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悲しみを胸に
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着いて早々泣き腫らした顔で駆け寄ってきた子どもたちを受け止める。
「兄ちゃん!」
「エニシお兄ちゃん!」
「おばあちゃんが!」
1人ずつ涙を拭いてやり落ち着くまで背を撫でてやると部屋へ向かう。
「………遅くなってすいませんでした」
まるで眠っているかのように横になる姿は、今にも目を覚ましていつもの笑顔を見せてくれそうだ。
離れ難かったのだろう、お婆さんが眠るベッドの横にはシャイアが泣き疲れ眠る姿があり、心配そうにイリスが支えていた。
「あとで少し頼みたいことがあります。お願い出来ますか?」
「うん」
疲れたような表情に元気付けるように微笑んでやると、シャイアを寝かせてやるよう頼む。
イリスが頷き部屋を出ていくのを見送ると、それまで静かに隣りで待ってくれていたアズの手を引いた。
「覚えてますかね?前に貴方に助けてもらった子です。大きくなったでしょう?」
返事がないのは分かっていたが、楽しそうに話しかける縁にアズもありがとうと一緒に話してくれる。
「トマトおいしかったです。花も喜んでくれてうれしかった」
「今は下の子たちにも教えてあげられるほど上手くなったんですよ。色んな魔法もたくさん覚えて、お手伝いもいっぱいしてくれるんです」
自慢の子ですと笑う縁に、嬉しいとアズも笑ってくれる。
「………みんな、泣いてました。貴方がいなくて寂しいと」
あの微笑みがもう見られないのはとても寂しい。
「貴方が子どもたちに愛情を教えてくれた」
惜しむことなく注いでくれた愛はきちんと子どもたちに伝わっている。
「貴方が生きる楽しさを教えてくれた」
子を育てるなどそう簡単なことでない。
それまで育ってきた環境が違う子どもたちを前に、しかし彼女は投げ出すことなく子どもたちと向き合ってくれた。
「難しいことばかり頼む私に貴方はいつだって温かく迎え入れてくれましたね」
断わることも、もう無理だと言うことだって出来た。
けれど彼女は一度だってそんなことを口に出すことはなかった。
ただ幸せだと、こんな幸せをくれてありがとうと縁に微笑みかけてくれた。
「………………」
「………パパ呼んでくる」
黙り込む縁に、何か感じたのかジークを呼びに行くというアズの手を離す。
「………………」
覚悟していたとはいえやはり悲しみに胸が痛い。
十分長生きしたと言えるだろう。
本人にも宣言されており、そのための準備を進めてもいた。
だが心がついていってくれない。
ただ眠る彼女の顔をじっと見つめていると、ノックをしジークが入って来た。
「アズは?」
「墓に飾る石を削ってくれるらしい。名前も彫りたいってな」
「そうですか」
以前縁の両親の墓を見たこともありアズなりに頑張ってくれているらしい。
「「………………」」
何も言わない縁にジークが抱き寄せてこようとしたが、それを手で押し留めると手を繋いで欲しいとお願いする。
今はまだ泣くことは出来ない。
「ーーー庭へ。最期のお別れをしましょう」
ジークが今ここにいるということは火葬の準備は出来ているということだ。
2度ゆっくりと深呼吸をすると、彼女を運んでくれるようジークにお願いし庭へ向かう。
途中子どもたちも呼び寄せるとお別れすることを伝える。
泣いて嫌がるが、こればかりは先送りにすることも止めることも出来はしない。
「みんなのために頑張ってくれたお婆さんにありがとうって伝えてあげましょう?」
その悲しみも彼女が子どもたちを精一杯愛してくれたからだ。
「笑っていたでしょ?みんなのおかけで苦しむことなく眠りにつくことが出来たんです。だからこのまま寝かせて上げましょう」
苦しんだ様子は見られなかった。
眠るように逝くことが出来たことは本当に良かったと思う。
「きっと今は夢の中でお爺さんに会っているかもしれません。みんなと一緒に遊んだことや、一緒に何を食べたか、みんながどれだけいい子だったか話してるはずです。大好きなお爺さんと大好きなみんなのことを話しているはずだから、これからの時間はお爺さんに譲って上げて?」
子どもたちがどこまで人の死を理解出来ているか分からない。
もう会えないという悲しみでいっぱいかもしれないが、それだけではないことを伝えたい。
以前彼女も言っていた、幸せだと。
子どもたちにとってお婆さんが大切な存在だったように、お婆さんにとっても子どもたちの存在は幸せを感じさせてくれる存在だったはずだ。
だからこそ悲しみと一緒でいいから幸せだったことも思い出してほしい。
「もう会えなくなるけど、みんなの中にいるお婆さんはずっと一緒にいてくれますから。だからみんなも伝えていって。お婆さんがどれだけ優しかったか、一緒にいてどれだけ楽しかったか、お婆さんのことがどれだけ大好きだったか、これから出会う人たちにみんなが伝えていって上げて下さい」
