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蝶よ花よ
三、
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「はぁ、あ"っ…きつ…ッ」
入ってきた質量が下腹部を圧迫して、蝶は吐息を漏らす。
けれど、その腰を支えられ、背後から天藍に言われた。
「ごめん、まだ全部入ってない」
「……え?」
「もう少しいける?」
そう疑問符を投げかけておきながら、天藍は返事が返ってくる前に、さらに奥まで自身を挿れた。
「あ"、そ、そんな奥、いけな…っ」
今まで何にも触れられたことがない最奥に、熱いモノが入ってくる。逃げようにも、上から腰を抑えられている状態で、身動きが取れない。
ついに、ぐぽ、と、入ってはいけないところに入る音がした。
「ッ~~~~!!」
その感覚に、蝶は頭が真っ白になる。
「……蝶、大丈夫?」
自分の下にある足腰がガクガクと震えて、天藍は一度動きを止める。
けれど、蝶にはもはや考えて取り繕う思考はなく、頭に浮かんだ言葉をそのまま口にした。
「き、きもちい、です…ッ」
「……ならいいや」
天藍は笑みを浮かべ、行為を続けた。
「ぁ、あ"っ、あぁっ…!!」
ぐぽ、ぐぽ、と中で微かに音がする。
天藍が一度動きを止めたとき、蝶は息を整えながら言葉を漏らした。
「はぁっ、ぁ、これ…あ、あたま、おかしくなりそ…ッ」
「良すぎて?」
そう聞くと、蝶は素直にこくこくと頷く。
「へえ、奥好きなんだ。君も相当だね」
天藍はそう笑って、蝶の首元にキスを落とした。
それを何度も繰り返し、蝶の声が掠れるくらいに責めた後。
「っ~~~、ぁ、も、イく…っ!!」
ついに、ぱたぱたと精液がシーツに垂れた。
蝶は快楽の余韻を感じながら、息を整える。天藍はその頭を愛おしそうに撫でた。
しかし、熱が冷めてくにつれ、蝶は別の欲求が膨らんできた。
「……だ、旦那様、早く抜いてください…っ」
「なんで?」
「っ……そ、その……」
長いこと前戯を受けていたせいで、気づかないうちに膀胱には液体が溜まっていた。
蝶は言葉を濁したが、もちろんこうなる事態は天藍の予想内であり、彼の望んだことである。
天藍は蝶の背後で笑みを濃くした。
「僕がイくまで付き合って」
そう言って、向き合うように蝶の体勢をくるりと変える。腰を抑えて、中から膀胱を押すように刺激した。
「ひぃ……ぅぁ、それ、だ、だめ、ですっ…!」
液体を溜め込んだ臓器が圧迫されて、ゾクゾクと変な感覚が襲う。危うく漏らしそうになって、蝶は空いた手でぎゅうっとその出口を抑えた。
その様子を見て、天藍は悪い笑みを見せる。
「ふふ……僕たちが布団をびしょびしょにしたら、ここの従業員たちはどう思うかな?」
「ッ~~~……」
天藍は悶える蝶の身体を起こし、自分の膝上に乗せた。
そのまま唇を掬おうとすると、蝶に顔を逸らされた。
天藍は不満げに首を傾げた。
「……どうして口付けだけはさせてくれないの?」
「その……舌を入れられるの、気持ち悪くて嫌なんです…」
「『気持ち悪い』?」
天藍は不思議そうに聞き返し、蝶の頬を指で撫でた。
「慣れれば気持ち良いよ。口開けてみて」
「っ……やです……」
蝶はそう言って、口を閉じて顔を背ける。
見兼ねた天藍は、そんな蝶の腰を支え直し、自分自身を一気に奥まで入れた。
「っ、ぁあ"ッ…!!」
その開いた蝶の口に、すかさずキスをする。
口内を犯し、その舌を吸うと、びくんと蝶の腰が反応した。
途端に腹部にぬるい液体が流れる感覚がして、天藍は一度口を話し、下を見る。
「……あれ、出ちゃった?」
「ッ…す、すみません…っ」
明らかに汗ではない液体が、天藍の下腹を濡らしている。
天藍の指摘に、蝶は自分が粗相をしてることに気づき、慌てて片手で前を押さえた。
しかし、一度決壊してしまったそれは中々止められない。指の隙間から、たらたらと溢れ出てきていた。
「っ~~、と、止まんな…っ、ごめんなさい……ッ」
しかしどんどん濡れていくシーツのことより、天藍は別のことが気に掛かっていた。
口付けをしただけで、身体の力が抜けてしまったのか……。それに、さっきまでの会話を思い出し、天藍は少し考えた後、蝶を見つめ直して言った。
「ひょっとして、君、口の中が人より弱い?」
「…………!!」
それはたった今天藍に言われるまで、蝶自身も気づかなかった自分の体質だった。
「よ、弱いかどうかは……誰かと比べたことはないので……」
「……へえ」
目に見えてしどろもどろになる蝶を前に、天藍の笑みは意地悪さを増す。そして不意に、蝶の口をもう一度、自分の口で塞いだ。
あっという間に、水音を立てて口内を犯していく。
舌で上顎をなぞられたとき、蝶はその感覚に耐えられず、無理やり口を離した。
「っは…ま、待ってください…っ」
唾液の糸がつうっと二人の口を繋ぐ。蝶は強い快感で涙目になりながら、天藍に言った。
「せめて、抜い…ぁあ"ッ!!」
しかしその願いは無言で拒絶される。中から膀胱を一層圧迫され、押さえている手の隙間から透明な液体がしゅうしゅうと溢れ出た。
「っ~~~、もう、最悪ッ……」
「……可愛い」
おもらしを止められない蝶に、天藍はそう満足げに呟く。
身を捩る蝶を押さえつけ、再びベッドへと倒す。そしてシーツが派手に濡れるまで、口付けと行為を繰り返した。
なんとか言い訳をして、新しいシーツに代えてもらった寝台。
寝巻きに着替えさせられた蝶は、大人しく天藍に抱えられ、その寝台に寝かせられた。
「すみません。……まあ、私が謝ることではないとは思ってますが」
今の蝶はうまく力が入らず、誰かに支えられないと歩くことができない。こうなってしまった理由は明確だ。先ほど誰かに長い間散々下半身を責められたせいである。
(……まあ……正直、すごく気持ちよかったけど……)
先ほどまでの行為を思い出すと、また鼓動が速くなる。慌てて頭を振って、感覚を忘れようとした。
元凶の天藍は微笑んだだけで、謝りはしない。蝶の隣に同じように寝転び、尋ねた。
「動けないなら、明日も泊まっていく?」
「いえ、仕事があるので……寝たら治ると思います」
「相変わらず丈夫だよね。まあ無理はしないように」
そう言って、天藍は蝶の頭を撫でようとする。しかし蝶に振り払われたため、諦めて枕を整えることにした。
「そういえば……いつも勤務中にやってる、給料が倍額になるルールだけど。少し条件を変えようと思う」
「条件を変える?」
聞き返す蝶に、天藍は頷き、
「うん。もし勤務中にお手洗いに行きたくなったとき、僕とキスしないと、貞操帯は外してあげない」
「……は……?!」
その言葉の意味を理解して、蝶は絶句し、そして呆れ返る。
「ほ……本当に、変態ですね……? そんな気持ち悪い発想どこから湧いてくるんですか?」
「やる? やらない?」
「……まあ、やってもいいですけど……。これまで通り、勤務時間中にお手洗いに行かなければ、旦那様と口付けなんてしなくて済むと言うことでしょう?」
蝶はそう強気で言うが、内心は揺らいでいた。
……本当に我慢できなくなってしまったとき、さっきみたいにキスされることになったら……間違いなく自分はその場で決壊してしまう。
天藍はそんな蝶の心境を見透かして、微笑んだ。
「その代わり、もし漏らして床を汚した場合は、その清掃代は減給するからね」
「も、漏らしません……!!」
「慣れるために今練習しとく?」
「口付けをしてきたら、今度こそ舌を噛み切ります」
「怖いなぁ。……でももしキスした場合は、その後も給料は倍額のままにするよ。そういうことだから。明日からまたよろしくね」
天藍はそう言って、枕元の灯りを消す。
暗闇の中で、付け加えられた言葉を反芻し、蝶はふと気づいた。
(……逆に言えば、最初からキスするだけで、いつもと同じように給料を増額してもらえるということ?)
……いやいや、なんで自分が毎朝この男にキスをするハメになるんだ。
そんなのまるで恋人みたいだし、そんなことを続けたら……本当に好きになってしまいかねない。
「ふふ、何か考え事?」
「……早く寝てください」
天藍はその思考すらも全てわかっているようだった。蝶は悶々としたまま、枕に顔を埋めた。
入ってきた質量が下腹部を圧迫して、蝶は吐息を漏らす。
けれど、その腰を支えられ、背後から天藍に言われた。
「ごめん、まだ全部入ってない」
「……え?」
「もう少しいける?」
そう疑問符を投げかけておきながら、天藍は返事が返ってくる前に、さらに奥まで自身を挿れた。
「あ"、そ、そんな奥、いけな…っ」
今まで何にも触れられたことがない最奥に、熱いモノが入ってくる。逃げようにも、上から腰を抑えられている状態で、身動きが取れない。
ついに、ぐぽ、と、入ってはいけないところに入る音がした。
「ッ~~~~!!」
その感覚に、蝶は頭が真っ白になる。
「……蝶、大丈夫?」
自分の下にある足腰がガクガクと震えて、天藍は一度動きを止める。
けれど、蝶にはもはや考えて取り繕う思考はなく、頭に浮かんだ言葉をそのまま口にした。
「き、きもちい、です…ッ」
「……ならいいや」
天藍は笑みを浮かべ、行為を続けた。
「ぁ、あ"っ、あぁっ…!!」
ぐぽ、ぐぽ、と中で微かに音がする。
天藍が一度動きを止めたとき、蝶は息を整えながら言葉を漏らした。
「はぁっ、ぁ、これ…あ、あたま、おかしくなりそ…ッ」
「良すぎて?」
そう聞くと、蝶は素直にこくこくと頷く。
「へえ、奥好きなんだ。君も相当だね」
天藍はそう笑って、蝶の首元にキスを落とした。
それを何度も繰り返し、蝶の声が掠れるくらいに責めた後。
「っ~~~、ぁ、も、イく…っ!!」
ついに、ぱたぱたと精液がシーツに垂れた。
蝶は快楽の余韻を感じながら、息を整える。天藍はその頭を愛おしそうに撫でた。
しかし、熱が冷めてくにつれ、蝶は別の欲求が膨らんできた。
「……だ、旦那様、早く抜いてください…っ」
「なんで?」
「っ……そ、その……」
長いこと前戯を受けていたせいで、気づかないうちに膀胱には液体が溜まっていた。
蝶は言葉を濁したが、もちろんこうなる事態は天藍の予想内であり、彼の望んだことである。
天藍は蝶の背後で笑みを濃くした。
「僕がイくまで付き合って」
そう言って、向き合うように蝶の体勢をくるりと変える。腰を抑えて、中から膀胱を押すように刺激した。
「ひぃ……ぅぁ、それ、だ、だめ、ですっ…!」
液体を溜め込んだ臓器が圧迫されて、ゾクゾクと変な感覚が襲う。危うく漏らしそうになって、蝶は空いた手でぎゅうっとその出口を抑えた。
その様子を見て、天藍は悪い笑みを見せる。
「ふふ……僕たちが布団をびしょびしょにしたら、ここの従業員たちはどう思うかな?」
「ッ~~~……」
天藍は悶える蝶の身体を起こし、自分の膝上に乗せた。
そのまま唇を掬おうとすると、蝶に顔を逸らされた。
天藍は不満げに首を傾げた。
「……どうして口付けだけはさせてくれないの?」
「その……舌を入れられるの、気持ち悪くて嫌なんです…」
「『気持ち悪い』?」
天藍は不思議そうに聞き返し、蝶の頬を指で撫でた。
「慣れれば気持ち良いよ。口開けてみて」
「っ……やです……」
蝶はそう言って、口を閉じて顔を背ける。
見兼ねた天藍は、そんな蝶の腰を支え直し、自分自身を一気に奥まで入れた。
「っ、ぁあ"ッ…!!」
その開いた蝶の口に、すかさずキスをする。
口内を犯し、その舌を吸うと、びくんと蝶の腰が反応した。
途端に腹部にぬるい液体が流れる感覚がして、天藍は一度口を話し、下を見る。
「……あれ、出ちゃった?」
「ッ…す、すみません…っ」
明らかに汗ではない液体が、天藍の下腹を濡らしている。
天藍の指摘に、蝶は自分が粗相をしてることに気づき、慌てて片手で前を押さえた。
しかし、一度決壊してしまったそれは中々止められない。指の隙間から、たらたらと溢れ出てきていた。
「っ~~、と、止まんな…っ、ごめんなさい……ッ」
しかしどんどん濡れていくシーツのことより、天藍は別のことが気に掛かっていた。
口付けをしただけで、身体の力が抜けてしまったのか……。それに、さっきまでの会話を思い出し、天藍は少し考えた後、蝶を見つめ直して言った。
「ひょっとして、君、口の中が人より弱い?」
「…………!!」
それはたった今天藍に言われるまで、蝶自身も気づかなかった自分の体質だった。
「よ、弱いかどうかは……誰かと比べたことはないので……」
「……へえ」
目に見えてしどろもどろになる蝶を前に、天藍の笑みは意地悪さを増す。そして不意に、蝶の口をもう一度、自分の口で塞いだ。
あっという間に、水音を立てて口内を犯していく。
舌で上顎をなぞられたとき、蝶はその感覚に耐えられず、無理やり口を離した。
「っは…ま、待ってください…っ」
唾液の糸がつうっと二人の口を繋ぐ。蝶は強い快感で涙目になりながら、天藍に言った。
「せめて、抜い…ぁあ"ッ!!」
しかしその願いは無言で拒絶される。中から膀胱を一層圧迫され、押さえている手の隙間から透明な液体がしゅうしゅうと溢れ出た。
「っ~~~、もう、最悪ッ……」
「……可愛い」
おもらしを止められない蝶に、天藍はそう満足げに呟く。
身を捩る蝶を押さえつけ、再びベッドへと倒す。そしてシーツが派手に濡れるまで、口付けと行為を繰り返した。
なんとか言い訳をして、新しいシーツに代えてもらった寝台。
寝巻きに着替えさせられた蝶は、大人しく天藍に抱えられ、その寝台に寝かせられた。
「すみません。……まあ、私が謝ることではないとは思ってますが」
今の蝶はうまく力が入らず、誰かに支えられないと歩くことができない。こうなってしまった理由は明確だ。先ほど誰かに長い間散々下半身を責められたせいである。
(……まあ……正直、すごく気持ちよかったけど……)
先ほどまでの行為を思い出すと、また鼓動が速くなる。慌てて頭を振って、感覚を忘れようとした。
元凶の天藍は微笑んだだけで、謝りはしない。蝶の隣に同じように寝転び、尋ねた。
「動けないなら、明日も泊まっていく?」
「いえ、仕事があるので……寝たら治ると思います」
「相変わらず丈夫だよね。まあ無理はしないように」
そう言って、天藍は蝶の頭を撫でようとする。しかし蝶に振り払われたため、諦めて枕を整えることにした。
「そういえば……いつも勤務中にやってる、給料が倍額になるルールだけど。少し条件を変えようと思う」
「条件を変える?」
聞き返す蝶に、天藍は頷き、
「うん。もし勤務中にお手洗いに行きたくなったとき、僕とキスしないと、貞操帯は外してあげない」
「……は……?!」
その言葉の意味を理解して、蝶は絶句し、そして呆れ返る。
「ほ……本当に、変態ですね……? そんな気持ち悪い発想どこから湧いてくるんですか?」
「やる? やらない?」
「……まあ、やってもいいですけど……。これまで通り、勤務時間中にお手洗いに行かなければ、旦那様と口付けなんてしなくて済むと言うことでしょう?」
蝶はそう強気で言うが、内心は揺らいでいた。
……本当に我慢できなくなってしまったとき、さっきみたいにキスされることになったら……間違いなく自分はその場で決壊してしまう。
天藍はそんな蝶の心境を見透かして、微笑んだ。
「その代わり、もし漏らして床を汚した場合は、その清掃代は減給するからね」
「も、漏らしません……!!」
「慣れるために今練習しとく?」
「口付けをしてきたら、今度こそ舌を噛み切ります」
「怖いなぁ。……でももしキスした場合は、その後も給料は倍額のままにするよ。そういうことだから。明日からまたよろしくね」
天藍はそう言って、枕元の灯りを消す。
暗闇の中で、付け加えられた言葉を反芻し、蝶はふと気づいた。
(……逆に言えば、最初からキスするだけで、いつもと同じように給料を増額してもらえるということ?)
……いやいや、なんで自分が毎朝この男にキスをするハメになるんだ。
そんなのまるで恋人みたいだし、そんなことを続けたら……本当に好きになってしまいかねない。
「ふふ、何か考え事?」
「……早く寝てください」
天藍はその思考すらも全てわかっているようだった。蝶は悶々としたまま、枕に顔を埋めた。
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