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痛む心
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数日ぶりに見た自身の番はどこか疲れたような表情だった。
子どもたちがいるためか笑ってはいるのだが、いつもの心からの笑顔ではない気がする。
「おかえり」
「ジーク……ただいま」
子どもたちが笑って駆けていくのを見届けてから声をかければ、どこか苦しそうな表情で抱きついてきた縁を受け止めた。
今までの経験から少し休ませた方がいいだろうと腕に抱き上げると部屋まで運びベッドに寝かせてやーー
「……ジーク」
離れたくないとばかりに回された腕に、こんな時だと分かっていても顔がニヤけてしまいそうになってしまう自分は本当にどうしようもないバカだ。
これは縁が望んでいることだからとアレンたちに心の中で言い訳しつつ、並んで横になると望まれるまま抱きしめてやる。
「どうした?最近また色々やってたから疲れたか?」
先程からジークの胸元に顔を埋めたまま動かない縁の頭を優しく撫でてやる。
大体の話しは事前に聞いていたため何をしていたのかは知っていたが、それでもそばにいられない間に彼に何かないかとずっと心配していた。
やめろとは言わない。言いたいが言わない。
ジークとて本音を言えば、そんな他人のことなど放っておいて自分たちだけ見ていればいいと言いたい。
彼らという存在が自分たちに何をしてくれるというのか。
本当に大切なのは自分たち家族だけではないのか。
あんな赤の他人に構うぐらいなら自分たちをもっと構ってくれと。
言葉に出すことはないが、子どものような我儘と番としての嫉妬で心は乱れていた。
「縁……縁…」
たった数日。されど数日。
これまで何度もあったことだが、やはり側に彼の気配が感じられないのは辛く寂しかった。
俯き顔を上げない縁には申し訳ないが、久しぶりの抱擁と共に胸いっぱい彼の匂いを吸い込めば荒んでいた心が徐々に落ち着いていくのが自分でも分かった。
「ジーク、もっと」
請われるまま強く抱きしめ触れられるところ全てに口付けていく。
欲を言えば彼の中に自身を突き入れ全身で感じたかったが、今の状態でそれは良くないだろうと必死に自分を抑え込む。
「私は……………私は酷い人間です」
「そうなのか?」
否定することも出来たが、彼の心の内を聞くため軽くそう返しながら柔らかい髪を優しく梳いてやる。
「ありがとうなんて、優しいなんて言われていい人間なんかじゃない。私は自分のことしか考えてない自分勝手な人間で、それを周りに強要するどうしようもない奴だ」
「…………そうか」
まるで懺悔するように震える声に、大丈夫だと背を撫でる。
「…………選ばせたなんて嘘です。選ぶよう私がサウルを唆した」
「そうか」
「嫌がる彼女たちに彼らとの生活を強要した」
「ああ」
「シャイアさんの足もたぶん治してあげることが出来たけどしなかった………彼女の罪悪感を利用したんです」
「そうか」
本当に身も心も全てが綺麗な人間など存在しない。
当たり前だ、自分たちは神でもなければ良心だけで生きていけるわけがないのだから。
「カールさんを選んだのも都合が良かったから。ある意味で母親と妹さんは人質です。彼女たちのために役に立てと、脅しているようなものだ」
人によって見方は様々だろう。
一見善良なことをしているように見えても、一方では偽善者の自己満足だと言う人間もいる。
「獣人と人が手を取り合ってほしいなんて私が勝手に望んだことで、彼らが望んだわけでもやりたいと手を上げたわけでもない。なのに私がそうなるよう仕向けた」
「そう、か。それはーー」
「許せなかったんです。ジークを、アレンたちを見下す人間が。これ以上私の大事な人たちを傷付ける人間を見たくなかった、増やしたくなかった。それは間違いだと、おかしいと知ってほしくて、そんなことを考える貴方たちの方が愚かなんだと言いたかった」
溢された言葉は何より自分たちに優しい言葉だった。
獣人であるジークたちを愛しているが故の行動だったのだ。
確かにジークたちも縁というきっかけがなければジンやマーガレットたちと話そうとも会おうとさえ思わなかっただろう。
面と向かって気に食わないと言われた時も、それはお互い様だと多少怒りもあった。
だが彼らと遊ぶ子どもたちの姿を見て、楽しそうに話す縁の姿を見て、こんな奴らなら許してやってもいいのかもしれないと思った。
成長し、いつか自分たちの手を離れていくだろう子どもたちが生きやすいように、悲しまないように、そのための行動なのだと。
「でも……分からなくなってきて。本当にこれでいいのかって。彼らに自分の思いを押し付けて、子どもたちに寂しい思いをさせて、ジークたちにもたくさん我慢させて、そこまでして私はーー」
「それが俺たちのためだったってんなら後悔なんてすんな」
きっかけなんてどうでもいい。
縁がそれを選んだというなら方法も問わない。
ただ何より自分たち家族を1番に想ってくれているのであればそれで構わないと誰より愛おしい腕の中の存在をギュッと抱きしめるのだった。
子どもたちがいるためか笑ってはいるのだが、いつもの心からの笑顔ではない気がする。
「おかえり」
「ジーク……ただいま」
子どもたちが笑って駆けていくのを見届けてから声をかければ、どこか苦しそうな表情で抱きついてきた縁を受け止めた。
今までの経験から少し休ませた方がいいだろうと腕に抱き上げると部屋まで運びベッドに寝かせてやーー
「……ジーク」
離れたくないとばかりに回された腕に、こんな時だと分かっていても顔がニヤけてしまいそうになってしまう自分は本当にどうしようもないバカだ。
これは縁が望んでいることだからとアレンたちに心の中で言い訳しつつ、並んで横になると望まれるまま抱きしめてやる。
「どうした?最近また色々やってたから疲れたか?」
先程からジークの胸元に顔を埋めたまま動かない縁の頭を優しく撫でてやる。
大体の話しは事前に聞いていたため何をしていたのかは知っていたが、それでもそばにいられない間に彼に何かないかとずっと心配していた。
やめろとは言わない。言いたいが言わない。
ジークとて本音を言えば、そんな他人のことなど放っておいて自分たちだけ見ていればいいと言いたい。
彼らという存在が自分たちに何をしてくれるというのか。
本当に大切なのは自分たち家族だけではないのか。
あんな赤の他人に構うぐらいなら自分たちをもっと構ってくれと。
言葉に出すことはないが、子どものような我儘と番としての嫉妬で心は乱れていた。
「縁……縁…」
たった数日。されど数日。
これまで何度もあったことだが、やはり側に彼の気配が感じられないのは辛く寂しかった。
俯き顔を上げない縁には申し訳ないが、久しぶりの抱擁と共に胸いっぱい彼の匂いを吸い込めば荒んでいた心が徐々に落ち着いていくのが自分でも分かった。
「ジーク、もっと」
請われるまま強く抱きしめ触れられるところ全てに口付けていく。
欲を言えば彼の中に自身を突き入れ全身で感じたかったが、今の状態でそれは良くないだろうと必死に自分を抑え込む。
「私は……………私は酷い人間です」
「そうなのか?」
否定することも出来たが、彼の心の内を聞くため軽くそう返しながら柔らかい髪を優しく梳いてやる。
「ありがとうなんて、優しいなんて言われていい人間なんかじゃない。私は自分のことしか考えてない自分勝手な人間で、それを周りに強要するどうしようもない奴だ」
「…………そうか」
まるで懺悔するように震える声に、大丈夫だと背を撫でる。
「…………選ばせたなんて嘘です。選ぶよう私がサウルを唆した」
「そうか」
「嫌がる彼女たちに彼らとの生活を強要した」
「ああ」
「シャイアさんの足もたぶん治してあげることが出来たけどしなかった………彼女の罪悪感を利用したんです」
「そうか」
本当に身も心も全てが綺麗な人間など存在しない。
当たり前だ、自分たちは神でもなければ良心だけで生きていけるわけがないのだから。
「カールさんを選んだのも都合が良かったから。ある意味で母親と妹さんは人質です。彼女たちのために役に立てと、脅しているようなものだ」
人によって見方は様々だろう。
一見善良なことをしているように見えても、一方では偽善者の自己満足だと言う人間もいる。
「獣人と人が手を取り合ってほしいなんて私が勝手に望んだことで、彼らが望んだわけでもやりたいと手を上げたわけでもない。なのに私がそうなるよう仕向けた」
「そう、か。それはーー」
「許せなかったんです。ジークを、アレンたちを見下す人間が。これ以上私の大事な人たちを傷付ける人間を見たくなかった、増やしたくなかった。それは間違いだと、おかしいと知ってほしくて、そんなことを考える貴方たちの方が愚かなんだと言いたかった」
溢された言葉は何より自分たちに優しい言葉だった。
獣人であるジークたちを愛しているが故の行動だったのだ。
確かにジークたちも縁というきっかけがなければジンやマーガレットたちと話そうとも会おうとさえ思わなかっただろう。
面と向かって気に食わないと言われた時も、それはお互い様だと多少怒りもあった。
だが彼らと遊ぶ子どもたちの姿を見て、楽しそうに話す縁の姿を見て、こんな奴らなら許してやってもいいのかもしれないと思った。
成長し、いつか自分たちの手を離れていくだろう子どもたちが生きやすいように、悲しまないように、そのための行動なのだと。
「でも……分からなくなってきて。本当にこれでいいのかって。彼らに自分の思いを押し付けて、子どもたちに寂しい思いをさせて、ジークたちにもたくさん我慢させて、そこまでして私はーー」
「それが俺たちのためだったってんなら後悔なんてすんな」
きっかけなんてどうでもいい。
縁がそれを選んだというなら方法も問わない。
ただ何より自分たち家族を1番に想ってくれているのであればそれで構わないと誰より愛おしい腕の中の存在をギュッと抱きしめるのだった。
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