54 / 63
電話の声で安心出来たようです。
しおりを挟む
「もしもし……?」
『……おいっ! お前黙って勝手に居なくなるなよ!!』
「えっ、ごめん……心配した?」
通信の相手はユーリだった。
確かにあの時は慌てて、誰にも伝えずにこちらへ来てしまった。もしかして心配してくれてたのだろうか。
『……心配するに決まってんだろバカ!』
ほう。心配してくれてたんだ。
ちょっと嬉しい……。
「ごめんって」
『せめて一言相談しろよ。それとも俺に相談出来ないようなことだったのかよ』
「だって……ユーリはララさんのことで忙しかったでしょ?」
素直に言えば良いのに、こんな時に出てくるのはユーリのことを責めるような言葉。……本当大人げない自分が嫌になる。
『なんだよそれ……』
ほら、ユーリだって呆れてる。
彼は神殿を調査する為にララさんに近づいているのに。
でも彼と彼女が親しそうに話している姿を見かける度に嫌な気持ちになる。
そんな自分が嫌で、掃除を手伝ったり、図書館に行ったりして2人の姿を見ないようにしていたのだ。
『……それで、お前は無事だったのかよ』
私が嫌なことを言ってるのに、私よりも年下なのに大人な彼は話を変えてくれる。きっとミラー様から話を聞いているのだろう。
「うん。私の方には毒も入ってなかったし大丈夫だよ」
『……そうか。それは色々危なかったな』
「うん? ミラー様のこと? 本当に間一髪だったよね」
『違うさ。お前が危なかったって言ってんの。もしミラーがそのまま毒入りの食事を食べて死んでたら誰が1番に疑われると思うか考えてみろよ』
「……もしかして私?」
『だろうな。その証拠にお前の食事には毒もなかった。お前のスキルなら何だって可能だからな』
「……でも私のスキルは殺人とかの罪をすると使えなくなるんでしょう?」
『そう言われているがな……だが本当にそうだと誰が証明出来る? 今までそんな事例がないのに』
「……。うそ……。私が嵌められかけたってこと?」
『……その可能性もなくはない。だから絶対に1人になるなよ。誰が何を狙ってるか分かるまでは絶対になっ!』
「…………」
ミラー様が私の食事に毒が入ってないと言った時に複雑そうな顔をしたのはそのせいだったのか。
きっと私を不安にさせないようにミラー様はその可能性を黙っていたんだ。
『ったく! だから勝手に居なくなるなよ。側に居なきゃ守れねぇんだから』
少し苛立たしそうに声を荒げるが、発する言葉はとても温かい。
あぁ、でもきっと彼が守るのは私ではなくなるのだろうな。彼が守らなきゃいけないのは、あの優しい穏やかな女の子、ララさんだから。
『……おいっ。聞いてるのかよ』
「聞いてるよ。ありがとう」
『俺こそ怒鳴って悪かった。それで、あいつには変なことされてないのかよ』
「あいつって?」
『……王子だよ』
「…………別に。何もないよ」
さっきの抱きしめられたのは別に特別な意味なんてないもんね。
『なんだよ今の間はっ!! 何かあったのかよ』
「ないってば! 私よりユーリこそララさんと仲良くしてて何もないの? 私なんかに構ってないでララさんと一緒に居た方が良いんじゃない?」
あぁ本当に馬鹿だ。口が勝手に動いてしまうんだからどうしようもない。
通話だからだろうか。面と向かっては聞けないこと、聞きにくかったことをつい言ってしまう。
『お前は……。……お前は、俺があいつとどうにかなって欲しいのかよ』
さっきまで威勢の良かったユーリの声が静かになる。
しかしその静かな声が、静かな怒りを秘めているようで先程のように簡単に口を開けなくなる。
「……別にそういう訳じゃないけど。でもお似合いだなって思う」
これは本当の私の気持ち。私なんかよりよっぽど彼女の方がユーリに相応しいと思う。
ゲームの未来のことを考えると、彼女とユーリが付き合ってしまってはユウが生まれなくなってしまう可能性があるのに。
今のユーリの苦悩をを理解してあげられるのは彼女だけだと思うと、ユーリの幸せには彼女が隣に居てくれた方が良いんだろうなって思ってしまう。
『……そうかよ』
「…………。だってその方がユーリは幸せなんじゃない? 同郷の、自分のことを理解してくれる幼馴染の方が一緒に居て幸せなんじゃない」
『…………。お前の考えは良く分かった』
「…………」
やってしまった。
自分で2人の後押しをしてしまってどうするんだ。
でもそれがユーリの幸せなら、この気づきかけている気持ちに私は蓋をしよう。
私のこの気持ちがユーリの幸せの邪魔をしてしまうなら、いくらでも私はこの気持ちに嘘をつき続けよう。
『お前って……本当馬鹿で分からずやだよな』
「なんですって」
「本当馬鹿……。その馬鹿はいつ治るんだよ」
そう言ってため息をつくユーリ。
『……とにかく、絶対に1人になるなよ。これは絶対だからな』
「分かった。約束する」
『じゃあ気をつけろよ。そっちの問題が解決したらすぐ戻ってくるんだぞ』
「う……ん」
『うん? なんか言いたげだな』
「いや、なんか急に優しいから」
『俺はいつだって優しいだろ』
「ふっ、何それっ」
ユーリの言葉に思わず笑ってしまう。
『お前は余計な事考えずにそうやって笑ってればいいんだよ。分かったか』
「うん……じゃあね」
『ああ。おやすみ』
おやすみか……。たったその一言で1日のゴタゴタが吹き飛んでしまう。
私は声低い方が好きだったんだけどなぁ……。
ユーリの声はまだ成長しきっていないのか、標準的な男性より少し高めの声だ。本当に少年と青年の狭間にいるといった感じがする。
そんな少し高い声を聞くと安心してしまう私はもう彼に落ちてしまっているのだろうか。
そんなことではダメだともう一度自分に言い聞かせる。
あの彼は、ユウのご先祖様になるのだ。
異世界人の自分なんかと一緒になる訳がない。
今はそんなことより、魔王を倒してユウが死ぬ未来がくることがないようにするのが私の目標。
そう自分にもう一度言い聞かせ、眠りについた。
『……おいっ! お前黙って勝手に居なくなるなよ!!』
「えっ、ごめん……心配した?」
通信の相手はユーリだった。
確かにあの時は慌てて、誰にも伝えずにこちらへ来てしまった。もしかして心配してくれてたのだろうか。
『……心配するに決まってんだろバカ!』
ほう。心配してくれてたんだ。
ちょっと嬉しい……。
「ごめんって」
『せめて一言相談しろよ。それとも俺に相談出来ないようなことだったのかよ』
「だって……ユーリはララさんのことで忙しかったでしょ?」
素直に言えば良いのに、こんな時に出てくるのはユーリのことを責めるような言葉。……本当大人げない自分が嫌になる。
『なんだよそれ……』
ほら、ユーリだって呆れてる。
彼は神殿を調査する為にララさんに近づいているのに。
でも彼と彼女が親しそうに話している姿を見かける度に嫌な気持ちになる。
そんな自分が嫌で、掃除を手伝ったり、図書館に行ったりして2人の姿を見ないようにしていたのだ。
『……それで、お前は無事だったのかよ』
私が嫌なことを言ってるのに、私よりも年下なのに大人な彼は話を変えてくれる。きっとミラー様から話を聞いているのだろう。
「うん。私の方には毒も入ってなかったし大丈夫だよ」
『……そうか。それは色々危なかったな』
「うん? ミラー様のこと? 本当に間一髪だったよね」
『違うさ。お前が危なかったって言ってんの。もしミラーがそのまま毒入りの食事を食べて死んでたら誰が1番に疑われると思うか考えてみろよ』
「……もしかして私?」
『だろうな。その証拠にお前の食事には毒もなかった。お前のスキルなら何だって可能だからな』
「……でも私のスキルは殺人とかの罪をすると使えなくなるんでしょう?」
『そう言われているがな……だが本当にそうだと誰が証明出来る? 今までそんな事例がないのに』
「……。うそ……。私が嵌められかけたってこと?」
『……その可能性もなくはない。だから絶対に1人になるなよ。誰が何を狙ってるか分かるまでは絶対になっ!』
「…………」
ミラー様が私の食事に毒が入ってないと言った時に複雑そうな顔をしたのはそのせいだったのか。
きっと私を不安にさせないようにミラー様はその可能性を黙っていたんだ。
『ったく! だから勝手に居なくなるなよ。側に居なきゃ守れねぇんだから』
少し苛立たしそうに声を荒げるが、発する言葉はとても温かい。
あぁ、でもきっと彼が守るのは私ではなくなるのだろうな。彼が守らなきゃいけないのは、あの優しい穏やかな女の子、ララさんだから。
『……おいっ。聞いてるのかよ』
「聞いてるよ。ありがとう」
『俺こそ怒鳴って悪かった。それで、あいつには変なことされてないのかよ』
「あいつって?」
『……王子だよ』
「…………別に。何もないよ」
さっきの抱きしめられたのは別に特別な意味なんてないもんね。
『なんだよ今の間はっ!! 何かあったのかよ』
「ないってば! 私よりユーリこそララさんと仲良くしてて何もないの? 私なんかに構ってないでララさんと一緒に居た方が良いんじゃない?」
あぁ本当に馬鹿だ。口が勝手に動いてしまうんだからどうしようもない。
通話だからだろうか。面と向かっては聞けないこと、聞きにくかったことをつい言ってしまう。
『お前は……。……お前は、俺があいつとどうにかなって欲しいのかよ』
さっきまで威勢の良かったユーリの声が静かになる。
しかしその静かな声が、静かな怒りを秘めているようで先程のように簡単に口を開けなくなる。
「……別にそういう訳じゃないけど。でもお似合いだなって思う」
これは本当の私の気持ち。私なんかよりよっぽど彼女の方がユーリに相応しいと思う。
ゲームの未来のことを考えると、彼女とユーリが付き合ってしまってはユウが生まれなくなってしまう可能性があるのに。
今のユーリの苦悩をを理解してあげられるのは彼女だけだと思うと、ユーリの幸せには彼女が隣に居てくれた方が良いんだろうなって思ってしまう。
『……そうかよ』
「…………。だってその方がユーリは幸せなんじゃない? 同郷の、自分のことを理解してくれる幼馴染の方が一緒に居て幸せなんじゃない」
『…………。お前の考えは良く分かった』
「…………」
やってしまった。
自分で2人の後押しをしてしまってどうするんだ。
でもそれがユーリの幸せなら、この気づきかけている気持ちに私は蓋をしよう。
私のこの気持ちがユーリの幸せの邪魔をしてしまうなら、いくらでも私はこの気持ちに嘘をつき続けよう。
『お前って……本当馬鹿で分からずやだよな』
「なんですって」
「本当馬鹿……。その馬鹿はいつ治るんだよ」
そう言ってため息をつくユーリ。
『……とにかく、絶対に1人になるなよ。これは絶対だからな』
「分かった。約束する」
『じゃあ気をつけろよ。そっちの問題が解決したらすぐ戻ってくるんだぞ』
「う……ん」
『うん? なんか言いたげだな』
「いや、なんか急に優しいから」
『俺はいつだって優しいだろ』
「ふっ、何それっ」
ユーリの言葉に思わず笑ってしまう。
『お前は余計な事考えずにそうやって笑ってればいいんだよ。分かったか』
「うん……じゃあね」
『ああ。おやすみ』
おやすみか……。たったその一言で1日のゴタゴタが吹き飛んでしまう。
私は声低い方が好きだったんだけどなぁ……。
ユーリの声はまだ成長しきっていないのか、標準的な男性より少し高めの声だ。本当に少年と青年の狭間にいるといった感じがする。
そんな少し高い声を聞くと安心してしまう私はもう彼に落ちてしまっているのだろうか。
そんなことではダメだともう一度自分に言い聞かせる。
あの彼は、ユウのご先祖様になるのだ。
異世界人の自分なんかと一緒になる訳がない。
今はそんなことより、魔王を倒してユウが死ぬ未来がくることがないようにするのが私の目標。
そう自分にもう一度言い聞かせ、眠りについた。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
【完結】わたしはお飾りの妻らしい。 〜16歳で継母になりました〜
たろ
恋愛
結婚して半年。
わたしはこの家には必要がない。
政略結婚。
愛は何処にもない。
要らないわたしを家から追い出したくて無理矢理結婚させたお義母様。
お義母様のご機嫌を悪くさせたくなくて、わたしを嫁に出したお父様。
とりあえず「嫁」という立場が欲しかった旦那様。
そうしてわたしは旦那様の「嫁」になった。
旦那様には愛する人がいる。
わたしはお飾りの妻。
せっかくのんびり暮らすのだから、好きなことだけさせてもらいますね。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。
sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。
気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。
※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。
!直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。
※小説家になろうさんでも投稿しています。
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
女性が少ない世界へ異世界転生してしまった件
りん
恋愛
水野理沙15歳は鬱だった。何で生きているのかわからないし、将来なりたいものもない。親は馬鹿で話が通じない。生きても意味がないと思い自殺してしまった。でも、死んだと思ったら異世界に転生していてなんとそこは男女500:1の200年後の未来に転生してしまった。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる