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最終章 3 ミライへ

ベッドの上で語るような

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「はぁー、疲れた」

 地面に降り立つと、一気に疲労感が押し寄せてきた。

無敵の二人ラブ・ユニバース】モードを解除すると、体からさらに力が抜けて倒れそうになる。

「大丈夫ですか、誠道さん」

 いつのまにか隣に立っていたミライが体を支えてくれた。

「すまん、ちょっとふらついて。思った以上に体が悲鳴を上げてる」

 言葉にした瞬間に、体が思い出したように痛みを放ち始める。

 とくに腕がヤバい。

 筋肉も関節も骨も靭帯も痛みを放っている。

「たしかに、私も思った以上に疲れました」

 ミライの声にも疲労が含まれているが、それ以上に興奮色に染まっていた。

 ミライに支えられるようにして一緒に座り……なんか流れで膝枕されたけど、まあいま俺は非常に疲れてるからしょうがないね。

「でも、はじめて誠道さんとひとつになれて嬉しかったです。誠道さんという存在が直に伝わってくるのがこんなに気持ちよくて、暖かくて、幸せだったなんて。想像の倍以上疲れましたが、いまはこの疲れすらも愛おしいです」

 笑顔のミライが、俺の乱れた髪をすきながらそう言ってくれたので「だな」とうなずいた。

 俺だってミライとひとつになれて、一緒に戦えて、とても心強かった。

 それに、またミライと一緒に過ごしていけるという最高の結末も迎えられた。

「思った以上に激しかったですし。誠道さんもいろんな技を駆使したので疲れたでしょう」

「まあな。でも、本当に心地いい疲れだよ」

「まだ誠道さんが私の中にいるって思います」

「ミライが俺の中に入ってたんだろ。ま、俺もまだミライとひとつだって気がしてる」

無敵の二人ラブ・ユニバース】を解いているのに、ミライの気持ちが手に取るようにわかる。

 ミライの心と共鳴しているって思える。

 そうか!

 これが彼氏彼女ってことなんだな!

「誠道さんとひとつになっているときのことを思い出すだけで、まだ体が熱くなります。本当に幸せでした」

「俺も、まだ体の中に余韻が残ってるよ」

「誠道さん。また私とひとつになりましょうね」

「機会があればな」

「またまたぁ。恥ずかしがらなくても、今すぐにでも私とひとつになりたいって言っていいんですよ」

「普通に激しかったし、疲れてるからまたあとでな」

「二人とも」

 ひとつになれたことの幸せをミライと分かち合っていると、呆れ顔のマーズが歩み寄ってきて一言。

「ピロートークはそこまでにしてくれない? 私いま、新婚夫婦の寝室に忍び込んだ泥棒みたいな感覚なのよ」

「誰がピロートークだ! 世界を救った余韻に浸ってんだからもうちょっと静かにしてくれよ」

「誰がどう聞いてもピロートークでしょ。愛し合っている二人が愛し合った後にベッド上で指を絡め合いながら行う会話にしか聞こえないんだけど」

「は? 人前でそんな恥ずかしいこと……あ」

 さっきまでのミライとのやり取りを思い出し、俺はなんとも言えない気持ちになった。

 もし俺が部外者の立場でさっきの俺たちの会話を聞いていたら、「女の子とひとつになって世界を救うなんて、どこのセカイ系エロ漫画だよ!」ってツッコんじゃうもん。

 ってか膝枕されてるこの状況も普通に恥ずかしよ!

 俺はそそくさと体を起こし、胡坐をかいて座り直す。

 ミライが少し不満そうな顔をして。

「別に恥ずかしがらなくても」

「マーズの前だろ。そういうのはちょっと」

「私たちはすでに人前でひとつになってます。それを膝枕くらいで」

「ひとつになったの意味が違うからね!」

「え? 誠道さんはどういう意味でひとつになったを使ってるんですか?」

「いやぁ、それは……」

「冗談です。人前がダメなら、私たちの家に引きこもってるときでいいですよ」

 笑みを浮かべたミライに、俺は言葉を返せなかった。

 ただただ体を熱くするだけだった。

「また人前でいちゃいちゃと。まあ、人前で彼女とひとつになって、精いっぱい激しく動いて世界を救った二人からすれば、この程度のいちゃいちゃは日常茶飯事なのかしらね」

「すみませんマーズさん。恥ずかしいのでからかうのはもうやめてください」

「え? 私とひとつになることが恥ずかしいなんて、あんなに相性ピッタリだったのにひどいですよ」

 ミライが涙をすすっているが、これはマーズのおふざけに乗っかてる可能性がある。

「ここでミライが絡むと面倒になるからいったん黙って」

「でも私は誠道さんとひとつになって、すべてをさらけ出し……いわば丸裸にされて、激しくて、とても気持ちよくて、とても幸せだったんです! それを恥ずかしいだなんて、本当にショックで」

「今のはもはや確信犯だろ! 絶対狙って言ってるよね!」

 その証拠に、ミライは確実に嘘泣きしてます。

「まったくもう」

 ため息をついたマーズがつづけざまに。

「この二人は隙があればすぐにピロートークを」

「だからそうじゃねぇって言ってるだろ!」

「誠道さん! 浮気ですか? 私とひとつになった直後だというのに、他の女性にツッコむなんて」

「はいもう明らかに確信犯ですー。絶対狙ってやってますー」

 はぁ。

 強敵を倒して世界の危機を救った後なんだから、もうちょっと感動的な展開とか、なんかいい感じのエピローグみたいなものを期待してたのに。

 ちょっと油断したらこれだよ。

「とにかく! 俺はいま疲れてるんだ。なんだかとっても眠いんだ」

「それ死んじゃうやつですよ、誠道さん!」

 と俺たちがいつものやりとり(非常に不服だが)を繰り広げている時だった。

「ん? あっ! ってかみんなは!」

 操られていたみんなのことを思い出す。

 聖ちゃんもコハクちゃんも心出たちも、地面にあおむけに横たわっていた。

「みんななら大丈夫よ。気絶しているだけ。あなたたちがピロートークに花を咲かせている間に確認しておいたから」

「ありがとう。でもピロートークじゃないからな」

 アテウを倒した結果、みんなの洗脳も解けたようだ。

 しばらくすれば目を覚ますだろう。
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