上 下
7 / 118

狂人、再び

しおりを挟む
アベルは苛立っていた、元より臆病ものどもよってわずわらしい檻に捉えられていたというのに、今目の前にいる男はあの臆病ものどもの誰よりも癪に触る男だった。
「キサマは何者だ?何がしたい?俺を兵にしたいなら骨のある獲物を用意しろ、でなければキサマの首を…」
「まあまあ、落ち着いてくださいよ?我々はあなたにお願いがあるんです。」
「俺は臆病な王が何よりも嫌いだ。」
「いやいや我々はあなたの王になるつもりはありません、ただある人を殺していただきたい。」
「何だと?」
「あなたも殺したいんじゃないですか?」
、男が写真を見せてくる、黒髪のガキ、逃げるだけの癖をして多くの者に守られている。最も腹だしい類の人間。
「このガキの居場所が分かるのか?」
「ええ、お望みならもっと多くのお相手を用意しますよ?」
「俺を野に放つのか?」
「はい、この人を殺してさえいただければ我々は一切あなたを拘束しません。」
「キサマは気に食わんが、こいつのことは殺りたかったんだ。いいだろう。」
「ありがとうございます、それではこの薬を…」



「あー ミヤ兄ちゃんはもうダメだ、もう二度と人前で踊れない」
「お疲れ様、よしよし。」
机に突っ伏している兄の頭をミヤは優しく撫でた、聖霊と契約した事、さらに亜人種であるゴブリンを倒したことを祝うという事でミヤの時よりもさらに盛大な祭りが行われたのだ。
授業参観があるというだけで一言も喋らなくなってしまったユイトの心臓には刺激が強すぎる。
「死んだような顔にならなくてもいいだろう?すごい事だよ?英雄くん。」
「あ、ああ」
「あーお兄が気絶しちゃった!」
ドクン、ドクン。 瞬間、ユイトの頭に映像が流れてきた。
木を切り倒して進む男、褐色の肌に禍々しい刺青、アレは…
「アベル」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています

矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜 ――『偽聖女を処刑しろっ!』 民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。 何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。 人々の歓声に包まれながら私は処刑された。 そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。 ――持たなければ、失うこともない。 だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。 『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』 基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。 ※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)

私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。 彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。 それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。 そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。 公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。 そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。 「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」 こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。 彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。 同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。

手乗りドラゴンと行く異世界ゆるり旅  落ちこぼれ公爵令息ともふもふ竜の絆の物語

さとう
ファンタジー
旧題:手乗りドラゴンと行く追放公爵令息の冒険譚 〇書籍化決定しました!! 竜使い一族であるドラグネイズ公爵家に生まれたレクス。彼は生まれながらにして前世の記憶を持ち、両親や兄、妹にも隠して生きてきた。 十六歳になったある日、妹と共に『竜誕の儀』という一族の秘伝儀式を受け、天から『ドラゴン』を授かるのだが……レクスが授かったドラゴンは、真っ白でフワフワした手乗りサイズの小さなドラゴン。 特に何かできるわけでもない。ただ小さくて可愛いだけのドラゴン。一族の恥と言われ、レクスはついに実家から追放されてしまう。 レクスは少しだけ悲しんだが……偶然出会った『婚約破棄され実家を追放された少女』と気が合い、共に世界を旅することに。 手乗りドラゴンに前世で飼っていた犬と同じ『ムサシ』と名付け、二人と一匹で広い世界を冒険する!

路地裏の少年は逃げ惑う

笹坂寧
BL
 世界一平和な国と名高い、【エメラルド王国】。  しかし、そんな国にも闇は存在するもので。  騎士団にも見捨てられた【貧民街】へと続く路地裏。そこに暮らす1人の少年がいた。  名前はテオ。  治安の悪い路地裏にて、小さな小さな喫茶店を開いている少年は、「貧民街の救世主」の異名を持つ有名人でもあった。    路地裏、そして貧民街の住民から愛されるテオ。しかし彼は同時に、「世界を謀る大犯罪者」としても名高い恐ろしい男として忌み嫌われているのである。

追放先で断罪に巻き込まれた騎士の少女は、破滅王子を救うことにした

juice
ファンタジー
若くして国王騎士に任命された主人公のアンは、自国を追放されて、別の国に流れ着いた。 その国ではちょうど、王太子による王子妃の決定と婚約令嬢の断罪が行われており、アンはその騒動に巻き込まれてしまった。 このままでは破滅する王太子。 気は進まないながらも、彼を助けることにするのだが……。

噂好きのローレッタ

水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。 ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。 ※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです) ※小説家になろうにも掲載しています ◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました (旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)

愛して、許して、一緒に堕ちて・オメガバース【完結】

華周夏
BL
Ωの身体を持ち、αの力も持っている『奏』生まれた時から研究所が彼の世界。ある『特殊な』能力を持つ。 そんな彼は何より賢く、美しかった。 財閥の御曹司とは名ばかりで、その特異な身体のため『ドクター』の庇護のもと、実験体のように扱われていた。 ある『仕事』のために寮つきの高校に編入する奏を待ち受けるものは?

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

処理中です...