お婆さんが子どもたちに伝えてきた想いを、今度は彼らが未来へ繋いでいく番なのだ。
「さぁ、みんなでお婆さんにさようならをしましょう」
「兄ちゃん!」
「エニシお兄ちゃん!」
「おばあちゃんが!」
1人ずつ涙を拭いてやり落ち着くまで背を撫でてやると部屋へ向かう。
「………遅くなってすいませんでした」
まるで眠っているかのように横になる姿は、今にも目を覚ましていつもの笑顔を見せてくれそうだ。
離れ難かったのだろう、お婆さんが眠るベッドの横にはシャイアが泣き疲れ眠る姿があり、心配そうにイリスが支えていた。
「あとで少し頼みたいことがあります。お願い出来ますか?」
「うん」
疲れたような表情に元気付けるように微笑んでやると、シャイアを寝かせてやるよう頼む。
イリスが頷き部屋を出ていくのを見送ると、それまで静かに隣りで待ってくれていたアズの手を引いた。
「覚えてますかね?前に貴方に助けてもらった子です。大きくなったでしょう?」
返事がないのは分かっていたが、楽しそうに話しかける縁にアズもありがとうと一緒に話してくれる。
「トマトおいしかったです。花も喜んでくれてうれしかった」
「今は下の子たちにも教えてあげられるほど上手くなったんですよ。色んな魔法もたくさん覚えて、お手伝いもいっぱいしてくれるんです」
自慢の子ですと笑う縁に、嬉しいとアズも笑ってくれる。
「………みんな、泣いてました。貴方がいなくて寂しいと」
あの微笑みがもう見られないのはとても寂しい。
「貴方が子どもたちに愛情を教えてくれた」
惜しむことなく注いでくれた愛はきちんと子どもたちに伝わっている。
「貴方が生きる楽しさを教えてくれた」
子を育てるなどそう簡単なことでない。
それまで育ってきた環境が違う子どもたちを前に、しかし彼女は投げ出すことなく子どもたちと向き合ってくれた。
「難しいことばかり頼む私に貴方はいつだって温かく迎え入れてくれましたね」
断わることも、もう無理だと言うことだって出来た。
けれど彼女は一度だってそんなことを口に出すことはなかった。
ただ幸せだと、こんな幸せをくれてありがとうと縁に微笑みかけてくれた。
「………………」
「………パパ呼んでくる」
黙り込む縁に、何か感じたのかジークを呼びに行くというアズの手を離す。
「………………」
覚悟していたとはいえやはり悲しみに胸が痛い。
十分長生きしたと言えるだろう。
本人にも宣言されており、そのための準備を進めてもいた。
だが心がついていってくれない。
ただ眠る彼女の顔をじっと見つめていると、ノックをしジークが入って来た。
「アズは?」
「墓に飾る石を削ってくれるらしい。名前も彫りたいってな」
「そうですか」
以前縁の両親の墓を見たこともありアズなりに頑張ってくれているらしい。
「「………………」」
何も言わない縁にジークが抱き寄せてこようとしたが、それを手で押し留めると手を繋いで欲しいとお願いする。
今はまだ泣くことは出来ない。
「ーーー庭へ。最期のお別れをしましょう」
ジークが今ここにいるということは火葬の準備は出来ているということだ。
2度ゆっくりと深呼吸をすると、彼女を運んでくれるようジークにお願いし庭へ向かう。
途中子どもたちも呼び寄せるとお別れすることを伝える。
泣いて嫌がるが、こればかりは先送りにすることも止めることも出来はしない。
「みんなのために頑張ってくれたお婆さんにありがとうって伝えてあげましょう?」
その悲しみも彼女が子どもたちを精一杯愛してくれたからだ。
「笑っていたでしょ?みんなのおかけで苦しむことなく眠りにつくことが出来たんです。だからこのまま寝かせて上げましょう」
苦しんだ様子は見られなかった。
眠るように逝くことが出来たことは本当に良かったと思う。
「きっと今は夢の中でお爺さんに会っているかもしれません。みんなと一緒に遊んだことや、一緒に何を食べたか、みんながどれだけいい子だったか話してるはずです。大好きなお爺さんと大好きなみんなのことを話しているはずだから、これからの時間はお爺さんに譲って上げて?」
子どもたちがどこまで人の死を理解出来ているか分からない。
もう会えないという悲しみでいっぱいかもしれないが、それだけではないことを伝えたい。
以前彼女も言っていた、幸せだと。
子どもたちにとってお婆さんが大切な存在だったように、お婆さんにとっても子どもたちの存在は幸せを感じさせてくれる存在だったはずだ。
だからこそ悲しみと一緒でいいから幸せだったことも思い出してほしい。
「もう会えなくなるけど、みんなの中にいるお婆さんはずっと一緒にいてくれますから。だからみんなも伝えていって。お婆さんがどれだけ優しかったか、一緒にいてどれだけ楽しかったか、お婆さんのことがどれだけ大好きだったか、これから出会う人たちにみんなが伝えていって上げて下さい」
お婆さんが子どもたちに伝えてきた想いを、今度は彼らが未来へ繋いでいく番なのだ。
「さぁ、みんなでお婆さんにさようならをしましょう」
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