39 / 130
ちゃんと頑張りますよ? でも聖女と崇めるのはやめてください!
今後の方針を話し合いました
しおりを挟むアンドリューも増えたところで、再びみんなで話し合うことに。内容は今後のことだ。
でもその前に、城に戻った後、アンドリューは大丈夫だったのか、という辺りも聞いておかないと。自分たちを妨害してきた現国王派もいるのだから。
「結果的に命を救ったからな。こちらの味方になってくれるとまではいかないが、キツイ当たりなどはない。心なしか大人しくなってくれたな」
普段はすれ違いざまに嫌味を言われたり、鼻で笑われたりするのだそう。わかりやすい嫌がらせも日常茶飯事であるため、かなり過ごしやすかった、と余裕の笑みを浮かべるアンドリュー。
そ、想像以上に魔窟で過ごしていたんだね? でも考えてみればそれも当然だよね。同じ城内で派閥が分かれているんだもの。見えないところでドロドロした足の引っ張り合いをしていてもおかしくない。
「対処法もあるし、私には心強い味方もいる。それに、幻獣人様が解放されたことで風向きが変わってきた。こちらのことは心配しなくていい」
「そ、そうかもしれませんが……」
それでも、多数の人から敵視されながら過ごすのはかなり精神力を削られそうだもの。いくら味方がいても嫌な思いをするのは変わらないだろうから、やっぱり心配にもなるってものだ。
「……ああ、そうか。エマは優しいな。ここはそうではなく、お礼を伝えるべきだった。心配してくれて感謝する、エマ」
「い、いえっ、そんな!」
でも、アンドリューはこちらを気遣う様子まで見せてくれる。器の大きさに驚かされるよ。カノアに待たされたというのに笑って許してしまうし、一体どんな風に育ったらここまで心の広い人になれるのだろうか。私だったらすぐ内心で怒って表ではウジウジしちゃうよ。
アンドリューは私の淹れたお茶を一口飲むと、早速だがと話を切り出した。うーん、仕事も早い。今のところ彼に悪い点を見付けられないな。
「今後のことだが、幻獣人様方にはやってもらいたいことが大きく分けて三つある」
アンドリューが告げてくれたことをまとめるとこうだ。
やってもらいたいことの一つは、残る幻獣人を解放しに行く付き添い。要は、私の道案内と護衛である。
二つ目は魔石への魔力補充。魔石を国民に行き渡らせることが、アンドリューの味方を増やすことに繋がり、さらには対禍獣の王へ備えることの第一歩になるものね。
そして三つ目。それは増えている禍獣を討伐すること。うん、これもとても大事だ。少しでも減らしておかないと、それこそ禍獣の王が目覚めた時に甚大な被害が出てしまう。
優先順位なんてつけられない。どれもこれも大事だよね。しいていうなら、幻獣人の解放が急務かな? 人数が増えればその分、残る二つも捗るもの。
「というわけで、ここからは手分けして行動をしてもらいたいのだが……振り分けはエマ、貴女に頼みたい」
「えっ、私ですか!?」
自分が指示を出しても彼らは動いてくれないだろうからと、アンドリューが苦笑を浮かべている。
え、でも禍獣によって世界を滅ぼされるのは彼らだって嫌なはず。そんなに嫌がるなんてことは……。そう思って幻獣人に目を向けて見る。
「え? オレっち、暇なのは嫌だけどー、面倒な仕事を押し付けられるのはもっと嫌だしー?」
「オレはエマ様のご指示にだけ従いますよ」
「僕は気分が乗ったらやってあげてもいい」
ええぇ……。こう、積極的に動こうという人はいないの? 私も人のことはまったく言えないけれど。
というか、シルヴィオ以外は私の指示があったとしても動いてもらえないんじゃ……。思わず顔が引きつってしまう。
でも、アンドリューより私の言うことの方を聞いてくれるっていうのが確かなのはわかる。いざとなったら命令するしかないんだけど、出来ればしたくないんだよね。
と、とりあえずもう少しだけ情報がほしいところだ。私は気になる点をいくつかアンドリューに質問することにした。
「えっと、次に開放する幻獣人は決まっていますか? 出来ればどんな人なのかと、封印されている場所、あとは危険がないかなどを聞かせてもらいたいのですが……」
「ああ、それはそうだな。だが、カノアが解放されたから順番に関してはこれといって決まっていない。扉があればどの都市にもすぐに向かうことが出来るからな」
そっか。この館に来るためにはどうしてもカノアの存在が必要だったから真っ先に開放を、って感じだったけど、残る幻獣人に優先順位はないってことだね。
ただ、誰からでもいいと言われても、選べるほど情報が少ないからそれはそれで難しいな。
「ガウナは? あの子がいると退屈しなくていい」
「えーっ!? あんなイタズラ小僧がいたら仕事を進めるどころじゃなくなるじゃーん。せめてお世話役が解放されてからにしないとー。あ、ジーノっちは? 彼、隠密行動が得意じゃん! 国王派の調査とかしてもらえそー!」
私が悩んでいると、カノアとリーアンがそれぞれ名前をあげていく。ガウナといういたずらっ子と、ジーノっていう隠密が得意な人、か。
すると、出来ればこれ以上の男は増やしたくないんですけどね、とため息を吐きながらシルヴィオが口を挟む。
「まずは戦力の強化が必須でしょう。エマ様をお守りするためにも、禍獣を減らすためにも、戦闘が得意な者の解放が先決では? 今のところ、戦闘を得意とするのは鳥野郎しかいないのですから」
シルヴィオからはごもっともな意見が飛び出した。確かに、禍獣の討伐を進めることを考えたら戦える人がいてくれた方がいいかもしれない。
「それならあの双子が適任じゃね?」
「マティアスとジュニアスですか。いいかもしれませんね」
ふ、双子? 幻獣人って二人といない種族なのにそんなことがあるの?
聞けばこの二種の幻獣人はどうも密接な繋がりがあるらしく、世代交代をしても毎回必ずそっくりな二人が生まれてくるのだそう。
だから双子と呼ばれているだけらしいけど、当人同士も互いを兄弟と認識しているみたい。不思議だなぁ……。
「ただ、この二人が封印されている地はバラバラだぞ」
「それならマティアスを先に解放しましょう。ジュニアスは兄である彼にしか興味がありませんから、マティアスがいた方がスムーズになるかと」
「おー! マティーなら怒らせなきゃいい奴だし、良い人選じゃーん?」
何やら話がまとまってきたみたい。どうやらそのマティアスという幻獣人はセイの都市に封印されているという。
私にはそれがどんな幻獣人でどんな人かはわからないから、その方向で話を進めていこう!
0
お気に入りに追加
227
あなたにおすすめの小説
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります
秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。
そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。
「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」
聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる