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私はいりこの人の方を見ると横に置いていた本を手渡した。

「……………これは?」

「その隠し部屋にあった死体の人の幽霊が渡してくれって言ってた。………代々トラバス家の領主が持つ物らしいぞ。」

いりこの人は驚いた顔をしていた。

「………もしかして、その死体というのは…。」

「多分いりこの人の義父だろうと思う。」

「……………埋葬はきちんと済ませたはずなのだがな。」

……………それは多分………。

「呪具の封印が限界に近かったからそれを止めるのに必要だったのだと思う。………そうだよな?クライドさんとトルトさんとメリアさん。」

3人はこくりと頷くと、死ぬ少し前にいりこの人の義父てあるノイドさんから頼まれたのだと言っていた。

「そうか………。」

いりこの人は頼ってもらえなかったことや、長いこと義父の亡骸が埋葬されずに隠し部屋にあったことがショックだったようだ。黙ったまま私の肩で自分の顔を隠すように乗せた。肩に濡れる感覚を感じた私はそっといりこの人の頭を撫でると、いりこの人はグリグリと撫でている方の手に頭を押し付けた。

……………不謹慎だとは思うんだが、いりこの人すげえ可愛すぎる。

「……………義父は何か言っていてたか……。」

「……………そういえば、息子はもう大丈夫だなって言ってた。」

あのとき、まさかあの幽霊がいりこの人の義父とは思ってなかったから聞き違いかと思ったんだがな………………。

「安心した顔で最後は消えていったぞ。」

「……………そうか。」

それを聞くとようやく顔を上げたいりこの人の目は少しだけ赤かった。私のことを強く抱き締めると耳元でそっと囁くようにありがとうと言ったのが聞こえた。

……………よかったな、いりこの人。

「いりこの人………。」

「?」

「最後のやるべきことをしよう!」

最後のやるべきこと、それは………。

「古の一族の解放、そしていりこの人の義父の埋葬だぜ。」

「………あぁ!そうだな。」

いりこの人は目元を細めながら優しく笑うと私を抱えたまま立ち上がった。

「………え!っちょ、猫になってない、なってないから降ろせ!」

「ダメだ。」

「え、重いだろ、猫になってないんだから………っ!せめて猫になってから……………。」

いりこの人は素敵な笑顔で部屋の扉の方へ私を抱えたまま進んでいく。

「こんな機会滅多にないからな。」

それに猫のときいつも抱えていたから抱えていないと落ち着かないのだと言っていたいりこの人に苦情申し立てするがダメだった。

「それに人の姿のときに抱えて歩いてみたかったんだ。」

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