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初恋編

22話 嫉妬に揺らぐ炎 *

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 カイルは、ひととおり帝国内の主要な貴族にフィオナ王女の紹介が終わると、疲れた王女を一足早く夜会から下がらせ寝室まで送り届けた。

 その帰り、広間の2階にあるバルコニーにふと、立ち寄る。
 広間の2階は、自由に休憩ができるようなしつらえになっていて、バルコニーからは、夜の庭園がよく見渡せる。
 人気のないバルコニー出て夜空を見上げると、思わずため息が漏れ、やりきれない気持ちを鎮めようとした。
 
 ・・・リゼルは、もう、帰ったのだろうか。

 先ほどのルーファス王子のリゼルに対する馴れ馴れしい様子にカイルの気持ちが爆発寸前だった。
 今宵、会ったばかりだというのに、リゼルを我が物のように連れまわして、酒を飲ませて酔わせていた。

 婚約発表を父が宣言した時、広間の2階の幕間から見ていると、リゼルの蒼白な顔が目に入った。 内心の動揺を隠して、階下に王女をエスコートして降り立つと、目でリゼルを探したがその姿が見えなかった。

 そうこうしているうちに婚約者とのファーストダンスが始まり、程なくするとリゼルが頬を上気させながら、庭園からルーファス王子と広間に戻ってくるのが見えた。
 …それも親密な様子で手をつないで!

 ダンス中は、ルーファス王子が私を挑発するように、リゼルのあのむき出しの背中に手を這い回し、耳朶に唇を寄せて囁き、リゼルに喘ぎ声まであげさせていた。

 よりにもよって、リゼルも今夜は、あんな男を誘うようなドレスを着て、胸はというと、かがめば乳房の蕾が見えてしまのではないかと思うほど、ふくらみの殆どが露わになり、背の高いルーファス王子が下品にも、踊りながらリゼルの胸の谷間を見下ろしていた。
 
 くそっ…リゼルを盗られたくない…
 でも、自分が愛を囁くことはできない。
 契約によってローゼンのフィオナ王女を正妃に娶らなければならないのだ!
 たとえ、リゼルを側に置くことができたとしても、側妃や寵姫といった立場にしか置けないのだ。
 私の最愛のリゼルを。

 やりきれない思いにふと庭園を見ると東屋あずまやの方に、若い男女の人影が見えた。
 その影は、ベンチで熱く口づけを交わしている。

 月にかかった雲間が晴れると、月明かりに照らされた、ルーファス王子と王子にしなだれかかるリゼルの姿が浮かび上がった。

 カイルが爆発を通り越して、一瞬にして体の熱が冴え渡り、凍りついたような冷ややかな目線で、抱き合い、口づけをしあう二人をじっと見つめた。

 ほどなくルーファス王子が、リゼルに軽く口づけを落とし庭園を去ると、カイルはさっと踵を返してバルコニーから足早に階段を降りた。

 そして、先ほどのキスの余韻に浸るかのように、一人で東屋に佇むリゼルに一歩一歩、近づいた。

 ルーファス王子が去り、一人になると、リゼルは、なぜかまた寂しさに囚われた。
 いくらルーファス王子が慰めてくれても、やっぱり自分の心は満たされない。

 今夜のカイル皇子とフィオナ王女を見るのはとても辛かった。
 夜会前の幸せな気持ちが、まるで砂で出来た夢のように、手の隙間からさらさらとこぼれ落ちていった。

 今夜だけ、今夜だけでいい。
 ルーファス王子にカイル皇子を忘れさせて欲しかった。

 でも、ルーファス王子の心地よい言葉を聴き、やさしく口づけをされても、心にぽっかり空いた穴は塞ぐことはできなかった。

 私は、いつかカイル皇子を諦め、忘れることができるのだろうか・・・?

 ・・・ザザザッ!

 東屋の脇の茂みからいきなり背の高い人影が現れた。

 リゼルが驚いて振り向くと、そこには目に怒りを滾らせたカイル皇子が立っていた。

「私以外の男に肌を許すなといっただろう…」

「カ、カイル様……!」

「今夜出会ったばかりのあの男に、一体どこまで許したんだ?……リゼル?」

 カイルは、リゼルの腕をぐいと引き上げてベンチから立たせると、その体を自分に引き寄せた。
 リゼルの肩にかかったルーファス王子の上着を無造作に投げ捨ると、自分の所有物だと自己主張するかのように、きつく抱きしめ、その甘い香りを吸い込む。
 
 ゆるいウェーブのかかった柔らかい髪の上から唇を耳もとに当てると、熱い湿った唇で耳朶を甘噛みし、むき出しの背中を両手でまさぐった。

 しっとりと滑らかで柔らかな肌の感触が、その手に伝わる。
 今夜のリゼルを目で追いながら、その乳白色の背中をただ遠くから眺めるばかりで、ずっとこんなふうに触れたくてたまらなかった。
 
 リゼルは、カイルの男らしい骨ばった手が自分の背中の感じやすい部分を撫でると、その温もりに包まれ、体の奥がじんじんと熱くなるのを感じた。
 婚約者のいる皇子に、自分の中に欲望という泉が湧き上がる。

 カイル様は、婚約者のいる方。
 こんなことをしては、いけない…
 
「…やっ、やめて…」

 リゼルはカイルの硬い胸に手を置いて押し留めようとしたが、逆に、腰を捕まれ引き締まった体に押し付けられてしまった。

「あいつには、許しただろう…?」

 カイルはリゼルの顎を捉えて、熱くたぎる唇でリゼルの唇を塞ぎ、強引に唇を割って舌を差し込んだ。

「んぁ…!」

 互いの舌が、ぬるりと絡み合うと、その瞬間、リゼルの体に熱い衝撃が貫き、あまりの悦楽に体が震えた。膝ががくがくと崩れそうになり、今度は、カイル皇子の胸元をきつく握りしめる。

 カイルは、リゼルの唇を貪るように吸い、逃れようとするリゼルの舌を追い詰め、柔らかな舌を捉えるとその感触を堪能する。

 二人は、この一瞬、互いの口づけに溺れていた。

 舌が絡み合い、くちゅくちゅとした淫らな音をたて、口づけの水音が、しんとした庭園に響く。

「ルーファス王子は…どんなふうに君を感じさせたんだ?」

 リゼルの顎を掴んで、カイルが蔑むような目を向ける。

「やっ…やめ……」

「こんなふうに?」

 ざらりとしたカイルの舌が唇に触れ、その奥に侵入すると、熱い舌でリゼルをとろとろに蕩けさせた。まるで罰しているかのように、執拗に舌を絡めとる。
 
 カイルは背中を撫で回していた手を移動させ、ドレスの胸元を強引に押し下げると、真白い乳房がこぼれ出た。

「この美しい胸を、ルーファスにも触れさせたのか…?今夜のこの淫らなドレスは私以外の男を誘うためなのか…?」

 両手で荒々しく乳房を掴んで揉みしだくと、先端に色づく蕾を親指の腹できゅうと押し付け、引っ掻くように弄ぶ。そして、固く尖った蕾をつまみあげた。

「んあっ……んっ…!」

 リゼルは、足元から快感がぞくぞくと駆け上がり、こみ上げる欲求に打ち震える。

「その喘ぎ声を、ルーファス王子にも聴かせていただろう…」

 リゼルの腰を弓なりにし、ふるりと揺らぐ乳房をまるで極上の甘美な献上品であるかのように差し出させると、愉悦の表情を浮かべた。
 月明かりに照らされて、青白く浮かび上がる乳房を指の腹できつく押し潰すように掬い上げ、桃色につんと尖った乳首をいきなり、口に含んで吸い上げた。

「んんぁ・・・!あ・・・!」

 リゼルの体が歓びに震え、大きな波が押し寄せて、快感に突き上げられた。
 こんな感覚は初めてだった。
 逃げたいと思っているのに、意思に反して請われるままに、自分の乳房を差し出してしまう。

「や、やめて…、お願…い…」
 
 いけないと分かっているのに、どんなに抗っても、カイル様の熱い手に、肌を這う唇に溺れてしまう。
 荒々しく私を蹂躙しているというのに、もっとカイル様に淫されたい感覚で一杯になった。
 その先に何があるのかはわからない。

 だけど、もっとほしい。この渇望を満たしてほしい。
 その欲望を私だけに向けてほしい。
 フィオナ様ではなく、この私に・・・ 

 リゼルは、カイルが自分の体に情欲を感じていることに、背徳的な歓びが湧き上がり甘いさざなみのように打ち寄せた。
 
 カイルは張りのある乳房を揉みしだきながら吸い、ねっとりと舐め回し、乳輪ごと甘噛みすると、リゼルの温かさ、柔らかさがカイルの口内を伝って甘美な悦楽をもたらす。

 舌の先で、さらに乳首を弾くと、リゼルが甘いすすり泣きを漏らした。
 どこまでも甘く、吸いついてくれと言わんばかりにさらに乳首がしこりを増す。
 自分の頭を痺れさせるような甘い声におかしくなりそうになり、くぐもった声で呻くと、リゼルをくるりと反対側に向け、その首筋に唇を這わせ、熱く吸い上げる。

「リゼ、他の男は考えるな…」

 カイルに後ろから乳房を両手で包みこまれ、硬く尖る乳首をクリクリと念入りに解きほぐされた。 乳輪はぷくりと膨らみを持ち、柔らかくカイルの指を沈み込ませるのに、乳首は解されればされるほど、硬く凝ってしまう。乳首を摘ままれる度に、体がびくびくと反応し快感に仰け反ってしまった。

「どんなに君を愛撫したいか、私の気持ちなど知らないだろう」

「あっあっあっ・・・ !」

 敏感な乳首を愛でるように弄られると、肌が粟立ち、狂おしいほどの甘い疼きが湧き上がる。
 甘い責め苦に我慢できなくて、ねだるように腰をくねらせた。
 後ろからぴったりと硬い体を重ねられ、熱い吐息が耳に吹きかけられると、ぞくりとして頭が痺れ、何も考えられなくなってしまう。
 抱きしめられた身体に押しあてられたカイルの熱い欲望の証が硬さを増していく。
 その熱をもっと感じたくて、無意識にお尻を捩らせた。

「くっ、リゼル・・・」

 重ねられたカイルの身体がぶるっと震えるのが伝わってきた。

「私を煽るな」

 乳房を揉みしだきながら、もう片方の手でドレスの裾をたくし上げると、カイルの手が下着の中に侵入し秘部に直接触れてきた。

「ん…っ、あぁっ…」

 その感覚にビクンと体が跳ねあがった。
 長い指で撫でられた秘唇のやわりとりた巻き毛はしっとりと濡れ、それをかき分けながら、つぅっと撫で下ろし、蜜口に指を差し入れると、そこは既にとろとろに溶けた蜜が溢れ出していた。

「もう、こんなに、濡れている…」

 カイルは溢れ出る生温かい蜜をぴちゃぴちゃと指に絡めながら、秘裂を伝って媚肉の中にある花芯を探る。

「ああ、ここも、こんなに膨らませて」

 とろとろに濡れ、ぷっくりと膨らんだ敏感な花芯に指をあてがうと、リゼルはびくびくと腰を跳ねさせた。

「っあ、っあ…っあ…!」

「ここが気持ちいいのだろう…?」

 カイルはリゼルの花芯の中心にある真珠の玉のような粒に指の腹を押し付け、くちゅくちゅとゆっくりと撫でさすり始めた。

 自分の中心がどんどん熱くなり、痛みにも似た甘い感覚が身体中を駆け巡る。

「あああっ……いやっ、あん……」

「リゼル、君の感じるところは、もうすでに知っている…」

 カイルがくちゅくちゅと水音を立てながら、自分の一番敏感な部分を弄ぶ。
 こんな淫らなことをしてはいけないのに、リゼルの中にある情欲が弾けだし、甘い快楽を求め、さらにはしたなく腰を揺らせてしまう。

「無垢で淫らなリゼル。もっと…してほしいのか…?ならば、いかせてやろう」

 カイルはひとしきりくちゅくちゅと花芯を弄ぶと、ひときわ強く陰核を指でつまみ上げた。

「あっ!!!あっ___!」

 強烈な快感に襲われ、ガクガクと痙攣すると、だらりと力が抜けた。
 その後も快感の波が後から後から押し寄せ、小刻みに体が震えている。
 頭の中が真っ白になり、恍惚以外、何も考えられなくなった。

 カイルは小刻みに痙攣するリゼルを後ろから抱きしめ、リゼルの絶頂が通り過ぎる間、その首筋に唇を這わせて自分の荒い呼吸を整える。

 ーもう、引き下がれない。

 そのまま震えるリゼルを横抱きに抱き上げると、ふっと、庭園から姿を消し、自分の宮殿の寝室にリゼル抱いたまま、転移した。


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