11 / 19
$3.ここは天国か?地獄か?①
しおりを挟む
「本日のスケジュールですが、まずは新しくホテルに導入するスパ施設の企業との打ち合わせが10時から。それからー…」
田ノ上の口から過密スケジュールが読み上げられる。まだまだホテルは騒動の中だか仕事は山積みで次々と舞い込んでくる仕事は容赦無かった。はなから事件の事でダメージ食らったのは世間のイメージや売り上げだけで、鋼のメンタルの郁にはさほど響いてなかった。
「わかった」
「それから余談ですが使用人を新たに一人雇いました」
「使用人?」
「はい。ここ1ヶ月の間に5人が辞めてしまったので穴が空いたところに補充を」
神崎邸の使用人の入れ替わりは日常茶飯事だ。父親の正吾と息子の郁が暮らしていたこの家。正吾はEVOが海外にホテル建設を始めてから海外にいる事が多く一年に数回戻ってくるだけ。そのため神崎邸は現状、郁が一人いるだけだ。
「そうか。多分辞めた奴の名前を聞いても知らないだろうし興味もない」
"仕事出来ないやつは即クビ"の郁のビジネススタイルは家の中でも同じ。クビにならずとも郁のワガママについていけずに辞める者から逃げ出す者までいる。
ただし給料はそれなりに高いし住み込み使用人に関しては家賃や雑費は完全免除。その上三食の食事付きだ。当然働きたいと言う声は多いが、1ヶ月持てば賞賛されるほどに続く者は少ない。
身支度を済ませ玄関を出ると目の前に止めてある黒い高級車。運転手が後部座席のドアを開けて立っていた。神崎邸歴20年のベテラン運転手、服部は郁がまだ幼かった頃から成長を見守ってきた。
仕事はもちろんの事、父親と母親そして郁の三人で遊園地へ行ったり動物園へ行く時だって服部は運転席にいて幸せな家庭を見ていた。
「郁さんおはようございます」
「おはよう。今日はスケジュールぎっしりだから大変だが頼んだ」
「かしこまりました」
車は玄関から広い庭を通って道路に出ると坂道下って降りていく。ピカピカに磨かれたボディーに合わせるように車内もホコリ一つない。
神崎家が信頼する完璧な仕事をこなす服部の運転は自分の部屋やホテル以外で眠らない郁が唯一眠れる場所。それだけ安心して気を許せる事を表している。
坂道を下りながら車ギリギリをすれ違った帽子を被って上下ジャージ姿のラフな格好の男。涼しい車内から服部がチラッと窓の外を見て言った。
「いやぁこんな暑い中部活ですかね?若いっていいですねー。あっ、そういえば郁さんはもうバスケはやられてないんですか?」
「今は忙しくて全く。NBA観るくらいかな」
大学までスポーツはバスケ一筋でそこそこの成績も残している郁は卒業後も気晴らし程度にたまに仲間とバスケコートを走っていた。
しかしホテルの本格的に経営に携わってからは丸っ切り遊ぶ時間もなく仕事ばかりの日々だ。
そんな軽い世間話をしながら車はEVOの会社ビルの方へ走っていった。そして郁達を乗せた車が来た方向へ坂道を登っていく部活少年こと忽那初人はペースが上がらず苦戦していた。
「ハァ、ハァ、、坂道きっつ!!」
大きなボストンバッグを肩にかけて坂道を息を切らして一歩一歩進む。一度来たから余裕ぶって駅からバス代をケチって徒歩で、しかもこの大荷物を抱えて来たのは間違いだった。
5月中旬にも関わらず気温は25℃を超えてアスファルトの照り返しをもろにうけている。ひたすら歩いてふらふらの足を何とか前に進めた。
「あー着いた!疲れたー!ってか、、金持ちって住む所まで人より上にいたいとか性格悪すぎ、、ハァ……」
今回は正面入口から堂々と逃げも隠れもしない。初人は柵に近づいて背伸びをして中を見ていると、左右にあるカメラが一斉に初人に向く。どうやら人間の動きを察知してカメラは自動に動きピコピコと赤のランプがついて録画され始めた。
田ノ上の口から過密スケジュールが読み上げられる。まだまだホテルは騒動の中だか仕事は山積みで次々と舞い込んでくる仕事は容赦無かった。はなから事件の事でダメージ食らったのは世間のイメージや売り上げだけで、鋼のメンタルの郁にはさほど響いてなかった。
「わかった」
「それから余談ですが使用人を新たに一人雇いました」
「使用人?」
