上 下
9 / 26

9.こころ

しおりを挟む
 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。
 久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。
 大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。
 福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。
 依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。
 服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。
 南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。
 山城みどり・・・山城順と蘭の娘。
 愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。

 久保田あつこ・・・健太郎の母。警視正。
 橋爪哲夫警部補・・・愛宕警部の同僚。丸髷署生活安全課。
 高峰圭二・・・元刑事の警備員。
 天童晃・・・元EITO準隊員。武術師範だったが、今は引退して道場を開いている。
 天童桃子・・・天童の妻。元陸自医官。出向していたEITOで天童と再会。50年越しの恋を実らせ、結婚した。現在は、天童邸を改造して診療所を開いている。

 ==============================
 ==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==
 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 午後3時。スーパー・ピテカントロプス。
 店内を走り回る、子供達。そして、ポケットに商品を入れていく。
 健太郎達ミラクル9は、店長の相談を受け、見張っていた。
 犯人の子供達は、店内の防犯カメラの死角をつき、走り回る。
 午前中や繁忙時の方が、店には隙があるように見えるが、実はそうでもない。
 店に寄っては、「お掃除タイム」にしているが、実は「けん制」の為の放送である。
 それを知った上の、堂々とした犯行だ。どのスーパーにも警備員はいるが、いつでも監視出来る訳ではない。
 健太郎達は、2人1組に分かれて監視していた。
 万引きグループが動くと、すぐに健太郎達は、取り押さえ、ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルではない。運動会等で使用するホイッスルだ。
 店長から連絡を受けた警備員達が駆けつけ、やがて警察官達がやって来た。
 警備員達が駆けつけた時、リーダー格の男の子が喚いていた。
「お前ら。警察でもないのに、逮捕した気でいるのか?」
「『私人逮捕』だね。勿論、誰にでも逮捕する権利はあるよ。逃げない様に取り押さえることだからね。君たちは、警察に引き渡す。『公人逮捕』に切り替えだ。お願いいたします。」と、高峰は、いつものように、警察官に子供達を引き渡した。
 手錠はかけないが、引っ立てられていく時のわめきは、大人と同じだ。
「高峰さん。」と店長が申し訳なさそうに言った。
 店長の広報には、老婦人と、天童晃がいた。
 店長室に老婦人を案内するように、高峰は進言した。
 駆けつけた警察官の中に橋爪警部補を見付けた高峰は、そっと耳打ちした。
「了解しました。」「こちらです。」
 午後4時。店長室。
「初犯じゃなかったんですか。」と、天童は驚いた。
 警備員の高峰圭二は、元刑事。橋爪警部補は、本来は生活安全課の刑事だ。
 そして、天童は、EITO引退後、自宅で道場を開き、妻の桃子は、EITO引退後、庭を潰して建てた診療所の院長をしている。
 天童は、健太郎達を促し、自宅に招いた。
 午後5時。天童家。茶の間。
「おやつには遅いが、まあ、いいだろう。」と言って天童は羊羹とお茶を出してくれた。
「子供達は、初犯じゃないし、方々のスーパーで被害が出ている。少年院に行くかもな。私のポーチを取ろうとした婦人は、所謂「病気」なんだ。
「平たく言うと、『正気の時』と『正気でない時』があるの。身元引受人として、家族の方が来られるだろうけどね。店長の説諭、あ、説教で済めばいいけど、初犯でないと、少なくとも『出入り禁止』ね。」
「難しいんですね、須藤先生。」と、おさむが言った。
「そうね。君の蜂に刺された時の処置は医者には出来ても、蜂に刺されたショックまでは医者には分からない。『こころ』に関係する治療は一番難しいの。まあ、ゆっくりして行きなさい。」
 そう言って、須藤院長は診療所の方に向かった。
 健太郎のスマホが鳴動した。
「かあちゃん。」「今、どこ?武勇伝は聞いたわよ。」
「天童先生のところ。」「五時半から道場の生徒さん達が来るわ。お前達も引き揚げなさい。」「はい。」
「ちぇっ!君の心の声は聞こえたよ。」と、天童が言うと、「恐れ入りました。」と、健太郎は深くお辞儀をし、皆が笑った。
 ―完―


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】国を追われた巫女見習いは、隣国の後宮で二重に花開く

gari
キャラ文芸
☆たくさんの応援、ありがとうございました!☆ 植物を慈しむ巫女見習いの凛月には、二つの秘密がある。それは、『植物の心がわかること』『見目が変化すること』。  そんな凛月は、次期巫女を侮辱した罪を着せられ国外追放されてしまう。  心機一転、紹介状を手に向かったのは隣国の都。そこで偶然知り合ったのは、高官の峰風だった。  峰風の取次ぎで紹介先の人物との対面を果たすが、提案されたのは後宮内での二つの仕事。ある時は引きこもり後宮妃(欣怡)として巫女の務めを果たし、またある時は、少年宦官(子墨)として庭園管理の仕事をする、忙しくも楽しい二重生活が始まった。  仕事中に秘密の能力を活かし活躍したことで、子墨は女嫌いの峰風の助手に抜擢される。女であること・巫女であることを隠しつつ助手の仕事に邁進するが、これがきっかけとなり、宮廷内の様々な騒動に巻き込まれていく。  ※ 一話の文字数を1,000~2,000文字程度で区切っているため、話数は多くなっています。    一部、話の繋がりの関係で3,000文字前後の物もあります。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

笑うは咲く

ゆうひゆかり
ライト文芸
気のおもむくまま綴った詩集です。 更新は不定期です。

毎日!アルスの日常366

星月
キャラ文芸
2024年は閏年、例年よりも1日だけ多い。 アルス達が送る366日間をお楽しみください。 毎日投稿で、投稿日と話は同日である。

灰かぶり姫の落とした靴は

佐竹りふれ
ライト文芸
中谷茉里は、30手前にして自身の優柔不断すぎる性格を持て余していた。 春から新しい部署となった茉里は、先輩に頼まれて仕方なく参加した合コンの店先で、末田皓人と運命的な出会いを果たす。順調に彼との距離を縮めていく茉莉。時には、職場の先輩である菊地玄也の助けを借りながら、順調に思えた茉里の日常はあることをきっかけに思いもよらない展開を見せる……。 第1回ピッコマノベルズ大賞の落選作品に加筆修正を加えた作品となります。

処理中です...