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60.ガンダーラ

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 ========== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。
 南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。
 大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。
 足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。
 河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。現在は休暇中。
 久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。
 小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
 中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
 海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
 来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長。
 愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。
 本郷弥生・・・EITO大阪支部、後方支援メンバー。
 大前(白井)紀子・・・EITO大阪支部メンバー。事務担当。ある事件で総子と再会、EITOに就職した。
 神代チエ・・・京都府警の警視。京都府警からのEITO出向。『暴れん坊小町』の異名を持つが、総子には、忠誠を誓った。
 芦屋一美(ひとみ)警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。アパートに住んでいる。
 用賀(芦屋)二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。オスプレイやホバーバイクを運転することもある。後方支援メンバー。総子の上の階に住んでいたが、用賀と結婚して転居した。
 芦屋三美(みつみ)・・・芦屋グループ総帥。EITO大株主。芦屋三姉妹の長女で、総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。芦屋三姉妹と総子は昔。ご近所さんだった。

 小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。
 真壁睦月・・・大阪府警テロ対策室勤務の巡査。
 佐々一郎・・・元曽根崎署刑事。横山と同期。大阪府警テロ対策室勤務。通称佐々ヤン
 指原ヘレン・・・元EITO大阪支部メンバー。愛川いずみに変わって通信担当のEITO隊員になった。
 用賀哲夫空自二曹・・・空自のパイロット。EITO大阪支部への出向が決まった。二美の元カレだったが、二美と結婚した。
 幸田仙太郎・・・南部興信所所員。
 花菱綾人・・・南部興信所所員。元大阪阿倍野区の刑事。
 横山鞭撻・・・南部興信所所員。元大阪府警の刑事。
 大文字伝子・・・総子の従姉。EITO東京本部隊長。
 草薙あきら・・・警視庁からの出向の警視庁職員。元ホワイトハッカー。
 町村貢・・・大阪府警本部長の警視監。

 =====================================
 = EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =
 ==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==

 警視監とは、警視総監に次ぐ2番目の地位で、警視長の上に位する。 定員は38人。 一般職の国家公務員。 役職は、警察庁の次長・局長・部長・審議官、警視庁の部長、道府県警察本部の本部長など。尚、本部長は、必ずしも警視監とは限らない。

 午前10時。EITO大阪支部。会議室。
 マルチディスプレイに、大阪府警の小柳警視正と、東京本部の草薙が映っている。
「兄ちゃん、嫌な予感がするけど、気のせいやろか?」
「き、気のせいやな。」
「コマンダー、チーフ。今朝の漫才は不出来だな。花ヤン横ヤンの指導を受けたらどうだ?」
「小柳さんも冗談、上手くなったな。」とジュンがいい、ぎんが頷いた。
「えーっと、発言していいですか?」と草薙が言った。
「どうぞどうぞ。」と、ぎんとジュンが手を前に出した。
「和やかだな、大阪支部は。昨夜遅く、システムがRedの方で、こんな投稿を見付けました。」
 《太子橋今市(たいしばしいまいち)、喜連瓜破(きれうりわり)、野江内代(のえうちんだい)。大阪は難読漢字が多いな。今回はこれぐらいにしといたるわ。おとこやけど、ふけいさん。》
 動画を再生した後、草薙は言った。
「投稿者は『アルフィーズジュニア』になっています。これ、挑戦状ですよね。大阪府警に。」
「ひゃあ。どぎついなあ。」
「え?あ、この難読漢字って、駅名のことだと小柳警視正に今教わりましたが。」
「ええ。『太子橋今市(たいしばしいまいち)』は、旭区の駅の名前、『喜連瓜破(きれうりわり)』は平野区の駅の名前、『野江内代(のえうちんだい)』は都島区の駅の名前。いずれも、その地区の地名を合わせた名前が駅名になっています。」
「へえ。勉強になるなあ。」と言う草薙に続けて、「実はナア。、コマンダー。今、草薙さんが指摘した駅で『性的姿態撮影等処罰法違反事件』が発生、いずれも通勤途上の乗客と駅員で逮捕、今、取り調べ中なんだが、草薙さん。」
 小柳警視正に替わって、また草薙が「15分位前に、この動画が上がっています。」と言い、動画を再生した。
 《どうだい。簡単だったろう?捕まった?ドジだなあ。まあ、すぐ釈放だよ。》
「コマンダーは知っているだろうが、EITOエンジェルズの為に説明すると、『性的姿態撮影等処罰法違反事件とは、正当な理由なくひそかに性的姿態を撮影する行為や、その撮影画像を第三者へ提供する行為、撮影された画像をメールやライブストリーミングなどで送信する行為などが処罰の対象となる事件』だ。」
「盗撮や、盗撮のアップロードは、ちゃんと法規制がある事件なのに、わざわざ唆して失敗させた、ちゅうの?」小町は、りきんで言った。
「小町。落ち着き。」と、総子は窘めた。
「ウチはすぐ釈放にひっかかるなあ。」と、あゆみが言うと、「ひょっとしたら、外国人?・・・ですか、警視正。」と、祐子が尋ねた。
「祐子隊員の言う通りだ。関東では、来来人の無法がまかり通っているからな。」
「了解しました。」と言って、小町は、会議室を出て行った。
「『一を聞いて十を知る』の積もりかな?芦屋君と真壁に付き添わせるよ。よろしくな。」
 皆がキョトンとしていると、三美が入って来て、言った。
「通訳に行ったのよ。イヤイヤながら、自分しか出来ないと判っているから。小柳警視正も変な『前例』作りたくないだろうから、ね。」
「三美ネエ。あの二人、何があったの、過去に。あんまりウチにも話してくれへんし。」
「私も知らない。父親の神代警視正なら、ご存じかもね。」
 正午。大阪府警。会議室。
 まとめて取り調べをする時は、会議室を使う。そして、アメリカに習って録音・録画を行うことは、あまり知られていない。マスコミにも公表していないからだ。これは、裁判になった時に『違法性』がないことを証明する材料であって、勿論、一般公開していない。
 小町は、わざと女性警察官ではなく、女性ビジネススーツで入室した。
 飽くまでも、名目上は『通訳』だからだ。
 被疑者三人は、来来人だった。町村本部長の隣には、小柳警視正が座っている。
 真壁と一美と、他2名の女性警察官が書記をしている。佐々ヤンこと佐々刑事も同席していた。
 被疑者は、てんでに来来語で喚いている。
「1人ずつ、伺おうか。」と、小柳警視正が言うと、小町が通訳した。
 また、てんでに話し出す。
 3回繰り返した後で、小町は【お前らが主犯ということにすると、早く解決するな。盗撮くらいで10年のムショ暮らしか。可哀想にな。】と、英語で通訳した。
 《お前、来来語、判るのか?》と、被疑者の1人が言い、【私が話せるのは、ほんの五カ国語くらいだ。日本語以外はな。】と、小町は英語で答えた。
 男達は相談していたが、《お前、本当に通訳か?なんで刑期を言う?》と別の男が尋ねた。
 小町は、懐から、警察手帳を出した。
 きょとんとしているので、佐々ヤンが手帳に星印で下から順に階級(章)の順序を書き、小町の階級の警視にアンダーラインを引いた。
 3人は、天井を仰ぎ見た。そして、あろうことか小町は、あの歌を歌い出した。
 3人を代表して、2番目にしゃべった来来人が英語と日本語で言った。
「俺達は、『アルフィーズジュニア』に来来人だから、日本の法律は無効だ。何やって捕まっても無罪。刑務所には行かない、って言われたんだ。1年前に鞭打ち症になった女だ。弁護士バッジ着けていた。」
 そこからは、スムーズに取り調べが進んだ。被疑者代表は、『唆された被害者』だと、本部長が言ったのに気を良くして、ペラペラと日本語でしゃべり出したからだ。
 午後3時。東大阪市衣摺。駅前の雑居ビル。
 1階、2階がNPO法人なんかなんかい、3階はテナントが不詳だった。
 何かが窓ガラスを叩いた。
 社員の1人が出口に向かうと、紙が落ちていた。
「いい仕事してくれるじゃないか。ちょっと、そこの廃校後に顔を揃えて貰おうか。衣摺新議会Ⅱ。」
 旧衣摺佳味小学校跡。
 社員達は、『抗争』の準備をして出てきた。何故か鍬や鎌も持っている者もいるが、殆どは拳銃だ。
 そこに、妙な格好をした女達がいた。
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。悪を倒せと我らを呼ぶ。参上!EITOエンジェルズ。満を持して。」
「何かようわからんが、いてまえ!」
 幹部の声に呼応した用賀、二美、弥生、いずみのホバーバイクから胡椒弾が撃ち込まれた。
 ホバーバイクとは、民間が開発、EITOが採用して戦闘または運搬に用いている『宙に浮くバイク』である。胡椒弾とは、胡椒や七味、ガーリック等の台所用調味料を捏ねた弾でホバーバイクやEITOエンジェルズのペッパーガンで撃ち込まれる。
 連中がむせている間に、ある者はシューター、ある者はメダルカッターを投げ、残りの者はバトルスティックやバトルロッドで闘った。
 シューターとは、うろこ形の手裏剣で、先端にしびれ薬が塗ってある。
 メダルカッターとは、メダルの外側にプロペラ状のカッターが付いている武器である。
 バトルスティックとは、文字通り戦闘用の『棒』であり、EITOエンジェルズ結成当時は『突っ支い棒』を代用していた。バトルロッドとは、バトルスティックが3段変形出来る棒である。
 午後4時。
 今日の当番の真子が、長波ホイッスルを吹いた。
 長波ホイッスルとは、犬笛に似た笛で、通常の大人の耳には聞こえない。
 主に、待機している警察官への連絡用に使う。「戦闘終了」という意味で。
 間もなく、佐々ヤンこと佐々刑事が警察官を連れて逮捕連行に来た。
 EITOは警察ではない。テロリストとは闘うが、逮捕連行取り調べは警察の仕事だ。
 午後5時半。EITO大阪支部。会議室。
「アルフィーズジュニアを名乗った、自称女弁護士は、那珂国人のスパイで、NPO法人なんかなんかいにも繰り込んで、悪さの『指南』をしていたらしい。関東と同じように、『どんな犯罪やっても不起訴』を証明したかったらしい。関空で取り押さえられた。」
 大前の連絡をヨソに、皆は、お菓子に注目した。
「ああ、それな。さっき幸田さんが届けてくれた。『抜き飴』の行商してた人が、トシやから引退するって、最後の作品やな。みんな、土産に持って帰ってくれ。ああ、それから、小柳さんがな。『神代も成長したな』って言ったら、『5センチ伸びました』って返したらしいな、小町。誰の影響やろうなあ、って笑ってた。」
 皆は、総子を見た。「まあ、それほどでも・・・あるでえ。」
 皆は爆笑した。
 小町は頭を掻いていた。
 ―完―






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