458 / 475
悪夢は終了
しおりを挟む
突如腕の中で叫び暴れ出した少女に驚き慌てる。
「ヨナちゃん!?」
バタバタと手足を振り回し抱えてことが出来ず膝をつく。
「ヨナちゃん?ヨナちゃん!」
何度も名を呼び話しかけるが、イヤイヤと首を振るばかりで治まる気配がない。
それまで声を上げて笑うほどではないが泣くことも暴れることもなかったのに彼女に何があったのかと慌てる心で考える。
いきなり人が来たから?
ならばギルドに行った時点でこうなっていたばすだ。
突然来たコリンの大きな声が原因かとも思ったが、それならばククルたちに怯えても不思議ではなかったはずだ。
何が、何が原因かと必死に考える。
「ヨナちゃーー」
「あーーーっ、マっ、ママーーーっ」
とりあえず落ち着かせなければと名を呼ぼうとした瞬間、初めて聞いた彼女の声に何かが頭の中でカチリと嵌った気がした。
「ヨナちゃんっ、ヨナちゃん!違います!あれはママたちの声じゃない」
彼女は悲鳴に反応していたのだ。
意味は違うかもしれないが、コリンがあげた悲鳴に反応したのではないかと思った。
「ヨナちゃん、ちがう。あれはママたちじゃない」
未だ泣いて暴れる少女を抱きしめ押さえ込むと、耳元で違うと伝え続ける。
「ヨナちゃん、ヨナちゃん、ちがう。ちがいます。ママたちはもう泣いてないから」
声を出せたことに喜ぶより、今は彼女の心が何より心配だった。
「ママたちに言ったでしょ?おやすみなさいしたでしょ?ママたちにありがとうしたでしょ?」
違う、あれはママたちの助けを求める悲鳴ではないからと必死に伝え続ければ、泣き止むことはなかったが徐々に身体からは力が抜けていった。
「びっくりしましたね。またママたちが泣いてるかと思ったんですよね?」
家族の死も辛かっただろうが、何より泣き叫ぶ母たちの悲鳴が少女にはトラウマになっていたのだろう。
「大丈夫、ママたちはぐっすり眠っているから。痛いのは全部終わって夢の中でヨナちゃんの頑張っている姿を見ててくれてます」
泣き腫らし苦しそうに息をする背を優しく撫でてやる。
「マ、ママっ、~~っ、っ」
「怖かったですね。びっくりしましたね。でもママたちはきっとヨナちゃんのこと見てくれているはずだから」
いくら別れをしたとしてもそう簡単に受け入れられるはずがない。
縁もそうだったように、理解していても受け入れられないことが時にはあるのだ。
「だから、ママたちが出来なかったことをいっぱいしましょう。いっぱい遊んで、いっぱい美味しいものを食べて、ね?幸せだよって、ママたちが頑張ってくれたからだよって伝えてあげましょう?」
あの頑張りは無駄ではなかったと、守ってくれてありがとうと、その身の幸せをもって伝えて上げてほしい。
比べるものでもないが事故で両親を失った縁より、悲鳴を耳にしながら家族を失った少女の心の傷は計り知れない。
「ママたちの笑った顔を思い出して。ヨナちゃんが笑ったらママたちも笑ってくれたでしょう?」
悲しみだけで家族との思い出を塗り潰さないでほしい。
短くとも愛し、愛された、楽しく幸せに過ごした日々を忘れてほしくない。
「パパとは何をして遊びました?お姉ちゃんとはケンカはした?」
涙で声を出せないと分かっていたため答えは期待せず、だが彼女にとっての家族との思い出を少しでも思い出してほしいと声をかけ続ける。
「……………マ、マ……」
それからどれだけ経ったのか、泣き暴れたため疲れて眠ってしまった少女を抱え上げる。
起こさないようにと時折りポンポンと背を叩いてやる。
「驚かせてすいませんでした。ちょっと寝かせてきますね」
少女の突然のことに周りにいた人々は戸惑い動けずにいた。
「あとは私たちがしておくから気にしないでアンタも休んできな」
「あ、あの、エニシくん私……」
気にしないでいいと休むよう声をかけてくれるマーガレットに、隣りではどうしようと戸惑いに泣きそうになっているコリンに苦笑いする。
「大丈夫ですよ。色々あってちょっと驚いただけです。休ませてくるのでコリンさんはお婆ちゃんを手伝ってくれてもらえますか?」
この状態ではもう縁に手伝うことは難しいだろうとマーガレットの手伝いをコリンにお願いすれば慌てて頷いていた。
「熱いので火傷とかには気を付けて下さいね。あと、そんなに量もないので皆さんできちんと分け合って食べて下さい」
「そうだよ。美味いからっていつもの調子で食べんじゃないよ」
「ひ、ひどい。子どもじゃないんだから私だってそれぐらい分かってますよ」
縁とマーガレットからの言葉に落ち込んでいたが、先程よりは元気が出たようだと笑うと後は彼女たちに任せ少女を寝かせるため部屋を後にするのだった。
「ヨナちゃん!?」
バタバタと手足を振り回し抱えてことが出来ず膝をつく。
「ヨナちゃん?ヨナちゃん!」
何度も名を呼び話しかけるが、イヤイヤと首を振るばかりで治まる気配がない。
それまで声を上げて笑うほどではないが泣くことも暴れることもなかったのに彼女に何があったのかと慌てる心で考える。
いきなり人が来たから?
ならばギルドに行った時点でこうなっていたばすだ。
突然来たコリンの大きな声が原因かとも思ったが、それならばククルたちに怯えても不思議ではなかったはずだ。
何が、何が原因かと必死に考える。
「ヨナちゃーー」
「あーーーっ、マっ、ママーーーっ」
とりあえず落ち着かせなければと名を呼ぼうとした瞬間、初めて聞いた彼女の声に何かが頭の中でカチリと嵌った気がした。
「ヨナちゃんっ、ヨナちゃん!違います!あれはママたちの声じゃない」
彼女は悲鳴に反応していたのだ。
意味は違うかもしれないが、コリンがあげた悲鳴に反応したのではないかと思った。
「ヨナちゃん、ちがう。あれはママたちじゃない」
未だ泣いて暴れる少女を抱きしめ押さえ込むと、耳元で違うと伝え続ける。
「ヨナちゃん、ヨナちゃん、ちがう。ちがいます。ママたちはもう泣いてないから」
声を出せたことに喜ぶより、今は彼女の心が何より心配だった。
「ママたちに言ったでしょ?おやすみなさいしたでしょ?ママたちにありがとうしたでしょ?」
違う、あれはママたちの助けを求める悲鳴ではないからと必死に伝え続ければ、泣き止むことはなかったが徐々に身体からは力が抜けていった。
「びっくりしましたね。またママたちが泣いてるかと思ったんですよね?」
家族の死も辛かっただろうが、何より泣き叫ぶ母たちの悲鳴が少女にはトラウマになっていたのだろう。
「大丈夫、ママたちはぐっすり眠っているから。痛いのは全部終わって夢の中でヨナちゃんの頑張っている姿を見ててくれてます」
泣き腫らし苦しそうに息をする背を優しく撫でてやる。
「マ、ママっ、~~っ、っ」
「怖かったですね。びっくりしましたね。でもママたちはきっとヨナちゃんのこと見てくれているはずだから」
いくら別れをしたとしてもそう簡単に受け入れられるはずがない。
縁もそうだったように、理解していても受け入れられないことが時にはあるのだ。
「だから、ママたちが出来なかったことをいっぱいしましょう。いっぱい遊んで、いっぱい美味しいものを食べて、ね?幸せだよって、ママたちが頑張ってくれたからだよって伝えてあげましょう?」
あの頑張りは無駄ではなかったと、守ってくれてありがとうと、その身の幸せをもって伝えて上げてほしい。
比べるものでもないが事故で両親を失った縁より、悲鳴を耳にしながら家族を失った少女の心の傷は計り知れない。
「ママたちの笑った顔を思い出して。ヨナちゃんが笑ったらママたちも笑ってくれたでしょう?」
悲しみだけで家族との思い出を塗り潰さないでほしい。
短くとも愛し、愛された、楽しく幸せに過ごした日々を忘れてほしくない。
「パパとは何をして遊びました?お姉ちゃんとはケンカはした?」
涙で声を出せないと分かっていたため答えは期待せず、だが彼女にとっての家族との思い出を少しでも思い出してほしいと声をかけ続ける。
「……………マ、マ……」
それからどれだけ経ったのか、泣き暴れたため疲れて眠ってしまった少女を抱え上げる。
起こさないようにと時折りポンポンと背を叩いてやる。
「驚かせてすいませんでした。ちょっと寝かせてきますね」
少女の突然のことに周りにいた人々は戸惑い動けずにいた。
「あとは私たちがしておくから気にしないでアンタも休んできな」
「あ、あの、エニシくん私……」
気にしないでいいと休むよう声をかけてくれるマーガレットに、隣りではどうしようと戸惑いに泣きそうになっているコリンに苦笑いする。
「大丈夫ですよ。色々あってちょっと驚いただけです。休ませてくるのでコリンさんはお婆ちゃんを手伝ってくれてもらえますか?」
この状態ではもう縁に手伝うことは難しいだろうとマーガレットの手伝いをコリンにお願いすれば慌てて頷いていた。
「熱いので火傷とかには気を付けて下さいね。あと、そんなに量もないので皆さんできちんと分け合って食べて下さい」
「そうだよ。美味いからっていつもの調子で食べんじゃないよ」
「ひ、ひどい。子どもじゃないんだから私だってそれぐらい分かってますよ」
縁とマーガレットからの言葉に落ち込んでいたが、先程よりは元気が出たようだと笑うと後は彼女たちに任せ少女を寝かせるため部屋を後にするのだった。
11
お気に入りに追加
3,673
あなたにおすすめの小説
BLゲームのモブとして転生したはずが、推し王子からの溺愛が止まらない~俺、壁になりたいって言いましたよね!~
志波咲良
BL
主人公――子爵家三男ノエル・フィニアンは、不慮の事故をきっかけに生前大好きだったBLゲームの世界に転生してしまう。
舞台は、高等学園。夢だった、美男子らの恋愛模様を壁となって見つめる日々。
そんなある日、推し――エヴァン第二王子の破局シーンに立ち会う。
次々に展開される名シーンに感極まっていたノエルだったが、偶然推しの裏の顔を知ってしまい――?
「さて。知ってしまったからには、俺に協力してもらおう」
ずっと壁(モブ)でいたかったノエルは、突然ゲーム内で勃発する色恋沙汰に巻き込まれてしまう!?
□
・感想があると作者が喜びやすいです
・お気に入り登録お願いします!
俺の悪役チートは獣人殿下には通じない
空飛ぶひよこ
BL
【女神の愛の呪い】
この世界の根源となる物語の悪役を割り当てられたエドワードに、女神が与えた独自スキル。
鍛錬を怠らなければ人類最強になれる剣術・魔法の才、運命を改変するにあたって優位になりそうな前世の記憶を思い出すことができる能力が、生まれながらに備わっている。(ただし前世の記憶をどこまで思い出せるかは、女神の判断による)
しかし、どれほど強くなっても、どれだけ前世の記憶を駆使しても、アストルディア・セネバを倒すことはできない。
性別・種族を問わず孕ませられるが故に、獣人が人間から忌み嫌われている世界。
獣人国セネーバとの国境に位置する辺境伯領嫡男エドワードは、八歳のある日、自分が生きる世界が近親相姦好き暗黒腐女子の前世妹が書いたBL小説の世界だと思い出す。
このままでは自分は戦争に敗れて[回避したい未来その①]性奴隷化後に闇堕ち[回避したい未来その②]、実子の主人公(受け)に性的虐待を加えて暗殺者として育てた末[回避したい未来その③]、かつての友でもある獣人王アストルディア(攻)に殺される[回避したい未来その④]虐待悪役親父と化してしまう……!
悲惨な未来を回避しようと、なぜか備わっている【女神の愛の呪い】スキルを駆使して戦争回避のために奔走した結果、受けが生まれる前に原作攻め様の番になる話。
※悪役転生 男性妊娠 獣人 幼少期からの領政チートが書きたくて始めた話
※近親相姦は原作のみで本編には回避要素としてしか出てきません(ブラコンはいる)
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
病弱な悪役令息兄様のバッドエンドは僕が全力で回避します!
松原硝子
BL
三枝貴人は総合病院で働くゲーム大好きの医者。
ある日貴人は乙女ゲームの制作会社で働いている同居中の妹から依頼されて開発中のBLゲーム『シークレット・ラバー』をプレイする。
ゲームは「レイ・ヴァイオレット」という公爵令息をさまざまなキャラクターが攻略するというもので、攻略対象が1人だけという斬新なゲームだった。
プレイヤーは複数のキャラクターから気に入った主人公を選んでプレイし、レイを攻略する。
一緒に渡された設定資料には、主人公のライバル役として登場し、最後には断罪されるレイの婚約者「アシュリー・クロフォード」についての裏設定も書かれていた。
ゲームでは主人公をいじめ倒すアシュリー。だが実は体が弱く、さらに顔と手足を除く体のあちこちに謎の湿疹ができており、常に体調が悪かった。
両親やごく親しい周囲の人間以外には病弱であることを隠していたため、レイの目にはいつも不機嫌でわがままな婚約者としてしか映っていなかったのだ。
設定資料を読んだ三枝は「アシュリーが可哀想すぎる!」とアシュリー推しになる。
「もしも俺がアシュリーの兄弟や親友だったらこんな結末にさせないのに!」
そんな中、通勤途中の事故で死んだ三枝は名前しか出てこないアシュリーの義弟、「ルイス・クロフォードに転生する。前世の記憶を取り戻したルイスは推しであり兄のアシュリーを幸せにする為、全力でバッドエンド回避計画を実行するのだが――!?
転生したら乙女ゲームの世界で攻略キャラを虜にしちゃいました?!
まかろに(仮)
BL
事故で死んで転生した事を思い出したらここは乙女ゲームの世界で、しかも自分は攻略キャラの暗い過去の原因のモブの男!?
まぁ原因を作らなきゃ大丈夫やろと思って普通に暮らそうとするが…?
※r18は"今のところ"ありません
悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました!
スパダリ(本人の希望)な従者と、ちっちゃくて可愛い悪役令息の、溺愛無双なお話です。
ハードな境遇も利用して元気にほのぼのコメディです! たぶん!(笑)
モブに転生したはずが、推しに熱烈に愛されています
奈織
BL
腐男子だった僕は、大好きだったBLゲームの世界に転生した。
生まれ変わったのは『王子ルートの悪役令嬢の取り巻き、の婚約者』
ゲームでは名前すら登場しない、明らかなモブである。
顔も地味な僕が主人公たちに関わることはないだろうと思ってたのに、なぜか推しだった公爵子息から熱烈に愛されてしまって…?
自分は地味モブだと思い込んでる上品お色気お兄さん(攻)×クーデレで隠れМな武闘派後輩(受)のお話。
※エロは後半です
※ムーンライトノベルにも掲載しています
BLゲームの世界に転生!~って、あれ。もしかして僕は嫌われ者の闇属性!?~
七海咲良
BL
「おぎゃー!」と泣きながら生まれてきた僕。手足はうまく動かせないのに妙に頭がさえているなと思っていたが、今世の兄の名前を聞いてようやく気付いた。
あ、ここBLゲームの世界だ……!! しかも僕は5歳でお役御免の弟!? 僕、がんばって死なないように動きます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる