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対決 後編
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騒がしくなってきた外の気配に、取り敢えず時間稼ぎをしなくてはと思いました。
とにかくアルやレイが来てくれるまで、何とか乗り切らなくては!
でもいつ、来てくれるのかな?
というか、私が監禁されている場所、無事に見付けて貰えるのかな?
正直言って、今さらですけど、かなり不安です。
そんなこと言っていても仕方ないけど。
とにかく時間稼ぎ!
と言っても今からすぐに天井裏に隠れるのは無理…ベッドの下かトイレか…トイレだな…うん。
取り敢えず武器を持ったまま、トイレへ隠れました。
様子を伺っていると、部屋の扉が盛大に開き、ミシェリーナ様とアンジェリカ様の声が聞こえてきました。
「あの女はどこよ?!」
「この部屋に閉じ込めておいたのですが…。」
「ベッドにも居ないわよ!?まさかまた逃げられたのではないわよね?!」
「あの時と違って、レイモンド様が一緒に居るわけではないから、そんな知恵は無いわよ!」
「あなた達、何をぼーっと突っ立っているのよ!さっさと探して捕まえてきなさいよ!!!」
怒鳴り声を聞いていて、悩みました。
どうせ籠城するなら、具合が悪くてここで吐いている、トイレから離れられないとでもこちらから言ってしまった方がマシかもしれない。
どうせトイレも確認しようとするだろうから、見つかるのは時間の問題だし。
そう考えて、弱々しい音で、トイレの扉をこちらからノックした。
「ん?!今、何か聞こえた?」
そう言いながら足音がこちらに近付いてきた。
トイレの扉を強くドンドンと叩かれた。
「ちょっと!居るの?!そんなところに籠っていても無駄よ!さっさと出てきなさいよ!」
私はいかにも具合が悪い風を装い、答えました。
「あ…、あの…用意されていた水を飲んでから、胃がむかむかして、吐いていて、ここから離れられないんです…。
胃が収まるまで待ってください…。」
「はぁ!?誰か水に何か入れたの!?今回は私は薬を入れろとか言っていないわよ!?
誰よ!余計な事をしたのは?!」
「私じゃないわよ!っていうかこの前、勝手に媚薬を盛ったのはあなたじゃない!
レイモンドお兄様が一緒だというのに、よくも勝手に媚薬なんて持ってくれたわね!」
あ…何か喧嘩が始まった…。
暫くトイレの中から喧嘩の様子を聞き耳立てていました。
「あーもう!新しい水を置いておくから!明日にはトイレから出てきなさいよね!」
「全くこんなでは、無理矢理引っ張り出しても商品価値もありゃしない!」
ブツブツ言う声とか聞こえてきて、暫くすると、静かになりました。
でも新しい水をと言っていたので、もう暫くは外へ出られない…。
間もなく再び扉が開いた音を聞き、私は吐いているような声を出して、不調を装いました。
そして扉が閉まり、ガチャガチャと、鍵と恐らく開かないように鎖か何かを扉に付けている音を聞き、これで暫くは入ってこないかなと、そっとトイレから出ました。
何とかアルやレイがここを突き止めてくれているのかどうかを知りたい。
囮になるって、こんなに怖いことだったのねと、今さら痛感しました。
本当に怖いよ…怖いよ!怖いよ!怖いよ!…。
「はぁ…。よし!大丈夫!アルもレイも来てくれる!」
自分で自分の両頬を叩き、気合いを入れました。
でも今夜だけはしっかり眠りたいので、扉には椅子の脚をかんぬきのように差し込んで、簡単には開かないようにしました。
きっとこの水は何も入っていないだろうと判断して、水でお腹を満たしました。
考えてみたら、もう丸二日間、何も食べていないなぁ。
まあ、食べる気も起きないけど。
取り敢えず寝よう…。
何時間、眠ったのか、扉の外で、騒々しい音が聞こえてきて、目が覚めました。
椅子の脚を差し込んでおいたので、扉が開かず、騒いでいるようでした。
私も覚悟を決めました。
ナイフのうちの1本は、最悪の場合に備えて、靴の中に仕込みました。
更に1本を胸元に挿し、1本を手の中に隠して持ちました。
扉を何かで叩き割る音が聞こえてきました。
「さっさと開けなさいよ!」
「うおりゃあぁ!」
バキッ!バキッ!バキッ!バンッ!
扉が開き、人が雪崩れ込んでくる音や声が聞こえました。
私はベッドの影に待ち構えていました。
「バカ女!出てきなさい!今日こそお前を叩きのめしてやるわ!」
「あの娘を捕まえなさい!捕まえて引きずり出してきなさい!」
ミシェリーナやアンジェリカが怒鳴りちらしています。
「いたぞ!」
男の一人が、部屋の隅、ベッドの影に立っているのを見付けました。
「近寄らないで!」
私は叫びました。
そして手を伸ばしてきた男の、その手のひらに、隠し持っていたナイフを刺しました。
「うわぁ!痛ぇ!何しやがるんだ!このガキ!」
反対の腕で頬を殴られ、そのまま壁に頭を打ち付けられました。
痛い…。
頭がくらくらし、一瞬、動けずにいると、私が刺した男が、血まみれの手で私の髪を掴みました。
「あぁ!」
髪を掴んで持ち上げられ、あまりの痛さに顔を顰めると、手に持っていたナイフを叩き落とされました。
更に腕を後ろ手にねじり上げられてしまいました。
「おい!そいつ、逃げられないように着ている物を剥いてしまえ!」
ミシェリーナの兄が、下卑た笑いを顔に貼り付け言った。
「こんなガキの裸を見てもしょうがねぇけどな。」
そう言いながらも髪を掴んでいる男は、髪から手を離し、その血まみれの手にどこからかナイフを取り出し、着ているワンピースを背中で切り裂かれた。
「やだ!やめて!変態!」
暴れると更に腕をねじり上げられ、身動き出来なくなりました。
「ばぁか!お前はこれからもっと変態のオヤジの相手をするんだよ!
良かったなぁ!今日の客は、お前みたいなガキを男を求める身体に躾けるのが趣味らしいぞ?
薬も使うらしいから、気持ち良くなれるぞ?」
私はねじり上げられられた腕が、更にねじり上げられ、腰を折るような体勢になった瞬間、もう1本の開いていた手で胸元のナイフを取り出し、再び背後の男に斬りかかりました。
「ぎゃあ!いつの間にナイフなんて持ってんだ!」
力が弱まった瞬間にその手を外し、背後の男の首元に思い切りパンチを入れ、ベッドに飛び乗り、ベッドの向こうにいたミシェリーナの兄に回し蹴りを浴びせました。
ベッドの上から飛んだので、上手く首元に入り、一発で取り敢えず沈めましたが、私では体重が軽い分、直ぐに立ち上がることでしょう。
更にミシェリーナとアンジェリカにも連続で回し蹴りを浴びせ、そのまま扉へ向かって走りました。
扉の周りの男達には腰を落として弁慶の泣き所に蹴りを入れたり、股間に蹴りを入れたり、とにかく一発で動きを止められるように急所を狙いまくりました。
扉の外へ出ると、誰もいなかったので、そのまま階段が見える方向へ走りました。
階段は、手すりを滑り下りて、更に滑り下りると、玄関が見えたので、そちらへ向かって走りました。
背後からは怒鳴り声が聞こえてきます。
もう逃げても良いや!逃げて助けを求めよう。
殴られたりとかしているので、捕まえることは可能でしょう。
玄関の扉を思い切り開いて外へ飛び出すと、門を強引に開けて向かってくるアルとレイ、そして公爵家の騎士さん達が見えました。
「私…助かった?」
アルは騎士さん達を連れて邸へ飛び込んでいきました。
レイは私に駆け寄り、抱きしめてくれました。
「良かった…アルとレイが間に合って…。」
そう言って薄れゆく意識を手放し掛けているときに、レイがジャケットを脱いで私の肩に掛け、そのまま抱きしめて謝る声が、遠くから聞こえつつ、完全に意識を失いました。
「リーナ!ごめんよ!来るのが遅くなって!もう大丈夫だから!ごめんよ…!」
とにかくアルやレイが来てくれるまで、何とか乗り切らなくては!
でもいつ、来てくれるのかな?
というか、私が監禁されている場所、無事に見付けて貰えるのかな?
正直言って、今さらですけど、かなり不安です。
そんなこと言っていても仕方ないけど。
とにかく時間稼ぎ!
と言っても今からすぐに天井裏に隠れるのは無理…ベッドの下かトイレか…トイレだな…うん。
取り敢えず武器を持ったまま、トイレへ隠れました。
様子を伺っていると、部屋の扉が盛大に開き、ミシェリーナ様とアンジェリカ様の声が聞こえてきました。
「あの女はどこよ?!」
「この部屋に閉じ込めておいたのですが…。」
「ベッドにも居ないわよ!?まさかまた逃げられたのではないわよね?!」
「あの時と違って、レイモンド様が一緒に居るわけではないから、そんな知恵は無いわよ!」
「あなた達、何をぼーっと突っ立っているのよ!さっさと探して捕まえてきなさいよ!!!」
怒鳴り声を聞いていて、悩みました。
どうせ籠城するなら、具合が悪くてここで吐いている、トイレから離れられないとでもこちらから言ってしまった方がマシかもしれない。
どうせトイレも確認しようとするだろうから、見つかるのは時間の問題だし。
そう考えて、弱々しい音で、トイレの扉をこちらからノックした。
「ん?!今、何か聞こえた?」
そう言いながら足音がこちらに近付いてきた。
トイレの扉を強くドンドンと叩かれた。
「ちょっと!居るの?!そんなところに籠っていても無駄よ!さっさと出てきなさいよ!」
私はいかにも具合が悪い風を装い、答えました。
「あ…、あの…用意されていた水を飲んでから、胃がむかむかして、吐いていて、ここから離れられないんです…。
胃が収まるまで待ってください…。」
「はぁ!?誰か水に何か入れたの!?今回は私は薬を入れろとか言っていないわよ!?
誰よ!余計な事をしたのは?!」
「私じゃないわよ!っていうかこの前、勝手に媚薬を盛ったのはあなたじゃない!
レイモンドお兄様が一緒だというのに、よくも勝手に媚薬なんて持ってくれたわね!」
あ…何か喧嘩が始まった…。
暫くトイレの中から喧嘩の様子を聞き耳立てていました。
「あーもう!新しい水を置いておくから!明日にはトイレから出てきなさいよね!」
「全くこんなでは、無理矢理引っ張り出しても商品価値もありゃしない!」
ブツブツ言う声とか聞こえてきて、暫くすると、静かになりました。
でも新しい水をと言っていたので、もう暫くは外へ出られない…。
間もなく再び扉が開いた音を聞き、私は吐いているような声を出して、不調を装いました。
そして扉が閉まり、ガチャガチャと、鍵と恐らく開かないように鎖か何かを扉に付けている音を聞き、これで暫くは入ってこないかなと、そっとトイレから出ました。
何とかアルやレイがここを突き止めてくれているのかどうかを知りたい。
囮になるって、こんなに怖いことだったのねと、今さら痛感しました。
本当に怖いよ…怖いよ!怖いよ!怖いよ!…。
「はぁ…。よし!大丈夫!アルもレイも来てくれる!」
自分で自分の両頬を叩き、気合いを入れました。
でも今夜だけはしっかり眠りたいので、扉には椅子の脚をかんぬきのように差し込んで、簡単には開かないようにしました。
きっとこの水は何も入っていないだろうと判断して、水でお腹を満たしました。
考えてみたら、もう丸二日間、何も食べていないなぁ。
まあ、食べる気も起きないけど。
取り敢えず寝よう…。
何時間、眠ったのか、扉の外で、騒々しい音が聞こえてきて、目が覚めました。
椅子の脚を差し込んでおいたので、扉が開かず、騒いでいるようでした。
私も覚悟を決めました。
ナイフのうちの1本は、最悪の場合に備えて、靴の中に仕込みました。
更に1本を胸元に挿し、1本を手の中に隠して持ちました。
扉を何かで叩き割る音が聞こえてきました。
「さっさと開けなさいよ!」
「うおりゃあぁ!」
バキッ!バキッ!バキッ!バンッ!
扉が開き、人が雪崩れ込んでくる音や声が聞こえました。
私はベッドの影に待ち構えていました。
「バカ女!出てきなさい!今日こそお前を叩きのめしてやるわ!」
「あの娘を捕まえなさい!捕まえて引きずり出してきなさい!」
ミシェリーナやアンジェリカが怒鳴りちらしています。
「いたぞ!」
男の一人が、部屋の隅、ベッドの影に立っているのを見付けました。
「近寄らないで!」
私は叫びました。
そして手を伸ばしてきた男の、その手のひらに、隠し持っていたナイフを刺しました。
「うわぁ!痛ぇ!何しやがるんだ!このガキ!」
反対の腕で頬を殴られ、そのまま壁に頭を打ち付けられました。
痛い…。
頭がくらくらし、一瞬、動けずにいると、私が刺した男が、血まみれの手で私の髪を掴みました。
「あぁ!」
髪を掴んで持ち上げられ、あまりの痛さに顔を顰めると、手に持っていたナイフを叩き落とされました。
更に腕を後ろ手にねじり上げられてしまいました。
「おい!そいつ、逃げられないように着ている物を剥いてしまえ!」
ミシェリーナの兄が、下卑た笑いを顔に貼り付け言った。
「こんなガキの裸を見てもしょうがねぇけどな。」
そう言いながらも髪を掴んでいる男は、髪から手を離し、その血まみれの手にどこからかナイフを取り出し、着ているワンピースを背中で切り裂かれた。
「やだ!やめて!変態!」
暴れると更に腕をねじり上げられ、身動き出来なくなりました。
「ばぁか!お前はこれからもっと変態のオヤジの相手をするんだよ!
良かったなぁ!今日の客は、お前みたいなガキを男を求める身体に躾けるのが趣味らしいぞ?
薬も使うらしいから、気持ち良くなれるぞ?」
私はねじり上げられられた腕が、更にねじり上げられ、腰を折るような体勢になった瞬間、もう1本の開いていた手で胸元のナイフを取り出し、再び背後の男に斬りかかりました。
「ぎゃあ!いつの間にナイフなんて持ってんだ!」
力が弱まった瞬間にその手を外し、背後の男の首元に思い切りパンチを入れ、ベッドに飛び乗り、ベッドの向こうにいたミシェリーナの兄に回し蹴りを浴びせました。
ベッドの上から飛んだので、上手く首元に入り、一発で取り敢えず沈めましたが、私では体重が軽い分、直ぐに立ち上がることでしょう。
更にミシェリーナとアンジェリカにも連続で回し蹴りを浴びせ、そのまま扉へ向かって走りました。
扉の周りの男達には腰を落として弁慶の泣き所に蹴りを入れたり、股間に蹴りを入れたり、とにかく一発で動きを止められるように急所を狙いまくりました。
扉の外へ出ると、誰もいなかったので、そのまま階段が見える方向へ走りました。
階段は、手すりを滑り下りて、更に滑り下りると、玄関が見えたので、そちらへ向かって走りました。
背後からは怒鳴り声が聞こえてきます。
もう逃げても良いや!逃げて助けを求めよう。
殴られたりとかしているので、捕まえることは可能でしょう。
玄関の扉を思い切り開いて外へ飛び出すと、門を強引に開けて向かってくるアルとレイ、そして公爵家の騎士さん達が見えました。
「私…助かった?」
アルは騎士さん達を連れて邸へ飛び込んでいきました。
レイは私に駆け寄り、抱きしめてくれました。
「良かった…アルとレイが間に合って…。」
そう言って薄れゆく意識を手放し掛けているときに、レイがジャケットを脱いで私の肩に掛け、そのまま抱きしめて謝る声が、遠くから聞こえつつ、完全に意識を失いました。
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