婚約破棄なんてどうでもいい脇役だし。この肉うめぇ

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静かになった寝室にいりこの人が入ってくると二人で顔を見合わせてから小さくため息をついた。

「朝から疲れたな。」

心底疲れたような声でいりこの人が言った。

「にゃあ(お疲れ様)」

私はベッドを右前足で叩いてうつ伏せになった。それを見たいりこの人も無言でベッドにうつ伏せになると私の方を見て頭を撫でてくれた。頭を一度、いりこの人の手に押し付けると、いりこの人の背中になるべく負担にならないようによじ登る。

いりこの人が小さく笑っているのが聞こえてきた。

よ～し、今日はいつぞやのお約束の肉球マッサージをするぞ！

わたしのぷりちぃな肉球で最初は優しくふみふみする。

右にふみふみ、左にふみふみ、ふみふみふみふみ。

背中全体をまんべんなくふみふみする。

「にゃ(なんだ？)」

地面……………
というかいりこの人が揺れている。

「すまない、くすぐったくてっはははっ！」

？そうか。もう少し強めに…………というかちょっと跳び跳ねてみようか………………………。

右にとうっ！………左にとうっ！　

背中をぴょーんぴょんぴょんと
跳び跳ねていき、そのあと背中を駆け足してみる。
ととととととととととっ！

これでどうだろうか？いりこの人の顔を確認するため頭の上から覗いてみる。

「にゃあ(どう)？」

いりこの人は無言で頭を撫でてくれた。いりこの人の頭の上から横に移動する。

「にゃにゃあ(今度はどこをマッサージするか)？」

いりこの人は起き上がると私を抱き上げて立ち上がる。

「ありがとな。………………もうそろそろ、朝食食べに行くか？」

「にゃあ(うん)！」

扉を開けて食堂の方へ歩いていく。
………時々向こうの方から大きな物音が聞こえてくるのは気のせいと思いたい。

「まてぇっくそ息子おおおおぉぉぉぉぉぉっ！」

………まだ逃げていたのか、セオ。

「その鬼の形相が消えた頃にはちゃんと仕事しますから安心してくださいねぇっ！」

「おめぇのそれが一番信用出来ねーんだよおおおおぉぉぉぉぉ
ォォォォォォっ！くそ息子がっ！」

あーあ、クライドの頭の血管が浮いてるぜ。
まあとりあえず…………………。
いりこの人の頭の上に移動すると、前足で左耳を塞ぎ、後ろ足で右耳を塞ぐ。

「ん？」

全てはいりこの人の精神安定のためである。えっへん！

向こうからセオが走って来るのが見えてきた。

ドドドドドドドトドドドドドドドトっ！

よ～し、狙いを定める。

いりこの人の左側を通れば前足で顔面引っ掻き傷がセオの顔につく。右側を通ればキック&尻尾攻撃である。

ターゲットロックオン！

キラーン！

左側か！

爪を出してさぁ今から引っ掻くぞと準備をする。