二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
上 下
465 / 475

ちがう親子

しおりを挟む
 「あれ?人形用の服はなかったんですか?」

 「ううん。つくるって」

 「作る?……服を?」

 え?誰が?
 膝に乗り嬉しそうにそう報告してくれるヨナには申し訳ないが、自分はそんなに器用な人間ではなく、作るための知識も持ち合わせてはいない。

 「ヨナちゃんにお人形とお揃いが欲しいって言われたの。大丈夫、私これでも裁縫は得意だから出来たら2人にも見せるわね」

 どうしようかと悩んでいた縁に、任せなさいとばかりにアリーが笑っていた。
 それは有り難い。
 
 「楽しみですね」

 「うん」

 「あの、エニシさん……その子は?」

 他には何を買ったのかと話していれば、恐る恐るといった様子でクアラが尋ねてきた。
 その後ろでは殴られたところが痛いのか、頭を抱えて蹲るイアラの姿が。

 「もしやエニシさんのーー」

 「違います。わけあって一時的に預かっている子です」

 「あ、そうなんですか……」

 何を期待したか分からないが、我が子たちはきっと家で元気に遊んでいると思う。
 翔と玲が少々心配ではあるが。
 泣いていなければいいなと考えつつ、ヨナを下ろすと兄弟2人の前に立たせる。

 「ヨナちゃんと言います。仲良くしてもらえると嬉しいです」

 そういえば言ってなかったと簡単に説明しつつ、気軽に話しかけて上げて欲しいとお願いしすれば笑って頷いてくれた。
 やはり客商売なのもあり、2人とも愛想がいい。
 こんにちはにこやかに挨拶する姿に、なんでいつもそうしていられないんだとアリーが呆れていた。

 「母さんに似たんです。自覚ないんですか?」

 「そうそう。父さんだって母さんに怯ーー痛ったっ!」

 再びくらった拳骨に兄弟は蹲るのだった。
 そんなククル一家を見つつ、自分は子どもたちにも番たちにも怒って殴ったことなどなかったなと考える。
 まぁ縁が全力でアレンたちに殴りかかったとしても避けられるがオチだが。
 逆に自分がその反動で転ける気がする。

 「ククルさんも怒る時はあんな感じなんですか?」

 普段のククルからは想像出来なかったが、アリーと兄弟を見ているとこれが日常なのだと思える。
 ならばククルもかと思ったが、いい笑顔で首を振られた。

 「私は拳よりも言葉で勝つのが好きです」

 叱る方法を聞いていたのだが、何故か好き嫌いの話しになってしまっている。

 「……でもさっきはお2人に負けてましたよね?」

 食べさせてもらえないと落ち込んでいたじゃないかと言えば……

 「あれはエニシくんに言われたからです。あの2人だけでしたら奪いとってました」

 それはそれで問題では?というかそれは言葉での勝利と言えるのだろうか?
 しかしそれがこの家族なのだろう。
 こんなやりとりをしながらも不仲という様子は見られないので。

 「………私ももっと強く叱った方がいいんですかね?」

 彼らの親子ゲンカを側で見て、自分の叱り方に自信がなくなってきた。

 「うーん、多分ですがエニシくんならそのままでいいと思いますよ。あれはうちの子たちが変に捻くれているからなので」

 エニシくんの子どもたちは凄く素直そうですねと言われ、言われてみればそうかもしれないと考える。
 繋たちはまだ小さいというのもあるが、アズやエルにしてもそこまで頑固ということもなく、悪いことをしたらちゃんと謝れる子たちだ。
 
 「下手に知識が付き始めたら大変ですけどね。どこで覚えたんだって言葉を使ってきますよ」

 イヤだなぁ。
 アズが縁をおふくろとか言い出したらどうしよう。
 繋がママうぜぇとか言い出したら……泣くかも。
 エルは……意外に大丈夫かな。元からあまり口は良くなかったので。
 縁たちと暮らし始めてから落ち着いてはきたが。

 「クアラがアリーに向かってうっせぇババアと言った時は思い切り殴って外に放り出したこともありました」

 「…………」

 会ったばかりだが、これまでのクアラとババアと言うクアラが結び付かず唸る。
 いや、そもそも言葉の勝利はどこ行った?
 