「はい。ここ1ヶ月の間に5人が辞めてしまったので穴が空いたところに補充を」
神崎邸の使用人の入れ替わりは日常茶飯事だ。父親の正吾と息子の郁が暮らしていたこの家。正吾はEVOが海外にホテル建設を始めてから海外にいる事が多く一年に数回戻ってくるだけ。そのため神崎邸は現状、郁が一人いるだけだ。
「そうか。多分辞めた奴の名前を聞いても知らないだろうし興味もない」
"仕事出来ないやつは即クビ"の郁のビジネススタイルは家の中でも同じ。クビにならずとも郁のワガママについていけずに辞める者から逃げ出す者までいる。
ただし給料はそれなりに高いし住み込み使用人に関しては家賃や雑費は完全免除。その上三食の食事付きだ。当然働きたいと言う声は多いが、1ヶ月持てば賞賛されるほどに続く者は少ない。
身支度を済ませ玄関を出ると目の前に止めてある黒い高級車。運転手が後部座席のドアを開けて立っていた。神崎邸歴20年のベテラン運転手、服部は郁がまだ幼かった頃から成長を見守ってきた。
仕事はもちろんの事、父親と母親そして郁の三人で遊園地へ行ったり動物園へ行く時だって服部は運転席にいて幸せな家庭を見ていた。
「郁さんおはようございます」
「おはよう。今日はスケジュールぎっしりだから大変だが頼んだ」
「かしこまりました」
車は玄関から広い庭を通って道路に出ると坂道下って降りていく。ピカピカに磨かれたボディーに合わせるように車内もホコリ一つない。
神崎家が信頼する完璧な仕事をこなす服部の運転は自分の部屋やホテル以外で眠らない郁が唯一眠れる場所。それだけ安心して気を許せる事を表している。
坂道を下りながら車ギリギリをすれ違った帽子を被って上下ジャージ姿のラフな格好の男。涼しい車内から服部がチラッと窓の外を見て言った。
「いやぁこんな暑い中部活ですかね?若いっていいですねー。あっ、そういえば郁さんはもうバスケはやられてないんですか?」
「今は忙しくて全く。NBA観るくらいかな」
大学までスポーツはバスケ一筋でそこそこの成績も残している郁は卒業後も気晴らし程度にたまに仲間とバスケコートを走っていた。
しかしホテルの本格的に経営に携わってからは丸っ切り遊ぶ時間もなく仕事ばかりの日々だ。
そんな軽い世間話をしながら車はEVOの会社ビルの方へ走っていった。そして郁達を乗せた車が来た方向へ坂道を登っていく部活少年こと忽那初人はペースが上がらず苦戦していた。
「ハァ、ハァ、、坂道きっつ!!」
大きなボストンバッグを肩にかけて坂道を息を切らして一歩一歩進む。一度来たから余裕ぶって駅からバス代をケチって徒歩で、しかもこの大荷物を抱えて来たのは間違いだった。
5月中旬にも関わらず気温は25℃を超えてアスファルトの照り返しをもろにうけている。ひたすら歩いてふらふらの足を何とか前に進めた。
「あー着いた!疲れたー!ってか、、金持ちって住む所まで人より上にいたいとか性格悪すぎ、、ハァ……」
今回は正面入口から堂々と逃げも隠れもしない。初人は柵に近づいて背伸びをして中を見ていると、左右にあるカメラが一斉に初人に向く。どうやら人間の動きを察知してカメラは自動に動きピコピコと赤のランプがついて録画され始めた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
もう一度、貴方に出会えたなら。今度こそ、共に生きてもらえませんか。
天海みつき
BL
何気なく母が買ってきた、安物のペットボトルの紅茶。何故か湧き上がる嫌悪感に疑問を持ちつつもグラスに注がれる琥珀色の液体を眺め、安っぽい香りに違和感を覚えて、それでも抑えきれない好奇心に負けて口に含んで人工的な甘みを感じた瞬間。大量に流れ込んできた、人ひとり分の短くも壮絶な人生の記憶に押しつぶされて意識を失うなんて、思いもしなかった――。
自作「貴方の事を心から愛していました。ありがとう。」のIFストーリー、もしも二人が生まれ変わったらという設定。平和になった世界で、戸惑う僕と、それでも僕を求める彼の出会いから手を取り合うまでの穏やかなお話。
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる