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そもそも、教科書には魔族についてこう書かれていた。


魔族とは魔王を主とした数多の種族の総称であり、魔王とは膨大な魔力を持つ我らが神と敵対する存在である。魔王は部下に命じて神から与えられし我らが土地へ侵入し、残虐無慈悲に蹂躙していった。それを我らが神がお怒りになり勇者を使わして、魔王は勇者の手によって倒され、魔王の部下達は皆封印された。そして、この世界は平和となり…………………。

「………………………………(皆幸せに暮らした………と)。」

………………………何かがおかしい。

そもそもいつ頃侵攻してきたか書いてなかった。
侵攻して来る前に何か予兆のようなものがあったとかも説明なしである。
それになぜ侵攻してきたかについても全くといっていいほど書かれていなかった。
魔王率いる魔族達が侵攻している間の国がどうなっていったのかということすら書かれていないのはおかしい。

最初これを学園の授業で聞いたとき、あぁそうなんだとしか思わなかった。だが今、今さらなのだが考えてみれば見るほど何かがおかしいと思い始めた。

学園の授業ではこれ以上のことを教わることはなかったし、教科書にもそれ以上のことは書かれていない。それこそ何者かの手によって隠蔽されているかのようだ。

それは何者なのだろうか?

………いや、その前に他の国でも同じように教えられているのだろうかが気になる。

万が一、他国でもこの国と同じように、意図的に歴史が隠されているようならかなり問題である。
あの簡潔にまとめられた歴史には一体何が隠されているというのだろうか?

だがそれ以上に、授業で古の一族の話が全く出てこない方が問題のような気がする。

……………おそらく隠されている内容というの、は古の一族のことなのだろう………。

そもそも私が古の一族のことを知ったのは古書を集めて売られている、月1で王都で行われる古本の市で偶然手に入れた禁書が元なのだ。
もともとこの国は芸術を愛する国としても有名である。それゆえにこういった芸術関連の市場は定期的に行われているのだが、禁書指定されているものについては見つけ次第国に引き渡すようにとされている。

私も王都にいるときには定期的に行われているこの古本の市だけにはよく行っていた。

………私だって肉と魚ばかり追いかけている訳じゃないんだぞ!えっへん!

そこで偶然見つけたあの本は他の本に紛れるように置いてあり、どう見ても禁書だったし、店の人も小声でそう言っていた。見つければ国に引き渡さなければいけないのだが、このときの私は、見つけたあの本自体が魔導書であれば難しかったが、魔導書ではなかったので書き写すことにしたのである。図も書くのは得意だしな!………本物はちゃんと国に渡したぞ。うん。

………古本の市で買ったことは言わなかったけどな。あの店の人困ることになるしな。

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