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2016.11.5(土)
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僕には棚橋という悪友がいる。
ただ、昨日はその悪友と飲むべきではなかった。と、朝起きたときは確かに思った。
昨日は会社の飲み会だった。二次会が終わり、次の店へ移動しているときは、まだ早とちりな雪景色を眺める余裕も合ったように思うが、僕の記憶は三軒目の途中からなくなっている。
職場の面々を見送っていた僕は、大学時代に戻って飲み直そうと例の棚橋に誘われて、大人しく付いていった訳だが。まさかそれで僕の価値観がこんなに揺らぐとは、その時は思うまい。
「……で。お前、最近どうなのよ?」
二杯目にと、棚橋が勝手に頼んだ日本酒がきた直後だった。何が言いたいのかそれとなく検討はつくが、念のため……一応、聞き返す。
「どうって、なにが?」
「そりゃ、お前。女だよ、女。」
やっぱりその話題か。残念だが、僕はお前と違って女好きではないんだよ、と言いかけたが、確かにしばらく……何もない。思わず口をつぐんだ僕を見て、棚橋は意味深な笑顔を僕に向けた。
「お前、知ってるか?最近はSNSでも簡単になぁ……」
「僕はいいよ、そういうのは」
「ばか、違うよ」そう僕をたしなめながら酒をつぐ棚橋。「俺が引っかけてるとかじゃないの。」
そう言って彼が差し出したスマホの画面は、確かに見慣れたSNSアプリだったが、明らかに見慣れない光景でもあった。
【パパ活中】【エッチ大好き。】【平日18時以降会える方】ーーー
「ほらな?それにこんな動画まで載せてんだぜ。」
ほらな、と言われても。そう思ったのも束の間、僕は目の前に掲げられたスマホを見て衝撃を受けた。本来ならモザイクで全面隠れるであろう映像に思わず日本酒を吹き出しかける。
「ちょ……やめろよ。」
「つれねえなぁ。」
「いや……だからって本人かどうかなんて分からないだろ。」
「大丈夫だって。会う前にお互い確認するわけだし。」
にしても、と渋る僕をよそ目に、まあ飲めとつがれる酒。僕は自分の目の前にひけらかされたあのカオスな状態と、久々の日本酒に頭痛がしていた。
正直、それからの記憶は曖昧だ。
ーーー意外と近場にもいるだろ、な?ほら、この子とか……大丈夫だって。
僕はその頃には面倒になって、彼の話に付き合うふりをして、絶対連れなさそうな女の子にメッセージを送ることにした。
棚橋は、裸の写真一枚すら載せてない女なんて、それこそ怪しいだとか一々煩かったが、ここでヤる相手を探そうなんて、僕は端から思っちゃいない。
【すがらない。深入りしない。名乗らない。この三点を守れる方のみお相手します。】
なんだよ。お相手します、って。苦笑いを浮かべながらも先程の映像がフラッシュバックする。男の性がそうさせるのか。
『こんばんは。三点、厳守します。僕で良ければ会っていただけませんか。』
「……これでいいだろ。」
彼がそうしたように、僕もスマホの画面を彼の目の前に突き付けた。それからどうなってーーーどうやって帰ったかは、思い出せそうにないが。
ただ、昨日はその悪友と飲むべきではなかった。と、朝起きたときは確かに思った。
昨日は会社の飲み会だった。二次会が終わり、次の店へ移動しているときは、まだ早とちりな雪景色を眺める余裕も合ったように思うが、僕の記憶は三軒目の途中からなくなっている。
職場の面々を見送っていた僕は、大学時代に戻って飲み直そうと例の棚橋に誘われて、大人しく付いていった訳だが。まさかそれで僕の価値観がこんなに揺らぐとは、その時は思うまい。
「……で。お前、最近どうなのよ?」
二杯目にと、棚橋が勝手に頼んだ日本酒がきた直後だった。何が言いたいのかそれとなく検討はつくが、念のため……一応、聞き返す。
「どうって、なにが?」
「そりゃ、お前。女だよ、女。」
やっぱりその話題か。残念だが、僕はお前と違って女好きではないんだよ、と言いかけたが、確かにしばらく……何もない。思わず口をつぐんだ僕を見て、棚橋は意味深な笑顔を僕に向けた。
「お前、知ってるか?最近はSNSでも簡単になぁ……」
「僕はいいよ、そういうのは」
「ばか、違うよ」そう僕をたしなめながら酒をつぐ棚橋。「俺が引っかけてるとかじゃないの。」
そう言って彼が差し出したスマホの画面は、確かに見慣れたSNSアプリだったが、明らかに見慣れない光景でもあった。
【パパ活中】【エッチ大好き。】【平日18時以降会える方】ーーー
「ほらな?それにこんな動画まで載せてんだぜ。」
ほらな、と言われても。そう思ったのも束の間、僕は目の前に掲げられたスマホを見て衝撃を受けた。本来ならモザイクで全面隠れるであろう映像に思わず日本酒を吹き出しかける。
「ちょ……やめろよ。」
「つれねえなぁ。」
「いや……だからって本人かどうかなんて分からないだろ。」
「大丈夫だって。会う前にお互い確認するわけだし。」
にしても、と渋る僕をよそ目に、まあ飲めとつがれる酒。僕は自分の目の前にひけらかされたあのカオスな状態と、久々の日本酒に頭痛がしていた。
正直、それからの記憶は曖昧だ。
ーーー意外と近場にもいるだろ、な?ほら、この子とか……大丈夫だって。
僕はその頃には面倒になって、彼の話に付き合うふりをして、絶対連れなさそうな女の子にメッセージを送ることにした。
棚橋は、裸の写真一枚すら載せてない女なんて、それこそ怪しいだとか一々煩かったが、ここでヤる相手を探そうなんて、僕は端から思っちゃいない。
【すがらない。深入りしない。名乗らない。この三点を守れる方のみお相手します。】
なんだよ。お相手します、って。苦笑いを浮かべながらも先程の映像がフラッシュバックする。男の性がそうさせるのか。
『こんばんは。三点、厳守します。僕で良ければ会っていただけませんか。』
「……これでいいだろ。」
彼がそうしたように、僕もスマホの画面を彼の目の前に突き付けた。それからどうなってーーーどうやって帰ったかは、思い出せそうにないが。
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