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$3.ここは天国か?地獄か?⑧
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「それじゃ彼はこのまま松永さんに託します」
『いや、ちょ二階は?』
「それはまた今度!松永さんコキ使っちゃって下さい。それじゃ頑張って~」
夕日は手のひらのヒラヒラさせながら行ってしまった。凛々しい顔した犬三匹に睨まれながら沙紀にペコリと頭を下げた。
「波間くんともう仲良くなったのね」
『はい。家の中を案内してもらったり良くしてくれてます』
「歳が近い男の子同士だしね。あっそれじゃ早速、仕事教えるから一緒に来てくれる?はいこのリード持って!」
そう言って広い中庭や裏庭の掃除の仕方や犬のお世話方法を丁寧に一通り教わる。屋外の清掃スタッフは全員合わせて8人いて、もちろん休みもある為一日大体5人が6人で全てを綺麗にする。
ここにいる間は仕事するのは当たり前だけど、早いところお宝の目星くらいはつけておきたい。
「疲れたかな?ちょっと休む?」
『大丈夫です。まだ頑張れますよ』
「あら、頼もしいわね」
夕方になり少しオレンジ色に染まった空を見上げた。当たり前だが都会でも田舎と同じ様に空は綺麗なんだなと改めて思った。何でも目の届く場所にある、あの狭い家に思い出して切なくなった初人はポロっと声をもらした。
『お父さんに会いたいな……』
「ん?、、何か言った?」
『あっいえ、、あとは何をすれば?」
疲れた身体に鞭打って残りの仕事を片付ける。短期間の辛抱だと思ってじんわりと汗をかきながらラストスパートの仕事をこなした。
「お疲れ様。今日はこれで終わりね」
『終わりですか?ありがとうございます』
夜6時ピッタリ時間通り仕事を終えた。屋外担当は朝早い分、他の持ち場の人より早く仕事が終わる。豪邸の中ではまだ各持ち場担当はバタバタと動いている使用人達を横目に初人は自身の部屋に帰っていく。
『疲れた……』
堅苦しい制服から私服に着替えて、犬の毛がついた制服をベッドに脱ぎ横にバタンを倒れこむ。家の間取りや警備体制を思い返していた。
『しかもなかなかガード固くて難しいな』
それからしばらく寝入ってしまった初人。どれくらい経っただろうか、開けっぱなしの窓の外から漏れる明かりと話し声が聴こえて初人は目を覚ました。時計は夜11時になろうしている。
窓から顔を出すと玄関前に着けた高級車から片手をポケットに入れて降りて来た背の高いスーツ姿の男。反対側のドアからは見覚えある顔が見えた。
『あれは秘書の人か。って事はもう一人はもしかしてー…』
少し窓から身体を出して見ていると、男が一瞬こちらを見た気がして初人を瞬時に身を屈めて隠れた。動かないでそのままでいるとすぐに声はなくなって車も去っていった。
『俺、何で隠れてんだ!?まだ何もやってないのに』
初人は立ち上がって窓を閉めた。ベッドに脱ぎ捨てた制服をハンガーに掛けてしまうと引き出しを開け、お守りの様に持っている家族写真を見ていよいよだなと意を決した。
『いや、ちょ二階は?』
「それはまた今度!松永さんコキ使っちゃって下さい。それじゃ頑張って~」
夕日は手のひらのヒラヒラさせながら行ってしまった。凛々しい顔した犬三匹に睨まれながら沙紀にペコリと頭を下げた。
「波間くんともう仲良くなったのね」
『はい。家の中を案内してもらったり良くしてくれてます』
「歳が近い男の子同士だしね。あっそれじゃ早速、仕事教えるから一緒に来てくれる?はいこのリード持って!」
そう言って広い中庭や裏庭の掃除の仕方や犬のお世話方法を丁寧に一通り教わる。屋外の清掃スタッフは全員合わせて8人いて、もちろん休みもある為一日大体5人が6人で全てを綺麗にする。
ここにいる間は仕事するのは当たり前だけど、早いところお宝の目星くらいはつけておきたい。
「疲れたかな?ちょっと休む?」
『大丈夫です。まだ頑張れますよ』
「あら、頼もしいわね」
夕方になり少しオレンジ色に染まった空を見上げた。当たり前だが都会でも田舎と同じ様に空は綺麗なんだなと改めて思った。何でも目の届く場所にある、あの狭い家に思い出して切なくなった初人はポロっと声をもらした。
『お父さんに会いたいな……』
「ん?、、何か言った?」
『あっいえ、、あとは何をすれば?」
疲れた身体に鞭打って残りの仕事を片付ける。短期間の辛抱だと思ってじんわりと汗をかきながらラストスパートの仕事をこなした。
「お疲れ様。今日はこれで終わりね」
『終わりですか?ありがとうございます』
夜6時ピッタリ時間通り仕事を終えた。屋外担当は朝早い分、他の持ち場の人より早く仕事が終わる。豪邸の中ではまだ各持ち場担当はバタバタと動いている使用人達を横目に初人は自身の部屋に帰っていく。
『疲れた……』
堅苦しい制服から私服に着替えて、犬の毛がついた制服をベッドに脱ぎ横にバタンを倒れこむ。家の間取りや警備体制を思い返していた。
『しかもなかなかガード固くて難しいな』
それからしばらく寝入ってしまった初人。どれくらい経っただろうか、開けっぱなしの窓の外から漏れる明かりと話し声が聴こえて初人は目を覚ました。時計は夜11時になろうしている。
窓から顔を出すと玄関前に着けた高級車から片手をポケットに入れて降りて来た背の高いスーツ姿の男。反対側のドアからは見覚えある顔が見えた。
『あれは秘書の人か。って事はもう一人はもしかしてー…』
少し窓から身体を出して見ていると、男が一瞬こちらを見た気がして初人を瞬時に身を屈めて隠れた。動かないでそのままでいるとすぐに声はなくなって車も去っていった。
『俺、何で隠れてんだ!?まだ何もやってないのに』
初人は立ち上がって窓を閉めた。ベッドに脱ぎ捨てた制服をハンガーに掛けてしまうと引き出しを開け、お守りの様に持っている家族写真を見ていよいよだなと意を決した。
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