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「おや、ユリ様じゃありませんか。こんにちは」
「……神官長。こんにちは」
「図書館に行かれてたのですか? 何かお探しであればお手伝いしますよ」
「いえ、ちょうど部屋へと帰る所なので結構です」
図書館から出た所で神官長に捕まってしまった。私はこの人が少し苦手だ。
落界人にここまで反応する人は今まで居なかったし(ただしリア様を除く。あれは落界人にじゃなくてスキルに対してだしね)。
それに何だか裏があるような気がするんだよね。まぁなんとなくって感覚でしかないんだけど。
「そうですか。残念です。せっかくこちらにいらっしゃるのにあまり関わりがないので……」
「神官長様も忙しいと思いますし……。あの図書館のシステムもあなたが作ったとララさんが誇らしく語っていましたよ」
「あぁ……あれですか。あれは私が作ったというより、こっちになかったので再現したという方が正しいんですけどね」
「再現?」
「それよりあのシステムは誰がどんな本を借りたかも全部把握出来るんです。本を無くしたなんてことになったらすぐに分かってしまうので気をつけて下さいね」
「……はい、気をつけます」
「ちなみにどんな本を借りたのですか?」
「結局何も借りずに帰ってきてしまいました。では失礼しますね」
そう言って会釈して無理やり立ち去る。
……なんか怖かった。
単に興味があるだけとは思えない。目の奥が笑っておらず、何か見定められるような視線だった気がしたのだ。
何も借りていないと言ってしまったが、実は先程借りた本は結局ララさんのカードを通して貸出処理をしてくれたのだ。
◇
「ここでバーコードを読み込んで、それが出来たらカードを通して……ってやっぱり私のカードにしますか?」
「え?」
「万が一見られたらダメな本ならユリさんが怒られちゃうから、私のカードで借りましょう!」
「でも……もし借りた本が手元になくて貸したことが分かったりしたら迷惑が掛かっちゃうでしょ?」
「大丈夫です! 借りた本がどこにあるか分からなくて探してるって言えば追求されないです! ……私片づけるのが苦手で部屋が汚くて、それも神官長は知ってるので!」
……それはヒロインとしてどうなのか。いや、ゲームのリリーもあまり掃除は得意じゃなかった気がする。だったら良いかな……?
私が借りてリア様に迷惑が掛かるのも申し訳ないのでララさんの言葉に甘えさせてもらったのだ。
◇
神官長と別れた後は何事もなく、部屋に無事に戻ることが出来てホッとする。
……そういえば何故神官長は私だと認識出来たのだろう。認識阻害の魔法を掛けていたはずなのだが、上手く機能してなかったのかな?
とにかく明日は報告会の日だ。
あの神官長に関しても何か聞けるかもしれない。
その前に私も何か手助けが出来る様にあの本を読まなければ!!
そう思い急ぎ足で部屋へと戻る。
部屋に入って念の為、盗撮、盗聴を防ぐ魔法を掛ける。
神殿の中にもどんなスキル持ちがいるか分からないからね。
「どれどれ……」
最初のページを開いてみる。そこにはこの国の言葉で書かれた文章が書かれている。
私は翻訳の魔法を無意識で発動してるみたいで、この世界の文字を見ると意味が頭に浮かんでくるので読むのに不自由はしないのだ。
『これは予言書である。
鑑定士が未来視をした結果をここに記す。
遠い未来、魔王が復活するだろう。
その時に勇者と聖女が現れ、ある特殊なスキルを持った仲間と共に魔王を倒さんとするだろう。
彼らに協力し、世界を救うべし。』
「勇者と聖女が現れ魔王を倒す……」
ユーリとララさんがそれぞれ勇者と聖女のスキルを持って生まれた。だから魔王が復活するということなのね。
……というか魔王が現れるじゃなくて復活するなの?
