膜を貫いた。

「おおッ」

 膣壁の粘液に包まれた男根から伝えられる、ねっとりとした温かな感触に、獣の如き咆哮をあげる龍鬼である。

 圧倒的なまでに昂った、強烈な程の獣欲に身を委ねている彼の、逞しい男根が、ユキの胎へと打ち付けられる。

 重たい腰つきで勢いよく彼女の尻肉へと己の肉体で圧迫する龍鬼は、抗い難い衝動のままに、男根を突き刺した。

「あんっ❤️ああっ❤️あっ❤️お父様っ❤️お父様ぁっ❤️」

 逞しい龍鬼の強靭なる肉体に、まるで押し潰されているかの様な心地へと陥ったユキは、そこから得られる強烈なまでの悦びに甘い嬌声を零す。

 幾度となく膣の奥を抉られたユキは、子宮口へと男根が突き刺さるたびに、悲鳴の様な喘ぎ声を漏らした。

「ああっ❤️ああんっ❤️」

 一時すら途切れることなく打ち付けられる男根から与えられる快楽に、自然と唇から舌を突き出して、無意識にも口付けを懇願する彼女である。

「わたしっ❤️んんっ❤️もうっ❤️お父様っ❤️」

 強烈なまでの身を焦がす様な快感に、美貌を蕩けさせての懸命な嘆願に対し、間髪入れずに応えて見せた龍鬼が、薄桃色の艶やかな唇を奪う。

 舌を濃厚に絡ませて、湯水の如く口腔粘膜から湧き出てくる唾液を、なんの躊躇いもなく、互いの口内へと流し込む。

 相手との境界線すら曖昧になる程に深い口付けを交わす二人は、まるで蛇の交尾の如くお互いの肉体を密着させる。

 唾液に濡れた舌先で、口腔粘膜を愛撫する龍鬼にされるがままに従順に、唇を貪られるユキである。

 息を継ぐ暇すら与えられないままに舌を弄ばれてしまう彼女の秘所からは、勢いよく溢れ出た潮が、留まることなく噴き散らかされた。

 そんな思いがけない痴態を受けて尚、何ら意に解することなく、丹念にユキの唇を嬲り続ける龍鬼。

 己の雄臭い唾液を、熟れた果実の如く甘い匂いを発しているユキの口腔へと送り込み、雌を支配する欲望を満たす。

 龍鬼の乱暴な舌を、何ら拒む様子もなく迎え入れるユキは、脳髄で弾ける様にして明滅する快楽に身を任せるがままに、自ら腰を動かした。

 龍鬼の逞しい腰遣いとは異なり、無様にも尻肉を揺らすユキのか弱い懇願に応える様にして、男根が勢いよく脈動する。

 幾度となく突き入れられた肉竿が繰り返される、ねっとりとした摩擦により与えられた快楽に歓喜するかの様に打ち震える。

 伝えられる断続的な快楽に耽溺し、溺れるかの様にして、獣の如き交尾へと身を投じる二人を盗み見ている者がいる。

 僅かながらに隙間を見せている閉ざされた襖越しににて、ユキの甲高くも上擦った甘い声に覚醒を果たした暗殺者の少女がその場に身を潜めている。

 自らの責務すら忘却して呆然とした面持ちで、二人の情事を食い入る様にして眺めている少女の頬が蒸気する。

 初々しいながらも、林檎のように赤く染まった白磁の如き雪色の肌は、眩いばかりの張りを見せつけて美しい。

 初雪の如き肌に紅一点に咲き誇る、薄桃色の唇は、目の前で繰り広げられている卑猥な光景に気圧されて、戦慄いている。

 しかしながら、退廃的な交尾を見せつけている二人から、その淫猥な空気に当てられたのか、少女は自らの秘所へと手を伸ばす。

 そして─

「んっ、だめ‥」

 だが、未成熟な縦筋へと指を押し当てた、その刹那に脳裏を過るのは、これまでの過酷な人生に置いて培われてきた経験。

 その瞬間、流れるように洗練された動きでもってして、瞼を伏せた彼女は、再度意識を眠りへと落として狸寝入りを決め込んだ。

 再三に渡り、二人の寝首を掻く腹積りである少女は、普段の様に手慣れた呼吸でもって、規則正しい寝息を立てて見せる。

 懐に納められている暗器の柄に指を這わせ、未だ曖昧に靄がかかっているかの様な思考を鮮明にしていく。

「‥うそ‥」

 しかしながら、そこまでの平素通りの作業を完遂した彼女は、己の肉体から痛みが消失している事実に思い至る。

「‥まさか‥」

 そこでふと想起されるのが、武闘会でユキが見せた、神のみわざと称しても何ら差し支えない程の、圧倒的なまでに強力な神聖術。

「‥うぅ‥」

 自らに施された慈悲と称しても過言ではない程の善意に対し、苦悩の表情を浮かべた少女は、その幼き美貌を歪ませる。

「‥わたしは‥」

 受けた恩には仇で持って返すのが、暗殺者の性質であり、常套手段ではあるのだが、未だ幼き身の少女は逡巡する。

 その身に余る程の命を受けた彼女は、己の手中に既に納められている暗器の柄を強く握り締めると同時、肉体を脱力させて息を深く吸った。

 幸いにして二人の情事は未だ続けられている様であり、艶かしく甲高い喘ぎ声が、家中に響き渡っている。

 それが災いして、少女が意識を取り戻したことを、龍鬼達が悟れる筈もなく、甘い嬌声だけがこの場を支配していた。

 熱に浮かされた様に荒い呼吸に掻き消された特徴的な息遣いは、次第に少女の思考を明瞭にしていき、一つの決断を下す。

 握りしめていた五指を緩ませて、肌が白む程に硬く掴んでいた、暗器の柄を離すと同時に、横向きになる。

 胎児の様な姿勢となった彼女は、静かに瞼を伏せて、これから己が遂行すべき任務について、実行をするべきか、機を逃すかの二者択一の葛藤だろうか。

 ただ今だけは自らの命の恩人である二人に対し、恩を仇で返す様な、無様な醜態を晒すつもりはなかった。

 そんな平素の冷徹な暗殺者としての彼女らしくない判断を下した少女は、上擦った甘い嬌声が支配する部屋の中で一人、再度の睡魔へと身を委ねた。
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