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第二章
歓迎会 前編
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アンドレア義兄様は領主ではないし、次期公爵でもなく、次男だし、アルは隣国の公爵の令息とはいえ、これまた次男だし。
そして彼らの性格上、普段は偉そうな態度は全く取らず、本当に良い領主一族という感じなのですが、今回ばかりは流石に二人ともかなりご立腹のようで、その歓迎会の返事は、自ら書くことも無く、誰かに託けるでもなく、何と、翌日早々に町長を呼びつけました。
私も同席するように二人から言われ、しかも何故か侍女たちに凄い気合を入れて、身支度をされました。
パーティーとかではないので、そういった華美さは無いものの、自分で言うのもなんですが、これ、世間を欺いていませんか?と言いたくなるくらいに別人級の美人顔に仕立てられました。
メイクって凄いのね…。
あ、そういえば前世の学生時代に、先輩から聞いた話を思い出しました。
何でも、メイクアップの特別授業があり、海外の有名なメイクアップアーティストが、目の前で実演をしてくれるという授業だったそうです。
モデルさんは、普通にまあまあ綺麗だけど、ものすごい美人というわけでもなく。
言えるのは、どう見ても日本人だったそうです。
が!何と!メイクと最後に金髪のウィッグで、昔の超有名なハリウッド女優そっくりに大変身したそうです。
そのテクニックを知りたかったけど、見ていただけでは、全部は分からなかったと先輩たちが悔しがっておりました。
公爵家の侍女さんたちにも、それに近いテクニックをお持ちなのではないかと思うくらいに、私が“別人”でした。
町長さんの到着を待って、アンドレア義兄様とアルと一緒に応接間へ移動しました。
何と、町長さんと一緒に、奥様とふわふわピンクちゃんまで来ていました。
三人が挨拶をしようとするのを、アンドレア義兄様が止めました。
「単刀直入に用件だけ申し上げるが、このような歓迎会の席は、無用です。」
義兄様は一見、笑顔なのですが、目が笑っていない…怖い…。
「そんなわけには参りません!領主様のご令息が久しぶりに領地へお戻りになっていて、しかもご親戚であり、隣国の公爵ご令息でもあるアルフレッド様もご同行とお聞きしては!
細やかでも宴を開かなければ、寧ろ不敬というものです!
それにアルフレッド様には是非とも我が娘と交流を温めて頂きたいものですし!」
あ、部屋の温度が5度くらい下がった!
目以外は笑顔だった義兄様の顔が、ついに笑顔ではなくなりました。
「…貴殿は何か勘違いをしているようだが?」
「え?」
「このような歓迎会の席は無用と言ったが、その意味が分かりませんか?」
「えっと…派手な宴の席は無用という意味でしょうか?」
「この場に居て、まだ分からないか?
今回、ここへはアルフレッドだけでなく、我が義妹も連れてきている。
そしてそちらの家の者は、私たちが到着したその場に待ち伏せていて、義妹も来ているところを見ている。
ご丁寧に義妹を突き飛ばして、怪我まで負わせてくれたがな。
にもかかわらず、届いたのはその無礼に対する謝罪ではなく、更に義妹を無視するこの招待状だったというわけだ。
それにどうして我らが応じると思うのだ?」
普段は非常に温厚な義兄様が、凍り付きそうなくらいに冷たい表情で、淡々と告げている。
流石に町長さんは、顔色が悪くなってきました。
が!流石ふわふわピンクちゃんの頭の中は、今日もふわふわな様です!
「あら!アンドレア様、私はアンドレア様の妹様を突き飛ばして等おりませんわ!
私に無礼を働いたので、侍女を少々躾けただけです。
私がアルフレッド様と夫婦になれば、侍女にあんなでしゃばった態度は取らせませんわ!
それに宴はお父様たちや各家の嫡男が中心です。
女の出る場ではありませんわ!」
喋りすぎだよピンクちゃん…二人の顔が、そろそろ般若になってきたよ…いや、この世界に般若は無いから、悪魔?悪魔で良いのかな?
「ほう…では貴女も宴には参加しない予定ということかな?」
「私は皆様を接待しなくてはいけませんから、勿論、参加致しますわ!」
「それで?町長殿…貴殿は我が義妹の事は、歓迎しないという事で宜しいかな?」
「え?!いや、それはその…。」
「今回の件は、父上と兄上にも報告する。
そして貴殿らは、我らが滞在中、この邸および周辺へも近付くことを禁止する。
それに何か勘違いをしているようだが、我が従兄弟がそこのマナーも知らないような無礼なものと夫婦になることなど有り得ない!
以上だ!」
義兄様は執事さんに目で合図し、そのまま立ち上がって、アルと私も促し、その場を退席しました。
背後で町長さんが、何かを言っていましたが、執事さんが押し留めたようでした。
そして居間まで戻ってくると、アンドレア義兄様は、とんでもない事を言い出しました。
あの町長一家が計画していた歓迎会の日程…つまりは三日後に、ちょっとした夜会を開くというのです。
そして領地内で、近隣の町の町長一家や、大きな商家の一家を招待すると。
しかしこの町の町長一家は呼ばないと。
同じ日にぶつけてくるって義兄様…怖いわ…。
「リーナちゃん、ドレスはどうする?一応念の為で夜会用のドレスも数着は用意してあるけど、それで良いかなぁ?
後で確認しておいてくれる?
今回は既製品だけなんだけど、何か工夫して、違って見えるように出来ると良いんだけどな」
「分かりました。ではこの後、クローゼットを確認させていただいて、何か考えます。」
こうして急遽、夜会の準備に入らなければならなくなりました。
えっと…確か領地でゆっくりするつもりだったような気がするのは…うん!私の気のせいですね!きっと!