私の記憶では、ゲームの中のユウとリリー、ミレー王子が初代勇者の時に倒しきれなかった魔王が復活するという話だったから、初代勇者がユーリで、てっきり今の時代の魔王はこれから誕生するものだと思っていたのに。
驚きながらも続きを読んでいく。
『魔王とは、我々の文明発達の負の副産物である。
我々は神様からスキルというものをもらいながら、それだけで満足せず、新たな科学技術という分野に手を出してしまった。
それに怒った神様が魔王を作り出し、この世界を壊そうとしたのだ。
しかし我々は全員で魔王に抵抗し、見事倒すことが出来た。
神様も我々の姿を見て、もう一度チャンスを与えて下さったのだ。
このチャンスを活かすため、我々は科学の発展を封じ、スキル中心の生活へと戻った。
そして未来が明るいものだと確証を得る為に未来視を行った。
その結果見えたのが、魔王の復活と、勇者と聖女のスキルを持つ者の誕生だ。
彼らが魔王を倒す力になるだろう。
それと同時に彼らがこの世に現れた時に、魔王がもう一度皆の前に現れるということだ』
だからユーリは私が魔王なんかいないんじゃと言った時も、すぐにそんなはずないって答えていたのね……。
自分の存在が、敵が存在することを証明している。生まれながらに戦う運命が決められている……。
ユーリやララさんは今までどんなことを抱えていたのだろう。
それは私なんかに分かるはずはない……。本人にしか分からない葛藤があったのだろうと思う。
ユーリの気持ちや様々な悩みが分かるのは私じゃなくてララさんなんだ……。
そんな風に落ち込む気持ちを抑え、続きを読んでいく。
『未来への助けとなるよう、今の魔王が生まれた時についてのことをここに残すとする。
魔王誕生前は自然災害が多発する。
大地と海がそれぞれ揺らぐだろう。
そして空が闇に包まれる。
その瞬間魔王が現れる。
我々は戦った。
多くの犠牲者が出た。
そして皆で祈った。
三日月の夜に我らの魔力が高まり、魔王の魔力が弱まる。
ムーンの光が届かない新月の日に魔王の力が最も高まる。
何ヶ月もの戦いの末、皆の祈りが届き、ムーンの力を持ってして魔王を倒すことに成功した。
魔王は我らの目の前から消えた。
魔王を完璧には倒したかのように見えた。
だが、未来視の結果を見ると魔王は完璧には倒せていなかったらしい。
未来の我々の子孫よ。
どうか魔王を再び倒し、この世界を守ってくれ』
「大地と海が揺らぐ……」
どういうことか分からないが、自然災害が多発するらしい。
今のところそういった情報はないから、魔王復活までまだ時間があるということね……。
次のページをめくると、そこには更に思いがけないことが書かれていた。
「……神官長。こんにちは」
「図書館に行かれてたのですか? 何かお探しであればお手伝いしますよ」
「いえ、ちょうど部屋へと帰る所なので結構です」
図書館から出た所で神官長に捕まってしまった。私はこの人が少し苦手だ。
落界人にここまで反応する人は今まで居なかったし(ただしリア様を除く。あれは落界人にじゃなくてスキルに対してだしね)。
それに何だか裏があるような気がするんだよね。まぁなんとなくって感覚でしかないんだけど。
「そうですか。残念です。せっかくこちらにいらっしゃるのにあまり関わりがないので……」
「神官長様も忙しいと思いますし……。あの図書館のシステムもあなたが作ったとララさんが誇らしく語っていましたよ」
「あぁ……あれですか。あれは私が作ったというより、こっちになかったので再現したという方が正しいんですけどね」
「再現?」
「それよりあのシステムは誰がどんな本を借りたかも全部把握出来るんです。本を無くしたなんてことになったらすぐに分かってしまうので気をつけて下さいね」
「……はい、気をつけます」
「ちなみにどんな本を借りたのですか?」
「結局何も借りずに帰ってきてしまいました。では失礼しますね」
そう言って会釈して無理やり立ち去る。
……なんか怖かった。
単に興味があるだけとは思えない。目の奥が笑っておらず、何か見定められるような視線だった気がしたのだ。
何も借りていないと言ってしまったが、実は先程借りた本は結局ララさんのカードを通して貸出処理をしてくれたのだ。
◇
「ここでバーコードを読み込んで、それが出来たらカードを通して……ってやっぱり私のカードにしますか?」
「え?」
「万が一見られたらダメな本ならユリさんが怒られちゃうから、私のカードで借りましょう!」
「でも……もし借りた本が手元になくて貸したことが分かったりしたら迷惑が掛かっちゃうでしょ?」
「大丈夫です! 借りた本がどこにあるか分からなくて探してるって言えば追求されないです! ……私片づけるのが苦手で部屋が汚くて、それも神官長は知ってるので!」
……それはヒロインとしてどうなのか。いや、ゲームのリリーもあまり掃除は得意じゃなかった気がする。だったら良いかな……?
私が借りてリア様に迷惑が掛かるのも申し訳ないのでララさんの言葉に甘えさせてもらったのだ。
◇
神官長と別れた後は何事もなく、部屋に無事に戻ることが出来てホッとする。
……そういえば何故神官長は私だと認識出来たのだろう。認識阻害の魔法を掛けていたはずなのだが、上手く機能してなかったのかな?
とにかく明日は報告会の日だ。
あの神官長に関しても何か聞けるかもしれない。
その前に私も何か手助けが出来る様にあの本を読まなければ!!
そう思い急ぎ足で部屋へと戻る。
部屋に入って念の為、盗撮、盗聴を防ぐ魔法を掛ける。
神殿の中にもどんなスキル持ちがいるか分からないからね。
「どれどれ……」
最初のページを開いてみる。そこにはこの国の言葉で書かれた文章が書かれている。
私は翻訳の魔法を無意識で発動してるみたいで、この世界の文字を見ると意味が頭に浮かんでくるので読むのに不自由はしないのだ。
『これは予言書である。
鑑定士が未来視をした結果をここに記す。
遠い未来、魔王が復活するだろう。
その時に勇者と聖女が現れ、ある特殊なスキルを持った仲間と共に魔王を倒さんとするだろう。
彼らに協力し、世界を救うべし。』
「勇者と聖女が現れ魔王を倒す……」
ユーリとララさんがそれぞれ勇者と聖女のスキルを持って生まれた。だから魔王が復活するということなのね。
……というか魔王が現れるじゃなくて復活するなの?
私の記憶では、ゲームの中のユウとリリー、ミレー王子が初代勇者の時に倒しきれなかった魔王が復活するという話だったから、初代勇者がユーリで、てっきり今の時代の魔王はこれから誕生するものだと思っていたのに。
驚きながらも続きを読んでいく。
『魔王とは、我々の文明発達の負の副産物である。
我々は神様からスキルというものをもらいながら、それだけで満足せず、新たな科学技術という分野に手を出してしまった。
それに怒った神様が魔王を作り出し、この世界を壊そうとしたのだ。
しかし我々は全員で魔王に抵抗し、見事倒すことが出来た。
神様も我々の姿を見て、もう一度チャンスを与えて下さったのだ。
このチャンスを活かすため、我々は科学の発展を封じ、スキル中心の生活へと戻った。
そして未来が明るいものだと確証を得る為に未来視を行った。
その結果見えたのが、魔王の復活と、勇者と聖女のスキルを持つ者の誕生だ。
彼らが魔王を倒す力になるだろう。
それと同時に彼らがこの世に現れた時に、魔王がもう一度皆の前に現れるということだ』
だからユーリは私が魔王なんかいないんじゃと言った時も、すぐにそんなはずないって答えていたのね……。
自分の存在が、敵が存在することを証明している。生まれながらに戦う運命が決められている……。
ユーリやララさんは今までどんなことを抱えていたのだろう。
それは私なんかに分かるはずはない……。本人にしか分からない葛藤があったのだろうと思う。
ユーリの気持ちや様々な悩みが分かるのは私じゃなくてララさんなんだ……。
そんな風に落ち込む気持ちを抑え、続きを読んでいく。
『未来への助けとなるよう、今の魔王が生まれた時についてのことをここに残すとする。
魔王誕生前は自然災害が多発する。
大地と海がそれぞれ揺らぐだろう。
そして空が闇に包まれる。
その瞬間魔王が現れる。
我々は戦った。
多くの犠牲者が出た。
そして皆で祈った。
三日月の夜に我らの魔力が高まり、魔王の魔力が弱まる。
ムーンの光が届かない新月の日に魔王の力が最も高まる。
何ヶ月もの戦いの末、皆の祈りが届き、ムーンの力を持ってして魔王を倒すことに成功した。
魔王は我らの目の前から消えた。
魔王を完璧には倒したかのように見えた。
だが、未来視の結果を見ると魔王は完璧には倒せていなかったらしい。
未来の我々の子孫よ。
どうか魔王を再び倒し、この世界を守ってくれ』
「大地と海が揺らぐ……」
どういうことか分からないが、自然災害が多発するらしい。
今のところそういった情報はないから、魔王復活までまだ時間があるということね……。
次のページをめくると、そこには更に思いがけないことが書かれていた。
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