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51.作られた病

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 ========== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。
 南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。
 大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。
 足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。
 河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。現在は休暇中。
 久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。
 小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
 中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
 海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
 来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長。
 愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。
 本郷弥生・・・EITO大阪支部、後方支援メンバー。
 大前(白井)紀子・・・EITO大阪支部メンバー。事務担当。ある事件で総子と再会、EITOに就職した。
 神代チエ・・・京都府警の警視。京都府警からのEITO出向。『暴れん坊小町』の異名を持つが、総子には、忠誠を誓った。
 芦屋一美(ひとみ)警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。アパートに住んでいる。
 用賀(芦屋)二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。オスプレイやホバーバイクを運転することもある。後方支援メンバー。総子の上の階に住んでいたが、用賀と結婚して転居した。
 芦屋三美(みつみ)・・・芦屋グループ総帥。EITO大株主。芦屋三姉妹の長女で、総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。芦屋三姉妹と総子は昔。ご近所さんだった。

 小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。
 佐々一郎・・・元曽根崎署刑事。横山と同期。大阪府警テロ対策室勤務。通称佐々ヤン
 指原ヘレン・・・元EITO大阪支部メンバー。愛川いずみに変わって通信担当のEITO隊員になった。
 用賀哲夫空自二曹・・・空自のパイロット。EITO大阪支部への出向が決まった。二美の元カレだったが、二美と結婚した。
 真壁睦月・・・大阪府警テロ対策室勤務の巡査。小柳と一時不倫をしていた。
 友田知子・・・南部家家政婦。本来は、芦屋グループ社員。
 斉藤長一郎・・・EITO東京本部の指揮官。元警視庁理事官なので、「理事官」と呼ばれている。

 高見敬一・・・厚労省大臣。
 敷島徹・・・かつて、聡子が「囮捜査」に行った時の高校生。チンピラの手下だった。今は・・・。
 デビット・ジョンソン・・・アメリカ空軍軍曹。EITO大阪支部専従パイロット。

 =====================================
 = EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =
 ==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==

 午前9時。EITO大阪支部。会議室。
 出勤した、ぎんやジュンは驚いた。
「チーフ。小町は?」と、ぎんが尋ねると、横からコマンダーが、「府警で預かっている物があるって、連絡が来たからって、府警に直行してる。」と、答えた。
「コマンダー、ちょっと聞いていいですかあ?」「聞いていいですかあ?って、アカンって、言わんこと前提で聞いてるやろ。何や、ぎん。」
「小町と小柳さんって何かあったんですか、昔。」
「詳しい事は聞いてへんねん。確執あることは、自分らも気づいてる通りや。小柳さんは、小町の親父さん、詰まり、神代警視正に何か恩義があるらしい。俺が小柳さんに恩義があるのと一緒やな。俺は、やんちゃしてた時、更生させて貰ったんや。それで、警察官になった。」
「そやから、兄ちゃんは公平なんやな。小町を東京に運ぶのも、ホンマは嫌やってんな。」「そうや。でも、小柳さんも嫌やったらしい。幾ら京都と東京で同じ凶器使ったらしいって言っても、急にオスプレイで運ぶってなあ、新幹線も飛行機もあるのになあ。」
 そこへ、ジュンが割って入った。
「コマンダー。チーフ。この間、徹夜で捜索したでしょ?」
「うん。」と、大前と総子は同時に言った。
「その親父さんに電話するの、聞いてしもうたんやけど・・・。」
「やけど?」総子がジュンに督促した。
「お父さんのこと、『ちゃん』って言ってました。」と、祐子が助太刀した。
「ちゃん?お父ちゃん、やろ。」と、大前が言うと、「嫌やわ、コマンダー、ウチの聴力、特技やいうの忘れてません?」と祐子は返した。
「ちゃん、か。何か時代劇みたいやな。昔な、『子連れ〇』て言う映画やドラマがあったんや。刺客、詰まり、殺し屋の浪人の話でナア、乳母車に子供連れて、殺しに行くんや。」
「コマンダー、危険やないですか、それ。怪我したら、ドナイしますのん?」と、元看護師の今日子が言った。
「それがナア、勝つねん。まあ、そんなドラマやが、その息子の口癖やネン、『ちゃん』って。」
「ほな、小町やなくて、子連れ〇の子やん。」と、稽古が言った。
「ホームシックになってたりするのかも。実は私、今でも『一緒にお風呂入ってる』って聞いたの。」と、紀子が言った。
「えー!!」と皆は驚いた。
「やっぱり変わってるよな、あの子。ウチらのこと、姐さん、姐さん、って言うし。」と、ぎんが言った。
「吉村興業や松岳興業みたいやな。」と、美智子が言った。
 その時、小町が帰ってきた。
 皆が居住まいを正している間に、小町は大前に報告をした。
「コマンダー。ウチの荷物以外に、これを預かってきました。」と、言いながら、大前に古い封筒に入った手紙を渡した。
「何や?『病院が危ない。藤』?これ、前の事件みたいな告発文か?」
「コマンダー。一美さんから、メールに添付した、その手紙と、『捜査方針会議』が終るまで待ってくれ、というメール本文です。」と、ヘレンが言った。
「藤のついた病院は、大阪市内だけで7軒あるそうです。コレが、その資料です。旭区の藤病院、浪速区の加藤病院、北区の工藤病院、生野区の藤原病院、天王寺区の斉藤病院
 福島区の藤田病院、大正区の藤島病院。以上です。」
 病院の名前は、マルチディスプレイに映し出された。
「7軒かあ。多いなあ。」「兄ちゃん、肝心の事件、分かってないヤン。」
「それもそうやな。取り敢えず、連絡を待とう。今の内にトイレ行きたいやつは行っとけ。」
 午前11時。
 マルチディスプレイに小柳警視正が映った。
「ヘンな文章ですね、小柳さん。」
「表も裏もな。」「え?」「まだ、見てないのか!確認させる為に、現物を持たせたんだが。神代警視、君から報告しなかったのか。」
「済みません。つい・・・。」
 総子が、手紙の紙片を取り出し、透かしてみた。
「あ。あぶり出し・・・でも、焦げてへん。ええと、『ゆうへいされてたみやた』かな?」
「神代警視。君の卒業した大学に、『宮田』って教授がいただろう?」
「感染症学の先生ですね。あ。コロニーが収束した一昨年から、行方不明やわ。」
「正解だ。色んな説があるが、京都大学の宮田准教授は、誘拐され殺害された、と、SNSで騒がれたこともあるが、証拠はない。失踪届は、奥さんから出ているがな。」
「じゃあ、小柳警視正。やっぱり今回も『告発』ですか?」と、二美が代表して質問した。
「多分な。問題は、誰が告発した、より前に宮田先生が、どこに幽閉されていたか、ということと、何故危なくなったか、ということだ。よろしく頼む。病院の見取図は添付した。方針は任せる。」マルチディスプレイから小柳警視正は消えた。
「2番目の答の方は分かってるわ。厚労省の高見大臣が、外務大臣と一緒に那珂国に言って、枠朕の共同開発を締結したからよ。高市総理は、慎重に、って言ったのに。」と、入って来た三美が言った。
「え?どういうこと、三美ネエ。」と総子は三美に言った。
「共同開発って言っても、那珂国が製造、日本が販売。何かあれば日本が責任を持つって契約よ。日本の製薬会社の枠朕は、コロニーが収束するまで認められなかったわ。認可が下りたのは、『二類から五類』に引き下げられた後よ。要らなくなってからよ。じゃあ、那珂国がその日本産の枠朕を使うかった言うと、使わない。元々、元凶の『俯瞰株』自体、那珂国から『輸入した』って噂もあったし、いよいよ日本の『製薬会社乗っ取り』を『公費』で行うんだ、って、私は判断したの。以前、『蒲鉾屋さん事件』の時、言ったでしょ。那珂国は、あらゆる手段で日本を手に入れようとしている、って。」
「そうか。前に三美は、土地買収を進めているのも、侵略の一つやって、言ってたな。」と、大前は感心した。
「EITOとの闘争も、広い意味での『陽動』よ。だからこそ、海賊上がりが作った組織って事になっているけど、『ダークレインボー』を含めた傭兵組織を『順送り』にしている。『全面戦争』じゃないから、軍隊は無関係って顔をして。」
「三美。じゃあ、コロニー絡みの事件?宮田先生を殺さずに生かせておいて、病院で何かやらかす計画って、こと?」と、二美が言った。
「じゃ、早く1番目の方を片づけなくちゃな。只今、帰りました。デビッドなら、いつでもスタンバイ出来ます。」と用賀は言いながら、アメリカ人らしき男を連れて来た。
「皆、紹介しよう。用賀君に先頭に専念して貰う為に、アメリカ空軍から出向された、デビット軍曹や。」
「よろしくお願いいたします。お祖父さんが日系3世だから、少し日本語習ってて、少し話すことが出来ます。」と、デビットは言った。
 休憩を挟んで、大前と総子を囲んで、皆は徹底的に病院捜索をする手立てを会議した。
「コマンダー。病院と一口に言っても、医療機関全体を指して呼んでいる名称であって、病床数によって、クリニックとか診療所とか言っている。例えば、皆がよく知っている藤島病院は医師が院長だけの医療機関よ。」と、三美が口火を切った。
「幽閉されているのなら、大きい病院に絞った方がいい、ってことね。ヘレン。府警から届いた資料を出して。」
「はい、只今。」マルチディスプレイに各病院の見取図が表示された。
「旭区の藤病院、北区の斉藤病院、天王寺区の斉藤病院に絞り込めるな。よし、3チームで捜索や。病院の近くの環境も見てきてくれ。敷地内とは限らんからな。」
 大前の号令で、軽く昼食を採った後、EITOエンジェルズは出発した。各病院には、爆発物を仕掛けたというタレコミがあり、捜索に向かったという触れ込みにし、各所轄から警察官が応援、協力依頼の折衝をして貰うことにした。
 午後2時半。
 出発直前になって、総子のスマホが鳴動した。
「お嬢。話は聞いたで。その手紙の通りで探してええんかな?港区に『ふじ港病院』があるで。ふじは、草冠のふじやなくて、ひらがなや。昔から流行ってるけど、半グレに乗っ取られたって噂がある。横ヤンからの情報や。地図は、そっちで調べてくれ。」
 電話は、南部興信所の幸田からだった。総子が入った時は煩い先輩だったが、今は頼もしい部下であり、仲間だ。後から入った横山や花菱は、元刑事で『情報屋』も沢山抱えている。確かな情報だ。
 総子は迷わず、折角編成した3班を崩し、二美と小町を連れた、『特別班』で、バイクに乗って出発した。3班目の班長は、弥生に任せた。
 午後3時半。ふじ港病院。
 急遽、駆けつけた、一美が折衝に当たっているが、事務長が応じようとしない。
 相手が警察でも、大阪府庁や市大阪市役所でもないと応じることは出来ない、と突っぱねていた。
 急がなければ、怪我人の振りをして潜入する所だが、真壁が走って来て、EITOエンジェルズのユニフォームの総子に耳打ちした。
「500メートル先に、移転前の旧館があります。」
 インカムで聞いていた小町と二美は駆け出した。
 EITOエンジェルズのユニフォームは、エマージェンシーガールズのユニフォーム同様、インカムが仕込まれており、スマホ等がなくてもリアルタイムで相互通信出来る。
 ふじ港病院旧病院跡。
 看板等はないが、ちゃんと電気ガス水道が通っていることが明らかだ。
 バラバラと、黒ずくめ、いや黒いスーツの男達が走って来た。
 一見すると、サラリーマンだが、目つきがなんとなくおかしい。ヤクザ(反社)との違いではあるが、話すとお里が知れる。
「どこへ行く?とは聞かへんで。」と、男の1人が言うと、小町は「どこへ行くとは言ワヘンで。」と、返した。
 総子達が瞬時に倒してすぐ、佐々ヤンこと佐々刑事が警察官を連れて到着した。真壁が連絡したのだ。
「3階の電気だけ明るいな。」と総子が言い、佐々ヤンは、後を警察官達に任せて総子達と上がった。
 総子達が、その部屋に行くと、所謂『経鼻栄養チューブ』、通称鼻チューブが鼻に刺さった状態の患者が1人横たわっていて、その側に男性介護士が1人付き添っていた。
「その人が『宮田先生』か。おい。救急車だ。」と、佐々ヤンは部下に命じ、部下は走って外に出た。
「久しぶりやナア。、徹。」と総子は言って、EITOエンジェルズのマスクを脱いだ。
 ヘルメットと一体化している訳ではないので、ヘルメットが出てきたが、中の顔を見て、徹は驚いた。
「ちょっと、老けたんとちゃう?ああ。あの時は化けてたんやったな。」
「介護士になってたとはナア。」「芦屋総帥が、助けてくれたんや。介護士はすぐに資格取れるし、って。派遣で色んな所に行ってたが、こんな経験初めてや。ふじ病院の院長が困ってるのを見て、内情知って、警察経由でEITOに出てきて貰ったちゅう訳や。先生は、欺されて拉致された。第二俯瞰株、つまり、オマージュ株のからくりを見抜いて自ら人工コロニービールスを実験して、それ用の枠朕を開発した先生が邪魔な奴らが、今度は第三俯瞰株として人工コロニービールスを開発、枠朕の実験を兼ねて先生を実験台にしていた。那珂国と組んだ、半グレの平和健康商会は、那珂国へ搬送するよう、本国に指示を受けた。もう向こうに行ったら、内臓取られて、亡骸も烏の餌や。」と、徹は言った。
「あんた、看護師やないのに、鼻チューブ・・・介護士なら看護師と違って秘密が漏れにくい、ってことか。」と、小町が言った。
 総子は、スマホを取り出し、画面を徹に向けた。
「敷島君。冬のボーナス、上げるように言っておくわ。あ。ほっぺにチューくらいなら、総子がしてくれるわよ。」
 その言葉を聞いて、総子は徹の『ほっぺにチュー』をして言った。「これ以上はアカンで。ウチは人妻やサカイな。」
「ああ。テ出したら、舎弟に『ふくろ』にされるからな。」と、徹は返した。
 佐々ヤンの部下が帰ってきて、総子は慌ててスマホを切り、EITOエンジェルズの格好に戻った。
「ご苦労さん、EITOエンジェルズ。結果はいずれ連絡する。」と、佐々ヤンは気を利かせて言った。
 午後7時。総子のマンション。
「コロニー、流行りだした時ナア。総子に出逢う前のことやが、別にかかってもええと思ってた。年寄りは、皆そうやった。色んな流行病を乗り越えてきたんや。戦争を乗り越えた人らは、違うで。震災に遭っても、何とかやっていかなしゃあないって割り切ってた。そんなもんやで。」
 烏賊の佃煮を食べながら、南部はしみじみ言った。
「今は?」「今は?」「別にかかってもエエンか?」「ええよ。愛妻が看取ってくれたら、いつ死んでもええで。」「死ぬ前に,『タネ』無駄遣いしたらアカンで。」
 南部は、赤カブをゆっくりと噛んだ。
 ―完―

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