二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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誰の子だ

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 「どうぞ」

 「……え、あ、あの」

 ハイと少女に手渡された青年は戸惑いにキョロキョロと視線を彷徨わせている。
 どうするかなと面白半分で後ろで見守っていたが、そんな縁に気付いたのか助けを求めるような目でこちらを見てくる。
 とりあえず軽く手を振ってみたが、泣きそうな顔でブンブンと首を振られた。
 このままでは話しが進まないなと諦めるとコソコソとヨナに近付いていき、耳元で囁く。

 「(お仕事お疲れ様です)」

 「おしごと、おつかれです」

 「(美味しく出来たから、みんなで食べて下さい)」

 「おいしいから、たべてください」

 少々言葉が変わってしまったが、伝われば何も問題はないと頑張ったヨナの頭を撫でてやった。

 「えっと、あの、ありがとう、ございます」

 青年もヨナ……というより縁の様子から何かを悟ったのか漸く受け取ってくれた。

 「仲間の皆さんでどうぞ。余ってたのを全部詰め込んでしまったので量が多くなっちゃったんですけど、良かったら今度感想聞かせて下さいね」

 「あ、ありがとうございます」

 勿論余っていたのという嘘だ。
 初めてのカツサンドに皆は取り合うほどの勢いではあったが、ケンカにならぬように平等に配り、縁たちの分と彼らの分は避けておいたのだ。
 普段の彼らがどれだけの食事量を与えられているかは知らないが、アレンたちを見ていれば人間のそれより獣人である彼らが量を必要としていることぐらい分かっている。
 ならば少しぐらいおまけをしてもバチは当たらないだろう。

 「よし、ヨナちゃんお疲れ様でした」

 お手伝いありがとうと言えば、頷き抱きついてきたのを抱え上げる。
 ヨナに頼んだのは特に理由はなかったが、あえて言うなら面白いかなという縁の遊び心とヨナがやれることの範囲を知るためだった。
 あんな出来事があった後、そう簡単に日常に戻れるわけがない。
 今のところ縁には甘えてくれているが、他の人間に対しても大丈夫なのかを計りかねているのだ。

 「お昼ご飯終わりましたから……そうですね、休憩がてらククルさんたちのお店にお邪魔してもいいですか?」

 「勿論です!」

 ギルドですることも特にないためククルにそう申し出れば、凄い勢いと共に両腕を掴まれ連行されるのであった。

 「ふふふ、今日はとっても楽しい日だわ~」

 なんだろう、この夫婦。
 上機嫌と言わんばりのアリーに、ああこの夫婦は似たもの同士なんだなと思った。
 類は友を呼ぶ、らしい。

 「ヨナちゃんのパパとママも2人みたいに仲良しでした?」

 「…うん」

 「そうですか。パパはママに怒られてた?」

 「え、ちょ、ちょっと待って下さいエニシくん」

 ふと交わされていた縁たちの会話にククルが焦り出した。

 「ううん。パパとママいつもにこにこしてた」

 仲良し夫婦だったのだろう。
 ケンカするほど仲が良いとも言うが、ケンカしなくとも仲が良い夫婦も勿論いる。

 「それはいいですね。パパはダメねってママは言ってませんでしたか?」

 「ううん。ママ、パパだいすきだって。かっこいいねって」

 「……………」

 無言で顔を逸らしたアリーに苦笑いする。
 時には誉めることも大事だ。愛する人なら尚更。

 「息子さんたちは今日いらっしゃるんですか?」

 「んー、出かける時にはいたからいるとは思うけど、誰に似たのか落ち着きがない子たちでね。いたかと思えばすぐにどこかに出かけたりして。とも思えば1週間ぐらい連絡がないこともざらね。心配するだけ無駄な気がして私は諦めたわ」

 どう考えても2人に似たとしか思えない。

 「私たちが動き回るせいか子離れも早かったですよ。小遣いをどれだけ増やせるか兄弟で競い合ってるのを見た時は呆れたもんです」

 どんな兄弟だ。

 「私はあの子たちが冒険者になりたいって言った時の方が驚いたわ」

 ………商人、だったはずでは?

 「あれは……そうだ、何か作りたい物があったかなんかでその材料集めのためだって言ってなかったか?」

 冒険者にならなければ集められない材料で何を作るつもりなのか。

 「え?私には自分たちで取りに行けばタダだからって言ってたわよ、あの子たち。ぼろ儲けしてやるって」

 ある意味それも商人魂と言っていいのだろうか。
 結果成功したのか少し気になる。
 話しを聞けば聞くほど風変わりな兄弟としか思えなくなってきたが、面白いとも思った。

 「………そうですね。とりあえず息子さんたちがお2人に似ているんだなということは分かりました」

 「「え?」」

 自覚がないのは気の毒だが、やはり子は親の背中を見て育つんだなと改めて感じるのであった。
 うちの子たちは大丈夫だろうかと考え、パパたちがしっかりしてるからいいかと開き直るところが縁であった。

 

 



 

 
 
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