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42.あちゃあ

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 ========== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。
 南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。
 大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。
 足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。
 河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。現在は休暇中。
 久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。
 小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
 中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
 海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
 来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長。
 愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。
 本郷弥生・・・EITO大阪支部、後方支援メンバー。
 大前(白井)紀子・・・EITO大阪支部メンバー。事務担当。ある事件で総子と再会、EITOに就職した。
 芦屋一美(ひとみ)警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。
 芦屋二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。オスプレイやホバーバイクを運転することもある。後方支援メンバー。
 芦屋三美(みつみ)・・・芦屋グループ総帥。EITO大株主。芦屋三姉妹の長女で、総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。芦屋三姉妹と総子は昔。ご近所さんだった。
 小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。
 佐々一郎・・・元曽根崎署刑事。横山と同期。大阪府警テロ対策室勤務。
 指原ヘレン・・・元EITO大阪支部メンバー。愛川いずみに変わって通信担当のEITO隊員になった。
 用賀哲夫空自二曹・・・空自のパイロット。EITO大阪支部への出向が決まった。二美の元カレ。
 南部寅次郎・・・南部興信所所長。
 小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。
 佐々一郎・・・元曽根崎署刑事。横山と同期。今は大阪府警テロ対策室勤務の警部。
 真壁睦月・・・大阪府警テロ対策室勤務の巡査。

 久留米かね子・・・ぎんの義母。
 戸部(神代)チエ・・・元京都府警警視。東山署勤務だったが、EITO大阪支部に京都府警経由で、出向。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。そして、あだ名は「暴れん坊小町」。あだ名の由来は、京都の葵祭の“ヒロイン”斎王代からで、粗暴な言動から、暴れん坊が前に付いた。

 =====================================

 = EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =
 ==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==

 5月12日。日曜日。午前8時。
 今日は、言わずと知れた、『母の日』だ。
 以前、悦子が勤めていた花屋「花夢いちりん」で、ぎんは悦子に花を選んで貰っていた。
「どや。ぎん。ありきたりの花束やけどな。おばちゃん、喜ぶで。」
「ありがとう。一緒に来てくれる?あの頃は、お母ちゃん、入院してて知らんかったから、みんなのこと。」「ええの?ほな、一緒に行くわ。」
 悦子の親は既に他界している。花屋の主人、京山史郎は、ニコニコ見守っている。
 京山は、ぎんのことも悦子のことも知っている。
 実は、ぎんは、京山にとって、命の恩人だ。悦子と一緒に配達している時、交通事故に遭った。警察に通報したのが、ぎんだった。
 2人は、京山に礼を言い、ぎんの家に行った。
 午前9時。ぎんの家。
「まあ、久しぶりやネエ、悦子ちゃん。」と、ぎんの母は、ベッドから降りて、悦子と体面した。
 ぎんの母かね子は、ぎんがEITOに参加した頃は高血圧で入院していた。退院してからは、自宅で療養し、訪問介護士が1日に一回、生活の補助をしていた。
 基本的な日常生活は出来るし、トイレに行くのは歩行器を使っているが、やはり以前のようにはいかない。そこで、病院から紹介して貰った訪問介護を受けている。週に一回は、病院の系列の、訪問看護も受けている。
 ぎんの母は、42歳の時に亡くなっている。ぎんが母と呼ぶ、かね子は父の後妻、詰まり、ぎんには継母で、見た目は祖母のようだ。
 父は、ぎんがレディースの総長をやっていた頃、亡くなった。
 ぎんは、その後、総子と出逢い、更生した。
 レディースと言っても、バイクで無謀運転をしたり、他のレディースと小競り合いをしたりしていただけで、前科はない。
 更生した後、あちこちのバイトをしていたが、ぎんは亡き父にも、かね子にも黙っていた。レディース以上に危険な仕事だからだ。
「会社、上手く行ってるの?」「当たり前やん。芦屋グループは、天下無敵の会社や。」
 天下無敵は大袈裟だが、芦屋グループの殆どは上場企業だ。
「一度、ぎんちゃんの上司にお礼に行きたいけど、この体ではなあ・・・。」
 午前10時。EITO大阪支部。会議室。
「あかん。何言うてるんや。上手いこと誤魔化せとは言うてたけど、『会社』は建前や。おかげさまで、大阪でEITOエンジェルズやEITOのこと知らんもんはおらん。名刺持って、『EITOの大前です。ええ部下持ちました、って挨拶に行くんか?』
「兄ちゃん、言い過ぎやろ。」と、総子はピコピコハンマーで、大前の頭を殴った。
 マルチディスプレイが起動した。
 ヘレンの声がスピーカーを通して聞こえた。
「大阪府警の小柳警視正からです。」
「大前君。小町は『屁の突っ張り』くらいにはなってるかな?」
「小柳のオッッチャン。言い過ぎ。ウチのおっぱいが膨らんで来た時、ジロジロ視姦してた時と変わらんな。」
「お前・・・業務優先な。開店前の、阪急百貨店大阪店、阪神百貨店大阪店、大丸大阪店、高島屋、ハルカスの花屋のコーナー、母の日特設コーナーから出火した。いずれも時限装置がついていた。大阪府警は、テロ行為と認定、EITO大阪支部に協力要請をする。とは言え、今の所、府警と情報共有だけだ。犯人からの声明があれば、それなりに対応する。割り振りは任せる。以上。」
「何や、一方的に。コマンダーの権限は、どうなってるん?」
 小町の言葉に、総子は小町を平手打ちした。
「命令系統は、EITOは下請けや。テロ認定って言ってはったやろ?大阪府警がテロ認定行為って認定したら、正式活動や。コマンダーこと大前管理官も警視正やけど、小柳警視正の後輩で、下の立場。よう覚えとき、新人。返事は?」
「すんません、今のは『個人の感想』でした。自重します。」と、小町が頭を下げたので、皆は驚いた。
 EITOは組織、会社組織である。だが、警察組織に準じたルールである。
 総子の袖を引っ張る者がいた。芦屋二美だ。
 午前11時。阪急百貨店。外商部。
 祐子と真知子は、府警の担当刑事と共に、警備員と外商部長から、事情を聞いていた。
「ボヤで済みましたけどねえ。今日のイベントは中止ですわ。まあ、母の日のプレゼントは花に限ったことやないし、昨日までに大抵の人は買ってくれてますが。」
 外商部長の言うことは、尤もだ。当日では、遅い。仕事の都合で、なかなか買っておくことが出来なかった人が、今日の目玉客だ。
 午前11時。阪神百貨店。外商部。
 真知子と真美は、やはり百貨店の外商部長と警備員から事情を聞いていた。
「百貨店専門ですかね?そごうや松坂屋みたいな百貨店でも、まだ営業してたらなら狙われたんでしょうか?」
 2人は、答えようが無かった。
 午前11時。大丸百貨店大阪店。外商部。
 ジュンと稽古は、やはり、外商部長と警備員に事情を聞いていた。
「ええ?ウチだけや無かったんですか?何か百貨店に恨みあるんですか?」
 同席した、佐々ヤンこと佐々刑事が苦笑した。
「それは、動機は、犯人を捕まえたら、分かると思います。」
「そら、そうですわなあ。済みません。」「防犯カメラのデータ、府警に送って貰えますか?」佐々刑事の要請に「了解しました。」と、外商部長は短く応えた。
 午前11時。あべのハルカス(近鉄百貨店)。外商部。
 真子とあゆみは、やはり、やはり、外商部長と警備員に事情を聞いていた。
「街の花屋さんは、異常なしですか?まあ、対面販売やから、時限装置はセットしにくいかも知れないが。」
 外商部長の話に、「尤もです。でも、今のところ、報告はありません。部長がおっしゃるように、対面販売でもないから、百貨店が襲われたのかも。隙はあったでしょうから。」
 同席した、真壁が言った。
 午前11時。ぎんの家。
 台所では、訪問介護士が、昼食用の食事をセットしていた。暖めるだけで、食事そのものは、宅配食業者の定期配達だ。
「私が、上司の芦屋です。」そう言って、芦屋二美は、芦屋三美の名刺を出した。
「今日は、先日の『休日出勤の代休』を取らせました。守秘義務があるので、業務内容は申し上げられませんが、ご容赦下さい。娘さんは、とても優秀な社員です。彼女の『リーダーシップ』があればこそ、業務はスムーズに動いています。では、今日は、ご挨拶だけで申し訳ありませんが・・・。」
 二美h、さっさと悦子と引き揚げた。
 車では、総子と小町が待っていた。
「チーフ、ええのん?あ。いいんですか?ルール違反でしょう?」と小町は総子に尋ねたが、「いいのよ、これで、ぎん班長のお母さんも安心するでしょ。『嘘も方便』よ。」と、二美は、にっこり笑って言った。
 午後1時。EITO大阪支部。会議室。
「コマンダー、チーフ。提案があります。」「何や、言うてみ。ウチは民主主義や。」と、大前は言った。
「ありがとうございます。一本釣りしたら、いいと思います。」
「一本釣り?」
 午後5時。エキスポランド。
「母の日カーネーションプレゼントを行います。」と、吉本知事がテレビで放送した効果が、早速出た。
 爆竹を持った若者が5人、イベント会場の『太陽の塔』前広場に現れたのだ。
 EITOエンジェルズが現れ、彼らが持っていた、爆竹やバーナーは、EITOエンジェルズのフリーズガンで、一瞬の内に無駄になった。
「エエ子はナア、火遊びせんもんや。寝小便垂れるで。」と総子は言い放った。
 若者は5人とも、即刻警察隊の逮捕連行で連れ去られた。
 吉本知事が近づいて来た。
「また、EITOに助けられたな。ありがとうございます。」と、頭を下げる知事に、「知事、私のカンやけど、あの子らは、『母の日』が羨ましいんヤと思います。日本で『母の日』が始まったんは、半世紀以上前やと聞きました。もうそろそろアリバイ作り孝行は考え直した方がええんとチャイます?」と総子は言った。
「生きてるお母さんには赤いチューリップ、亡くなってたら、白いチューリップ。それで全てオッケーかなあ?」
「分かりました。来年に向けて議会で検討します。」
 午後7時。総子のマンション。
「結局、またネットに唆された若者のせい、やった。もう『定番のイベント』も考えなおさんとな。」
 南部は、珍しく社会批判をした。
「それで、そのアイディアは、じゃじゃ馬の『暴れん坊小町』か。母親のことでイジメに遭ってたかな?」
「ま、そうやろ。ああ。肩こるわ、あの子。」「後でマッサージしたるわな。」
 そう言って、南部はテレビを点けた。
 午後7時。ぎんの家。
「ぎんちゃん。あの人は誰?」と加奈子が言うと、テレビに芦屋三美が映っていた。
 傍らに、『LIVE』という文字が映っている。
 ぎんは、「あちゃあ。」と、言った。
 同じ頃。EITO大阪支部。会議室。
「あちゃあ。」テレビを見ながら夕食を食べていた、EITOエンジェルズは異口同音に、そんな言葉と溜息が出た。
 司令室の電話が鳴った。
 ヘレンは、走って行き、そっと、留守番電話のスイッチを押した。
「さあ、帰ろうか。」と、大前は言い、誰も逆らうことなく、帰り支度を始めた。
 ―完―
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