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束の間の幸せ4

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 結婚式は午前の早い時間だったから、朝、家を出るのは早かった。仕事が落ち着いている僕と違い、忙しい樹くんは帰宅が二十三時を回っていた。なんでも、そのままだと休日出勤になりそうで、でも先輩方に回すのは申し訳ないと思い、遅くまで残って終わらせてきたらしい。
 だから、朝早い時間に起こすのは可哀想だったけれど、まさか結婚式の日に遅刻する訳にもいかず、心を鬼にして起こした。

「やっぱり土曜の朝はキツイよなー」

 まだ、どこか眠そうな顔をして着替えをしている。

「大丈夫? 食事会が終わったら、早めに部屋に入れるといいね」
「そうだな。入って少し昼寝したい。そうしたら元気出ると思うんだ」
「式場に着いて支度できたら、横にはなれないけど少し寝たらいいよ。全く寝ないよりはいいでしょう」
「そうしようかな。どうせ控室、優斗と別々だし。それより、お父さんと二人きりとか大丈夫?」
「多分、ギリギリにならないと来ないんじゃないかな。今回の結婚は乗り気になってくれたけど、基本的に僕はあの人にとって出来損ないの子供だから」
「まぁ、それなら、俺もその頃には優斗のところ行けたら行くよ。できるだけ二人にはさせないようにするから」
「ありがとう」

 そう。今回の結婚は、たまたま相手がKコーポレーションの御曹司である樹くんが相手だったから反対はしなかったけど、僕が勝手に樹くんと番契約したことは面白くないらしい。ほんとKコーポレーションの名前に助けられた。
 それでも、ベータに産まれてきて、しかも子供の頃からホルモン剤を注射したにも関わらずオメガになれなかった落ちこぼれだ。しかも、後天性オメガになったとき、僕から父に連絡をしなかった。それは面白くないだろうな、と思う。
 だから、式の日とはいえ、そんなに早くに来ることはないと思う。それが証拠に、なんの連絡も来ていない。樹くんのところはお義母さんから電話が来ているのに。それが父の気持ちの現れだと思う。

「あぁ、でも、早く優斗の姿見たいから寝てられないかも」

 そう言って気持ちを楽にしてくれる。父のことを考えると、僕が元気をなくすのを知っているからだ。
 ダメだな。樹くんは前日までの仕事で疲れているんだから、気まで使わせてどうする。本当なら僕が癒さなきゃいけないのに。

「薄いブラウンなんて優斗に似合ったもんな」

 今回、式で着る服はレンタルではなくて誂えた。そのときに、僕は薄いブラウンに濃いブラウンがアクセントに使われたフロックコートを選んだ。濃い色はなんだか似合わなかったのだ。
 そんな僕に対して樹くんははグレーに差し色に黒の入ったフロックコートを選んでいだ。それは男らしくて、それでいて優しげな樹くんにぴったりだった。
 僕こそ格好いい樹くんが早くみたいのに。

「よし!支度完了。早く行こう。今日はうちから車来るんだろ。少しでも遅れると怒られる。もう出れる?」
「うん。こっちは大丈夫だよ」
「じゃ行こうか」 
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