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第1章 2 俺のステータスだけ特別すぎないか
【新偉人】の特殊性
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「あれ、でもそれじゃあおかしくないか?」
冷静になって考えるととある疑問が浮かんだので、ミライに尋ねることにする。
「おかしい、というのは、もしかしてやっぱり私のおっぱいが人間のものとは違うと」
「そうじゃないっつってんだろ。戦闘経験なら、俺はすでに積んでたって話だ」
「え? いつですか?」
「だから、その……なんつーか、大度出たちにその、まあ、ボコられて……」
あれも考えようによっては戦闘だ。
経験値が入っていてもおかしくはないと思う。
「つらいことを思い出させてしまったようですね。すみません」
「いや、別にこんな雰囲気にするために言ったんじゃねぇから」
あくまで疑問を解消するためだ。
「その、大変申し上げにくいのですが、大度出さんたちのいじめ……じゃなくてボコら……でもなくて暴力行為は」
「わざわざ言いかえなくてもいいから。気にしてないし。いじめられてたとかボコられてたでいいよ」
「よくありません。一方的な暴力は立派な犯罪行為ですから、被害者が卑屈になるのはおかしいです。きちんと暴力行為と表現すべきです」
ミライは語気を荒らげて、俺のねじれた考えを正そうとしてくれる。
その優しさが俺の心に染み渡った。
「ありがとう。そうだよな。俺が卑屈になっちゃだめだよな」
「感謝なんてしないでください。私はあなたのサポートアイテムですから。いつでもあなたの味方です」
嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか。
涙が出てきちゃうよ。
「では、誠道さん。改めまして、ひとつ聞きたいことがあるのですが」
「おう。なんでも聞いてくれ」
「どこでその『い・じ・め』は行われていたのですか?」
「さっきの言葉忘れたのかなぁ? すぐいじめって言葉使ってるんですけど。強調させちゃってるんですけど」
「すみません。間違えました」
「絶対確信犯だろ!」
「本当に間違えました」
「なんならちょっといじってるだろ!」
「はい。その通りです」
「間違ってるって言えよ! いつでも味方じゃないのかよ!」
もういい。こんなことやっていても埒があかない。
俺はごほんと咳払いをして、場の空気をリセットする。
「で、どこでって話だったよな。たしか勅使が作った、経験値が二倍稼げるっていう、なんか変な空間だったな」
「なるほど。そういうことですか」
難しい顔をして、深くうなずくミライ。
「あなたが大度出さんたちに暴力行為……じゃなくていじめら」
「はい今のは言い直したので確実に意図的でしたー」
「れていた場所が原因です」
「おい無視すんな……って、え?」
場所が原因って、どういうこと?
「実は、この【新偉人】というステータスには特殊性があるのです」
「特殊性?」
なんか嫌な予感がするんだけど。
「はい。【新偉人】を持つものは、自分のパーソナルスペースかつ閉じられた空間で戦闘や訓練を積むことでのみ、経験値を獲得することができるのです。特別ですよ、やりましたね!」
「やりましたね! じゃねぇんだよ。なにその厳しい条件。おかしくない? パーソナルスペースかつ閉じられたって、ほぼ自分の家じゃん!」
「はい。だからステータスの名前が【新偉人】なのです」
きっぱりと断言するミライ。
なるほどそういうことね、だいたい理解した。
つまり、【新偉人】という固有ステータスを持っている俺は、自分の部屋に引きこもって訓練することでのみ経験値を稼げるってことだ。
すげぇじゃん。
引きこもりの俺にぴったりの固有ステータスってことか。
さすが女神様。
適材適所完璧すぎ!
やりましたね!
「ってふざけんなぁああ! なんだよその無駄によくできたルール! おかしくはないけどおかしいだろ!」
違う意味でやりましたね! だわ。
「ってか固有ステータスは異世界転生の特典なんだろ? なんで俺のだけ足かせになってんだよ!」
「でも誠道さんは引きこもりですよね? ニートですよね?」
それを言われるとなにも言い返せないからやめてくれ。
いいかげん、俺だって開き直るぞ。
「ああそうだよ。引きこもりでなにが悪い。ってか引きこもりは家にこもってなにもしないから引きこもりなんだよ。ただ家にいるだけで経験値になれよ!」
「違います。それはただの甘えです」
即座に正論を言われ言葉を失う。
ミライは姿勢を正したまま、まっすぐ俺を見据えていた。
「なにかつらいことがあって家に逃げ込む。それ自体を否定はしません。心が傷ついているのですから。ですが、大事なのは『引きこもっている間になにをするか』です。なにもしないただの引きこもりを世間は許してくれません。異世界でも同じです」
ぐうの音も出ない。
そうだよな。
せっかく異世界にきたのに、ここで変わらなくてどうする。
惨めな引きこもりから卒業できる絶好の機会じゃないか。
「たしかにミライの言う通りだわ。引きこもることは許してくれても、ただ引きこもりつづけることは許してくれないんだよな」
まさか、俺に与えられたこの【新偉人】というクソみたいな固有ステータスに大事なことを教えられるなんて思わなかった。
「そうです。自分の心を修復するため、精神を回復させるために引きこもるのならいいのです。ただ、いずれは変わらなければいけない。変わりたいと思ったなら、引きこもったままでも行動しなければいけません」
「だな。俺、がんばってみるよ」
「いい顔になりましたね。それに家に引きこもったままレベルアップできるのはむしろ利点です。他の方はモンスターと戦闘しないと経験値が稼げないんですから」
「そっか。たしかにそうだな」
ミライの言葉は一理ある。
俺は危険を冒さずに経験値を稼ぐことができる。
そう考えると、このへんてこな仕様も悪くない気がしてくるから不思議だ。
「それに、独りきりだとサボったりしてつづかないかもしれないけど、ミライが一緒ならがんばれそうだし」
「はい。私と一緒に引きこもってどんどんステータスをレベルアップさせて、伝説の引きこもりニートになりましょう」
「それは嫌ですごめんなさい」
まあ、いくらステータス名が【新偉人】というふざけた名前でも、神様から与えられた固有ステータスなのだから、【?????】で隠れている技は、きっとものすごいチート技に違いない。
「あ、それとひとつだけ。俺も言いたいことがあるんだけど」
冷静になって考えるととある疑問が浮かんだので、ミライに尋ねることにする。
「おかしい、というのは、もしかしてやっぱり私のおっぱいが人間のものとは違うと」
「そうじゃないっつってんだろ。戦闘経験なら、俺はすでに積んでたって話だ」
「え? いつですか?」
「だから、その……なんつーか、大度出たちにその、まあ、ボコられて……」
あれも考えようによっては戦闘だ。
経験値が入っていてもおかしくはないと思う。
「つらいことを思い出させてしまったようですね。すみません」
「いや、別にこんな雰囲気にするために言ったんじゃねぇから」
あくまで疑問を解消するためだ。
「その、大変申し上げにくいのですが、大度出さんたちのいじめ……じゃなくてボコら……でもなくて暴力行為は」
「わざわざ言いかえなくてもいいから。気にしてないし。いじめられてたとかボコられてたでいいよ」
「よくありません。一方的な暴力は立派な犯罪行為ですから、被害者が卑屈になるのはおかしいです。きちんと暴力行為と表現すべきです」
ミライは語気を荒らげて、俺のねじれた考えを正そうとしてくれる。
その優しさが俺の心に染み渡った。
「ありがとう。そうだよな。俺が卑屈になっちゃだめだよな」
「感謝なんてしないでください。私はあなたのサポートアイテムですから。いつでもあなたの味方です」
嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか。
涙が出てきちゃうよ。
「では、誠道さん。改めまして、ひとつ聞きたいことがあるのですが」
「おう。なんでも聞いてくれ」
「どこでその『い・じ・め』は行われていたのですか?」
「さっきの言葉忘れたのかなぁ? すぐいじめって言葉使ってるんですけど。強調させちゃってるんですけど」
「すみません。間違えました」
「絶対確信犯だろ!」
「本当に間違えました」
「なんならちょっといじってるだろ!」
「はい。その通りです」
「間違ってるって言えよ! いつでも味方じゃないのかよ!」
もういい。こんなことやっていても埒があかない。
俺はごほんと咳払いをして、場の空気をリセットする。
「で、どこでって話だったよな。たしか勅使が作った、経験値が二倍稼げるっていう、なんか変な空間だったな」
「なるほど。そういうことですか」
難しい顔をして、深くうなずくミライ。
「あなたが大度出さんたちに暴力行為……じゃなくていじめら」
「はい今のは言い直したので確実に意図的でしたー」
「れていた場所が原因です」
「おい無視すんな……って、え?」
場所が原因って、どういうこと?
「実は、この【新偉人】というステータスには特殊性があるのです」
「特殊性?」
なんか嫌な予感がするんだけど。
「はい。【新偉人】を持つものは、自分のパーソナルスペースかつ閉じられた空間で戦闘や訓練を積むことでのみ、経験値を獲得することができるのです。特別ですよ、やりましたね!」
「やりましたね! じゃねぇんだよ。なにその厳しい条件。おかしくない? パーソナルスペースかつ閉じられたって、ほぼ自分の家じゃん!」
「はい。だからステータスの名前が【新偉人】なのです」
きっぱりと断言するミライ。
なるほどそういうことね、だいたい理解した。
つまり、【新偉人】という固有ステータスを持っている俺は、自分の部屋に引きこもって訓練することでのみ経験値を稼げるってことだ。
すげぇじゃん。
引きこもりの俺にぴったりの固有ステータスってことか。
さすが女神様。
適材適所完璧すぎ!
やりましたね!
「ってふざけんなぁああ! なんだよその無駄によくできたルール! おかしくはないけどおかしいだろ!」
違う意味でやりましたね! だわ。
「ってか固有ステータスは異世界転生の特典なんだろ? なんで俺のだけ足かせになってんだよ!」
「でも誠道さんは引きこもりですよね? ニートですよね?」
それを言われるとなにも言い返せないからやめてくれ。
いいかげん、俺だって開き直るぞ。
「ああそうだよ。引きこもりでなにが悪い。ってか引きこもりは家にこもってなにもしないから引きこもりなんだよ。ただ家にいるだけで経験値になれよ!」
「違います。それはただの甘えです」
即座に正論を言われ言葉を失う。
ミライは姿勢を正したまま、まっすぐ俺を見据えていた。
「なにかつらいことがあって家に逃げ込む。それ自体を否定はしません。心が傷ついているのですから。ですが、大事なのは『引きこもっている間になにをするか』です。なにもしないただの引きこもりを世間は許してくれません。異世界でも同じです」
ぐうの音も出ない。
そうだよな。
せっかく異世界にきたのに、ここで変わらなくてどうする。
惨めな引きこもりから卒業できる絶好の機会じゃないか。
「たしかにミライの言う通りだわ。引きこもることは許してくれても、ただ引きこもりつづけることは許してくれないんだよな」
まさか、俺に与えられたこの【新偉人】というクソみたいな固有ステータスに大事なことを教えられるなんて思わなかった。
「そうです。自分の心を修復するため、精神を回復させるために引きこもるのならいいのです。ただ、いずれは変わらなければいけない。変わりたいと思ったなら、引きこもったままでも行動しなければいけません」
「だな。俺、がんばってみるよ」
「いい顔になりましたね。それに家に引きこもったままレベルアップできるのはむしろ利点です。他の方はモンスターと戦闘しないと経験値が稼げないんですから」
「そっか。たしかにそうだな」
ミライの言葉は一理ある。
俺は危険を冒さずに経験値を稼ぐことができる。
そう考えると、このへんてこな仕様も悪くない気がしてくるから不思議だ。
「それに、独りきりだとサボったりしてつづかないかもしれないけど、ミライが一緒ならがんばれそうだし」
「はい。私と一緒に引きこもってどんどんステータスをレベルアップさせて、伝説の引きこもりニートになりましょう」
「それは嫌ですごめんなさい」
まあ、いくらステータス名が【新偉人】というふざけた名前でも、神様から与えられた固有ステータスなのだから、【?????】で隠れている技は、きっとものすごいチート技に違いない。
「あ、それとひとつだけ。俺も言いたいことがあるんだけど」
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