そして彼らの性格上、普段は偉そうな態度は全く取らず、本当に良い領主一族という感じなのですが、今回ばかりは流石に二人ともかなりご立腹のようで、その歓迎会の返事は、自ら書くことも無く、誰かに託けるでもなく、何と、翌日早々に町長を呼びつけました。
私も同席するように二人から言われ、しかも何故か侍女たちに凄い気合を入れて、身支度をされました。
パーティーとかではないので、そういった華美さは無いものの、自分で言うのもなんですが、これ、世間を欺いていませんか?と言いたくなるくらいに別人級の美人顔に仕立てられました。
メイクって凄いのね…。
あ、そういえば前世の学生時代に、先輩から聞いた話を思い出しました。
何でも、メイクアップの特別授業があり、海外の有名なメイクアップアーティストが、目の前で実演をしてくれるという授業だったそうです。
モデルさんは、普通にまあまあ綺麗だけど、ものすごい美人というわけでもなく。
言えるのは、どう見ても日本人だったそうです。
が!何と!メイクと最後に金髪のウィッグで、昔の超有名なハリウッド女優そっくりに大変身したそうです。
そのテクニックを知りたかったけど、見ていただけでは、全部は分からなかったと先輩たちが悔しがっておりました。
公爵家の侍女さんたちにも、それに近いテクニックをお持ちなのではないかと思うくらいに、私が“別人”でした。
町長さんの到着を待って、アンドレア義兄様とアルと一緒に応接間へ移動しました。
何と、町長さんと一緒に、奥様とふわふわピンクちゃんまで来ていました。
三人が挨拶をしようとするのを、アンドレア義兄様が止めました。
「単刀直入に用件だけ申し上げるが、このような歓迎会の席は、無用です。」
義兄様は一見、笑顔なのですが、目が笑っていない…怖い…。
「そんなわけには参りません!領主様のご令息が久しぶりに領地へお戻りになっていて、しかもご親戚であり、隣国の公爵ご令息でもあるアルフレッド様もご同行とお聞きしては!
細やかでも宴を開かなければ、寧ろ不敬というものです!
それにアルフレッド様には是非とも我が娘と交流を温めて頂きたいものですし!」
あ、部屋の温度が5度くらい下がった!
目以外は笑顔だった義兄様の顔が、ついに笑顔ではなくなりました。
「…貴殿は何か勘違いをしているようだが?」
「え?」
「このような歓迎会の席は無用と言ったが、その意味が分かりませんか?」
「えっと…派手な宴の席は無用という意味でしょうか?」
「この場に居て、まだ分からないか?
今回、ここへはアルフレッドだけでなく、我が義妹も連れてきている。
そしてそちらの家の者は、私たちが到着したその場に待ち伏せていて、義妹も来ているところを見ている。
ご丁寧に義妹を突き飛ばして、怪我まで負わせてくれたがな。
にもかかわらず、届いたのはその無礼に対する謝罪ではなく、更に義妹を無視するこの招待状だったというわけだ。
それにどうして我らが応じると思うのだ?」
普段は非常に温厚な義兄様が、凍り付きそうなくらいに冷たい表情で、淡々と告げている。
流石に町長さんは、顔色が悪くなってきました。
が!流石ふわふわピンクちゃんの頭の中は、今日もふわふわな様です!
「あら!アンドレア様、私はアンドレア様の妹様を突き飛ばして等おりませんわ!
私に無礼を働いたので、侍女を少々躾けただけです。
私がアルフレッド様と夫婦になれば、侍女にあんなでしゃばった態度は取らせませんわ!
それに宴はお父様たちや各家の嫡男が中心です。
女の出る場ではありませんわ!」
喋りすぎだよピンクちゃん…二人の顔が、そろそろ般若になってきたよ…いや、この世界に般若は無いから、悪魔?悪魔で良いのかな?
「ほう…では貴女も宴には参加しない予定ということかな?」
「私は皆様を接待しなくてはいけませんから、勿論、参加致しますわ!」
「それで?町長殿…貴殿は我が義妹の事は、歓迎しないという事で宜しいかな?」
「え?!いや、それはその…。」
「今回の件は、父上と兄上にも報告する。
そして貴殿らは、我らが滞在中、この邸および周辺へも近付くことを禁止する。
それに何か勘違いをしているようだが、我が従兄弟がそこのマナーも知らないような無礼なものと夫婦になることなど有り得ない!
以上だ!」
義兄様は執事さんに目で合図し、そのまま立ち上がって、アルと私も促し、その場を退席しました。
背後で町長さんが、何かを言っていましたが、執事さんが押し留めたようでした。
そして居間まで戻ってくると、アンドレア義兄様は、とんでもない事を言い出しました。
あの町長一家が計画していた歓迎会の日程…つまりは三日後に、ちょっとした夜会を開くというのです。
そして領地内で、近隣の町の町長一家や、大きな商家の一家を招待すると。
しかしこの町の町長一家は呼ばないと。
同じ日にぶつけてくるって義兄様…怖いわ…。
「リーナちゃん、ドレスはどうする?一応念の為で夜会用のドレスも数着は用意してあるけど、それで良いかなぁ?
後で確認しておいてくれる?
今回は既製品だけなんだけど、何か工夫して、違って見えるように出来ると良いんだけどな」
「分かりました。ではこの後、クローゼットを確認させていただいて、何か考えます。」
こうして急遽、夜会の準備に入らなければならなくなりました。
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