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侯爵とアメリア嬢が領地に帰ってしばらくしてそれは起こった。

いりこの人はいつにも増して機嫌がよさげである。私はというとなぜか嫌な予感がさっきからびんびんくる。嫌な予感の原因はきっと後ろから見え隠れしているだろう。
そうである。

それはずばり…………………着ぐるみ。

それも虎の着ぐるみ。

………トラバス家だからってなにも虎の着ぐるみ用意しなくても………………。

そう思いつつも口には出せなかった。だってあんなに楽しそうな顔されたんじゃあ言い出せないぞ(汗)

じりじり近寄ってくるいりこの人。そして、じりじり後ろへ下がっていく私。

戦いの火蓋は切って落とされた。

私は回れ右をすると脱兎のごとく逃げ出した。

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドっ!

「あ、逃げてしまった。」

そこにメリアがいりこの人に声をかけてきた。

「婚約者に逃げられてしまった。………せっかくの虎の着ぐるみが…………。」

「着せればいいじゃないか。普段執務室に籠りきりなんだから運動がてら追いかけるのも悪くないと思うがね。」

「!!」

いりこの人はそれは名案だと言わんばかりに頷いた。

「そうだな。追いかけるとしようか。」

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