 「でもちゃんと謝ってきたんですよね?」

 「いえ、生意気にも今度は私にうっせぇブタと言ってきたのでアリーが思い切り殴って数日再び外に放置しました」

 かなり過激な家族だった。
 今の親子ゲンカなどお遊び程度なのかもしれない。
 
 「まぁアイツも意地になっていたみたいなのでイアラに迎えに行かせて、やっと帰ってきた時にはちゃんと謝ってきましたよ。それからは今のこの感じに落ち着きましたね」

 想像していたより派手な親子ゲンカをしていたことに驚いたが、その結果今の関係に落ち着いたなら良かったということだろう。
 ……………いや、いいのか?

 「ククルさんはその……お2人のこと大切に想っているんですよね?」

 「なんて言うんですかね、あんなことがあってもやっぱりあの子たちは私にとって可愛い我が子に変わりないんですよ。アリーと私との大切な子たちです」

 親って難しいですねと溢すククルに縁もそっと頷くのであった。
 



 


 

 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

消えたいと願ったら、猫になってました。

15
BL
親友に恋をした。 告げるつもりはなかったのにひょんなことからバレて、玉砕。 消えたい…そう呟いた時どこからか「おっけ〜」と呑気な声が聞こえてきて、え?と思った時には猫になっていた。 …え? 消えたいとは言ったけど猫になりたいなんて言ってません! 「大丈夫、戻る方法はあるから」 「それって?」 「それはーーー」 猫ライフ、満喫します。 こちら息抜きで書いているため、亀更新になります。 するっと終わる(かもしれない)予定です。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

【本編完結】十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、攻略キャラのひとりに溺愛されました! ~連載版!~

海里
BL
部活帰りに気が付いたら異世界転移していたヒビキは、とあるふたりの人物を見てここが姉のハマっていた十八禁BLゲームの中だと気付く。 姉の推しであるルードに迷子として保護されたヒビキは、気付いたら彼に押し倒されて――? 溺愛攻め×快楽に弱く流されやすい受けの話になります。 ルード×ヒビキの固定CP。ヒビキの一人称で物語が進んでいきます。 同タイトルの短編を連載版へ再構築。話の流れは相当ゆっくり。 連載にあたって多少短編版とキャラの性格が違っています。が、基本的に同じです。 ※ムーンライトノベルズ様にも投稿しています。先行はそちらです。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

幼い精霊を預けられたので、俺と主様が育ての父母になった件

雪玉 円記
BL
ハイマー辺境領主のグルシエス家に仕える、ディラン・サヘンドラ。 主である辺境伯グルシエス家三男、クリストファーと共に王立学園を卒業し、ハイマー領へと戻る。 その数日後、魔獣討伐のために騎士団と共に出撃したところ、幼い見た目の言葉を話せない子供を拾う。 リアンと名付けたその子供は、クリストファーの思惑でディランと彼を父母と認識してしまった。 個性豊かなグルシエス家、仕える面々、不思議な生き物たちに囲まれ、リアンはのびのびと暮らす。 ある日、世界的宗教であるマナ・ユリエ教の教団騎士であるエイギルがリアンを訪ねてきた。 リアンは次代の世界樹の精霊である。そのため、次のシンボルとして教団に居を移してほしい、と告げるエイギル。 だがリアンはそれを拒否する。リアンが嫌なら、と二人も支持する。 その判断が教皇アーシスの怒髪天をついてしまった。 数週間後、教団騎士団がハイマー辺境領邸を襲撃した。 ディランはリアンとクリストファーを守るため、リアンを迎えにきたエイギルと対峙する。 だが実力の差は大きく、ディランは斬り伏せられ、死の淵を彷徨う。 次に目が覚めた時、ディランはユグドラシルの元にいた。 ユグドラシルが用意したアフタヌーンティーを前に、意識が途絶えたあとのこと、自分とクリストファーの状態、リアンの決断、そして、何故自分とクリストファーがリアンの養親に選ばれたのかを聞かされる。 ユグドラシルに送り出され、意識が戻ったのは襲撃から数日後だった。 後日、リアンが拾ってきた不思議な生き物たちが実は四大元素の精霊たちであると知らされる。 彼らとグルシエス家中の協力を得て、ディランとクリストファーは鍛錬に励む。 一ヶ月後、ディランとクリスは四大精霊を伴い、教団本部がある隣国にいた。 ユグドラシルとリアンの意思を叶えるために。 そして、自分達を圧倒的戦闘力でねじ伏せたエイギルへのリベンジを果たすために──……。 ※一部に流血を含む戦闘シーン、R-15程度のイチャイチャが含まれます。 ※現在、改稿したものを順次投稿中です。  詳しくは最新の近況ボードをご覧ください。

処理中です...