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しばらく侯爵を眺めていると読み終わったのか、紙の束を置くとため息をついた。

「………どうやら私は人を見る目がなかったようですね。娘達のことも、娘達の夫のことも………。」

「これ、私も読んでいいか?」

侯爵に聞いてみると黙って頷いた。

なになに……。

………………………………………………っ!

そこにはあまりにも残酷な内容が書かれていた。
さすがの私も書いてあった内容が内容なだけに思わずいりこの人の方を見た。

これ本当に?嘘であって欲しいぜ………。

だがいりこの人の返事は嘘でも冗談でもなく本当だということだった。

侯爵の溺愛している娘達の夫達は裏で悪事に手を染めており、その罪はあまりにも残虐非道。そして、その悪事で手に入れたお金の一部は侯爵の溺愛している娘達のドレス代やエステ代に消えている。大半は悪事の追加投資といったところか。

どうやら侯爵の溺愛している娘達の夫達はWin-Winの関係を築いており、まず、おしとやかな方のアメリア嬢の姉の夫が孤児達などを奴隷にして、凛々しい顔立ちの方の姉の夫に売る。買われた奴隷は、凛々しい顔立ちの方の姉の夫が冒険者に捕まえさせ、隷属の首輪で従魔にした魔獣の餌にして飼い慣らし、他国に売り払っているらしい。
どうもその国はトラバス領の西側にあるゼピュロ王国の西側に面している海の向こうに存在するアレス帝国で、どうやらこちら側の国々を支配しようと目論んでいるらしい。アメリア嬢の二人の姉達の夫達は国をもらい統治を任されることになっているということだった。

「この事陛下は…………。」

侯爵は震える声で聞いた。

「………全部既にご存知だった。」

やっぱりな。あの人達のことだから知らないわけないぜ。

「もうひとつだけあなたに言わなければならないことが……………。」

「これ以上何があるというんですか。」

あ、いりこの人黙った。正直言いたくなさそうである。
頑張れいりこの人!

「…………王都である本が広まっている。ある令嬢達の淫らな日常シリーズと言うらしい。」

「?それがこれに何が関係…………………………まさか?」

「そのまさかです。」

ん???

「あなたの溺愛している娘さん達の本もあるそうですよ。しかも誰の事かバレてしまっていてかなり反響があるそうです。」

????

「あなたの溺愛している娘さん達の件を黙っていてくれていた善良な人達の子どもが誘拐されてしまったようです。孤児達を連れていき奴隷にしていると噂のある人さらいが連れていったとの目撃証言がありました。」

もしかして………………。

「連れていった人さらいが誘拐した子を連れていった先が娘さん達の夫の屋敷だったようです。」

……………何て言うか…やらかしたな、アメリア嬢の姉達の夫。

「私どもがある貴族の家に話を聞いていた際、途中誘拐話が持ち上がり、慌てて捜索の手伝いをしたのですが途中、目撃証言が………………。」
 
その怒りは尋常じゃなく、もう隠しておく必要なんてないということになったようだ。それを何者かが本に……………ってあれそれまさかあの時陛下に頼まれて描いたやつじゃあ…………?

………いりこの人が言いたく無さそうな理由これだったか。
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