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第5章 2 背徳快感爆走中!
浮気を目撃、奪われて
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「おっ、噂をすれば。ちょうどきましたね。私のファンたちです」
ピンクの法被にハチマキ姿の客が四人、来店する。
その中の一人は、ホンアちゃんファンクラブの会長、キシャダ・マシイだ。
幸運なことに、彼らは入り口に一番近い席に案内された。
俺たちとキシャダグループ以外に他の客はいないが、距離があるので、俺たちが目立つようなことをしなければ、まずばれることはない。
ひそひそ声なら会話も届かないだろう。
彼らも、ここに自分たちが崇拝するアイドルがいるなんて思ってもいないんだろうなぁ。
「ちっ、もっと近くに案内すればいいのに。背徳感増幅なのに」
「おい舌打ちしただろふざけんな」
「ねぇナルチー。せっかくだから席を移動しませんか?」
「なにがせっかくだよふざけんな」
俺が強めに否定すると、ホンアちゃんは唇を尖らせて上目遣いで拗ねたように。
「はぁ、本当にナルチーはいくじなしですね。私がこんなに勇気を出して誘ってるのに。ちょっとは男を見せてくださいよ」
「やたらもじもじしながら言うんじゃねぇよ。別の意味に聞こえるじゃねぇか」
「……ナルチーのけち」
ホンアちゃんが頬杖をつく。
その後ろでは、コハクちゃんがキシャダたちのところにサービスの水を持っていっていた。
四つのコップをキシャダたちの前に置いたあと、キシャダがコハクちゃんに話しかける。
うまく聞き取れなかったが、キシャダの鼻の下が伸び切っていたので……まさかセクハラされてるんじゃないだろうな。
キシャダが話し終えると、今度はコハクちゃんが、俺たちの所まで聞こえるような大きな声で。
「おいしくなーれ、もえもえきゅん!」
「「「「もえもえ、きゅん!」」」」
メイド喫茶のメイドがやるように両手でハートを作って、いま提供したお水に向けてラブラブビームを発射させたコハクちゃん。
キシャダたちもテンションマックスでその言葉を繰り返す。
「な、なにやってんだよコハクちゃんはっ」
思わずツッコんでしまって、しまったと慌てて口を押さえる。
……気づかれていないみたいだ。
キシャダたちは、コハクちゃんのラブラブビームを受けた水を飲んで、さらに鼻の下を伸ばしていた。
俺たちなんて眼中にないのだろう。
コハクちゃんはコハクちゃんで、顔を真っ赤に染めて、ぺこりと頭を下げると俺たちの方に歩いてきた。
「すみません。ちょっとうるさくしてしまって」
「いや、いいけど……なに、ここってそういう萌えを提供する店になったの?」
そう言いつつちらっとキシャダたちを見ると、彼らは満面の笑みで萌え萌え水をじっくりと味わっている所だった。
俺たちに気づく様子もない。
萌え萌え水を恍惚の表情で見つめ、ワインのテイスティング中かのように、ゆっくりじっくり味わいつづけている。
「そういうもえ? なにを言っているんですか? この店が提供するのはもえ、ではなく食べ物ですよ?」
きょとんと首を傾げるコハクちゃん。
「じゃあなんでさっき『もえもえきゅん』なんてやってたんだよ?」
「だって、あの方たちは常連客だからです。なにかお礼を……と思って聞いたら、さっき私がやったことをやってくれと言われて……ああっ、私はあの方々に必要とされてるんですねっ!」
「いますぐやめなさい。でも、試しに本当においしくなるかもしれないから、俺の水にも、『もえもえきゅん』ってやってみて!」
「え、わ、わかりま」
「ちっ」
コハクちゃんが手でハートを作ろうとしたとき、ホンアちゃんが不満げに舌打ちをした。
その舌打ちにビビったのか、コハクちゃんの動きが止まる。
ホンアちゃんの悪態は止まらない。
「あのクソファンどもが。他の女に対していつまでも鼻の下を伸ばしやがって。ファンの分際で私を裏切りやがって。あのキシャダとかいうやつ、絶対許さないからな」
「一番ファンを裏切ってるやつがそのセリフ言うなよ!」
あとよくもコハクちゃんのもえもえきゅんタイムを遮ってくれたなぁ!
ピンクの法被にハチマキ姿の客が四人、来店する。
その中の一人は、ホンアちゃんファンクラブの会長、キシャダ・マシイだ。
幸運なことに、彼らは入り口に一番近い席に案内された。
俺たちとキシャダグループ以外に他の客はいないが、距離があるので、俺たちが目立つようなことをしなければ、まずばれることはない。
ひそひそ声なら会話も届かないだろう。
彼らも、ここに自分たちが崇拝するアイドルがいるなんて思ってもいないんだろうなぁ。
「ちっ、もっと近くに案内すればいいのに。背徳感増幅なのに」
「おい舌打ちしただろふざけんな」
「ねぇナルチー。せっかくだから席を移動しませんか?」
「なにがせっかくだよふざけんな」
俺が強めに否定すると、ホンアちゃんは唇を尖らせて上目遣いで拗ねたように。
「はぁ、本当にナルチーはいくじなしですね。私がこんなに勇気を出して誘ってるのに。ちょっとは男を見せてくださいよ」
「やたらもじもじしながら言うんじゃねぇよ。別の意味に聞こえるじゃねぇか」
「……ナルチーのけち」
ホンアちゃんが頬杖をつく。
その後ろでは、コハクちゃんがキシャダたちのところにサービスの水を持っていっていた。
四つのコップをキシャダたちの前に置いたあと、キシャダがコハクちゃんに話しかける。
うまく聞き取れなかったが、キシャダの鼻の下が伸び切っていたので……まさかセクハラされてるんじゃないだろうな。
キシャダが話し終えると、今度はコハクちゃんが、俺たちの所まで聞こえるような大きな声で。
「おいしくなーれ、もえもえきゅん!」
「「「「もえもえ、きゅん!」」」」
メイド喫茶のメイドがやるように両手でハートを作って、いま提供したお水に向けてラブラブビームを発射させたコハクちゃん。
キシャダたちもテンションマックスでその言葉を繰り返す。
「な、なにやってんだよコハクちゃんはっ」
思わずツッコんでしまって、しまったと慌てて口を押さえる。
……気づかれていないみたいだ。
キシャダたちは、コハクちゃんのラブラブビームを受けた水を飲んで、さらに鼻の下を伸ばしていた。
俺たちなんて眼中にないのだろう。
コハクちゃんはコハクちゃんで、顔を真っ赤に染めて、ぺこりと頭を下げると俺たちの方に歩いてきた。
「すみません。ちょっとうるさくしてしまって」
「いや、いいけど……なに、ここってそういう萌えを提供する店になったの?」
そう言いつつちらっとキシャダたちを見ると、彼らは満面の笑みで萌え萌え水をじっくりと味わっている所だった。
俺たちに気づく様子もない。
萌え萌え水を恍惚の表情で見つめ、ワインのテイスティング中かのように、ゆっくりじっくり味わいつづけている。
「そういうもえ? なにを言っているんですか? この店が提供するのはもえ、ではなく食べ物ですよ?」
きょとんと首を傾げるコハクちゃん。
「じゃあなんでさっき『もえもえきゅん』なんてやってたんだよ?」
「だって、あの方たちは常連客だからです。なにかお礼を……と思って聞いたら、さっき私がやったことをやってくれと言われて……ああっ、私はあの方々に必要とされてるんですねっ!」
「いますぐやめなさい。でも、試しに本当においしくなるかもしれないから、俺の水にも、『もえもえきゅん』ってやってみて!」
「え、わ、わかりま」
「ちっ」
コハクちゃんが手でハートを作ろうとしたとき、ホンアちゃんが不満げに舌打ちをした。
その舌打ちにビビったのか、コハクちゃんの動きが止まる。
ホンアちゃんの悪態は止まらない。
「あのクソファンどもが。他の女に対していつまでも鼻の下を伸ばしやがって。ファンの分際で私を裏切りやがって。あのキシャダとかいうやつ、絶対許さないからな」
「一番ファンを裏切ってるやつがそのセリフ言うなよ!」
あとよくもコハクちゃんのもえもえきゅんタイムを遮ってくれたなぁ!
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