4 / 66
4.民間の『対テロ組織』大阪支部
しおりを挟む
========== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。
南部寅次郎・・・南部興信所所長。江角総子と年の差婚をしている。
大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。夏目警視正と、警察学校同期。
足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元事務担当。
石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。
宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元通信担当。
丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。
河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。資材担当。
北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー普段は、動物園勤務。
久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。
小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。
指原ヘレン ・・・ EITO大阪支部メンバー。
白井紀子・・・EITO大阪支部メンバー。総子の幼なじみ。祐子に変わって、事務をすることになった。
芦屋一美(ひとみ)警部・・・三つ子の芦屋三姉妹長女。大阪府警からの出向。阿倍野区夕陽丘署出身。花菱元刑事と同期。普段は大阪府警にいて、EITOとの橋渡しをしている。
芦屋二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。
芦屋三美(みつみ)・・・芦屋産業の会長。実は、EITO大阪支部に多大な資金援助をしている、若き経営者。
幸田所員・・・南部興信所所員。総子のことを「お嬢」と呼ぶ。
花菱綾人・・・元大阪阿倍野署の刑事。南部興信所所員。
横山鞭撻警部補・・・大阪府警の刑事。
愛川いずみ・・・新。通信担当。EITO大阪支部事務員。
= EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =
午後1時。EITO大阪支部。作戦室。
「コマンダー。大阪府警から通信です。アイドルの北別府小夏が脅迫されているそうです。今、一美警部を画面に出します。」大前がいずみに近づくと、いずみの前のPCの画面に芦屋一美警部が出た。
「一美。どういうことや。脅迫されてたら、警察の仕事やろ。」
大前が尋ねると、一美は、画面にメッセージを出した。
《今夜のライブで小夏が、恨んでいる奴にやられるらしいぞ。リヴァイアサンバージョン2》
「コマンダー。EITOに警護して欲しいそうです。小夏ちゃんのファンらしいですね。欲得づく、で引き受けますか?」一美は尋ねた。
「お前まで総子の影響か?言葉気イつけえよ。」と、大前は憤慨した。
「もう、先方に『喜んで引き受けます』って一報入れておきましたけどね。」
「頭痛くなって来た。いずみ。薬どこやったかな?頭痛薬。」「薬箱でしょ。」
紀子が帰って来た。「コマンダー。風邪ですか?頭痛薬やったら、これが一番効きますよ。」紀子は大前に薬を渡し、さっさとコップに水を汲んで差し出す。
「紀子は優しいなあ。」大前は、本当は頭が痛い訳では無いが、さっと、飲んだ。
「この際や。一美。三美に会場の長居公園サッカースタジアムに午後6時頃潜り込める段取りつけて貰ってくれ。」
「了解しました。やっぱり、ファンなんですね。」一美は笑った。
「え?」という大前に、いずみが「一美ネエは、まだ会場の名前言ってませんよ。時間もね。」いずみも笑った。
「ふうん。コマンダーは、ああいうタイプがタイプなんや。ウチは振られたわ。」紀子も調子を合わせた。
「トイレ、行って来よう。」
大前は作戦室を出て行った。
午後2時。羽曳野市。あるマンション。
浮気調査の為、幸田と張り込みをしている総子。
対象の部屋に、女が帰ってきた。2人が踏み込もうとしたが、突然バッグを持ってやって来た男が女にナイフを突きつけ、女の部屋に飛び込んだ。
「お嬢。あれ。」「ああ、えらいことになってもうたわ。晩にEITOの仕事あるのに。幸田。所長と花ヤンに連絡して。」「了解。」
幸田に指示した総子は、府警にいる一美に連絡をした。
「了解。横ヤンと警官隊を連れて、そっちに行くわ。さっき起こった郵便局強盗だと思う。」
午後3時。一美はスマホで懸命に犯人を説得していた。女の部屋の電話番号は、総子から聞いて分かっているので、調べる必要はなかった。
女の部屋の前。総子と幸田が、やって来た。
「岸上松子さん。泊一郎さんの離婚のことで、やって来たんですけど、開けて貰えませんか?」幸田が大声で怒鳴り、総子はドアの鍵穴から、鏡を通して中を伺った。
立てこもり男が、玄関ドアの方に向かって来た。
総子はDDバッジを押した。DDバッジとは、本来はDDメンバーと呼ばれる、大文字伝子の友人知人達の身を守る為に開発された、EITOの通信バッジだが、オスプレイに緊急信号を送れるので、EITOメンバーも利用している。総子達EITO大阪支部のメンバーも、本部詰めのいずみや紀子以外は携帯している。
総子の信号はオスプレイを通じて二美は確認し、窓を突き破って、突入した。
男の怒鳴る声を聞き、部屋が静まった後、二美は玄関の施錠を解除して出てきた。
二美から合図を受けた一美は、横山警部補と共に、警官隊を連れて急行した。
「お嬢。行って。泊さんの依頼は任せといてくれ。追っ付け、所長らも来るやろうし。」と、幸田が言った。
「幸田、あんた、オトナになったな。」総子の言葉に、「元からあんたよりオトナですけどね。」と、幸田は言った。
午後5時。EITO大阪支部。
「やっぱり羽曳野は遠いわ。長居も近くないけど。」と、言いながら総子は入って来た。
「総子ちゃん、これ新しい装備。着替える部屋なあ、三美さんが主催者に交渉して用意してくれたで。」「ノリちゃん、頼もしいわ。」
総子は、紀子にハグをした。「え?まさか?」と後ろから、大前が総子達を見て言った。「反対はせんけど・・・。」「何?勘違いするなよ、エロオヤジ。」と、総子はピコピコハンマーで大前を叩いた。
「移動は、外に止まってるオスプレイや。敵はピコピコハンマーやなく、バトルスティックで叩いて来い。」
「分かった、兄ちゃん。」「兄ちゃん?」「死んだ妹さん、房子(ふさこ)って言うんやろ?字が違うけど。これでも興信所の所長夫人やで。兄ちゃんでええやろ?」
房子は言い捨てると、準備室にポーチを取りに行き、紀子が用意した装備を抱え、外に出て走った。
「ほんまにもう、せわしないやっちゃ。」と、大前は苦笑した。
「兄ちゃんか。違和感ないわ。」と紀子が言い、いずみがピースサインをした。
午後6時。長居公園内サッカースタジアム。EITOエンジェル用控え室。
準備された部屋は、意外と大きかった。
「あんたが三美ネエか。ホンマにクリソツやナア。どこで見分けるの?」と、総子が素朴な疑問を投げかけた。
「左目の横にホクロが一美、左目の横にホクロが二美。目の横にホクロがないのが、私。亡くなった両親も、ずっとそれで区別してきたわ。」
「何か悪いことを聞イたんやったら、堪忍やで、ウチ鈍感やさかい。」と総子が言うと、「大前さんが惚れ込む訳ね。いつか平和になったら、ウチの会社手伝って貰おうかしら?」と、三美は、にっこりと笑った。
総子達は警備の位置についた。
午後6時半。MCの言葉に導かれて小夏はステージに現れた。歓声は、どよめきとなった。
と、その時、武装?したファンが5人、ステージに上がった。
小夏に襲いかかろうとした時、EITOエンジェルの総子達がステージに上がった。
「参上!EITOエンジェル。満を持して。」総子が、そう言うと、棒きれの一団は、あっと言う間に取り押さえられた。
「ちょっと、待ったあ。」客席から現れた男達は、普段着だったが、拳銃を持っていた。
男達は、50人はいたが、客席とステージの両方を威嚇し始めた。
男達が現れた時に、総子は長波ホイッスルを吹いていた。長波ホイッスルとは、EITOが開発した、犬笛のような笛で、人間の耳には聞こえないが、オスプレイに緊急信号を送ることが出来る。
いつの間にか飛来したオスプレイのカタパルトが開き、ホバーバイクが降りて来た。
ホバーバイクは、民間の発明だったが、EITOが採用、戦闘用に改造されていた。
エレガントボーイの格好をした大前が、ホバーバイクで降りてくると、水流弾を男達に浴びせかけた。拳銃や機関銃は忽ち使い物にならなくなった。
すかさず、二美は、警官隊を突入させ、観客を一時避難させた。
ホバーバイクが去ると、EITOエンジェルは、バトルスティックとペッパーガンとシューターで懸命に闘い、午後8時には、鎮圧した。
ペッパーガンとは、EITOが開発した、胡椒などを主成分とした丸薬で出来た弾を撃つ銃で、敵の戦意を喪失させる働きをする一方、シューターとは、EITOが開発したうろこ形の手裏剣で、先端にしびれ薬が塗ってある。EITOは銃火器を使わない。刃物も使うことを許されていない。シューターは厳密に言えば刃物だが、殺傷能力は無い。
EITOは、民間の『対テロ組織』である。自衛隊を揶揄する思想の団体がEITOを非難することがあるが、実態は『救助隊』なのだ。
一美の指示で、警官隊が武装集団を逮捕連行していった。
そして、最初の5人は、二美が簡単な尋問を行い、5人は闇サイトに便乗し、小夏に近寄ろうとしたファンだったことが判明した。大前は、この5人を囮にして、リヴァイアサンバージョン2が兵隊を送ってきた、と判断した。それで、大前は5人の処理を小夏自身に決めるように小夏に言った。
小夏は、自らマイクを持ち、再びライブに参加した者には、グッズを後日プレゼントすることを約束し、帰宅する者には、次回ステージの『優先権』を与える整理券を配ると、放送した。
これは、三美の独断で、大前に承諾させたアイディアだったが、誰も帰宅しなかった。
EITOエンジェルは、ライブが終って帰宅する人達の場内整理を行った。
午後11時。ライブは10時に終ったが、後片付けに時間がかかった。
後片付けには、二美の声かけで陸自の応援が入った。
また、三美が社員に命じて、三美の社員も応援に入った。
午前0時。総子のアパート。
南部が、帰宅した総子にお茶漬けを出して言った。
「今度、マンションに引っ越そう。三美会長が、エエトコ見付けてくれたから。」
「ホンマ?前から気になってたんやけど、芦屋さん達って・・・。」
「先代の会長とワシは知り合いでなあ。先に食べや。後の話は、寝床で聞かせたるさかいに。」
「寅次郎。」「何や、総子。」「結婚してくれてありがとう。」「水くさいこと、言いなや。」
2人は目に涙を溜めていた。
―完―
============== 主な登場人物 ================
南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。
南部寅次郎・・・南部興信所所長。江角総子と年の差婚をしている。
大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。夏目警視正と、警察学校同期。
足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元事務担当。
石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。
宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元通信担当。
丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。
河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。資材担当。
北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー普段は、動物園勤務。
久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。
小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。
指原ヘレン ・・・ EITO大阪支部メンバー。
白井紀子・・・EITO大阪支部メンバー。総子の幼なじみ。祐子に変わって、事務をすることになった。
芦屋一美(ひとみ)警部・・・三つ子の芦屋三姉妹長女。大阪府警からの出向。阿倍野区夕陽丘署出身。花菱元刑事と同期。普段は大阪府警にいて、EITOとの橋渡しをしている。
芦屋二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。
芦屋三美(みつみ)・・・芦屋産業の会長。実は、EITO大阪支部に多大な資金援助をしている、若き経営者。
幸田所員・・・南部興信所所員。総子のことを「お嬢」と呼ぶ。
花菱綾人・・・元大阪阿倍野署の刑事。南部興信所所員。
横山鞭撻警部補・・・大阪府警の刑事。
愛川いずみ・・・新。通信担当。EITO大阪支部事務員。
= EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =
午後1時。EITO大阪支部。作戦室。
「コマンダー。大阪府警から通信です。アイドルの北別府小夏が脅迫されているそうです。今、一美警部を画面に出します。」大前がいずみに近づくと、いずみの前のPCの画面に芦屋一美警部が出た。
「一美。どういうことや。脅迫されてたら、警察の仕事やろ。」
大前が尋ねると、一美は、画面にメッセージを出した。
《今夜のライブで小夏が、恨んでいる奴にやられるらしいぞ。リヴァイアサンバージョン2》
「コマンダー。EITOに警護して欲しいそうです。小夏ちゃんのファンらしいですね。欲得づく、で引き受けますか?」一美は尋ねた。
「お前まで総子の影響か?言葉気イつけえよ。」と、大前は憤慨した。
「もう、先方に『喜んで引き受けます』って一報入れておきましたけどね。」
「頭痛くなって来た。いずみ。薬どこやったかな?頭痛薬。」「薬箱でしょ。」
紀子が帰って来た。「コマンダー。風邪ですか?頭痛薬やったら、これが一番効きますよ。」紀子は大前に薬を渡し、さっさとコップに水を汲んで差し出す。
「紀子は優しいなあ。」大前は、本当は頭が痛い訳では無いが、さっと、飲んだ。
「この際や。一美。三美に会場の長居公園サッカースタジアムに午後6時頃潜り込める段取りつけて貰ってくれ。」
「了解しました。やっぱり、ファンなんですね。」一美は笑った。
「え?」という大前に、いずみが「一美ネエは、まだ会場の名前言ってませんよ。時間もね。」いずみも笑った。
「ふうん。コマンダーは、ああいうタイプがタイプなんや。ウチは振られたわ。」紀子も調子を合わせた。
「トイレ、行って来よう。」
大前は作戦室を出て行った。
午後2時。羽曳野市。あるマンション。
浮気調査の為、幸田と張り込みをしている総子。
対象の部屋に、女が帰ってきた。2人が踏み込もうとしたが、突然バッグを持ってやって来た男が女にナイフを突きつけ、女の部屋に飛び込んだ。
「お嬢。あれ。」「ああ、えらいことになってもうたわ。晩にEITOの仕事あるのに。幸田。所長と花ヤンに連絡して。」「了解。」
幸田に指示した総子は、府警にいる一美に連絡をした。
「了解。横ヤンと警官隊を連れて、そっちに行くわ。さっき起こった郵便局強盗だと思う。」
午後3時。一美はスマホで懸命に犯人を説得していた。女の部屋の電話番号は、総子から聞いて分かっているので、調べる必要はなかった。
女の部屋の前。総子と幸田が、やって来た。
「岸上松子さん。泊一郎さんの離婚のことで、やって来たんですけど、開けて貰えませんか?」幸田が大声で怒鳴り、総子はドアの鍵穴から、鏡を通して中を伺った。
立てこもり男が、玄関ドアの方に向かって来た。
総子はDDバッジを押した。DDバッジとは、本来はDDメンバーと呼ばれる、大文字伝子の友人知人達の身を守る為に開発された、EITOの通信バッジだが、オスプレイに緊急信号を送れるので、EITOメンバーも利用している。総子達EITO大阪支部のメンバーも、本部詰めのいずみや紀子以外は携帯している。
