35 / 73
対決 前編
しおりを挟む
その日は早起きして準備に取り掛かりました。
先ずは入浴…朝風呂は身体に良くないですけど…そしてしっかりストレッチ。
からのもう一回軽くお湯で汗を流して。
髪をセットしてもらいました。
高い位置でのポニーテールに、作っておいた簪を挿しまくり。
用意しておいたワンピやベストを着用し、今日はアルとレイの二人にエスコートをしてもらいます。
両手に花だね。
アルは異国の服っぽいゆったりしたズボンに、丈の長いシャツを着ていました。
シャツと言いつつ、袖口や前立ては華やかな刺繍の入った個性的なものです。
レイはスタンダードなスーツですが、非常に仕立ても素材も良い、上品なもので、形はスタンダードですが、色は柔らかい若草色のスーツに、シャツは白地に濃い目のグリーンのピンストライプ、襟は開襟でタイは無し…開襟なのでまあ普通のタイは出来ないのですが。
二人とも本日もご令嬢方にご好評だろうなという素敵な出で立ちです。
三人の統一感は皆無ですけどね!
統一感のある衣装も悩んだのですが、そうするとどうしてもアルとレイよりも、私が目立ってしまうわけです。
私が目立つよりも、二人が目立って、「何であんなのを連れているのよ」感を出して、私が狙われるようにしたいのです。
これなら敵が罠に引っかかってくれるかな?
公爵家の馬車に乗り、三人で大姉さまのお邸へ向かいました。
微妙に遅めに着くように行ったので、既に会場である庭園には大勢のお客様がいらっしゃいました。
そこへ両手に花の私が優越感満載の笑顔を顔に貼り付けて、入っていきました。
そう!敵を罠にはめるためには、私は憎き敵!悪役令嬢にならなければならないのです!
敵が悪役令嬢(私)の魔の手から、王子様たち(アルとレイ)を助け出して、悪役令嬢を倒すぞ!と闘志を燃やすように仕向けなければならないのです!
会場に到着し、二人を伴い、先ずは大姉さまと義兄さまにご挨拶をしました。
挨拶を済ませ、飲み物や軽食、お菓子のあるテーブルの方へ移動しようと歩いておりましたら、あっという間にアルとレイが連れ去られました。
「早っ!」
予想以上の早さに呆然としていると、ミシェリーナ様がいらっしゃいました。
「あら!お一人でいらっしゃったのかしら?寂しいわねぇ。
まあ仕方がないわよね、お猿さんをエスコートしたがる殿方なんていないものねぇ。」
一方的に罵られるのを聞いていると、そこへフィオーラ様がやってきました。
「あら!マリーナ!久しぶりね!お元気だった?」
「フィオーラ様!ご無沙汰しております!」
フィオーラ様はいつもニコニコしていて優しくて可愛いです。
フィオーラ様と私が親しげに話し始めると、そこにいたミシェリーナ様の顔が、どんどん固まっていきました。
不機嫌になってきている!なってきている!そしてついに動きました。
「フィオーラ様、あちらにとても美味しそうなケーキを見つけたんですよ。
是非!一緒に食べに行きませんか?」
ミシェリーナ様が割り込んできました。
「あら!素敵ですね!では皆で行きましょうよ!ね!」
フィオーラ様は私の顔を見て言いました。
微妙だなぁ…フィオーラ様とはもっとお話ししたいけど…敵が一緒というのもね。
でも敵を罠にかけるには、イライラさせる方が良いのかなとも考えなおしまして。
「そうですね!私もフィオーラ様とはもっとお話ししたいですし!」
と一緒に行くことにしました。
その時のミシェリーナ様の顔と言ったら!
般若って言うのはこういう顔なのかなと思いました。
しかも目が全く笑っていない笑顔で言ってきました。
「あら!マリーナさんは、本日の茶会を主催してくださっているお義兄さまやお姉さまのお手伝いをした方が宜しいのでは?」
この意味は邪魔だから来るんじゃねぇ!って意味ね、うん。
でも…それを言ったらフィオーラ様も身内なのよね…。
「あら!じゃあ私も何かお手伝い出来ることが無いか、聞きに行った方が良いわよね?!」
ほらっ!心優しいフィオーラ様が気を使って言い出しちゃったじゃない!
「フィオーラ様は私と一緒に楽しみましょうよ!」
焦るミシェリーナ様…。
仕方がない…。
「フィオーラ様、さっき大姉さまとお義兄さまにご挨拶をしてきましたけど、大姉さまたちは、フィオーラ様も来ているから、楽しんで言ってねって言ってくださいましたよ。
大姉さまのところは、使用人の皆様も優秀ですから、お手伝いの必要は無いと思いますよ。
楽しみましょう!」
そう言うと、ミシェリーナ様からは何か、睨まれました。
あ、そうか、まるで一緒に楽しみましょうと言っているようだから、お前は邪魔だって言いたいのね?!この顔は?
それでも取り敢えずお茶やお菓子のテーブルまでは一緒に行きました。
するとクリームたっぷりのケーキのお皿を手にしたミシェリーナ様が、笑顔でこちらを向き、次の瞬間…。
「マリーナさん!このケーキ、美味しそうよ!あらっ!」
とわざとらしくお皿の上のケーキを私目掛けて器用に放ってきました。
距離が近過ぎて流石に避けられませんでしたわ…。
あぁ…このドレスは着替えるわけにいかないのに!
「あら!大変!すぐに汚れを落としてきた方が良いのでは?!
それにしてもこのケーキがお好みじゃないなら、そうおっしゃってくだされば良いのに!
何も叩き落とさなくても!」
いやいや…自分に向けて叩き落とすバカはおりませんわ…ホント!よく言うわ!
「はぁ…。フィオーラ様…私、ちょっと汚れを何とかしてきますわね!」
そして近くに居た使用人の方に、落ちたケーキの片づけを頼み、他の使用人の方に、客間を使わせてくださるようにお願いし、案内していただきました。
救いは汚れたのはほぼベストのみで、ベストは光沢のあるレザーなので、すぐにだったら、簡単に汚れを落とせるかなというところです。
客間に案内され、すぐにベストを脱ぎ、水と布を持ってきていただきました。
先ずはついてしまったクリームを綺麗にふき取り、更に濡れた布でふき取り、更に更に乾いた布でしっかりふき取りました。
スカート部分にも少しだけついてしまっておりましたが、ほんの少しだったので、濡れた布で拭きとって、取り敢えずは大丈夫でしょう!
全く今日の服にはあちこちにあれこれ仕込んであるんだから、着替えるわけにいかないんだから、本当に困ったものだわ!
再び会場へ戻ろうと廊下へ出ると、見掛けない使用人の女性が案内しますと声を掛けてきました。
「あなた、初めてお会いする気がするけど、最近、大姉さまの所へいらっしゃったのかしら?」
「はい、茶会などで人手が居るからとご紹介を頂いて、先日から奉公させて頂いております。」
あまり顔をこちらに見せないように、先導して歩いていきます。
これは…早速来たわね!
行こうとしている先も、この先って茶会の会場じゃないわよ…私、伊達に妹をやっているわけではないけど?と思いつつも、後をついていきました。
先ずは予定外ですが、身に着けていたオニキスのビーズのブレスレットを引きちぎって手に握り、オニキスを一粒ずつ落として歩きました。
「ねぇ…どこへ向かっているのかしら?」
あまりに長いので、聞いてみました。
「こちらから案内するように言われておりますので…。」
裏口から外へ案内され、出た瞬間に背後から布を口に当てられ…。
そこでビーズは全て落とし、自分で自分の靴の先を踏み、色付きの砂が落ちるように仕込んだ部分に穴を開けました。
そして大した抵抗も出来ずに、意識を手放してしまいました。
先ずは入浴…朝風呂は身体に良くないですけど…そしてしっかりストレッチ。
からのもう一回軽くお湯で汗を流して。
髪をセットしてもらいました。
高い位置でのポニーテールに、作っておいた簪を挿しまくり。
用意しておいたワンピやベストを着用し、今日はアルとレイの二人にエスコートをしてもらいます。
両手に花だね。
アルは異国の服っぽいゆったりしたズボンに、丈の長いシャツを着ていました。
シャツと言いつつ、袖口や前立ては華やかな刺繍の入った個性的なものです。
レイはスタンダードなスーツですが、非常に仕立ても素材も良い、上品なもので、形はスタンダードですが、色は柔らかい若草色のスーツに、シャツは白地に濃い目のグリーンのピンストライプ、襟は開襟でタイは無し…開襟なのでまあ普通のタイは出来ないのですが。
二人とも本日もご令嬢方にご好評だろうなという素敵な出で立ちです。
三人の統一感は皆無ですけどね!
統一感のある衣装も悩んだのですが、そうするとどうしてもアルとレイよりも、私が目立ってしまうわけです。
私が目立つよりも、二人が目立って、「何であんなのを連れているのよ」感を出して、私が狙われるようにしたいのです。
これなら敵が罠に引っかかってくれるかな?
公爵家の馬車に乗り、三人で大姉さまのお邸へ向かいました。
微妙に遅めに着くように行ったので、既に会場である庭園には大勢のお客様がいらっしゃいました。
そこへ両手に花の私が優越感満載の笑顔を顔に貼り付けて、入っていきました。
そう!敵を罠にはめるためには、私は憎き敵!悪役令嬢にならなければならないのです!
敵が悪役令嬢(私)の魔の手から、王子様たち(アルとレイ)を助け出して、悪役令嬢を倒すぞ!と闘志を燃やすように仕向けなければならないのです!
会場に到着し、二人を伴い、先ずは大姉さまと義兄さまにご挨拶をしました。
挨拶を済ませ、飲み物や軽食、お菓子のあるテーブルの方へ移動しようと歩いておりましたら、あっという間にアルとレイが連れ去られました。
「早っ!」
予想以上の早さに呆然としていると、ミシェリーナ様がいらっしゃいました。
「あら!お一人でいらっしゃったのかしら?寂しいわねぇ。
まあ仕方がないわよね、お猿さんをエスコートしたがる殿方なんていないものねぇ。」
一方的に罵られるのを聞いていると、そこへフィオーラ様がやってきました。
「あら!マリーナ!久しぶりね!お元気だった?」
「フィオーラ様!ご無沙汰しております!」
フィオーラ様はいつもニコニコしていて優しくて可愛いです。
フィオーラ様と私が親しげに話し始めると、そこにいたミシェリーナ様の顔が、どんどん固まっていきました。
不機嫌になってきている!なってきている!そしてついに動きました。
「フィオーラ様、あちらにとても美味しそうなケーキを見つけたんですよ。
是非!一緒に食べに行きませんか?」
ミシェリーナ様が割り込んできました。
「あら!素敵ですね!では皆で行きましょうよ!ね!」
フィオーラ様は私の顔を見て言いました。
微妙だなぁ…フィオーラ様とはもっとお話ししたいけど…敵が一緒というのもね。
でも敵を罠にかけるには、イライラさせる方が良いのかなとも考えなおしまして。
「そうですね!私もフィオーラ様とはもっとお話ししたいですし!」
と一緒に行くことにしました。
その時のミシェリーナ様の顔と言ったら!
般若って言うのはこういう顔なのかなと思いました。
しかも目が全く笑っていない笑顔で言ってきました。
「あら!マリーナさんは、本日の茶会を主催してくださっているお義兄さまやお姉さまのお手伝いをした方が宜しいのでは?」
この意味は邪魔だから来るんじゃねぇ!って意味ね、うん。
でも…それを言ったらフィオーラ様も身内なのよね…。
「あら!じゃあ私も何かお手伝い出来ることが無いか、聞きに行った方が良いわよね?!」
ほらっ!心優しいフィオーラ様が気を使って言い出しちゃったじゃない!
「フィオーラ様は私と一緒に楽しみましょうよ!」
焦るミシェリーナ様…。
仕方がない…。
「フィオーラ様、さっき大姉さまとお義兄さまにご挨拶をしてきましたけど、大姉さまたちは、フィオーラ様も来ているから、楽しんで言ってねって言ってくださいましたよ。
大姉さまのところは、使用人の皆様も優秀ですから、お手伝いの必要は無いと思いますよ。
楽しみましょう!」
そう言うと、ミシェリーナ様からは何か、睨まれました。
あ、そうか、まるで一緒に楽しみましょうと言っているようだから、お前は邪魔だって言いたいのね?!この顔は?
それでも取り敢えずお茶やお菓子のテーブルまでは一緒に行きました。
するとクリームたっぷりのケーキのお皿を手にしたミシェリーナ様が、笑顔でこちらを向き、次の瞬間…。
「マリーナさん!このケーキ、美味しそうよ!あらっ!」
とわざとらしくお皿の上のケーキを私目掛けて器用に放ってきました。
距離が近過ぎて流石に避けられませんでしたわ…。
あぁ…このドレスは着替えるわけにいかないのに!
「あら!大変!すぐに汚れを落としてきた方が良いのでは?!
それにしてもこのケーキがお好みじゃないなら、そうおっしゃってくだされば良いのに!
何も叩き落とさなくても!」
いやいや…自分に向けて叩き落とすバカはおりませんわ…ホント!よく言うわ!
「はぁ…。フィオーラ様…私、ちょっと汚れを何とかしてきますわね!」
そして近くに居た使用人の方に、落ちたケーキの片づけを頼み、他の使用人の方に、客間を使わせてくださるようにお願いし、案内していただきました。
救いは汚れたのはほぼベストのみで、ベストは光沢のあるレザーなので、すぐにだったら、簡単に汚れを落とせるかなというところです。
客間に案内され、すぐにベストを脱ぎ、水と布を持ってきていただきました。
先ずはついてしまったクリームを綺麗にふき取り、更に濡れた布でふき取り、更に更に乾いた布でしっかりふき取りました。
スカート部分にも少しだけついてしまっておりましたが、ほんの少しだったので、濡れた布で拭きとって、取り敢えずは大丈夫でしょう!
全く今日の服にはあちこちにあれこれ仕込んであるんだから、着替えるわけにいかないんだから、本当に困ったものだわ!
再び会場へ戻ろうと廊下へ出ると、見掛けない使用人の女性が案内しますと声を掛けてきました。
「あなた、初めてお会いする気がするけど、最近、大姉さまの所へいらっしゃったのかしら?」
「はい、茶会などで人手が居るからとご紹介を頂いて、先日から奉公させて頂いております。」
あまり顔をこちらに見せないように、先導して歩いていきます。
これは…早速来たわね!
行こうとしている先も、この先って茶会の会場じゃないわよ…私、伊達に妹をやっているわけではないけど?と思いつつも、後をついていきました。
先ずは予定外ですが、身に着けていたオニキスのビーズのブレスレットを引きちぎって手に握り、オニキスを一粒ずつ落として歩きました。
「ねぇ…どこへ向かっているのかしら?」
あまりに長いので、聞いてみました。
「こちらから案内するように言われておりますので…。」
裏口から外へ案内され、出た瞬間に背後から布を口に当てられ…。
そこでビーズは全て落とし、自分で自分の靴の先を踏み、色付きの砂が落ちるように仕込んだ部分に穴を開けました。
そして大した抵抗も出来ずに、意識を手放してしまいました。
674
お気に入りに追加
2,232
あなたにおすすめの小説
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
邪魔者は消えようと思たのですが……どういう訳か離してくれません
りまり
恋愛
私には婚約者がいるのですが、彼は私が嫌いのようでやたらと他の令嬢と一緒にいるところを目撃しています。
そんな時、あまりの婚約者殿の態度に両家の両親がそんなに嫌なら婚約解消しようと話が持ち上がってきた時、あれだけ私を無視していたのが嘘のような態度ですり寄ってくるんです。
本当に何を考えているのやら?
愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた
迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」
待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。
「え……あの、どうし……て?」
あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。
彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。
ーーーーーーーーーーーーー
侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。
吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。
自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。
だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。
婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。
※基本的にゆるふわ設定です。
※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます
※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。
※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。
暗闇に輝く星は自分で幸せをつかむ
Rj
恋愛
許婚のせいで見知らぬ女の子からいきなり頬をたたかれたステラ・デュボワは、誰にでもやさしい許婚と高等学校卒業後にこのまま結婚してよいのかと考えはじめる。特待生として通うスペンサー学園で最終学年となり最後の学園生活を送る中、許婚との関係がこじれたり、思わぬ申し出をうけたりとこれまで考えていた将来とはまったく違う方向へとすすんでいく。幸せは自分でつかみます!
ステラの恋と成長の物語です。
*女性蔑視の台詞や場面があります。
もう一度7歳からやりなおし!王太子妃にはなりません
片桐葵
恋愛
いわゆる悪役令嬢・セシルは19歳で死亡した。
皇太子のユリウス殿下の婚約者で高慢で尊大に振る舞い、義理の妹アリシアとユリウスの恋愛に嫉妬し最終的に殺害しようとした罪で断罪され、修道院送りとなった末の死亡だった。しかし死んだ後に女神が現れ7歳からやり直せるようにしてくれた。
もう一度7歳から人生をやり直せる事になったセシル。
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる