二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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悪夢は終了

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 突如腕の中で叫び暴れ出した少女に驚き慌てる。

 「ヨナちゃん!?」

 バタバタと手足を振り回し抱えてことが出来ず膝をつく。

 「ヨナちゃん?ヨナちゃん!」

 何度も名を呼び話しかけるが、イヤイヤと首を振るばかりで治まる気配がない。
 それまで声を上げて笑うほどではないが泣くことも暴れることもなかったのに彼女に何があったのかと慌てる心で考える。
 いきなり人が来たから?
 ならばギルドに行った時点でこうなっていたばすだ。
 突然来たコリンの大きな声が原因かとも思ったが、それならばククルたちに怯えても不思議ではなかったはずだ。
 何が、何が原因かと必死に考える。

 「ヨナちゃーー」

 「あーーーっ、マっ、ママーーーっ」

 とりあえず落ち着かせなければと名を呼ぼうとした瞬間、初めて聞いた彼女の声に何かが頭の中でカチリと嵌った気がした。

 「ヨナちゃんっ、ヨナちゃん!違います!あれはママたちの声じゃない」

 彼女は悲鳴に反応していたのだ。
 意味は違うかもしれないが、コリンがあげた悲鳴に反応したのではないかと思った。

 「ヨナちゃん、ちがう。あれはママたちじゃない」

 未だ泣いて暴れる少女を抱きしめ押さえ込むと、耳元で違うと伝え続ける。

 「ヨナちゃん、ヨナちゃん、ちがう。ちがいます。ママたちはもう泣いてないから」

 声を出せたことに喜ぶより、今は彼女の心が何より心配だった。

 「ママたちに言ったでしょ?おやすみなさいしたでしょ?ママたちにありがとうしたでしょ?」

 違う、あれはママたちの助けを求める悲鳴ではないからと必死に伝え続ければ、泣き止むことはなかったが徐々に身体からは力が抜けていった。

 「びっくりしましたね。またママたちが泣いてるかと思ったんですよね?」

 家族の死も辛かっただろうが、何より泣き叫ぶ母たちの悲鳴が少女にはトラウマになっていたのだろう。

 「大丈夫、ママたちはぐっすり眠っているから。痛いのは全部終わって夢の中でヨナちゃんの頑張っている姿を見ててくれてます」

 泣き腫らし苦しそうに息をする背を優しく撫でてやる。

 「マ、ママっ、~~っ、っ」

 「怖かったですね。びっくりしましたね。でもママたちはきっとヨナちゃんのこと見てくれているはずだから」

 いくら別れをしたとしてもそう簡単に受け入れられるはずがない。
 縁もそうだったように、理解していても受け入れられないことが時にはあるのだ。

 「だから、ママたちが出来なかったことをいっぱいしましょう。いっぱい遊んで、いっぱい美味しいものを食べて、ね?幸せだよって、ママたちが頑張ってくれたからだよって伝えてあげましょう?」

 あの頑張りは無駄ではなかったと、守ってくれてありがとうと、その身の幸せをもって伝えて上げてほしい。
 比べるものでもないが事故で両親を失った縁より、悲鳴を耳にしながら家族を失った少女の心の傷は計り知れない。

 「ママたちの笑った顔を思い出して。ヨナちゃんが笑ったらママたちも笑ってくれたでしょう?」

 悲しみだけで家族との思い出を塗り潰さないでほしい。
 短くとも愛し、愛された、楽しく幸せに過ごした日々を忘れてほしくない。

 「パパとは何をして遊びました?お姉ちゃんとはケンカはした?」

 涙で声を出せないと分かっていたため答えは期待せず、だが彼女にとっての家族との思い出を少しでも思い出してほしいと声をかけ続ける。

 「……………マ、マ……」

 それからどれだけ経ったのか、泣き暴れたため疲れて眠ってしまった少女を抱え上げる。
 起こさないようにと時折りポンポンと背を叩いてやる。

 「驚かせてすいませんでした。ちょっと寝かせてきますね」

 少女の突然のことに周りにいた人々は戸惑い動けずにいた。
 
 「あとは私たちがしておくから気にしないでアンタも休んできな」

 「あ、あの、エニシくん私……」

 気にしないでいいと休むよう声をかけてくれるマーガレットに、隣りではどうしようと戸惑いに泣きそうになっているコリンに苦笑いする。

 「大丈夫ですよ。色々あってちょっと驚いただけです。休ませてくるのでコリンさんはお婆ちゃんを手伝ってくれてもらえますか?」

 この状態ではもう縁に手伝うことは難しいだろうとマーガレットの手伝いをコリンにお願いすれば慌てて頷いていた。

 「熱いので火傷とかには気を付けて下さいね。あと、そんなに量もないので皆さんできちんと分け合って食べて下さい」

 「そうだよ。美味いからっていつもの調子で食べんじゃないよ」

 「ひ、ひどい。子どもじゃないんだから私だってそれぐらい分かってますよ」

 縁とマーガレットからの言葉に落ち込んでいたが、先程よりは元気が出たようだと笑うと後は彼女たちに任せ少女を寝かせるため部屋を後にするのだった。
 

 

 
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