総子の信号はオスプレイを通じて二美は確認し、窓を突き破って、突入した。
男の怒鳴る声を聞き、部屋が静まった後、二美は玄関の施錠を解除して出てきた。
二美から合図を受けた一美は、横山警部補と共に、警官隊を連れて急行した。
「お嬢。行って。泊さんの依頼は任せといてくれ。追っ付け、所長らも来るやろうし。」と、幸田が言った。
「幸田、あんた、オトナになったな。」総子の言葉に、「元からあんたよりオトナですけどね。」と、幸田は言った。
午後5時。EITO大阪支部。
「やっぱり羽曳野は遠いわ。長居も近くないけど。」と、言いながら総子は入って来た。
「総子ちゃん、これ新しい装備。着替える部屋なあ、三美さんが主催者に交渉して用意してくれたで。」「ノリちゃん、頼もしいわ。」
総子は、紀子にハグをした。「え?まさか?」と後ろから、大前が総子達を見て言った。「反対はせんけど・・・。」「何?勘違いするなよ、エロオヤジ。」と、総子はピコピコハンマーで大前を叩いた。
「移動は、外に止まってるオスプレイや。敵はピコピコハンマーやなく、バトルスティックで叩いて来い。」
「分かった、兄ちゃん。」「兄ちゃん?」「死んだ妹さん、房子(ふさこ)って言うんやろ?字が違うけど。これでも興信所の所長夫人やで。兄ちゃんでええやろ?」
房子は言い捨てると、準備室にポーチを取りに行き、紀子が用意した装備を抱え、外に出て走った。
「ほんまにもう、せわしないやっちゃ。」と、大前は苦笑した。
「兄ちゃんか。違和感ないわ。」と紀子が言い、いずみがピースサインをした。
午後6時。長居公園内サッカースタジアム。EITOエンジェル用控え室。
準備された部屋は、意外と大きかった。
「あんたが三美ネエか。ホンマにクリソツやナア。どこで見分けるの?」と、総子が素朴な疑問を投げかけた。
「左目の横にホクロが一美、左目の横にホクロが二美。目の横にホクロがないのが、私。亡くなった両親も、ずっとそれで区別してきたわ。」
「何か悪いことを聞イたんやったら、堪忍やで、ウチ鈍感やさかい。」と総子が言うと、「大前さんが惚れ込む訳ね。いつか平和になったら、ウチの会社手伝って貰おうかしら?」と、三美は、にっこりと笑った。
総子達は警備の位置についた。
午後6時半。MCの言葉に導かれて小夏はステージに現れた。歓声は、どよめきとなった。
と、その時、武装?したファンが5人、ステージに上がった。
小夏に襲いかかろうとした時、EITOエンジェルの総子達がステージに上がった。
「参上!EITOエンジェル。満を持して。」総子が、そう言うと、棒きれの一団は、あっと言う間に取り押さえられた。
「ちょっと、待ったあ。」客席から現れた男達は、普段着だったが、拳銃を持っていた。
男達は、50人はいたが、客席とステージの両方を威嚇し始めた。
男達が現れた時に、総子は長波ホイッスルを吹いていた。長波ホイッスルとは、EITOが開発した、犬笛のような笛で、人間の耳には聞こえないが、オスプレイに緊急信号を送ることが出来る。
いつの間にか飛来したオスプレイのカタパルトが開き、ホバーバイクが降りて来た。
ホバーバイクは、民間の発明だったが、EITOが採用、戦闘用に改造されていた。
エレガントボーイの格好をした大前が、ホバーバイクで降りてくると、水流弾を男達に浴びせかけた。拳銃や機関銃は忽ち使い物にならなくなった。
すかさず、二美は、警官隊を突入させ、観客を一時避難させた。
ホバーバイクが去ると、EITOエンジェルは、バトルスティックとペッパーガンとシューターで懸命に闘い、午後8時には、鎮圧した。
ペッパーガンとは、EITOが開発した、胡椒などを主成分とした丸薬で出来た弾を撃つ銃で、敵の戦意を喪失させる働きをする一方、シューターとは、EITOが開発したうろこ形の手裏剣で、先端にしびれ薬が塗ってある。EITOは銃火器を使わない。刃物も使うことを許されていない。シューターは厳密に言えば刃物だが、殺傷能力は無い。
EITOは、民間の『対テロ組織』である。自衛隊を揶揄する思想の団体がEITOを非難することがあるが、実態は『救助隊』なのだ。
一美の指示で、警官隊が武装集団を逮捕連行していった。
そして、最初の5人は、二美が簡単な尋問を行い、5人は闇サイトに便乗し、小夏に近寄ろうとしたファンだったことが判明した。大前は、この5人を囮にして、リヴァイアサンバージョン2が兵隊を送ってきた、と判断した。それで、大前は5人の処理を小夏自身に決めるように小夏に言った。
小夏は、自らマイクを持ち、再びライブに参加した者には、グッズを後日プレゼントすることを約束し、帰宅する者には、次回ステージの『優先権』を与える整理券を配ると、放送した。
これは、三美の独断で、大前に承諾させたアイディアだったが、誰も帰宅しなかった。
EITOエンジェルは、ライブが終って帰宅する人達の場内整理を行った。
午後11時。ライブは10時に終ったが、後片付けに時間がかかった。
後片付けには、二美の声かけで陸自の応援が入った。
また、三美が社員に命じて、三美の社員も応援に入った。
午前0時。総子のアパート。
南部が、帰宅した総子にお茶漬けを出して言った。
「今度、マンションに引っ越そう。三美会長が、エエトコ見付けてくれたから。」
「ホンマ?前から気になってたんやけど、芦屋さん達って・・・。」
「先代の会長とワシは知り合いでなあ。先に食べや。後の話は、寝床で聞かせたるさかいに。」
「寅次郎。」「何や、総子。」「結婚してくれてありがとう。」「水くさいこと、言いなや。」
2人は目に涙を溜めていた。
―完―
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
旧校舎のフーディーニ
澤田慎梧
ミステリー
【「死体の写った写真」から始まる、人の死なないミステリー】
時は1993年。神奈川県立「比企谷(ひきがやつ)高校」一年生の藤本は、担任教師からクラス内で起こった盗難事件の解決を命じられてしまう。
困り果てた彼が頼ったのは、知る人ぞ知る「名探偵」である、奇術部の真白部長だった。
けれども、奇術部部室を訪ねてみると、そこには美少女の死体が転がっていて――。
奇術師にして名探偵、真白部長が学校の些細な謎や心霊現象を鮮やかに解決。
「タネも仕掛けもございます」
★毎週月水金の12時くらいに更新予定
※本作品は連作短編です。出来るだけ話数通りにお読みいただけると幸いです。
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
※本作品の主な舞台は1993年(平成五年)ですが、当時の知識が無くてもお楽しみいただけます。
※本作品はカクヨム様にて連載していたものを加筆修正したものとなります。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
友よ、お前は何故死んだのか?
河内三比呂
ミステリー
「僕は、近いうちに死ぬかもしれない」
幼い頃からの悪友であり親友である久川洋壱(くがわよういち)から突如告げられた不穏な言葉に、私立探偵を営む進藤識(しんどうしき)は困惑し嫌な予感を覚えつつもつい流してしまう。
だが……しばらく経った頃、仕事終わりの識のもとへ連絡が入る。
それは洋壱の死の報せであった。
朝倉康平(あさくらこうへい)刑事から事情を訊かれた識はそこで洋壱の死が不可解である事、そして自分宛の手紙が発見された事を伝えられる。
悲しみの最中、朝倉から提案をされる。
──それは、捜査協力の要請。
ただの民間人である自分に何ができるのか?悩みながらも承諾した識は、朝倉とともに洋壱の死の真相を探る事になる。
──果たして、洋壱の死の真相とは一体……?
学園ミステリ~桐木純架
よなぷー
ミステリー
・絶世の美貌で探偵を自称する高校生、桐木純架。しかし彼は重度の奇行癖の持ち主だった! 相棒・朱雀楼路は彼に振り回されつつ毎日を過ごす。
そんな二人の前に立ち塞がる数々の謎。
血の涙を流す肖像画、何者かに折られるチョーク、喫茶店で奇怪な行動を示す老人……。
新感覚学園ミステリ風コメディ、ここに開幕。
『小説家になろう』でも公開されています――が、検索除外設定です。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる