上 下
311 / 360
第6章 6 絶世の美女と真実の愛

どうして私に

しおりを挟む
「ちっ、はずしたか」

 司会の女性はボブヘアーをわずかに揺らしながら舌打ちした。

 俺はすぐに体勢を立て直し、目を鋭くしている彼女の追撃に備える。

「次は絶対に、殺す」

「いや、なんで俺が狙われなきゃなんねぇんだよ」

「うるさい黙れ!」

 一喝され、じりじりとした緊張が広がっていく。

 司会の女性の右足がわずかに下がり、そのまま地面を蹴って俺に近づこうと――

「ユーリ、待ちなさい」

 オリョウがそう言って止めたため、司会の女性――ユーリは勢い余って転び、顔面からずずっとこけた。

 なに?

 こいつらコロコロコ〇ックでもリスペクトしてんの?

「お、お言葉ですが、オリョウ様」

 立ち上がったユーリが、オリョウの方を向き直ったけど……おでこ大丈夫?

 めっちゃ赤くなってるよ?

 そして、いつの間にかオリョウは目を見開いてM字開脚という惨めな姿ではなく、凛とした立ち姿を披露していた。

「こ、こいつはあろうことかオリョウ様に唾を吐きかけ」

「それはオリョウ様が俺にツッコませるようなことを言ったせいだからな! つばを吐きかけるのが目的じゃねぇから!」

「砂場級はちょっと黙って!」

 ユーリに凄まれ、反論の言葉を失う。

「そもそもおかしいです。だって、オリョウ様が魅了できない男などこの世に存在しない。きっとこいつは男でも人間でもないんですよ! そんな異質な存在をオリョウ様に近づけるわけにはいかず、危ないと思った次第でして」

 ユーリが慌てたように早口で弁明すると、オリョウがにこりと笑った。

「ユーリ、私を心配してくれたことは感謝します。ただ、この方の処遇を決める前に、いくつか質問したいことがありますので、下がっていなさい」

「くっ、承知いたしました」

 ユーリは渋々といった感じでオリョウの後ろに控える。

「ごめんなさい。この子も悪気があったわけじゃないのよ」

 オリョウが俺に穏やかな笑みを向ける。

 ほんと、こいつはいちいち所作が絵になるなぁ。

 きっとオリョウが地球にうまれていた、白が何種類あるかを永遠と語ってくれるようなトップモデルにでもなったんだろうなぁ。

 パリコレに出演させて乳首丸出しの衣装とか着せたら……げふんげふん、あれは芸術だぞ!

 全然エロくないんだぞ!

 そういう目で見る人の方がどうかしてるんだ。

「あなた、たしか引きこもりくんと言ったかしら」

「石川誠道と言います」

 これまでのように強めにツッコめなかったのは、笑顔のオリョウから感じる謎の威圧感に体が委縮していたから。

 こいつ、全然隙がない。

 いや、さっき目玉飛び出してM字開脚して、隙ありまくりだったな。

「じゃあ、石川くん」

 オリョウの声圧が二倍にも三倍にも膨れ上がる。

「あなた、どうして私に惚れていないの? 魅了されていないの?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

伯爵家の次男に転生しましたが、10歳で当主になってしまいました

竹桜
ファンタジー
 自動運転の試験車両に轢かれて、死んでしまった主人公は異世界のランガン伯爵家の次男に転生した。  転生後の生活は順調そのものだった。  だが、プライドだけ高い兄が愚かな行為をしてしまった。  その結果、主人公の両親は当主の座を追われ、主人公が10歳で当主になってしまった。  これは10歳で当主になってしまった者の物語だ。

処理中です...