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エピローグ

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 あのドラゴンの浄化から一年……。

「おはよう! 今日の浄化場所は林の中にあるんだよね?」

 私は今東の領地を巡っている。
 あれから私達はまた西の領地へと移動し、西が終わったら北、それが終わった東と移動してきた。この東の領地が終われば、今邪気に侵されている場所の浄化は一通り完了する。

 結局あの湖以外は長年浄化されていなかった場所は見当たらず、順調に浄化することが出来ている。

 あとは定期的に巡回に出て、異常がないか、新しく邪気が発生した場所がないか確認するのが私の今後の仕事だ。

 今も婚約者のアルは浄化部隊の隊長として、私を守ってくれている。

「そうだよ。この町を通過したらだんだん道が狭くなるから、林に着いたら俺の馬に乗ってもらう予定だよ」

「分かった。ここが終わったらそろそろ旅も終わりなんだよね」

「あぁ。もう8割程完了しているからね。あと半年以内には終わると思う。この旅が終わったら王都に戻り式をあげよう」

「うん! その為にも頑張らなくっちゃね!」

「あぁ。メイの綺麗な姿が見れると思うと楽しみだな。早く式をあげて俺だけのメイにしたい」

「俺だけのって……もうっ! 恥ずかしいよ。でも私もアルのタキシード姿が楽しみだなぁ。絶対かっこいいもん!」

 浄化の旅も以前と違うのは、週に2日の浄化から週4日の浄化へと契約更新をしたこと。もう前の会社も辞めてアパートも解約し、身辺整理も済ませて元の世界に戻ることはなくなったのだ。こちらの世界に住むようになってからは2日浄化して、2、3日休んでまた2日浄化してというリズムで過ごしている。

 浄化の日が増えた分、私も限界まで力を使うことがなくなって、食事もお粥生活から解放されている。お給金も上がり、浄化のペースも早くなって良いこと尽くしだ。

 今は旅を早く終えて、アルとの結婚式をするのを心待ちにしている。順調に交際を続け、今ではアルと愛称で呼ぶ仲になっているのだ。そしてこの旅が終わった際には、彼は侯爵位を授けられるらしい。本当なら伯爵位になるはずだったのだが、私との婚約を踏まえて王様が奮発してくれた。

 実はこの為にお父さんとお兄さんが不正を働いてた侯爵家を一つ潰したとかなんとか。その侯爵家というのが、なんとあの私が拉致された事件の黒幕だったと言う話だ。


 侯爵家の悪事を暴いたのもアーノルドの手柄の一つにする為に、あの時彼に別行動を取らせていたらしい。このことは私達だけの秘密だ。もちろん最初に情報を掴んだのは彼なので、その情報を元にちょっと手助けしてくれただけらしいが、やはり宰相様達の策略には驚いた。味方にいるなら心強いが、敵には絶対回したくない。


「そういえば兄も結婚式の為にタキシードを新調するとか言ってたな。別に来なくて良いのに」

「ふふ、そんなこと言わないでよ。お兄さんも楽しみにしてくれてて私は嬉しいよ」

「本当に? 最近少し厚かましいだろう? 嫌だってハッキリ言っていいんだよ」

 浄化の合間に長期休みが取れるようになり、その時にアーノルドの実家との交流を深めている。お兄さんにも本当の妹のように可愛がられており、アルはそれがちょっと不満らしく、よくお兄さんと言い合いをしている。そんな彼はいつもより幼く見えて、可愛いと思っているのは秘密だ。


 泉に着くといつも通り深呼吸をする。左手の指輪に触れると力が湧いてくる気がする。

「メイのことはちゃんと守ってるから、安心して」


 そう言って微笑む彼に頷き返し、泉に手を入れて根元を探す。


「根元が見つかった! 今から浄化を始めます!」





 そしてみゆちゃん達はというと……。


「ライザーそっちに魔物が行ったわよ! ファイアウォール!!」

 そうみゆちゃんが叫ぶと炎の柱が立ち上がり、ライザーの後ろに迫っていた魔物を倒して行く。

「サンキュー! 危なかったぜ」

 それに負けじとライザーの魔法も炸裂している。


 みゆちゃんは無事に私と一緒にこちらの世界に移住することが出来た。かなりやる気に満ちて怖いくらいだったライザーが、こちらにみゆちゃんを留まらせる魔法をついに完成させたのだ。

 それまではずっと最大4日間しかこちらの世界に滞在することしか出来なかったが、私の浄化の魔法をドラゴンの魔石に込め、それとライザーの愛とやらで見事新しいアイテムを完成させた。みゆちゃんはもうこちらの世界から離れることはない。


 そしてなんとみゆちゃんは魔道士の素質があったのだ。しかもかなり強く今では上級魔道士を名乗っている。

 私とアルが怪我からの復帰でリハビリをしている中、みゆちゃんはライザーに魔法を教えてもらっていたらしい。元々みゆちゃんはあっちの世界でゲーマーだった。ゲームで魔法のイメージが出来上がっていたおかげか、異世界人の特典なのか分からないが、上級魔法と呼ばれるものも最初から難なく使いこなせた。


 ライザーの家系は大体魔道士を輩出している家系であった為、魔法の才能に溢れたみゆちゃんはその実力が確認されるとすぐに婚約が認められた。今は浄化部隊の重要な戦力として一緒に旅をして活躍してくれている。

 デザイナーの仕事は出来なくなったが、みゆちゃんは魔法使いの方が楽し過ぎると言って、とても充実しているみたいだ。ライザーとの仲も順調で私も嬉しい。私達の結婚式を終えたらみゆちゃん達も入籍予定となっている。





「ふぅ。浄化完了したよ!」

「あぁお疲れ様。メイの浄化する姿はいつ見ても綺麗だよ。他の人に見せるのが勿体ないくらいだ」

 そう言って優しい顔で抱きしめ、額にキスしてくれるアル。彼のこの腕に包まれている私は世界一幸せだ。


「……ありがとう」

「なんかいつもと様子が違うね。どうかした?」

「もうすぐこの旅が終わると思うとなんか寂しくて。今までの日常がなくなっちゃうみたいで」

「確かにね。でもこれからの人生の方が長いんだ。一緒に楽しい思い出をどんどん作っていこう」

 そう笑いかけると、キスを贈ってくれ私もそれを受け入れる。

「なんかめいが大人になっちゃったわ」

「だよな。最初の頃なんか私に魅力がない、どうしようとか悩んでて可愛かったのに」

「もう! 揶揄わないでよ!!」

「触れてくれないって悩んでたのに、今ではみんなの目の前でも平然とキスをするしね。成長したわ」

「みゆちゃん達だってそうじゃん! もう昔のことを出すのはやめてよねっ! 怒ったんだから!!」

 そう怒ってみるが、本当は今こうしてみんなで居られることがとても嬉しいのだ。


「こら、メイを揶揄って遊んでいいのは俺だけだから返してもらうよ」

 そう言って私を抱き寄せるアルに私も抱きつき返す。

「メイ、この先の未来をずっと君と過ごしていきたい。ずっと君のことを守るから、ずっと俺の横で笑っていて欲しい。俺には君が必要なんだよ」

「うん、私も! アルと一緒にずっと笑っていたい」

 そう2人で笑い合うのをみんなが温かい目で見守ってくれていた。

 ずっとひとりぼっちだと思ってた、要らない存在だと思ってた私に生きる理由をくれたこの世界。私自身を求めてくれる人たちがここにはいるのだ。

 この大好きな彼らを守る為に、そして彼の隣に立ち続けられるように今日も私はこの世界で浄化に励む。まだまだ契約聖女は辞めません。この力をこの世界、そして彼が私を求めてくれる限り。


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みんなの感想(1件)

hiyo
2022.05.21 hiyo

とても優しいお話でした。
最後まで読ませて頂いてありがとうございました。
読み易かったです。

解除

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