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【Case01】和磨×Nao
①
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「……あんっ……いやっ、ダメ…ッ」
肌と肌がぶつかる音が厭らしくマイクとカメラ越しに映し出され部屋はライトの熱気も含め気温が上昇していた。
シティホテルの一室。音もなく静かな空間に監督の顔の様子を伺いながらベッドがキシキシ唸るのを黙って見ている大人達がずらり。
異様な風景だが、れっきとした僕の職場だ。
アダルトビデオメーカーのAD、下っ端中の下っ端だ。
「…や、イッちゃう!……ああんっ」
「俺もッ……出していい?」
「出して!……ッ…っ」
絶頂に達した白濁をお尻に吐き出すと、そのままパタンとベッドに横たわった二人をカメラが接近し、長い撮影のラストを迎えた。
「はい、カット!OKっ!」
それを合図にティッシュやタオルを持って駆け寄り女優の身体についた何だかんだをテキパキと取り除いていく。
「涼子さんシャワー入ります!」
スタッフ数人に付き添われながら女優の女の子は立ち去って行った。
「Naoくんお疲れさま。はいこれ台本!明日の撮影はストーリー重視でセリフも多めで悪いけどよろしくね」
「わかりました、監督」
それだけ言って監督はそのまま女優の方にスキップするように付いていく。"よかったよ~"と褒める恒例の儀式が奥で始まる。
AVの世界で女優と男優の差は激しい。
断然、女優が主役で優遇される世界。男優はほぼ脇役同然で撮影スタッフと同じような扱いは変わらない。
そんな中でもNaoは甘いルックスで女性人気があり男優の中でもギャラは高く出演依頼も多い。
「Naoくんお疲れさま!」
僕は裸のままの彼に寄ってバスローブを身体にかけた。細い身体にも適度に付いた筋肉と綺麗な艶っぽい肌をしてしている。
マッチョで黒く焦げた男らしい裸よりリアリティーがあって女子にはウケる映像が撮れるのだろう。それを物語る様に彼の出演作は恋人設定のストーリー重視が多い。キスシーンだってそんなに必要かと思うほど多く盛り込まれている。
茶色のサラサラした髪から流れた汗を見てタオルを手渡した。
「あっ、ありがとう」
「あ~いや何かさ、監督が汗が滴るぐらいの方がエロティックさが増すって、途中でエアコン切っちゃって」
「あぁなるほど。どおりで暑かったわけだ」
ハァハァとまだ少し息を早くしながら彼はニコリと僕に笑いかけてくれた。
ドキッとした。あんなに裸を隅々まで見た後なのにこの笑顔一つが僕の胸を熱くさせる。
ぼーっと彼の顔を見入ってしまう。
「……ん?何か顔に付いてる…?」
「あっいや!あ、明日も撮影だよね?」
さっきの監督との会話を聞いて手に持った台本も確認済みだ。
「うん。明日は初めて絡む有名女優さんだから少し緊張するな……」
小さな声で少し俯き台本をギュッと握ってそう言った彼が弱く可愛くて、つい手を差し伸べたくなる。
「でも!女優さんも嬉しいと思う!Naoくんが相手なら!僕なら嬉しいよ!」
突然おかしな事を、しかも声を大にして言ってしまった。形容し難い顔をしている彼を見て発した言葉を後悔した。
「あっいやっ、そのつまり!緊張する事ないよ!って言いたかっただけ」
「……うん。ありがとう頑張るよ」
僕と彼の関係はこれ以上でもこれ以下でもない。タメ口で話す様になり"さん"から"くん"に距離が近づいたのもつい最近の事だ。
彼の事は何も知らない。
生年月日は?血液型は?家族構成は?趣味は?
本名すら分からないんだ。
知っているのは裸とセックスくらい――
もっと彼に近づきたい――
その日の深夜2時6分
ピコンとスマホの音が鳴ると同時に明るくなった画面にメッセージが映し出された。
"Kazuma Iwasaki
Sunday, October 6
from Desperado"
肌と肌がぶつかる音が厭らしくマイクとカメラ越しに映し出され部屋はライトの熱気も含め気温が上昇していた。
シティホテルの一室。音もなく静かな空間に監督の顔の様子を伺いながらベッドがキシキシ唸るのを黙って見ている大人達がずらり。
異様な風景だが、れっきとした僕の職場だ。
アダルトビデオメーカーのAD、下っ端中の下っ端だ。
「…や、イッちゃう!……ああんっ」
「俺もッ……出していい?」
「出して!……ッ…っ」
絶頂に達した白濁をお尻に吐き出すと、そのままパタンとベッドに横たわった二人をカメラが接近し、長い撮影のラストを迎えた。
「はい、カット!OKっ!」
それを合図にティッシュやタオルを持って駆け寄り女優の身体についた何だかんだをテキパキと取り除いていく。
「涼子さんシャワー入ります!」
スタッフ数人に付き添われながら女優の女の子は立ち去って行った。
「Naoくんお疲れさま。はいこれ台本!明日の撮影はストーリー重視でセリフも多めで悪いけどよろしくね」
「わかりました、監督」
それだけ言って監督はそのまま女優の方にスキップするように付いていく。"よかったよ~"と褒める恒例の儀式が奥で始まる。
AVの世界で女優と男優の差は激しい。
断然、女優が主役で優遇される世界。男優はほぼ脇役同然で撮影スタッフと同じような扱いは変わらない。
そんな中でもNaoは甘いルックスで女性人気があり男優の中でもギャラは高く出演依頼も多い。
「Naoくんお疲れさま!」
僕は裸のままの彼に寄ってバスローブを身体にかけた。細い身体にも適度に付いた筋肉と綺麗な艶っぽい肌をしてしている。
マッチョで黒く焦げた男らしい裸よりリアリティーがあって女子にはウケる映像が撮れるのだろう。それを物語る様に彼の出演作は恋人設定のストーリー重視が多い。キスシーンだってそんなに必要かと思うほど多く盛り込まれている。
茶色のサラサラした髪から流れた汗を見てタオルを手渡した。
「あっ、ありがとう」
「あ~いや何かさ、監督が汗が滴るぐらいの方がエロティックさが増すって、途中でエアコン切っちゃって」
「あぁなるほど。どおりで暑かったわけだ」
ハァハァとまだ少し息を早くしながら彼はニコリと僕に笑いかけてくれた。
ドキッとした。あんなに裸を隅々まで見た後なのにこの笑顔一つが僕の胸を熱くさせる。
ぼーっと彼の顔を見入ってしまう。
「……ん?何か顔に付いてる…?」
「あっいや!あ、明日も撮影だよね?」
さっきの監督との会話を聞いて手に持った台本も確認済みだ。
「うん。明日は初めて絡む有名女優さんだから少し緊張するな……」
小さな声で少し俯き台本をギュッと握ってそう言った彼が弱く可愛くて、つい手を差し伸べたくなる。
「でも!女優さんも嬉しいと思う!Naoくんが相手なら!僕なら嬉しいよ!」
突然おかしな事を、しかも声を大にして言ってしまった。形容し難い顔をしている彼を見て発した言葉を後悔した。
「あっいやっ、そのつまり!緊張する事ないよ!って言いたかっただけ」
「……うん。ありがとう頑張るよ」
僕と彼の関係はこれ以上でもこれ以下でもない。タメ口で話す様になり"さん"から"くん"に距離が近づいたのもつい最近の事だ。
彼の事は何も知らない。
生年月日は?血液型は?家族構成は?趣味は?
本名すら分からないんだ。
知っているのは裸とセックスくらい――
もっと彼に近づきたい――
その日の深夜2時6分
ピコンとスマホの音が鳴ると同時に明るくなった画面にメッセージが映し出された。
"Kazuma Iwasaki
Sunday, October 6
from Desperado"
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